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話題豊富 元気です岳南電車

 富士市の吉原駅から岳南江尾駅を結ぶ計10駅約9.2キロの地方鉄道「岳南電車」。主力の貨物輸送が2011年度末に廃止、一時は経営危機に立たされましたが、工夫を凝らした企画で県内外の鉄道ファンを引き付けています。地域との連携も深めています。最近の事例をまとめてみました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・松本直之〉

電気機関車の勇姿再び 8月「がくてつ機関車ひろば」開設

 富士市の岳南電車(通称・岳鉄)の岳南富士岡駅に保管している電気機関車4台を展示する「がくてつ機関車ひろば」が8月21日にオープンする。県内の塗装職人が7月に車体を塗り直し、さび付いた機関車が現役時代の姿を取り戻した。

県内の塗装職人の手で元通りの外観を取り戻した電気機関車=富士市の岳南電車岳南富士岡駅
県内の塗装職人の手で元通りの外観を取り戻した電気機関車=富士市の岳南電車岳南富士岡駅
 電気機関車は沿線の製紙会社の貨物輸送を担ってきたが、2012年に貨物輸送を廃止し、同駅に置いたままになっている。
 製紙のまち富士市の歴史を物語る電気機関車の活用を期待する地元の声も受け、コロナ禍で利用客が落ち込む中、新たな観光資源として、岳鉄が公園整備を始めた。車体の塗り直しのほか、今後、一部の機関車は汽笛や前照灯を使用できるよう整備する。周辺にウッドデッキなどを設け、夜間はライトアップする計画で、8月中に整備を完了させる方針。
 電気機関車は最古の「ED291」は1927年(昭和2年)製造。28年(同3年)製造の「ED501」と1960年代製造の「ED402」と「ED403」は貨物廃止まで現役で活躍した。
 長い年月に何度も塗り重ねられた塗装が茶色くさび付いた車体を元に戻す作業は、塗装会社のボランティア団体「塗魂(とうこん)ペインターズ」の県内業者が無償で請け負った。下地を2回、表面も2回塗り直し、ED291、501は漆黒の車体を取り戻した。ED403は赤色の車体とともに大昭和製紙のロゴマークも入り往年の姿に復活を遂げた。地元塗装会社の山本宏一さん(46)は「古い塗膜が重なり作業は大変だった。職人の仕事が地元の活性化につながるのはうれしい」と話した。
 〈2021.7.13 あなたの静岡新聞〉
 ※記事内容は掲載日時点

4月には廃止側線復旧「運転体験プロジェクト」で注目呼ぶ

 富士市の岳南電車(通称岳鉄)が7000形車両入線25周年を記念した「運転体験プロジェクト」を始動させた。22日からクラウドファンディング(CF)で800万円の資金を募り、廃線となった線路の復活を目指す。新型コロナウイルスの影響で2020年度の乗降人員、売上高が創業以来最低となる中、新たな時代に合った観光商品で起死回生を図る。

運転体験プロジェクトをPRする岳鉄職員=富士市内
運転体験プロジェクトをPRする岳鉄職員=富士市内
 岳鉄の起点となる吉原駅西側には2012年3月末に廃止された貨物輸送用の側線「吉原駅貨物線1番」が残存する。10年近く整備されずにレールはさび付いて枕木は朽ち、草で荒れた状態。かねて運転体験の要望は多数あったが、唯一実現の可能性がある約200メートルの側線復旧への投資は現状難しく、資金募集に懸けた。
 目標金額に達した場合に支援者が得られるリターンは多彩な19品目。ファンならずとも魅力的なお返しを用意した。最高額200万円(1口)でJR吉原駅ホームに面した岳南電車吉原駅壁面へのメッセージ(広告)掲載でき、15万円の寄付でひと足早く運転体験できる権利を10口用意した。記念グッズや中古部品に加え、「ナイトステイホームの貸切開催」(30万円、4口)、「オリジナルヘッドマーク掲出」(8万円、16口)、「貸切の駅員、駅長体験」(5万円、10口)なども注目される。
 同社はコロナ禍を乗り切るため、運転士発案で夜間に停車した電車内に宿泊できる「ナイトステイホーム」や終電後に線路上を探検する「ナイトウオーク」など奇抜な企画を実現してきた。岳鉄担当者は「かなり高額で無謀な挑戦だが、運転体験が可能になれば今後の観光の目玉になる」と実現に期待する。
 寄付は6月15日まで募る。目標金額に達した場合は11月にプレイベント、12月に運転体験を開始する予定。
 〈2021.4.17 あなたの静岡新聞〉
 ※記事内容は掲載日時点

シーラックとコラボ 「バリ勝男クン。」つけナポ味開発も

 焼津市のシーラックと富士市の岳南電車(通称岳鉄)が協力して開発した、人気のかつおぶしチップの新商品「ナイトバリ勝男クン。富士つけナポリタン味」(税込216円)が5月1日から富士市内で発売される。発売日には地元の吉原商店街で特設会場を設け、ラッピング電車が運行を始めるなど地元を挙げたPRを展開する。

夜景電車をイメージした新商品をPRする古郡さん=富士市内
夜景電車をイメージした新商品をPRする古郡さん=富士市内
 新商品は、市民団体「富士つけナポリタン大志館」の協力で「つけナポ」の風味を再現した。岳鉄名物の夜景電車をイメージしてチップをイカスミで黒く仕上げ、ピーナツやごまを工場のともしびに見立てた。キャラクターが仲良く登場するパッケージも色彩で夜景を表現した。
 これまでコーヒーやミネラルウオーターをグッズ化してきた岳鉄がシーラックに依頼し異色のタッグが実現した。シラス味や焼きそば味など10種類ほどの提案があった中、岳鉄の地元の人気ご当地グルメに白羽の矢を立てた。試作を何度も重ねてトマトやチーズのうま味を出し、つまみやおやつとしても楽しめる味に仕上がった。
 開発に関わった岳鉄の古郡真帆さんは「つけナポの味を存分に感じられる出来上がり。『ナイトバリ勝男クン。』を食べた人がつけナポに興味を持ち、電車に乗って地元の店に足を運んでもらえたら」と期待する。
 5月1日午前10時から、富士市吉原のくぼた園東隣の空き店舗に「吉原宿一の市」特設会場を設け、購入者先着300人につけナポを振る舞う。喫茶店「アドニス」や市内の道の駅、吉原駅、ネットストアでも販売する。
 〈2021.4.24 あなたの静岡新聞〉
 ※記事内容は掲載日時点

地元児童が応援歌 すごいぞ!岳南電車

 富士市立今泉小の児童が地元を走る岳南電車(通称岳鉄)を応援しようと、歌「すごいぞ!岳南電車」を制作した。完成した歌は吉原駅の改札口で毎日午後4時から2時間放送されている。21日に同校を訪れた同社の石井謙一社長に合唱が披露され、石井社長が児童に感謝状を贈った。

元気に自作の歌「すごいぞ!岳南電車」を披露する児童=富士市の今泉小
元気に自作の歌「すごいぞ!岳南電車」を披露する児童=富士市の今泉小
 すごいぞ!岳南電車は、明るい曲調と「岳南、岳南、岳南電車」とのサビのフレーズが印象的な楽しげな歌。昨年度の3年3組の児童28人が意見を出し合って3番まで作詞した。七五調をベースにした歌詞は、1番が岳鉄の魅力、2番はグッズ、3番はイベントをPRしている。作曲も音楽の先生がコード進行を提案し、メロディーを作り上げた。掛け合いのような言葉も児童が考えた。
 同日は、元3年3組の児童が3番まで合唱した。元気いっぱいな歌声が校内に響いた。石井社長は「メロディーがとても耳に残る歌。皆さんの歌に感動した。駅員や運転士も元気になり、通勤通学で利用する人もきっと元気付けられている」と感謝した。児童は「吉原駅で多くの人に聴いてもらえてうれしい」「岳鉄のいいところを知って乗ってほしい」と話した。
 児童らは昨年度、総合学習で同校の目と鼻の先を走る岳鉄を調べた。本吉原駅や岳南富士岡駅にある車庫を見学して社員らと交流し、同社の活動や赤字経営の苦境を知った。
 「近くて遠い存在」だった岳鉄に愛着を持った児童は岳鉄を盛り上げるためにできることを話し合い、3組は1月から歌の制作を始めた。他のクラスが制作したクイズや新聞も吉原駅の待合室に掲示している。
 
 すごいぞ!岳南電車
 (作詞・作曲 令和2年度今泉小3年3組)
 1.岳鉄乗って 旅に行こうよ  
   吉原駅から江尾駅(しゅっぱーつ!)
   いつも親切 駅員さん(にこにこー!)
   乗って楽しい 電車だよ
  ※岳南 岳南 岳南電車
   岳南 岳南 岳南電車
   きっと楽しい岳南電車
 2.岳鉄グッズ 買いに行こうよ
   電車の形のストラップ(かわいい!)
   人形焼きはおいしいぞ(あまーい!)
   買って最高 グッズだよ 
   ※繰り返し
 3.岳鉄乗って イベント行こうよ
   夜景電車やジャズトレイン(のりのりー!)
   車庫体験もできるんだ(びっくりー!)
   やって楽しい イベントだ  
   ※繰り返し 
地域再生大賞