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〈 静岡県内ふるさと納税の今 〉

 応援したい自治体を選んで納税すると、住民税などの控除が受けられるふるさと納税。返礼品がもらえることに加え、企業から自治体への寄付や被災地支援など新しい形でも注目を集めています。静岡県内でも盛り上がりを見せるふるさと納税事情をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・石岡美来〉

静岡刑務所の受刑者製品 静岡市ふるさと納税返礼品に採用へ

 静岡刑務所(静岡市葵区)の受刑者が作る木工品などの刑務作業製品が近く、市のふるさと納税の返礼品に加わる。新型コロナウイルスの感染拡大で職員が各地の即売会に出向く機会が減る中、売り上げの確保とともに刑務所の取り組みを発信する新たな手段になる。関係者は「やりがいと自己肯定感の向上が社会復帰への意欲となり、再犯防止につながれば」と期待する。

静岡刑務所のオリジナル刑務作業製品の一部。敷地内の販売所で誰でも購入できる=9月上旬、静岡市葵区の同刑務所
静岡刑務所のオリジナル刑務作業製品の一部。敷地内の販売所で誰でも購入できる=9月上旬、静岡市葵区の同刑務所
 同刑務所では約400人の受刑者が週に5日、敷地内の工場で刑務作業を行っている。たんすやスツール、子ども用の椅子や机などの木工品、メモ帳や折り紙、塗り絵といった印刷・紙製品を中心に約40種類のオリジナル製品がある。地産地消を意識して県産の材料を積極的に使用。作業で出た木くずは馬の飼育用に静岡大の馬術部に無償提供している。
 静岡市が本年度初めて実施した返礼品の公募に手を挙げ、8月に採用が決まった。5種類の製品を選定し、年内の取り扱い開始を目指して準備を進めている。
 新型コロナの感染拡大を受け、刑務作業製品を展示即売する恒例の「矯正展」は2年連続で中止に。各地のイベントで製品を直接説明する機会もほとんどなくなった。担当者は「刑務所運営は地域の理解と支えがなければできないが、返礼品事業は『地域との共生』となり得る。その一端を担っている意識が受刑者に芽生えれば、より意欲的に作業と向き合える」と説明する。
 静岡市は3月、市再犯防止推進計画を初めて策定した。「市民が市民に寄り添う支援」を掲げ、刑務所との連携も重視している。財政課は「寄付を増やすだけでなく、市の施策を理解してもらうことで再犯防止につながればうれしい」とする。
 法務省によると、全国の刑務所では名古屋や大分などの製品も返礼品に採用された実績がある。矯正局は「返礼品を通じて社会復帰支援の機運が高まってほしい」としている。
〈2021.9.12 あなたの静岡新聞〉

企業から自治体へ「企業版ふるさと納税」 静岡県外企業4社、道の駅整備に寄付

 静岡市は2日、道の駅整備事業「トライアルパーク蒲原」(清水区)に企業版ふるさと納税を活用すると発表した。静岡県外企業4社からの寄付金810万円をウッドデッキなどの休憩施設整備に充て、地域のにぎわい創出につなげる。同市が企業版ふるさと納税を活用するのは初めて。

トライアルパーク蒲原のイメージ
トライアルパーク蒲原のイメージ
 トライアルパーク蒲原は旧県立庵原高グラウンドに新たな周遊拠点をつくる構想。今秋にも事業者を公募し、カフェやコンテナハウスの出店、イベント広場などを備えた空間づくりを目指す。オープンは来年春から夏ごろの予定。比較的小規模な投資からスタートし、利用者の反応や収益性を確認しながら数年かけて整備を進めていくという。土地は清水区の駿河重機建設から提供を受ける。
 企業版ふるさと納税は地方創生の一環で創設され、地域活性化事業に寄付した企業の税負担を軽くする仕組み。トライアルパークの趣旨に賛同したサイバーレコード(熊本市)、高田機工(大阪市)、平岩塗装(東京都大田区)、リョービ(広島県府中市)から寄付を受けた。
 田辺信宏市長は2日の定例記者会見で「民間事業者に使い方を試してもらいながら、必要な機能や整備を検討していきたい」と述べた。
〈2021.9.3 あなたの静岡新聞〉

熱海・伊豆山土石流 義援金10億円超える ふるさと納税活用多数

 熱海市伊豆山の大規模土石流で、市に寄せられた義援金と支援金の総額が23日(※8月)までに10億円を超えた。災害発生から1カ月半余りが経過してもなお、1週間に3千万円以上の善意が寄せられていて、市は感謝するとともに引き続き協力を呼び掛けている。

熱海土石流の義援金、支援金の累計
熱海土石流の義援金、支援金の累計
 被災者の被災状況に応じて配分される義援金は22日現在、約5億9900万円が集まった。市の口座には6781件の振り込みがあった。インフラ復旧など幅広い用途に充てられる支援金には約4億2600万円が寄せられている。個人、企業、団体からの浄財のほか、ふるさと納税を活用した寄付が多い。
 市は今後、義援金の配分委員会を設置して配分率や対象者などを検討し、できるだけ早く被災者に支給したいとしている。
〈2021.8.24 あなたの静岡新聞〉

「被災地支援」で機能、定着化 本来あるべき姿に

 全国各地でさまざまな災害が発生する中、「ふるさと納税」が被災した自治体をいち早く応援できる支援方法として定着し始めた。2020年度は新型コロナウイルス関連の支援も寄付額を伸ばす要因となり、ふるさと納税の受け入れ総額は前年度比約1・4倍の約6725億円に上った。寄付件数も約3489万件でともに過去最高を記録。返礼品の高額化などが問題視された制度は奔走する自治体を支える本来の姿を取り戻しつつある。

「ふるさとチョイス」に寄せられた近年の主な災害に対する寄付総額
「ふるさとチョイス」に寄せられた近年の主な災害に対する寄付総額
 7月に熱海市伊豆山で発生した大規模土石流への支援を目的に設立されたふるさと納税のポータルサイト大手「ふるさとチョイス」の災害支援特設ページでは、熱海市への寄付が計1億8千万円に迫る。ツイッターを中心とした会員制交流サイト(SNS)でページが拡散されたことも急速に寄付を集める要因となった。
 クラウドファンディングなどネット上から簡単に支援できる仕組みやキャッシュレス化が浸透したことが定着を後押しする。支援先が細分化され、応援したい特定の自治体を選べる点も支援者に親切な仕組みだ。
 同サイトは被災地以外の自治体が寄付金の受け付け業務を代行する「代理寄付」の仕組みも用意している。被災地の事務負担を軽減し、住民の安全確保や復興のための業務に人員を充てることができる。これまで100を超す自治体が代理寄付の業務を引き受けた。自治体間の公助の輪が広がりを見せている。
 ふるさと納税を巡っては、自治体が税収を得るため、寄付に対して豪華すぎる地場産品や、そもそもその自治体とは関係のない商品券を含めるなど、返礼品競争の過熱が問題化したことは記憶に新しい。制度本来の意義が揺らいでいるとの指摘が挙がり、国が規制の導入に踏み切った。県内でも小山町が返礼品としてギフト券を贈り、是非が問われた。
 一方で、災害支援には通常のふるさと納税のような特典を提供しない自治体がほとんど。返礼品を目的とせず、自治体を純粋に支えようとする思いが寄付を集めている。
 世界遺産に登録された奄美大島の環境保護を目的にふるさと納税で寄付を募る活動が始まるなど、制度の活用法はますます多様化する。関心を抱く人も増えるだろう。多方面から注目されることでふるさと納税の本質的な意義が再認識されていくことを期待したい。
〈2021.8.22 あなたの静岡新聞〉