知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

水谷・伊藤ペア㊎おめでとう

 磐田市出身の水谷隼選手(32)と伊藤美誠選手(20)が、東京五輪卓球混合ダブルスで日本卓球界初の金メダルを獲得しました。これまで一度も勝ったことのない最強中国ペアを大舞台で撃破。感動しました! 見事な逆転劇を見せた決勝戦と準々決勝でのドイツペアとの激闘を振り返ります。静岡新聞の保存写真で2人の幼少時の表情やこれまでの歩みの一端もまとめてみました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・鈴木美晴〉
 >東京五輪パラ 特設サイト(話題・日程・速報)

【決勝】隼が支え 輝く美誠

 東京五輪第4日の26日、新種目の卓球混合ダブルスは水谷隼(32)=木下グループ、伊藤美誠(20)=スターツ=の磐田市出身ペアが決勝で中国組を破り、日本卓球初の金メダルに輝いた。

混合ダブルスで金メダルに輝き笑顔を見せる水谷隼(左)、伊藤美誠組=26日夜、東京体育館
混合ダブルスで金メダルに輝き笑顔を見せる水谷隼(左)、伊藤美誠組=26日夜、東京体育館
 ■卓球磐田ペア 日本卓球界初の金メダル
 日本の卓球が、ついに王国・中国の牙城を切り崩した。東京五輪の卓球混合ダブルス決勝が26日、都内の東京体育館で行われ、磐田市出身の水谷隼(木下グループ)・伊藤美誠(スターツ)組が中国の許昀・劉詩雯組をフルゲームの末、撃破。卓球が五輪の正式種目になった1988年のソウル大会以来、初の金メダルを日本卓球界にもたらした。
 これまで一度も勝ったことがない最強ペアを、大舞台で破ってみせた。ただ、水谷はリオデジャネイロ五輪の男子団体決勝で、負け続けていた中国の許昕に、五輪独特の空気の中で一矢を報いた経験があった。「勝ってない分チャンスは大きい」と表現した水谷。その通りになった。
 パワーとスピードを兼ね備えた中国ペア。第1ゲーム、許の強烈なチキータレシーブに伊藤が苦戦、第2ゲームもミスが続いて連取された。ところが第3ゲームは水谷がネットギリギリの低い弾道のドライブなどで許の強打を封じ、伊藤の思い切りの良さが復活。伊藤は強打や変化を付けたバックハンドで挽回した。第4ゲームもラリーで打ち負けず、3ゲームを連取。フルゲームに持ち込まれたが、最後まで攻めの姿勢を貫いた。
 「今までたくさんの五輪や世界大会で中国に負けてきたが、全てのリベンジができた」と水谷。伊藤も「たくさんの応援のおかげで諦めずにやれた」と喜びを爆発させた。
photo01
混合ダブルスで金メダルに輝き抱き合って喜ぶ水谷隼(右)、伊藤美誠組=26日夜、東京体育館

 水谷隼の話 中国という国には世界卓球、オリンピックで負けてきたが、すべてのリベンジが果たせた。3ゲーム目を取れてから流れが来た。
 伊藤美誠の話 すごくうれしい。皆さんのたくさんの応援があって最後まで諦めずにできた。すごく楽しく終えられたので、27日のシングルスに気持ちを切り替えてしっかり備えたい。
 水谷 隼(みずたに・じゅん、木下グループ=卓球混合ダブルス)08年北京五輪から4大会連続出場。16年リオデジャネイロ大会では日本勢初の個人種目表彰台となるシングルス銅メダル。全日本選手権は最多10度制覇。青森山田高、明大出。32歳。磐田市出身。
 伊藤 美誠(いとう・みま、スターツ=卓球混合ダブルス)15歳で出場した16年リオデジャネイロ五輪で団体銅メダル。全日本選手権は18年から2年連続3冠。19年世界選手権個人戦ダブルス銀メダル。世界ランキングが現行制度となった91年以降で日本勢最高の2位をマーク。大阪・昇陽高出。20歳。磐田市出身。

【準々決勝】ドイツペアとの激闘 絆で乗り越える

 水谷・伊藤組が決勝進出を決め、銀メダル以上を確定させた。準々決勝は崖っぷちから奇跡の逆転勝利。ドイツのパトリック・フランツィスカ、ペトリサ・ソルヤ組にフルゲームの末、相手の7度のマッチポイントをしのいで勝利をつかみ取った。勢いをそのままに臨んだ準決勝は、台湾の林昀儒・鄭怡静組を4-1で撃破した。

混合ダブルスで決勝進出を決め喜ぶ水谷隼(右)、伊藤美誠組=25日、東京体育館
混合ダブルスで決勝進出を決め喜ぶ水谷隼(右)、伊藤美誠組=25日、東京体育館
 「最後の一球まで必死に戦う姿を見せたい」。準々決勝の最終ゲームは出だしでつまずき、気付けば2-9と7点差。必死の追い上げも6-10とマッチポイントを握られた。「このまま終わっていいのか」。我に返った水谷の怒濤(どとう)の反撃が始まった。フォアドライブを振り抜いて相手のミスを誘い、レシーブでもチキータで攻めて4連続得点。10-10のジュースに持ち込み、伊藤を鼓舞するかのように雄たけびを上げた。
 「水谷選手の声、表情から諦めない気持ちが伝わってきた」。伊藤の闘志に火が付いた。得意のサーブやバックハンドで得点を重ね、最後は思い切ったロングサーブで決着をつけた。7度のマッチポイントをしのいでの粘り勝ち。思わず涙がこみ上げた伊藤は「水谷選手だから勝てた」と12歳年上の第一人者の執念に感服した。
 準決勝は「やりたい放題。何でも入る気がした」と攻める姿勢を取り戻した伊藤が引っ張り、台湾ペアを圧倒した。26日の決勝で中国ペアと金メダルを懸けて戦う。今まで一度も勝利したことのない最強ペアが相手だが「五輪は何が起こるか分からない」と水谷。伊藤も「試合をするごとに成長している」と持てる力を全てぶつける。
 

【写真特集】水谷隼選手の歩み

photo01
静岡県スポーツ少年団交流大会の男子カブの部を制した水谷隼選手(2000年2月撮影)
 
photo01
国際卓球連盟のワールドジュニアサーキット大会の13歳以下の部で優勝した水谷隼選手(2003年3月撮影)
 
photo01
リオデジャネイロから帰国しSBSテレビの生放送で卓球を披露する水谷隼選手=2016年8月、静岡市駿河区登呂のSBS放送センター
 
photo01
沿道に集まった市民らに笑顔で応える卓球の水谷隼選手(左)と伊藤美誠選手。リオ五輪でのメダル獲得で静岡県内スポーツ界の将来に希望の光をともした=2016年9月、磐田市中泉
 
photo01
東京五輪の混合ダブルス決勝で中国組と対戦する水谷隼、伊藤美誠組=2021年7月26日、東京体育館

【写真特集】伊藤美誠選手の歩み

photo01
全日本卓球選手権カブの部女子で優勝して静岡県教育委員会表彰を受けた伊藤美誠選手(当時・磐田北小4年、2010年12月4日の静岡新聞朝刊)
 
photo01
練習に汗を流す伊藤美誠選手=2011年4月、磐田市内
 
photo01
リオ五輪の銅メダルを磐田市のイメージキャラクター「しっぺい」に付け笑顔をみせる伊藤美誠選手=2016年8月、都内
 
photo01
東京五輪の混合ダブルス1回戦 オーストリア組と対戦する水谷隼(奥)、伊藤美誠組=2021年7月24日、東京体育館
 
photo01
東京五輪の混合ダブルス決勝で中国組と対戦する水谷隼、伊藤美誠組=2021年7月26日、東京体育館

地域再生大賞