知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

リニア工事 流域市町の懸念強く

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、JR東海の金子慎社長と流域市町の首長が意見を交換しました。自治体のトップからは工事への懸念を訴える厳しい声が相次ぎました。意見交換会の様子やこれまでの経緯を振り返ります。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

JR東海社長「流域懸念、想像以上」 市町長から厳しい声相次ぐ

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、JR東海の金子慎社長は18日、大井川の水の供給を受ける流域市町の首長との意見交換会を静岡市内で初めて開いた。出席者によると、首長からJRへ厳しい意見が相次いだ。金子社長は終了後の取材に「私どもに至らぬ所があったかもしれない。(流域の懸念は)想像以上」との認識を示した。

意見交換会に出席したJR東海の金子慎社長(右奥)と大井川流域の市町長ら=18日午後、静岡市葵区
意見交換会に出席したJR東海の金子慎社長(右奥)と大井川流域の市町長ら=18日午後、静岡市葵区
 意見交換会は非公開。「台風への対応のため」欠席した焼津市長を除く9市町長(島田、掛川、藤枝、袋井、御前崎、菊川、牧之原、吉田、川根本)が金子社長に流域の思いを伝えた。金子社長は具体的な対応は今後検討するとした。
 南アルプストンネル工事による影響の回避策を検討する国や県の有識者会議の結論はまだ出ていない。意見交換会終了後、市町長は記者団の取材に応じ、島田市の染谷絹代市長は「流域住民が中下流域の水利用問題、上流域の環境問題に安心して『これなら大丈夫だ』と思えるだけの説明をJRに尽くしてほしいと要請した」と述べた。藤枝市の北村正平市長は、国土交通省専門家会議の中間報告がまとまった後、県の有識者会議で「JRは真摯(しんし)に議論をしてほしい」と語った。
 金子社長は昨年6月、川勝平太知事と会談したが、着工の同意を得られなかった。流域10市町は県に対応を原則一本化してきたが、直接説明する機会を求めてきたJRとの意見交換会に今回応じた。JRは今後も開催するよう求めたが、市町側は回答を保留した。終了後の取材に金子社長は「スタートを切れた。やりとりの中で理解を深めていかないといけない」としたが、染谷島田市長は「次があるかどうかは分からない」と述べるにとどめた。
〈2021.09.19 あなたの静岡新聞〉

流域市町「地元に寄り添う姿勢を」 ルート変更の選択肢も要請

photo02

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題で、JR東海の金子社長と18日に初めての意見交換会に臨んだ大井川流域9市町の首長は終了後、取材に応じた。ルート変更を選択肢に入れることや、トンネル残土による大規模な盛り土が上流の川沿いに造成されることへの懸念などを金子社長に要請したと明らかにした。
 藤枝市の北村市長は6月の知事選に立候補した2人がともにルート変更を視野に入れるべきだと主張したことに触れ「ルート変更の策を考えておくことが議論の円滑化に役立つのではないか」と提案したという。
 牧之原市の杉本基久雄市長はリニア中央新幹線の採算性に対する懸念を伝え、「未来えいごう(トンネル湧水を)ポンプアップして大井川に返す。本当に継続してそれができるのか。採算性が合う、もうかると言ってもらわないと安心できない」などと要請したという。
 川根本町の鈴木敏夫町長は中流域の水返せ運動の経緯を説明したとし「環境を壊さないような工事をしてほしいとお願いした。残土を積み上げるだけでなく影響のないように管理してもらいたい。希少な動植物を見せられるような展示施設を整備してほしいとも伝えた」と述べた。
 菊川市の長谷川寛彦市長は「地元と信頼関係を築いて、しっかりと寄り添う姿勢で説明してほしい」と伝えたことを明らかにし、信頼関係構築の重要性を指摘した。
〈2021.09.19 あなたの静岡新聞〉

JR東海社長「流域の心配聞きたい」 8月の会見で言及

 リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴う大井川の流量減少問題を巡り、JR東海の金子慎社長は8月26日の定例記者会見で、山梨、長野両県内の工事に関し「手順を踏んでいるので(工事を)進めていきたい」と述べ、予定通り進める方針を改めて示した。

                 金子慎社長
                 金子慎社長
 山梨、長野両工区には静岡県内の山梨県寄り1キロと長野県寄り700メートルが含まれるが、金子社長はこの区間について、大井川流域の理解を得ずにトンネル掘削工事を実施することは困難としている。ただ、県外区間の工事が進展すれば、外堀を埋める形で県内区間の工事着手にもつながる可能性があり、大井川の利水者からは県外工事も中止するよう求める声が上がっている。
 金子社長は県内区間の工事着手に関し「流域の皆様の理解と協力が前提だ」と従来通りの認識を示した。流域住民や利水者への懸念解消に向け「流域の心配も聞きたいし、私どもの話も聞いてもらいたい」と述べた。
 
 ■金子慎社長 一問一答
 8月26日に開かれたJR東海の金子慎社長の定例記者会見での主なやりとりは次の通り。
 ―リニア中央新幹線工事に伴う大井川の水問題に関し、山梨、長野両県内の南アルプストンネル工事を中止すべきとの利水者の声がある。工事を止めるべきか。
 「静岡県内のトンネル掘削の工事着手は、流域の皆さまの理解と協力が前提だ。他県は環境影響評価(アセスメント)の工事も、地域の理解を得ている。手順を踏んでいるので工事を進めていきたい」
 ―大井川流域の利水者から理解を得られなかった場合、リニア事業の凍結はあり得るか。
 「静岡県との話や国土交通省の専門家会議で、流域の懸念解消に向けて努力している。流域の心配も聞きたいし、私どもの話もまずは聞いてもらいたい。先走った話はできない」
 ―のぞみ号で導入するビジネス利用者向け車両に関し、ひかり号やこだま号でも導入する予定はあるか。
 「ビジネス目的で使う人が多いのぞみ号でスタートするが、どういう反響やリクエストがあるかを確かめ、決めていきたい」
〈2021.08.27 あなたの静岡新聞〉
 

難波副知事「流域市町長がJRに思いぶつける場必要」 7月に発言

 リニア中央新幹線工事に伴う大井川の流量減少問題でJR東海との協議を担当する難波喬司副知事は7月26日、流域10市町の首長と議長で構成する「大井川の清流を守る研究協議会」が島田市内で開いた会合で講演した。現状のJRの対応のままでは「流域住民の理解は得られない」と述べ、同社は説明内容や姿勢を改める必要があると強調した。講演後、記者団の取材に応じ、同社の経営陣と流域住民が直接対話する必要性に言及した。

   講演でJR東海の説明の問題点を指摘した難波喬司副知事=島田市内
   講演でJR東海の説明の問題点を指摘した難波喬司副知事=島田市内
 難波副知事が問題視したのは、JR東海の金子慎社長が記者会見で、トンネル湧水が県外に流出しても中下流域の水利用に支障がないなどと発言した点。「(同社の)トップが科学的根拠を分かっていないのに『影響がない』と言い切っている」と批判した。
 社長の発言の根源には同社の企業体質があるとの見方も示し、「組織文化が変わらない限り対話は進まない。説明を変えないといつまでたっても解決しない」と断言した。
 講演後の記者団の取材では、国や県の有識者会議による科学的議論と別に、流域市町長や利水団体代表が同社の経営陣に思いをぶつける場が必要だとする見解を示した。
 熱海市の土石流災害では不適切な工法の盛り土が被害を拡大させたとみられている。大井川流域の首長からは講演後、同社が大井川上流に盛り土で建設するリニア工事の残土置き場の安全性を懸念する声が上がった。
 会合には流域8市町の首長と10市町の議長が出席した。
〈2021.07.27 あなたの静岡新聞〉