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〈 コロナ後遺症 現状と対策は 〉

 新型コロナウイルスの感染者数は静岡県内で落ち着き始めたものの、後遺症に悩む人が後を絶ちません。後遺症に対する社会的な理解も求められています。倦怠感など後遺症に苦しむ女性の声、専門外来の現状、医師の見解などをまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM・NEXT 寺田将人〉

職場復帰できず金銭不安 後遺症に苦しむ女性 倦怠感や抜け毛も

 デルタ株の感染拡大に伴う新型コロナウイルス第5波の新規感染者が減少に転じる一方、合併症による後遺症に悩む人が後を絶たない。体の不調が続くだけでなく、職場復帰できずに生活面でも苦境に陥るケースもある。母子家庭で、都内で暮らす大学生の一人息子に仕送りする静岡県東部在住の女性(51)が17日までに、感染して自宅療養した際の不安や後遺症の苦しみを語った。

コロナ後遺症専門外来で診療の準備をする看護師=富士市中之郷の共立蒲原総合病院
コロナ後遺症専門外来で診療の準備をする看護師=富士市中之郷の共立蒲原総合病院
 「今ものどが燃えているよう。せきが止まらない」。女性は8月中旬に陽性判定が出て、自宅療養になった。観察期間を終え、職場復帰するつもりだったが、後遺症で療養を続けている。
 最初に異変を感じたのはチクチクとした左半身の痛み。37度台の微熱だったが、保健所の指示に従って近くの病院を受診すると血中酸素濃度が低かった。ただ、PCR検査は陰性で帰宅を促された。
 翌日、痛みがひどくなり、再び保健所に電話して別の病院で抗原検査を受けると陽性の判定だった。しかし、鎮痛剤とせき止めを出されただけ。別の医療機関でのCT検査で肺炎の発症が分かったのはさらに翌日だった。
 自宅療養中はずっと微熱で、県から毎日かかってくる健康観察の電話で症状のつらさを訴えたが、「『何かあったら救急車を呼んで』と言うだけ。苦しくて不安でたまらなかった」と打ち明ける。
 2週間たって自宅待機解除の連絡があったが、せきに加えて強い倦怠(けんたい)感と下痢が続き、髪の毛も大量に抜けた。1カ月が過ぎても、とても職場に戻れる状況ではなく、「大学の後期分の授業料を払わないといけないが、どうやって工面しようか」と悩む。
 10年以上前に離婚してから懸命に働き続け、今年5月からはダブルワークをこなしていた。感染経路は不明だが、行動履歴から職場で感染した可能性が高いと考えている。「免疫力が下がってコロナにやられたのかな。でも息子を社会に出すまで、働かないと。まだ死ねない」。いつ終わるのか。後遺症との戦いにも前を向く。

 ■若年層に多く 深刻化懸念 社会的な理解も重要
 5月中旬に新型コロナウイルス後遺症専門外来を開設した共立蒲原総合病院(富士市中之郷)で、診療に当たる聖マリアンナ医科大総合診療内科助教の土田知也医師(39)に現状と課題を聞いた。

 後遺症は軽症であっても3~4割の人に出るとされている。せきと倦怠(けんたい)感が代表的な症状で、1カ月ほど続いてだんだん落ち着くケースが多いが、長引く人もいる。後遺症は若年層に多い印象がある。「第5波」は若者の罹患(りかん)者が多数を占めた。今後、後遺症に悩む人が増加し、事態が深刻化するのではと懸念している。
 現在、定まった治療法はないが、自律神経のバランスが崩れて脈が早くなり、少し体を動かしただけで全力疾走したようなだるさが出る場合がある。まだ経験則だが、脈を抑える薬を使うことで、だるさが取れることが分かってきている。各地域の医師会などに成果を伝え、後遺症に対応する医師を増やしていきたい。治療法を確立するため、国のプロジェクトとして取り組むべきだと考える。
 社会的な理解も重要だ。多くの人に後遺症が出ることを周りが理解し、社会復帰を支えたい。生活に困る人もいるはずで、国として保障を考えることも必要ではないか。
〈2021.09.18 あなたの静岡新聞〉

後遺症外来 5月に県内初開設 富士・共立蒲原総合病院

 富士市の共立蒲原総合病院は5月中旬、新型コロナウイルス感染症の後遺症を診療する、県内の病院では初めてとみられる「新型コロナウイルス後遺症外来」を開設する。同感染症ではウイルス消失後も後遺症に苦しむケースが多いと指摘されている。専門外来を通じて悩む患者に寄り添い、症例の把握にもつなげる。

5月中旬から新型コロナウイルスの後遺症外来を開設する共立蒲原総合病院=富士市中之郷
5月中旬から新型コロナウイルスの後遺症外来を開設する共立蒲原総合病院=富士市中之郷
  後遺症外来は、新型コロナ感染を診断されてから、おおむね2カ月が経過しても倦怠(けんたい)感、呼吸困難感、せき、味覚嗅覚障害、不安感、脱毛、記憶力の低下などの症状が残り苦しむ人を対象にする。症状に応じた検査をし、必要ならば関係診療科につなぐ。毎週木曜午後の予約制で、診療所などの紹介が必要。
  今後も後遺症に悩む人が増えると見込まれる中、昨年夏から同感染症の軽症者を受け入れてきた地域の医療機関として、後遺症診療を手掛けるべきと西ケ谷和之院長らが開設を模索してきた。
  ことし1月に後遺症外来を開設した聖マリアンナ医科大病院から派遣され、蒲原病院でも総合診療科外来を担当する土田知也医師が診療を担う。土田医師によると、後遺症は感染者の7割、軽症者でも3割に現れるとの報告がある。原因や治療法にまだ不明な部分が多く、医療機関は対応に苦慮している。聖マリアンナ医科大病院では4月中旬時点で全国から患者約100人が来院している。
〈2021.04.28 あなたの静岡新聞〉

感染者の7割に後遺症か 専門外来担う土田知也氏インタビュー

 新型コロナウイルスに感染した患者が後遺症に悩む実態が浮き彫りになる中、共立蒲原総合病院(富士市中之郷)は5月中旬から、県内では初とみられる後遺症専門外来を開設した。知見集約や治療法の確立に役立てる。

土田知也氏
土田知也氏

  ―開設の経緯は。
  「新型コロナの重症患者を診ている聖マリアンナ医科大は、ことし1月に後遺症外来を開設し患者が増加している。県内に後遺症を診る病院がなかったので蒲原病院の院長に提案した。毎週木曜午後に新患に対応する。首都圏に比べ感染者は少ないが、後遺症で苦しむ人はいるはず。既に県東部中心に受診希望者が来院し、ニーズを感じる」
  ―後遺症の症状は。
  「感染者の7割、入院しなかった軽症者でも3~4割に後遺症があるとされるが、病態はよく分かっていない。退院後に医師に相談しても『分からない』と言われて悩む患者は多く、日本の感染状況を見ると患者が多数いると推察できる。動いた時のだるさや呼吸困難感が最もつらく、味覚・嗅覚障害、頭痛もある。複合的な症状の出る重い症例ではうつ病のような症状もある。患者には『治ったのに働けないのか』と職場を追われる人もいて、患者を救わなければならない」
  ―診療の実際は。
  「ウイルス感染後に自律神経が乱れることがあり、自律神経の障害で起こる体位性頻脈の影響が考えられる。まず、寝ている状態と起きた状態の脈を比べて体位性頻脈がないかを診る。脈が早まる人は抑える薬で症状が緩和することが多い。頻脈がない場合は酸素飽和度が下がるかを診て気管支を拡張する薬などを投与する。検査でも異常がない場合は漢方の処方を考える」
  ―課題や展望は。
  「診療には元々の基礎疾患の悪化や後遺症特有の症状があるため、さまざまな診療科の知識が必要となる。各診療科の連携も欠かせない。重症者が増える中では急性期対応やワクチン接種に重点が置かれ、後遺症の診療に取り組む病院はまだほとんどない。急性期の治療法は確立されてきたが、後遺症も全国各地で治療できる体制づくりが理想だ。そのためには国レベルのチーム体制でガイドラインなど対処法を打ち出した方がいい。世の中に後遺症への理解を広める必要性も感じている」

  つちだ・ともや 聖マリアンナ医科大卒。同大総合診療内科助教。2019年4月から共立蒲原総合病院で週1回の外来診療を担う。39歳。都内在住。
〈2021.06.13 あなたの静岡新聞〉