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〈 熱海寄付10億円 ふるさと納税活躍 〉

 大規模土石流で被災した熱海市への寄付総額が10億円を超えました。災害の甚大さや熱海の知名度もさることながら、ふるさと納税制度を活用し、自宅で簡単に善意を示せるようになったことも、数字を押し上げた理由の一つに挙げられます。被災地を支援する新たな仕組みとして定着するか注目が集まっています。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・尾原崇也〉

義援金5・9億円、支援金4・2億円集まる 支援金の多くはふるさと納税から

 熱海市伊豆山の大規模土石流で、市に寄せられた義援金と支援金の総額が23日までに10億円を超えた。災害発生から1カ月半余りが経過してもなお、1週間に3千万円以上の善意が寄せられていて、市は感謝するとともに引き続き協力を呼び掛けている。

熱海土石流の義援金、支援金の累計
熱海土石流の義援金、支援金の累計
 被災者の被災状況に応じて配分される義援金は22日現在、約5億9900万円が集まった。市の口座には6781件の振り込みがあった。インフラ復旧など幅広い用途に充てられる支援金には約4億2600万円が寄せられている。個人、企業、団体からの浄財のほか、ふるさと納税を活用した寄付が多い。
 市は今後、義援金の配分委員会を設置して配分率や対象者などを検討し、できるだけ早く被災者に支給したいとしている。
 〈2021.8.24 あなたの静岡新聞〉

「ふるさと納税で被災地支援」定着 きっかけは2016年熊本地震 制度、本来あるべき姿に

 全国各地でさまざまな災害が発生する中、「ふるさと納税」が被災した自治体をいち早く応援できる支援方法として定着し始めた。2020年度は新型コロナウイルス関連の支援も寄付額を伸ばす要因となり、ふるさと納税の受け入れ総額は前年度比約1・4倍の約6725億円に上った。寄付件数も約3489万件でともに過去最高を記録。返礼品の高額化などが問題視された制度は奔走する自治体を支える本来の姿を取り戻しつつある。

「ふるさとチョイス」に寄せられた近年の主な災害に対する寄付総額
「ふるさとチョイス」に寄せられた近年の主な災害に対する寄付総額
 7月に熱海市伊豆山で発生した大規模土石流への支援を目的に設立されたふるさと納税のポータルサイト大手「ふるさとチョイス」の災害支援特設ページでは、熱海市への寄付が計1億8千万円に迫る。ツイッターを中心とした会員制交流サイト(SNS)でページが拡散されたことも急速に寄付を集める要因となった。
 クラウドファンディングなどネット上から簡単に支援できる仕組みやキャッシュレス化が浸透したことが定着を後押しする。支援先が細分化され、応援したい特定の自治体を選べる点も支援者に親切な仕組みだ。
 同サイトは被災地以外の自治体が寄付金の受け付け業務を代行する「代理寄付」の仕組みも用意している。被災地の事務負担を軽減し、住民の安全確保や復興のための業務に人員を充てることができる。これまで100を超す自治体が代理寄付の業務を引き受けた。自治体間の公助の輪が広がりを見せている。
 ふるさと納税を巡っては、自治体が税収を得るため、寄付に対して豪華すぎる地場産品や、そもそもその自治体とは関係のない商品券を含めるなど、返礼品競争の過熱が問題化したことは記憶に新しい。制度本来の意義が揺らいでいるとの指摘が挙がり、国が規制の導入に踏み切った。県内でも小山町が返礼品としてギフト券を贈り、是非が問われた。
 一方で、災害支援には通常のふるさと納税のような特典を提供しない自治体がほとんど。返礼品を目的とせず、自治体を純粋に支えようとする思いが寄付を集めている。
 世界遺産に登録された奄美大島の環境保護を目的にふるさと納税で寄付を募る活動が始まるなど、制度の活用法はますます多様化する。関心を抱く人も増えるだろう。多方面から注目されることでふるさと納税の本質的な意義が再認識されていくことを期待したい。
 〈2021.8.22 あなたの静岡新聞「解説・主張しずおか」〉

寄付受付業務を他自治体が代行 「代理寄付」で被災自治体の負担軽減

 熱海市伊豆山で発生した大規模土石流への支援を目的に設立されたふるさと納税のポータルサイト大手「ふるさとチョイス」の災害支援特設ページで、熱海市への寄付が15日までに計1億3千万円を超え、発生から短期間で多額の寄付が寄せられている。2016年の熊本地震の際に注目されたふるさと納税の仕組みを使った支援が被災自治体をいち早く応援できる方法として定着し始めた。

「ふるさとチョイス」の災害支援特設ページ(7月15日時点)。熱海市への寄付が計1億3000万円を超え、応援メッセージも寄せられている
「ふるさとチョイス」の災害支援特設ページ(7月15日時点)。熱海市への寄付が計1億3000万円を超え、応援メッセージも寄せられている
 熱海市が土石流発生翌日の4日午後4時ごろに特設ページで寄付の受け付けを始めると、続々と申し込みがあり、5日夜に早くも2千万円を超えた。ツイッターなどの会員制交流サイト(SNS)でページが拡散されたことや、クレジットカードで手続きが済むことが多くの寄付を集める要因となっている。
 ふるさと納税の災害支援の利点は、寄付金の集まりやすさだけではない。
 特設ページでは被災地以外の自治体が寄付金の受け付け業務を代行する「代理寄付」の仕組みが構築されている。被災地の事務負担を軽減し、住民の安全確保や復旧・復興のための業務に人員を充てることができる。2016年の熊本地震で茨城県境町がふるさとチョイスに専用ページを設けたことが先駆けとなり、これまで100を超える自治体が代理寄付の業務を引き受けた。自治体間の公助が広がっている。
 今回の熱海市への支援においても5日、茨城県境町が真っ先に代理寄付ページを開設した。同町ふるさと納税推進室の栗原千恵さんは「発生直後の方がより多くの方にご協力いただける。いち早く開設し、少しでも被災自治体の負担を減らすことで、住民のケアに時間を使ってもらえれば」と理由を語る。他に岐阜県下呂市や広島県呉市なども代理寄付のページを開設している。
 寄付には通常のふるさと納税のような特典を提供しない自治体が多い。ふるさとチョイス広報の飯田佳菜子さんは「コロナ禍でボランティアは受け入れに制限がある。それでも被災地の力になりたいという人の思いを届けられるよう努めている」と話した。
 〈2021.7.15 あなたの静岡新聞〉

支援の輪、海外にも 被災者でもある中国人男性徐さん 母国から寄付募る

 「私は生きているし、まだ若い。頑張れば何とかなる」―。熱海市伊豆山の土石流で倒壊したわが家の方角を見つめながら、中国籍の徐浩予さん(28)は気丈に語った。市内のホテルで避難生活を続けている徐さんは、同じ境遇の被災者を支援しようと、母国や在日中国人から義援金を募ろうと立ち上がった。

土石流の被災者支援に向けた思いを語る徐浩予さん=熱海市伊豆山
土石流の被災者支援に向けた思いを語る徐浩予さん=熱海市伊豆山
 2015年に来日し、熱海の美しい海や文化に憧れて6月下旬に東京から移住した。その約1週間後、土石流は発生した。外出していて命は助かったが、土石流の起点に近い山間部にあった自宅は真っ先に被災したとみられる。手元に残ったのは財布とスマートフォン、そして民宿を営もうとして購入した家の鍵だけ。翌日の新聞の写真で、わが家の惨状を知ったという。
 移住したばかりの徐さんは、住民票を東京から熱海に移していなかった。「市役所に相談しても『東京の区役所に相談した方がいい』と言われた」。その後、地元市議らの助けで市が用意した避難所のホテルに入り、罹災(りさい)証明書を得ることができた。
 災害時の混乱があったとはいえ、市の対応に「ショックを受けた」という徐さんだが、「熱海のことは嫌いにはならない。むしろ助けてもらった恩返しがしたい。東京では1人もいなかった日本人の友達もできたから」と前を向く。新型コロナ感染が母国で拡大した際、日本からマスクなど多くの支援物資が届いたことも恩義に感じているという。
 発生から1カ月余り。徐さんは日中友好団体や在日中国人に協力を呼び掛けて、義援金募集を始めた。災害ボランティアとして、復旧活動にも尽力するつもりだ。「災害に国籍や住民票は関係ない。熱海にいる中国人として精いっぱい活動したい」と語った。
 〈2021.8.10 あなたの静岡新聞〉