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崩壊の黄瀬川大橋 2か月ぶり開通へ

 静岡県東部で甚大な被害が出た7月3日の大雨で崩壊した沼津市・清水町境の黄瀬川大橋が、8月31日から仮設橋を架けて通行再開することになりました。通行止めになって以降、周辺店舗への客足が遠のき、早期復旧を求める声が地元から上がっていました。経緯を振り返ります。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・尾原崇也〉

長さ34メートルの仮設橋設置 中型以上のバス、トラックは通行不可

 静岡県は26日、7月の大雨で一部崩壊した沼津市・清水町境の黄瀬川大橋の通行止めを31日午後1時に解除すると発表した。

沼津市・清水町境の黄瀬川大橋で始まった応急組立橋の設置工事=26日午後
沼津市・清水町境の黄瀬川大橋で始まった応急組立橋の設置工事=26日午後
 黄瀬川大橋の応急復旧に向け、損傷した橋脚や橋桁の撤去を完了し、26日に応急組立橋の設置工事に着手した。長さ34メートルの撤去箇所に仮設する。
 仮設橋は自動車用の2車線と歩道を確保する。自転車を含む二輪車と、中型以上のバスやトラックなど総重量7・5トン以上の車両は通行できない。川の水位が高まるなどした場合、通行止めになる可能性があるという。完全復旧については県と国交省が協議している。
 黄瀬川大橋は7月3日、大雨による川の増水で橋脚1基が傾き、橋の一部が崩壊した。同日から通行止めが続き、迂回(うかい)路が渋滞したり、近隣店舗の客足が遠のいたりするなど、周辺地域への影響が出ている。
 〈2021.8.27 あなたの静岡新聞〉

熱海土石流発生の大雨、沼津でも甚大被害 黄瀬川大橋崩壊、住宅1棟流失

 梅雨前線の停滞に伴う大雨の影響で、沼津市では3日、土砂災害や浸水被害が相次いで発生した。沼津市と清水町をつなぐ黄瀬川大橋が午前10時ごろに一部崩壊し、通行止めになった。県沼津土木事務所は「復旧の見通しは立っていない」としていて、周辺住民らの生活への影響が懸念されている。

一部崩落した黄瀬川大橋=7月3日、清水町長沢
一部崩落した黄瀬川大橋=7月3日、清水町長沢
 県道富士清水線(旧国道1号)に架かる黄瀬川大橋は、橋脚4基のうち1基が損傷。全長83メートルの橋の西側34メートル部分がV字形に折れ曲がるように崩壊した。沼津署によると、人的被害はなかった。
 橋の近くに住む会社員男性(51)は「『ドン』という音がし、外を見たら橋が折れていた。発生当初は車が橋を通っていて危ないと思ったが、人の被害がなくて良かった」と話した。
 地域住民が通勤や買い物などに利用し、朝夕に交通渋滞が発生するほど通行量が多い幹線道路が寸断された。清水町の主婦(62)は「旧国1が使えないとかなり不便になる。復旧にどれくらい時間がかかるのか心配」と不安げに橋を見つめた。
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黄瀬川の増水により流された住宅跡=7月3日、沼津市大岡

 上流の沼津市大岡では黄瀬川の増水で護岸が崩れ、2階建て住宅1棟が流された。沼津署によると、午前8時35分ごろに近隣住民から「家が川に流れそう。白い煙が上がっている」と110番があった。住人2人は避難し、無事だった。民家が流される瞬間を目撃した近所の50代女性は「護岸が崩れ始めて大丈夫かと見ていたら、家が少しずつ傾いて流されてしまった。あっという間だった」と話した。
 同市西部の原、愛鷹地区では、家屋の浸水や道路冠水が広範囲に及んだ。原地区では、水が引いた後も、地域住民らが道路上などに残った泥の片付けに追われた。同市一本松の鈴木タエ子さん(72)は自宅が浸水し、原東小に避難した。「家に入り込んだ水で畳が浮くほどだった。こんなにひどい状況になるとは」と嘆いた。
 〈2021.7.4 あなたの静岡新聞〉

周辺事業者 悲鳴 崩落以降、客足遠のき収入に打撃

 沼津市と清水町をつなぐ黄瀬川大橋が一部崩落し、県道富士清水線(旧国道1号)が通行止めになっている影響で、沿道の花屋やコンビニ、ガソリンスタンドなどの事業者への客足が遠のいている。直接的に店が被災していないため、保険や補助などの支援の対象外。橋の復旧の見通しが立たず、小売店は悲痛な叫びを上げている。

店舗まで通行可能なことを示す看板を見つめる三保貴広さん=7月16日、清水町長沢
店舗まで通行可能なことを示す看板を見つめる三保貴広さん=7月16日、清水町長沢
 「客が激減し、開店以来の危機」。橋のそばに立地する同町長沢の花屋「ジヴェルニー」のオーナー三保貴広さん(42)は力なく語った。県道は多くの住民が利用する生活道路で渋滞も目立った。通行止めで様子は一変し、通行車両はほとんどなくなった。
 コロナ禍で客数が減った昨年の同時期と比べても売り上げが4割減った。店舗は大雨による直接的な被害を受けていないため、罹災(りさい)証明書が発行されない。三保さんは「証明がないと、保険や補助が受けられない」と嘆く。営業していることを伝えるためにも、橋周辺店舗との集客イベントの模索を始めた。「希望が見えないからこそ、すがれるものがほしい。何か動かないと」と話す。
 清水町は状況を把握するため、各店舗への聞き取りを実施した。被災後数日間の売り上げは軒並み落ち込み、半減以下になったところも。約2週間がたった現在も2~4割減の状態が続いていて、各事業者が仕入れや人員を削減して対応しているという。
 客の減少は対岸の沼津市側でも。釣具店「アマノフィッシング」(同市大岡)を経営する天野義雄さん(67)は「交通量が減り、来店者が少なくなった」と語る。ただ、目的を持って訪れる客が一定数いるため、過度な心配はしていないという。
 橋の復旧時期は見通せず、影響の長期化が予想される。県沼津土木事務所によると、橋の損傷部分を調査して橋桁の撤去から始める予定とし、完全復旧には「年単位でかかる」とみている。沼津市と清水町、長泉町の首長が県に早期復旧を要望し、難波喬司副知事が「仮設で通行できるようにする」との意向を示している。
 〈2021.7.19 あなたの静岡新聞〉

完全復旧は「年単位」 見通し立たず 県、国が協議継続

 大雨の影響で一部崩落した沼津市と清水町をつなぐ黄瀬川大橋について、管理者の県沼津土木事務所は4日、現場を調査し、復旧は「年単位でかかる」との見通しを示した。地元にとって主要道路のため、日常生活への影響は長期化しそうだ。

洪水対策のため、堤防に積み上げた土のう=7月4日、沼津市大岡の黄瀬川大橋付近
洪水対策のため、堤防に積み上げた土のう=7月4日、沼津市大岡の黄瀬川大橋付近
 橋脚4基のうち1基が損傷し、橋の西側部分がV字形に崩壊した。国土交通省沼津河川国道事務所は同日、橋脚の損傷で下がった橋桁が水の流れを阻害し、水量が増した時には堤防を越える可能性があると判断。重さ1トンの大型土のう約200個を橋周辺の堤防60~70メートルに積み上げた。
 通行止めだった黄瀬川大橋下流の黄瀬川橋は県沼津土木事務所職員が橋桁などに損傷がないか確認し、通行止めを解除した。復旧まで迂回(うかい)対策を求めるため、「大型車は可能な限り国道1号を利用してほしい」と呼び掛けている。
 〈2021.7.5 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞