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オンライン授業 静岡県内の動向は

 新型コロナウイルス感染拡大の長期化で静岡県内の学校ではオンライン授業の実証実験が進んでいます。接触による感染リスクが無い一方、通信機器のトラブルや普段の授業を望む声などが出ています。現場の取り組みをまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・吉田直人〉

「友達の顔が見られた」 全小中で試行開始 磐田市

 磐田市教委は10日、市内全小中学校32校で順次、児童生徒の家庭と学校をつないだオンライン授業の試行を始めた。1人1台行き渡ったパソコンやタブレット端末を使い、実際に自宅で授業に臨むのは初めて。初日は富士見小(児童数618人)と磐田北小(同787人)が先行実施し、教諭が通信状況や理解度を確かめながら授業を進めた。21日まで午後の時間帯を活用し、各校1日限り1~2コマの授業を展開する。

自宅でiPadを使ってオンライン授業に臨む杉田さん
自宅でiPadを使ってオンライン授業に臨む杉田さん
 富士見小3年の杉田結那さんは、8月末に配布されたiPad(アイパッド)に向かい、目的地までの効率良い経路を導き出す算数の授業に臨んだ。ビデオ会議アプリで結んだアイパッドに映し出された黒板画面や端末に届いた地図資料を見ながら、教諭の指示に沿って計算したり、挙手ボタンを押したりした。杉田さんは「みんながいる学校の方が手を挙げやすいかな」と戸惑いながら、「久々にマスクが無い友達の表情が見られた」と笑顔も見せた。
 端末操作に慣れ自主的な学習も可能な高学年の授業では、解答の共有など全員で臨む場面と質問がある時のみ教諭とつなぐ時間帯に分ける工夫も。活発に発言が行き来する場面も見られた。飛まつ防止で校内では自粛中のリコーダー演奏に取り組むクラスもあり、対面には無い利点もあったという。
 緊急事態宣言が延長されたが、同市は「学校を開きながら児童生徒を守る」姿勢を継続する。初日はつながりにくいなど通信環境への問い合わせも一部あり、天野隆校長は「今回得た課題を次に生かす。長時間実践する場面も想定し、現場からも提案していきたい」と話した。17日は25校が一斉に授業を行う予定。

〈2021.09.12 あなたの静岡新聞〉
 

「機器トラブル対応難しい」...課題指摘の声

 静岡市は10日の新型コロナ対策本部会議で、11月までに市内全ての市立小中学校123校でオンライン授業を実践する方針を明らかにした。少なくとも各校1学級で実施する。

静岡市役所
静岡市役所
 市は今月6~10日に小中学校9校でオンライン授業を試験的に行った。児童生徒は持ち帰った学習用端末を使って授業に参加し、画面越しにコミュニケーションを図ったり、グループごとに発表項目をまとめたりした。
 市によると、児童生徒からは「本当に一緒に授業をしている感覚だった」「接触するリスクがなくて良かった」といった感想の一方、「パソコンを見過ぎて頭が痛くなった」「黒板の字が見えにくく、普段の方がいい」などの意見が出た。
 教師からは「画面共有や切り替えなどの操作に時間がかかり、授業時間が延びた」「児童生徒の機器トラブルへの対応は難しい」などの課題を指摘する声があった。
 市は9校の試行を踏まえて課題を整理し、各校の担当者向けに研修会を開くなどして情報共有を図る。

〈2021.09.11 あなたの静岡新聞〉

対面とオンライン組み合わせ 焼津市

自宅からオンラインで授業に臨む児童たちに声を掛ける教諭=焼津市の小川小
自宅からオンラインで授業に臨む児童たちに声を掛ける教諭=焼津市の小川小
 焼津市内の小中学校で8日、オンライン学習と対面授業を組み合わせた分散登校が始まった。10日まで児童生徒たちは二つのグループに分かれ、交互で入れ替えて登校する。教室での対面授業をウェブ上で同時配信し、配布されたタブレット端末を通して、自宅から授業に臨む。
 同市の小川小では午前中、教諭らが登校した児童と在宅の児童に向けて、パソコンや書画カメラで黒板や資料を映しながら、算数や図工の授業を行った。時折、オンライン上の児童たちに呼び掛けたりして、自宅でも教室にいる感覚が味わえるよう工夫をこらした。
 市内小中学校では、夏休み明けの1日から家庭でのオンライン授業を実施した。タブレット端末を使った全学年のオンライン授業は初めて。同小では、教諭らが配信時に気付いたことや困り事を職員室の黒板に書き込むことで、情報の共有化を図った。解決策も記入し、職員同士の創意工夫を生み出す効果をもたらした。
 内田いつ乃校長は「オンライン授業は職員のノウハウが蓄積され、保護者や地域の協力もあり、軌道に乗り始めた」と語った。

〈2021.09.09 あなたの静岡新聞〉
 

通常登校の市町も

 静岡県への新型コロナウイルス緊急事態宣言延長を受け、県内では10日、一部の市町の教育委員会が今後の方針を協議した。授業は従来通り対面授業を基本とし、オンライン学習については少なくとも20市町が必要とする児童生徒のために着手したか、準備や検討をしていて、延長期間中も態勢を継続する。

 濃厚接触者や自主的に学校を休んだ児童生徒へのオンライン学習は沼津、三島各市などが実施済み。静岡や磐田各市、清水町などは試行や実証実験を行い、家庭での接続確認や授業進行上の課題の洗い出しを行っている。
 分散登校を実施していた富士市は通常登校に戻す。焼津市も14日から通常登校にする方針を決めた。
 部活動は9月以降、全面中止や自校内での実施と対応が分かれた。熱海市など複数の市町は月末まで中止を続ける。一方、掛川市は「中止」から「平日に限って自校内で、少人数、短時間の活動を可」とし、体育館を使う競技は各校の環境に応じて時間差や場所の入れ替えなど対応する。同市教委は「運動機会の減少が心配。活動制限によるストレスを軽減したい」とする。御前崎市と松崎町も平日のみ再開する。
 児童クラブや保育園について、長泉町は休んだ日数に応じて利用料を還付する。伊東市も利用自粛の協力呼び掛けを要請に切り替え、保育料の還付などで対応する。
 週明け以降に方針決定をする市町も複数みられる。

〈2021.09.11 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞