「まん延防止」適用 生活への影響は
新型コロナウイルス感染が急拡大している静岡県東部、静岡、浜松両政令市の計22市町に8日から31日までまん延防止等重点措置が適用され、飲食店と大規模集客施設は時短営業、酒類提供は終日禁止となります。関係者の受け止めは。県民の生活への影響は。情報をまとめました。
〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・尾原崇也〉
飲食店の酒類提供禁止 悪質違反には過料 営業は午後8時までに
静岡県は6日、新型コロナウイルス感染症対策本部員会議を開き、感染が急拡大している県東部と静岡、浜松両市の計22市町にまん延防止等重点措置を適用することを決めた。期間は8~31日。飲食店や千平方メートル以上の大規模集客施設に営業時間の短縮を要請し、酒類の提供は終日禁止する。要請に応じた飲食店には協力金を支払う一方、悪質な違反があった場合は20万円以下の過料を徴収する。
大規模集客施設はショッピングセンターやパチンコ店、スーパー銭湯などが該当する。食品や医薬品などの売り場は要請の対象外。イベント会場の営業も午後8時までだが、イベント時は午後9時まで認める。
川勝平太知事は臨時記者会見で、感染状況によっては対象区域に市町を新たに追加したり、解除したりする考えを明らかにした。本県の感染状況について国の指標で最も深刻なステージ4(爆発的感染拡大)、県独自の警戒レベルで最も重いレベル6(厳重警戒)にそれぞれ引き上げた。
伊豆市のベロドロームで開催されている東京五輪の自転車競技は、最終日の8日まで観客を入れた対応を取る。パラリンピックの聖火リレーに関しては、来週中に開催予定の実行委員会で対応を決める。
措置適用の飲食店・施設、思い複雑 「経済回るのか」「要請、これで最後にして」
静岡県への「まん延防止等重点措置」適用を前に、県は6日、措置地域の静岡、浜松の両政令市と東部全市町の計22市町について、飲食店での酒類の提供を終日禁止し、百貨店など大規模集客施設と飲食店に営業時間の短縮を要請すると決めた。「仕方がないこと」「地域経済は回るのか」。関係者の思いは複雑に交錯した。
下田市の料理店「花水季」の店主中西孝志さん(72)は「お酒を楽しんでもらう営業を続けてきたので、お客さんへの申し訳なさを感じる」と吐露。「コストを考えると営業しない方がいいのかもしれないが、地域経済のために店を開けたい気持ちが強く、痛しかゆし」と話す。
松坂屋静岡店は7月以降、全館の営業時間を午後7時までとしてきた。一部で午後10時までだったレストラン街の営業を午後8時までに短縮する。担当者は「時短そのものより、お客様の自粛マインドによる影響があるかもしれない」と警戒。新静岡セノバは全館の営業時間を原則午後8時までにするが、生活必需品を扱うスーパーは午後9時まで、ドラッグストアは午後10時まで営業する。
浜松駅ビル「メイワン」を運営する浜松ターミナル開発は飲食店フロアの閉店を早め、全館の営業を午後8時までとする方針。「夏休みに入って人の流れが戻りつつある中で影響は大きいが、感染防止が最優先」と担当者。遠鉄百貨店もレストラン街の閉店を午後8時にし、期間中はビアガーデンの営業を中止するという。
沼津市の沼津・湯河原温泉万葉の湯は館内の飲食営業での食材ロスを防ぐため、9日までは通常営業を続ける方針。10日からは飲食営業を午後8時までに短縮し、酒類は提供しない。温泉施設については対応を協議中。新田和弘支配人(45)は「ワクチン接種も進んでいる。最後の要請になると信じて頑張るしかない」と前を向く。
要請対象外となる床面積千平方メートル以下の施設も影響を懸念する。「浜松市民映画館 シネマイーラ」の榎本雅之館主(68)は「規模にかかわらず、お客さんが来なくなるのは目に見えている」と指摘する。
各地で「中止」「延期」相次ぐ 警戒レベル「6」引き上げも影響
■夏休み中の部活は「少人数、短時間で」 静岡県教委が通知
「レベル5」の段階で部活動は原則自校内の活動に制限していたが、さらに厳しい対応を求めた。レベル6では宿泊を伴う学校行事も中止や延期とし、校内での行事開催は「三つの密を全て避ける」ことを条件とする。部活動の大会参加は、主催者の開催判断と感染症対策に従う。
健康体育課は、過去に学校で発生した感染事例から「部活動は競技そのものより、前後の着替えや飲食などの場面での感染リスクが高い」と警鐘を鳴らす。夏休み明けの授業再開については、まん延防止等重点措置の効果や県内の感染拡大状況を見ながら、教室の密回避や時差登校の導入なども検討するとしている。
■全国茶品評会 延期を決定 静岡で開催予定
静岡市葵区の静岡茶市場で24~27日に予定されていた茶づくり日本一を競う第75回全国茶品評会(全品、全国茶生産団体連合会など主催)の延期が6日までに決まった。全国的に新型コロナウイルス感染が再拡大していることを踏まえての措置。関係者が明らかにした。
延期後の開催時期などは未定で今後、関係機関が協議して決定する。
全品の県内開催は3年ぶりで、24~26日の審査会を経て、27日に最高賞にあたる農林水産大臣賞など各賞を決める予定だった。県内からは149点の茶が出品されている。
開催に協力するJA静岡経済連は「状況を注視しつつ、開催に向けて努力していく」としている。
■沼津市は海水浴場閉鎖 井田、大瀬、御浜の3カ所
まん延防止等重点措置の対象区域となった沼津市は6日、現在開設中の井田、大瀬、御浜の3海水浴場を8日から閉鎖すると発表した。
■対象区域の賀茂地域、海水浴場閉鎖や施設休業相次ぐ
東伊豆町は7日から当面、熱川YOU湯ビーチ、熱川シーサイドプール、磯シーガーデンイケジリ、池尻海浜プールの4施設を閉鎖する。
南伊豆町は8日から31日まで、温泉施設の銀の湯会館を午前10時~午後8時の時短営業とし、酒類提供を取りやめる。感染拡大を受け、既に休業している武道館などの町有施設は31日まで休業期間を延長する。弓ケ浜、子浦の両海水浴場は開設を継続する。
河津町は、感染拡大を受けて既に休業している河津バガテル公園や踊り子温泉会館などの休業期間を31日まで延長する。今井浜海水浴場は、9日までは開設を継続し、10日に今後の開設可否を協議する。
■焼津海上花火延期
焼津海上花火大会実行委員会は6日、14日開催予定だった本年度の花火大会について延期すると決めた。
今後の開催日程については、コロナの感染状況を見ながら判断するという。海上花火大会は昨年、新型コロナの影響で中止していた。
■牧之原市 対象地域からの海水浴場来訪禁止
牧之原市の海水浴場運営委員会は6日、臨時の分科会を市内で開き、重点措置の対象地域から静波海水浴場とさがらサンビーチへの来訪を禁止することを決めた。期間は、重点措置が適用される8~31日。
海水浴場の開設は続ける。緊急事態宣言が出ている地域に加え、重点措置が適用される県東部の市町や静岡、浜松両市からの来訪も禁止する。各海水浴場に数カ所あった海岸駐車場の入り口を1カ所に限定し、居住地の確認を徹底する。駐車場での車両ナンバーの確認も強化する。
静岡市長は「酒類の提供禁止不要」との認識 県に回避申し入れ
田辺信宏静岡市長は6日の定例記者会見で、新型コロナウイルスまん延防止等重点措置の適用に伴う酒類の提供禁止は不要との認識を示した。「市内では飲食店が感染拡大の大きな要因になっていない」と理由を説明した。
(記事はいずれも2021年8月7日あなたの静岡新聞から)