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〈 自宅療養者急増 対策は 〉

 静岡県内の9月2日現在の病床使用率は67・3%と県内の医療現場は依然逼迫し、搬送を待つ自宅療養者が急増しています。現場の状況を取材した記事をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・安達美佑〉

自宅療養者搬送ピンチ タクシーに依頼検討

 新型コロナウイルスの感染拡大で自宅療養者が急増する中、静岡市保健所では自宅療養者らを医療機関などに搬送する業務が逼迫(ひっぱく)している。同保健所は「人手も車両数もぎりぎりの状態。このままだと搬送を長時間待ってもらう市民が増える」と危機感を強め、タクシー業界団体への搬送協力依頼を検討している。

自宅療養者らの搬送に向かう静岡市職員。感染拡大で搬送依頼は増加している=8月30日、静岡市葵区(画像の一部を加工しています)
自宅療養者らの搬送に向かう静岡市職員。感染拡大で搬送依頼は増加している=8月30日、静岡市葵区(画像の一部を加工しています)
 「保健所の労力がこれだけ患者の送迎に割かれている事態をどうにかしなければいけない」。発熱外来を設けている静岡市内の医療機関の院長は、搬送業務に追われる保健所の状況をこう指摘する。
 8月下旬、この医療機関では来院した1人暮らしの女性の陽性が判明。保健所の迎えが到着したのは、連絡をしてから2時間半以上がたっていた。女性は徒歩での帰宅が難しく、保健所を待つしか帰宅手段がなかった。
 同保健所によると、自宅療養者の急増に伴い、翌日まで搬送を待ってもらうケースも出始めている。保健所などは個別にタクシー会社に協力を打診したが、感染リスクへの不安などから難色を示されるケースが多いという。
 ふじのくに感染症専門医協働チーム(FICT)の岩井一也医師=静岡市立静岡病院感染管理室長=は「マスクを着け、会話をしなければ、車内で感染することはほぼない。ワクチンを打っていればより安心」と訴える。
 同保健所は、運転席と後部座席に仕切りを設けるなど感染対策を施した公用車と民間から無償貸与を受けた車の計6台を保有する。職員や委託運転手が、発症した自宅療養者らの外来受診や医療機関から療養ホテルへの移送などに24時間体制で当たっている。
 同保健所保健予防課の杉山智彦課長は「自宅療養者の移動手段の確保は大きな課題。市民には改めて感染しない行動をお願いしたい」と話す。


 ■静岡県、民間運転手ら派遣開始
 県内で自宅療養者を医療機関などに搬送する需要が増えていることを受け、県は今週から、一部の保健所に県が契約した民間の運転手や看護師の派遣を本格的に始めた。
 県新型コロナウイルス対策課によると、搬送する患者の状態に応じて看護師も搬送に同行する。東部地域の一部保健所には、東京五輪の開催直後から先行して派遣しているという。
 自宅療養者の搬送は、自力で医療機関に向かうのが困難だったり家族の協力が得られなかったりするケースが対象になる。
 同課の担当者は「搬送体制を強化したところ。限られた人材で何とか対応していきたい」と話す。
〈2021.09.02 あなたの静岡新聞〉

調査待ち書類が山積みに 限界「寸前」

 静岡県内で新型コロナウイルスの感染状況が急速に悪化する中、患者の健康状態の聞き取りや入院先の調整などを担う保健所の業務が逼迫(ひっぱく)している。陽性になった人への連絡が遅くなったり、濃厚接触者の認定やPCR検査の実施が滞ったりするなど深刻な影響が出ている。関係者は「お手上げの寸前。これ以上患者が増えると対応しきれない」と悲鳴を上げる。

電話対応に当たる職員。調査待ちの患者の書類が積み上がる=25日午後、静岡市葵区
電話対応に当たる職員。調査待ちの患者の書類が積み上がる=25日午後、静岡市葵区
 「息苦しさはありますか」―。25日、静岡市保健所(同市葵区)には電話がひっきりなしにあり、保健師や看護師らが感染した市民の症状を確認するなど対応に追われた。市は同日、過去最多162人の新規感染を発表した。職員の脇には陽性が判明したものの、行動履歴や濃厚接触者の調査ができていない患者の書類が山のように積み上がった。
 8月中旬以降、感染急増に合わせて応援の保健師ら職員を30人以上増員してきたが、それでも対応が追い付かない。急増前は医療機関からの発生届けを受けた場合、当日中に患者に連絡ができていたが、現在はそれもままならない。
 陽性者の濃厚接触者が特定できないと、感染の有無を調べる検査が進まない。同保健所保健予防課の杉本嘉亀課長補佐(57)は「PCR検査を受けたいという相談を多く受けている」と打ち明ける。ただ「調査が混み合っていて、順番を待ってもらっている状態」と苦悩をにじませる。
 浜松市保健所(同市中区)でも、市内の新規感染者が連日100人を超え、切迫の度合いが増している。自宅療養者が増え、健康状態の確認に時間を要する。担当者は「どんどん業務が膨れあがってきている。緊急事態宣言の効果が出てきてくれないと厳しい」と嘆く。
 東部保健所(沼津市)は自宅療養者の対応に人員を割くため、保健所での感染の有無を確かめる検査をやめた。発症2週間前からを聞き取っていた行動履歴は「陽性者が誰にうつした可能性があるか」に重点を置き、発症2日前までとした。これにより聴取の時間短縮が見込めるという。
 患者を受け入れる医療機関の病床も逼迫が著しい。静岡市保健所の杉本課長補佐は「市民の皆さんにはとにかく、感染しない行動をとってほしい」と訴えた。
〈2021.08.26 あなたの静岡新聞〉

自宅療養中の死亡者 健康観察実施されなかったケースも

 静岡県は27日、自宅療養中に亡くなった50代の新型コロナウイルス患者について、死亡を確認する前日の健康観察が実施できていなかったことを説明した。インド由来のデルタ株の影響で県内の感染者が急増し、業務が逼迫(ひっぱく)して支障をきたしていることが浮き彫りとなった。

静岡県庁
静岡県庁
 県健康福祉部の後藤幹生参事は同日の記者会見で「大変申し訳ない。全療養者への観察を徹底する」と謝罪した。患者の体調が急変した可能性を示唆し、健康観察を行うスタッフの増員や重症化リスクが高い療養者を優先して確認するなどの再発防止策を行う方針を示した。
 県によると、患者には血中酸素濃度を測るパルスオキシメーターを配布し、陽性が判明した8月中旬から24日まで看護師や保健師が毎日、電話で健康観察をしていた。
〈2021.08.28 あなたの静岡新聞〉

酸素ステーション設置、9月中旬目標 東中西に3カ所

 静岡県は30日の県議会厚生委員会で、新型コロナウイルス感染者の急増に対応するため東中西の県内3カ所に開設する入院待機ステーション(酸素ステーション)について、9月中旬の設置を目標とする方針を示した。県は本年度の一般会計8月補正予算に、設置運営費2億2200万円を計上した。

静岡県庁
静岡県庁
 同ステーションは酸素投与が必要な感染者が直ちに入院できない場合に、入院調整の間に酸素投与や投薬を行う。県によると、当面は1カ所当たり10床程度を設置し、医師と看護師が各1人以上、常時対応する施設を目指す。患者の受け入れ状況に応じ、病床や医療従事者の配置を増やす可能性もある。
 酸素の配管が設置された病院の空床活用などを念頭に設置場所を検討しているが、病院内に設置する場合も県が直接管理し、医療従事者の確保などを行う予定。
 一方、ホテル借り上げの軽症者向け宿泊療養施設に併置する臨時医療施設は、医師が日中に1人、看護師1人が24時間体制で対応する体制を目指す。施設周辺の自宅療養者で酸素投与が必要な患者の受け入れが可能な場合には、酸素投与や点滴の拠点にもなる見込み。県が新たに設置する2カ所の宿泊療養施設は志太榛原地域と県東部での設置を目指し、新型コロナ対策課の米山紀子課長は「現状の感染者急増に対応するため、まずはすぐに設置することを最大の目標とする」と説明した。
〈2021.08.31 あなたの静岡新聞〉