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〈 児童クラブの現場 感染対策に苦心 〉

 静岡県内の放課後児童クラブで、新型コロナウイルスのクラスター発生が相次いでいます。共働き世帯のニーズは高い一方、児童クラブの施設環境などから感染対策に限界がきています。子どもの感染状況や、今の段階でできる対策をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・石岡美来〉

「黙食」工夫も限界 ニーズは依然高く

 静岡県内の放課後児童クラブで8月下旬以降、新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)の発生が相次いでいる。感染力の強いデルタ株の影響とみられ、現場は警戒を強めている。ただ、在宅勤務を本格導入する職場は限られ、共働き世帯の利用ニーズは依然高い。児童の数に対して手狭な施設が多く、各クラブとも「どのように密を回避するか」という根本的な対策に苦慮している。

前後左右に距離を設け、静かにおやつを食べる児童たち=8日、焼津市内
前後左右に距離を設け、静かにおやつを食べる児童たち=8日、焼津市内
 「必死に対策をやってきたのに、なぜなのかと」―。クラスターが発生した県内の児童クラブの女性支援員は悩む。「自治体が示す間隔を守るのなら、一部の児童は外で生活しなければならない。(クラスターが)支援員の指導不足とみられることが悔しい」
 国の施設設置基準は「1人当たりおおむね1・65平方メートル」だが、地域の実情が許容される。NPO法人県学童保育連絡協議会(静岡市)の鈴木和子理事は「元々、十分な広さが確保されていない中で第5波になり、リスクが露呈した」と指摘する。クラスターが発生した他の児童クラブも状況が似ているという。鈴木理事は「学校施設などを借りないとスペースを確保できないが、そうなると支援員も足りなくなる。待遇など長年の課題も絡む」と指摘する。
 各地のクラブは「消毒のチェックリスト作成」「食事の入れ替え制」「黙って楽しめる読み聞かせの時間を増やす」「注意ではなく、促す行動抑制を心掛ける」など、心のケアを含めた対策を模索してきた。ただ、低学年児が黙食中に「寂しい」と泣きだすなど、現場レベルの工夫に限界も感じている。
 厚生労働省は児童クラブについて「原則開所」の方針を示す。スペース確保を巡っては富士市がクラブに隣接する小学校の空き教室を提供するなど、行政が支援に乗り出す事例が出てきた。一方で、緊急事態宣言が適用されて以降は、複数の市町が保護者に利用自粛を求めた。焼津市内のある児童クラブでは利用者数が3分の1に減ったという。

 ■夏休み明け 学校閉鎖など14校
 県教委のまとめによると、8月下旬以降の夏休み明けに新型コロナウイルス感染者の複数発生などにより学級閉鎖などの臨時休業を行った県内の公立学校は、9月9日までに小中高計14校だった。同日までの時点で学校内のクラスター(感染者集団)発生はなく、県教委は「懸念していた爆発的拡大は抑えられている」とみる。一方、県内の感染者数は依然多いため、緊急事態宣言延長に合わせ県立学校の時差通学などの対策を継続する。
 臨時休業の内訳は小学校が全校閉鎖1校、学年閉鎖5校、学級閉鎖1校。中学校は学級閉鎖1校。高校は学年閉鎖2校、学級閉鎖4校。文部科学省や学校設置者のガイドラインを基に休業し、既に再開した学校もある。
 県教委は10日、緊急事態宣言延長に応じ、県立高と特別支援学校の時差通学や部活動制限などの対応を継続すると決めた。県立高は88校中45校、特別支援学校は38校中8校で時差通学を行っている。
 夏休み明けが早かった学校は、授業再開から2週間が経過した。県教委の水口秀樹理事は「各校の努力で感染拡大は最小限に抑えられている。社会全体の状況が落ち着くまで、同様の対策で学びの保障との両立を続けていく」と話した。
〈2021.9.11 あなたの静岡新聞〉
 

子どもの感染、1カ月で6倍超 学びの場での拡大どう防ぐ

 静岡県内で8月下旬の1週間に新型コロナウイルスに感染した未成年者の数が1カ月前の6倍超に上ったことが、6日(※9月)までの県などのまとめで分かった。全国的に指摘される子どもの感染急増が静岡県でも確認された。9月に入って学校が再開し、感染がさらに広がるとの懸念がある中、県東部で学年閉鎖などが相次いだ。学びの空間で感染力の強いデルタ株の広がりをどう防ぐかが「第5波」収束の鍵を握る。

新型コロナウイルスに感染した静岡県内の未成年者数
新型コロナウイルスに感染した静岡県内の未成年者数
 「ここで食い止めるという思い。国の指針を基に学校と協議して判断した」
 町内の小学校1校で児童数人の感染が分かり、複数学年を閉鎖した長泉町教委。江本光徳専門監は文部科学省が8月末に示した閉鎖基準に触れつつ、迅速に対応した経緯を説明した。当該校は6日に予定通り授業を再開した。三島市でも小学校1校で複数の児童が感染し、6日まで5日間の学年閉鎖とした。出席できない児童にはオンラインで学習機会の確保を図ったという。伊東市の学校でも1学級が閉鎖した。
 県内で8月21~27日に感染した未成年者は779人に上り、7月下旬1週間の123人の6・3倍。同様に急増した成人の伸び率6倍弱を上回った。6月下旬1週間の未成年感染は24人だった。
 県内は8月末以降、爆発的な感染拡大が減少傾向に転じた。県は学校から地域社会への感染抑制がリバウンド(再拡大)を阻止する一つの分水嶺(れい)とみる。
 学校現場は既に手洗いや清掃、消毒、換気、座席の配置など感染対策が徹底されている。このため、行政関係者や感染症専門医は「授業時の感染リスクは低い」との見解でおおむね共通している。県幹部は、従来の学校関連クラスターで見られた感染経路を念頭に「給食など飲食時の会話や部活動、学校帰りの遊びなどでウイルスが拡散する恐れがある」と警戒を呼び掛ける。
〈2021.9.7 あなたの静岡新聞〉

昨年の一斉休校時、児童クラブ休止に「困った」の声

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け静岡県内の全市町立小学校の臨時休校が決まった中、放課後児童クラブ(学童保育)も休止とした自治体が少なくとも三島、裾野、島田、長泉、清水町、西伊豆、松崎の7市町に上ることが8日(※2020年4月)分かった。感染状況が悪化し安全を確保できないと判断したケースが多く、保護者から困惑の声が聞かれた。一方、事業所が子どもの居場所作りに乗り出す動きもある。

奥の職場で仕事する保護者の近くで勉強する児童=三島市幸原町の静岡労務
奥の職場で仕事する保護者の近くで勉強する児童=三島市幸原町の静岡労務
  「急な連絡で困った。親を頼れるかも分からない」
  隣接する長泉町で感染者が確認された三島市。市内の学童保育14施設の一時休止が決まり、小学2年の子を持つ30代の母親はそう漏らした。
  同市の学童保育登録数は千人を超え、影響を受ける世帯は少なくない。市教委は「学童は通常教室より子どもの距離が近い。家庭で対応してもらうしかないと判断した」と理解を求める。
  政府の休校要請に伴い原則開所が求められた3月の学童保育では、運営時間が延長されるなどの対応がみられた。このため今回の休止は想定外と受け止める親もいる。3年生の長男を持つ島田市の中川彩乃さん(36)は勤務先の理解を得て自身の仕事を9日から休むことにしたといい、「驚いたが、感染防止のためには仕方ない」と話した。
  松崎町役場に勤める30代の男性職員は自身の両親か妻が仕事を休んで小学2年の娘を見ることに。「協力がなければ育児は成り立たない」とした。
〈2020.4.9 静岡新聞朝刊〉

大人の「飛沫」感染防止、優先を/体内増殖は従来株の1000倍

 インタビュー 静岡県立こども病院 荘司貴代・感染対策室長
 感染急拡大を招いているインド由来のデルタ株は、感染者の体内で増殖する量が非常に多く、従来株の1000倍との報告がある。そのため症状はより強く現れ、人にうつりやすい。新型コロナかどうかにかかわらず、必要な医療を受けられなくなる日が静岡県にも迫っている。
 デルタ株のまん延によって、諸外国では死亡率が上がっている。国内については今のところ、信頼できるデータが出そろっていない。従来株と比べて潜伏期間は3~4日と短く、無症状者は少ないことが分かっている。これまで子どもは大半が無症状だったが、味覚障害や発熱が現れる事例が増えてきたと実感する。
 新型コロナはもともと、発症後1週間前後で急激に肺炎が悪化して低酸素状態が進行することがある。心筋梗塞や脳梗塞を併発するリスクも高まる。デルタ株は、重症化するスピードが速い印象。免疫がなければ高齢であるほど、肥満や基礎疾患のある方ほど重症化する傾向は変わらない。しかし関東圏を中心に感染者数が激増し、入院治療が受けられないために亡くなるケースが出ている。
 感染経路は従来株と同じく、飛沫(ひまつ)感染か接触感染。感染者のつばやくしゃみが目、鼻、口の粘膜に付着してうつる飛沫感染がほとんどだ。従来株は1人が平均2人にうつす計算だったが、デルタ株は5~9人にうつす。これは空気感染する水痘(水ぼうそう)に近い値。家庭に持ち込まれたら、免疫がない限り全員感染する。しかし水痘と違って空気感染はしない。空気の流れが悪い密な環境では、小さな飛沫「エアロゾル」が長時間漂い、感染を広げることがあるが、「空気感染」とは異なる。
 これまでのように会話時のマスク着用と3密回避を徹底すれば防げるが、ウイルス量の多いデルタ株は、感染者の飛沫を少し浴びただけでうつってしまう。手指を介した接触感染の割合は低いため、ドアノブや机、いすなど「環境表面」の消毒に神経質になる必要はない。目鼻口を触る前の手洗いか手指消毒を続けよう。
 県内でも事業所や飲食店でのクラスター発生に加えて、活動範囲の広い大人から子どもへの家庭内感染が目立つ。デルタ株は従来株と異なり、子どもから子どもにも広がる。それでも子どもが重症化することはほぼない。子どもにとってはインフルエンザよりもはるかに身体的影響が少ない。感染は子どもよりも大人同士の方が広がりやすく、「大人から子ども」にうつる割合が高いことに変わりはない。引き続き大人の感染防止を優先すべきで、子どもが感染源になるからという大人の都合で休校や休園をして、子どもらしい生活を奪うべきではないと考える。
 有効と期待される抗体カクテル療法は供給量に限りがあり、投与の対象は基礎疾患など重症化するリスクがある方。流行の収束には、ワクチン接種を進めて集団免疫を得る以外に方法はない。ワクチンはデルタ株にも効く。特に重症化と死亡を防ぐ効果は、従来株に劣らない。できるだけ早く接種して、ご自身だけでなく、大切な方の命も守ってほしい。
〈2021.8.29 あなたの静岡新聞〉