イシバシプラザ閉店 変わる沼津の街並み
沼津市の商業施設イシバシプラザが閉店し、市中心部のにぎわい拠点がまた一つ、姿を消しました。かつて静岡県東部の商都と呼ばれた沼津ですが、駅周辺の大規模施設が相次いで撤退し、繁華街の顔ぶれはここ10年で大きく変化しました。これまでの変遷と、将来の展望についてお伝えします。
〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・尾原崇也〉
イシバシプラザ 43年の歴史に幕 中核テナントのイトーヨーカドーも撤退
沼津市高島本町の商業施設イシバシプラザが22日、閉店した。開業当初からの中核テナントだったイトーヨーカドー沼津店も同時に撤退し、かつて静岡県東部の商都と呼ばれた市中心部のにぎわいの拠点だった施設がまた一つ、姿を消した。
イシバシプラザは1978年、石橋製糸(現石橋生絲)の工場跡地に開店した。総売り場面積約2万2500平方メートルのほぼ半分をイトーヨーカドーが占め、残る半分は専門店が入居していた。県内ショッピングモールの先駆けとして、90年代頃まで丸井沼津店(2004年閉店)、西武沼津店(13年閉店)などとともに市繁華街の商業活動の中心を担った。
イシバシプラザ関係者によると、施設の老朽化などから閉店を決めた。跡地利用について検討中としている。
〈2021.8.23 あなたの静岡新聞〉
2013年に西武沼津店閉店 施設跡に複合施設「ラクーン」開業、お笑い劇場入店
JR沼津駅南口の西武沼津店(沼津市大手町)が31日(※2013年1月31日)、閉店した。1997年の浜松店、2006年の静岡店に続く閉店で、県内から「SEIBU」の看板が消えた。商都・沼津のシンボルとして君臨した県東部唯一のデパートは55年の歴史に幕を下ろし、多くの市民が別れを惜しんだ。
31日は過去10年で最高の3万人が来店した。婦人用小物を目当てに来た沼津市の神原裕子さん(65)は「子供の入園式など節目には必ず、西武で必要なものをそろえた。安心して買い物ができる店だった」と話した。
沼津店は旧西武百貨店が1957年、地方第1号店として開業した。「沼津で東京のお買いもの」が当時のキャッチフレーズだった。ピークの92年2月期は約206億円を売り上げた。しかし、郊外型商業施設の台頭などで2012年2月期は74億円まで縮小。10年2月期から3期続けて赤字を計上していた。
〈2013.2.1 静岡新聞朝刊〉
■静岡県内初 吉本興業の常設劇場オープン
不動産や商業施設の運営、管理などを手掛ける浜友商事・浜友グループ(浜松市、大石恵司社長)は8日(※2014年4月8日)、JR沼津駅南口前の旧西武沼津店新館(沼津市大手町)を複合商業施設「沼津RAKUUN(ラクーン)」として11日に開業すると発表した。沼津ラクーンは地上8階、地下2階。遊戯、娯楽、物販、飲食などの店舗が入る。
地下1階から地上2階まではパチンコ、パチスロ店で、11日に営業を始める。その他の店舗は6~7月に順次オープンする予定。4階には、よしもとクリエイティブ・エイジェンシーと浜友グループが共同運営する「沼津ラクーンよしもと劇場」が静岡県内に初進出する。
飲食店は地上1階にコーヒーショップ、5階にラーメン専門店が入店する。この他、園芸用品や楽器の販売店、カラオケ店、子ども向けの室内遊園地なども入る。屋上には沼津市の景勝地「千本松原」をイメージした入場無料の庭園を設ける。
解体された旧西武沼津店本館の跡地の一部は、飲食やレジャー業などの雄大(沼津市、土屋雄二郎社長)がにぎわいを創出する広場として運営する。
西武沼津店の閉店は昨年1月。栗原裕康市長は「駅前の潜在能力を生かした集客に期待したい」と話した。
〈2014.4.9 静岡新聞朝刊〉
郊外に大型商業施設開業 ららぽーと沼津 中心街空洞化に拍車も
沼津市東椎路の国道1号沿いに4日(※2019年10月4日)、県東部最大級の大型商業施設「ららぽーと沼津」が開業した。早朝から大勢の人が詰め掛け、開店とともに新しく誕生した約6万4千平方メートルの館内を巡り、買い物を楽しんだ。
式典には頼重秀一市長やCMに出演する女優木村佳乃さんらが訪れた。木村さんは「沼津は食べ物がおいしい。施設内に子ども向けスペースがあるのも、家族連れには助かる」とアピール。関係者がテープカットして開業を祝った。
同日午前1時から、一番乗りでオープンを待ったといういずれも市内の会社員高橋博英さん(22)と矢田光次さん(22)、高橋優生さん(23)のグループは「数カ月前から楽しみにしていた。県内外から多くの人が訪れ、地域活性化の拠点施設になってほしい」と期待を込めた。
衣料や飲食、シネマコンプレックスなど217店舗のテナントで構成。このうち119店舗が県東部初進出で、地元飲食店なども入居する。30キロ圏内を商圏に設定し、開業後1年間で総売上320億円を見込む。
〈2019.10.4 静岡新聞夕刊〉
動き出したJR沼津駅付近の鉄道高架事業 中心市街地再生の起爆剤となるか
JR沼津駅付近鉄道高架事業は、沼津市原地区の新貨物ターミナル移転用地の収用を終え、本格的に動き出す。構想から30年余り。社会状況が変わる中、元地権者ら地元住民の思いやまちづくりの方向性を探る。
「まちづくりの顔となる事業。機会をしっかりと捉え、地域発展につなげる」。JR沼津駅付近鉄道高架事業に伴う新貨物ターミナル整備を巡り、全ての移転用地収用が完了した19日。沼津市の頼重秀一市長は市の活力再生へ強い決意を口にした。県東部の“商都”と呼ばれたかつての活気を取り戻せるのか―。事業が動くことで、市民の関心は今後のまちづくりに移る。
構想浮上から30年以上が経過し、同市を取り巻く環境は大きく変わった。人口は2015年に20万人を割り、駅周辺の大型商業施設の撤退が相次いだ。ここ数年の公示地価では、商業地の市町別最高価格地点(同市大手町)順位が隣接の三島市を下回っている。
衰退が目立つ中、鉄道高架を含む6事業で構成する沼津駅周辺総合整備事業は、中心市街地再生への切り札として期待されてきた。高架事業で南北市街地の一体化や鉄道跡地を利活用し、中心市街地を大きく造り変える。駅南の沼津仲見世商店街で紳士服店を営む渡井篤紀さん(60)は「鉄道高架はゴールではなく、まちを総合的に発展させるためのきっかけ。効果的な開発を行うことが大切」と事業の進展を注視する。
市は昨年度、総合整備事業が完了する20年先を見据えた「中心市街地まちづくり戦略」を策定し、駅周辺を「ヒト中心の空間に再編する」とのビジョンを打ち出した。鉄道高架で生じる車両基地(2~3ヘクタール)と貨物駅(2ヘクタール)の跡地、高架下(4・7ヘクタール)の用途についても初めて活用法を提示し、市役所や医療機関、商業施設などを候補に挙げた。貨物駅跡地には防災公園などの整備を検討し、どのような機能が導入可能か事例調査を進めている。
市民にとって「生み出された空間に何ができるか」は大きな関心事だ。ニーズを見極め、早期に具体像を示すことが期待感の高揚につながる。
長い空白期間を経て前進した、787億円を投じる巨大事業。頼重市長はSDGs(持続可能な開発目標)やスマートシティー、アフターコロナなど、まちづくりを進めるための最新のキーワードに注目する。「最前線の取り組みを実行するチャンスを得た」。時流を捉えたまちづくりに挑戦する姿勢を強調してみせた。
〈2021.2.21 あなたの静岡新聞〉