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コロナ重症化防ぐ 抗体カクテル療法

 静岡県内の新型コロナウイルス新規感染者は、連日過去最多を更新しています。そのような中、県は重症化予防に効果があるとされる抗体カクテル療法の体制整備を急いでいます。抗体カクテル療法とは。現在の感染状況は。記事4本をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・石岡美来〉

抗体カクテル療法の体制整備急ぐ

 静岡県内で18日、590人の新型コロナウイルス感染が確認された。2日連続の最多更新で、17日の435人を大きく上回った。県は現状のペースで入院患者が増えた場合、コロナ対応病床は2週間後に埋まるとの試算を明らかにした。重症化予防に効果があるとされる抗体カクテル療法の体制整備と酸素ステーションの開設を主に宿泊療養施設で急ぎ、症状が悪化して入院に転じる人の数を抑える方針。

静岡県内の新型コロナウイルス感染者(18日現在)
静岡県内の新型コロナウイルス感染者(18日現在)
 県は各病院に協力要請し、病床確保を進めている。9月初旬までに段階的に635床を確保できる見通しだが、感染力の強いインド由来のデルタ株の影響で感染者数の急激な伸びがこれを上回り、試算では同2日ごろには満床になる。
 県によると、抗体カクテル療法は2種類の中和抗体を組み合わせた点滴薬を投与する治療法。医師が宿泊療養施設で稼働させる。酸素ステーションは酸素投与が必要な中等症患者に治療を行える体制を整える。宿泊療養施設のほか、県有施設などでの開設も視野に入れる。静岡市と焼津市では新たに計2件のクラスター(感染者集団)が発生した。静岡市は清水区の製造業の事業所で社員10人が、焼津市は事業所で従業員5人が感染した。
 静岡市と浜松市の新規感染者は2日連続で過去最多を更新。発表件数はそれぞれ137人と141人だった。
 県は16日に公表した1人を感染者から除外し、県内の累計感染者数は1万5600人(再陽性者を含め1万5601人)になった。
〈2021.8.19 あなたの静岡新聞〉

抗体カクテル療法とは? Q&A

Q 抗体カクテル療法とは。

A 「カシリビマブ」と「イムデビマブ」と呼ばれる、新型コロナウイルスに対する2種類の中和抗体を組み合わせ、点滴する治療法です。

Q 対象になる患者は。
A 基礎疾患などの重症化リスクがあり、酸素投与をしていない患者です。軽症から中等症に相当します。

Q 効果は確認されていますか。
A 海外の臨床試験では、入院や死亡のリスクが約7割減少しています。基礎疾患があり、重症化リスクの高い軽症者や中等症の患者に投与することで、重症化を防ぐ狙いがあります。

Q 子どもや妊婦、高齢者は治療を受けられますか。
A 子どもを対象にした臨床試験は実施しておらず、使用例もないため投与は推奨されていません。妊婦は、治療の有益性が新型コロナウイルスの重症化リスクを上回ると判断される場合のみ受けられます。高齢者は、状態を慎重に観察しながらの治療となります。自宅や高齢者施設での使用は対象外です。

※厚生労働省などの資料を基に作成

宿泊療養施設は静岡県内6カ所

 静岡県は9日(※7月)、新型コロナウイルス患者の県内6カ所目の宿泊療養施設として掛川市亀の甲の東横イン掛川駅新幹線南口を確保したと発表した。12日に稼働を開始する。

新型コロナウイルス患者の宿泊療養施設として協力する東横イン掛川駅新幹線南口=9日午後、掛川市亀の甲
新型コロナウイルス患者の宿泊療養施設として協力する東横イン掛川駅新幹線南口=9日午後、掛川市亀の甲
 総客室数130室のうち、事務局や控室、物品置き場などを除いた99室を療養者用客室として活用する。これにより県内の療養者用客室は既に稼働している裾野市、富士市、静岡市葵区、浜松市中区、同市北区の5施設と合わせて735室となる。県新型コロナ対策課は感染爆発を想定して進める宿泊療養施設確保を「一定のめどが付いた」としている。
 掛川市の施設は軽症者、無症状者のほか、すぐに入院の必要がない中等症患者も受け入れられるようにする。医師が患者の急変に速やかに対応できる機能を整える方針。
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〈2021.7.9 あなたの静岡新聞〉

家族が発症するとほとんど感染 デルタ株の脅威

 倉井華子・静岡がんセンター感染症内科部長

 この1週間をみると医療機関や介護老人保健施設、事業所、飲食店などでクラスターが出始め、追跡できなくなっている。最近は特に、帰省に伴って家族に感染が拡大した事例が多い。デルタ株は既存株より3~4倍の感染力があるとされ、一緒に生活する家族が発症すると、ほとんど感染している。
 県内の医療体制の状況は厳しさを増し、入院できない人も出始めている。患者の年齢層は多様化し、肥満の人の重症者も目立つ。酸素飽和度が下がってもベッドを用意できないなど、これまでの入院対象者がホテルまたは自宅待機になるパターンが増えている。たらい回しとまではいかないが、病床は非常に逼迫(ひっぱく)し、これ以上感染者が増えると、残念だが命を失う事例も増えそうだ。
 夏休みや帰省シーズンの今は、人の移動による影響が大きい。緊急事態宣言の発出により、首都圏での感染拡大が落ち着くこと、他県からの人の移動や人との接触機会が減ることを期待している。これから始まる新学期では、学校生活自体より放課後の過ごし方によって拡大するケースが多いと予想される。
 今後の対策としてはできる限り打てる人からワクチンを接種することや、これまでの感染対策を継続し、可能な限り人と会う機会を減らすことが必要。全ての事業所に、感染者が出た際に周囲が共倒れにならない方法を探ってほしい。休憩室や飲食の場、乗り合わせた車での長時間移動など感染リスクが高い状況や事例を分析し、見直してほしい。
〈2021.8.19 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞