知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

高校野球 4強出そろう

 全国高校野球選手権静岡大会7日目は、準々決勝4試合が行われ、4強が出そろいました。熱戦が続いた24日のダイジェストをお届けします。準決勝は磐田東―静岡、東海大翔洋―掛川西の組み合わせで26日に行われる予定です。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・尾原崇也〉

磐田東、第1シード藤枝明誠に競り勝つ 翔洋、シード校連続撃破

 第103回全国高校野球選手権静岡大会第7日は草薙、清水庵原の両球場で準々決勝を行った。第5シードの磐田東は、第1シードで秋春王者の藤枝明誠を5―2で下し、10年ぶりの4強入りを果たした。東海大翔洋は桐陽を8―4で振り切り、4回戦(22日)の浜松工に続くシード校撃破で8年ぶり準決勝進出。掛川西は島田商を、静岡は富士市立をともに7―0の七回コールドで破った。準決勝の磐田東―静岡、東海大翔洋―掛川西は26日、草薙で行う。

藤枝明誠―磐田東 3回裏磐田東2死三塁、植田の右前適時打で三走の石川がホームイン。2-1とする。捕手・萩原=草薙球場
藤枝明誠―磐田東 3回裏磐田東2死三塁、植田の右前適時打で三走の石川がホームイン。2-1とする。捕手・萩原=草薙球場

▽草薙球場
磐田東5―2藤枝明誠
静岡7―0富士市立(7回コールド)
▽清水庵原球場
掛川西7―0島田商(7回コールド)
東海大翔洋8―4桐陽

■26日の試合(準決勝)
▽草薙球場
磐田東―静岡(10時開始)
東海大翔洋―掛川西(12時30分開始予定)

 

藤枝明誠 打線波に乗れず、悔し涙 磐田東は10年ぶり4強

藤枝明誠―磐田東 試合終了後、うなだれながらベンチへ引き上げる藤枝明誠の選手たち=草薙球場
藤枝明誠―磐田東 試合終了後、うなだれながらベンチへ引き上げる藤枝明誠の選手たち=草薙球場
▽準々決勝(草薙第1試合)
藤枝明誠 010000010―2
磐田東  00201020×―5
▽本塁打 川瀬(藤)
▽三塁打 石川優(磐)▽二塁打 大岩、宮城、萩原(藤)植田、冨田(磐)▽守備妨害 宮城(藤)
▽試合時間 2時間22分

 【評】磐田東が勝負強い打撃を見せ、3季連続の頂点を狙う第1シードの藤枝明誠を下した。
 磐田東は1点を追う三回、2死一塁から石川優の左中間を破る三塁打で同点、続く植田の右前安打で逆転した。五、七回はともに2死から適時打が飛び出し、着実にリードを広げた。主戦冨田は要所を締める投球で、相手に反撃の糸口をつかませなかった。
 藤枝明誠は残塁12。四回以外は全て走者を出すも、得点に結び付かなかった。


 ■磐田東 逆転打の植田「集中できた」
 「明誠を倒せるのは俺たちだ」。山本監督の試合前の言葉通り、磐田東ナインは優勝候補筆頭の相手に気後れすることなく、実力で勝ち切った。佐野主将は「やってきたことを信じてやれば勝てると思っていた」と納得の表情を見せた。
 今大会初の草薙球場で第1シードが相手ということもあって、選手たちは試合の入り「少し浮足立っていた」と山本監督。ただ、少しずつ冷静さを取り戻し、本来の力を発揮していった。
 三回に逆転の適時打を放った植田は「初打席は緊張からか足が震えた」が、この打席は「集中できていた」とスライダー狙いから高めの直球にしっかりと反応。主戦冨田は中盤まで真っすぐの抜け球が目立ったが、「最少失点を意識し、低めに集めた」と尻上がりに安定感を見せ、度重なるピンチをしのいだ。
 4強入りは10年ぶりで、次戦はその10年前に決勝で敗れた静岡。因縁の相手とも言えるが、佐野主将は「(相手は)意識していない。全員がチームの勝ちのために全力を尽くすだけ」ときっぱり。頂点まであと二つ、一戦必勝で戦い抜く。

 ■秋、春覇者の藤枝明誠 打線が波に乗れず
 昨秋、今春と県を制して3冠での甲子園行きを狙った第1シード藤枝明誠の夏は、準々決勝で終わりを迎えた。悔し涙に暮れる選手たちのそばで、光岡監督は「実力以上に評価され、重圧は計り知れないものがあった。立派な結果を出してくれた」と静かに語った。
 二回に主将川瀬の高校通算35本目となる本塁打で先行した。ただ、その後の打線は三回1死二、三塁の好機を生かせず、八回の無死満塁も1点止まり。「自分たちの課題の攻撃」(川瀬)で波に乗り切れなかった。
 主戦の左腕小林は1巡目まで被安打0とほぼ完璧な内容だった。しかし、直球に狙いを定めてきた磐田東打線に三回2死からつかまり、3連打を許して2失点。その回には左手指に血マメができるアクシデントもあった。最後まで投げきったが、「自分のせいで負けた」とむせび泣いた。

静岡 投打かみ合い富士市立に快勝 1番渋谷、猛打賞の活躍

静岡―富士市立 6回表静岡2死二塁、渋谷が左前適時打を放つ=草薙球場
静岡―富士市立 6回表静岡2死二塁、渋谷が左前適時打を放つ=草薙球場
▽準々決勝(草薙第2試合)
静岡   2130010―7
富士市立 0000000―0(7回コールド)
▽三塁打 渋谷(静)▽二塁打 高須、山岸(静)▽ボーク 滝2(富)

 【評】静岡は投打がかみ合い、富士市立をコールドで退けた。
 静岡は初回、先頭の渋谷の三塁打を皮切りに金子と池田の適時打で2点を先制。三回には相手の失策が絡んで3点を加えた。先発高須は変化球のコントロールがさえ、六回を無失点。相手に流れを渡さなかった。
 富士市立は走者を出しながら打線にあと一本が生まれず。三回は野手に失策が続いて追加点を許し、先発の滝をもり立てることができなかった。


 ■静岡・渋谷 2試合連続の猛打賞
 静岡は投打に充実ぶりを見せ、危なげなく4強入りを決めた。池田監督は「低く強い打球を打ち返す意識が結果につながった」とチームの約束事が身を結んだことを評価しつつ、「6点とってから緩みが見えた」と反省点も忘れなかった。
 打線を活性化させたのは1番渋谷。初回に先制点を呼び込む三塁打を放ち、攻撃に停滞感が見え始めた六回は点差を7に広げる適時打。2試合連続の猛打賞で存在感を示した。「甘い球が来たら初球でも狙っている」。指揮官が求める積極性を表現し、切り込み隊長の役割を果たした。
 先発高須は直球が思い通りに走らない中、感覚の良かった変化球を生かして安定した投球を披露。今大会無失点が続き、「甲子園で勝つことが目標。一戦一戦全力で向かう」と表情を引き締めた。

 ■2年生主体の富士市立 「来年こそ甲子園」
 第4シードの静岡にコールド負けした富士市立。球場の雰囲気や相手の圧にのまれ、最後まで自分たちの野球ができなかった。
 チームは今の2年生主体で1年間戦ってきた。最上級生の滝主将は「下級生の意識の違いがあった」と始動時の苦労を振り返った。それでも徐々に結束力を高めて夏を迎え、4回戦では選抜出場の三島南を下す大金星を挙げた。
 滝主将は悔しさをかみしめ「来年こそ甲子園に行けると信じている」と夢を託した。この日4度の盗塁阻止で貢献した捕手の2年杉山は「経験を糧に新チームを引っ張りたい」と涙ながらに誓った。

掛川西、島田商を寄せ付けずコールド勝ち 打線つながり 2投手で完封リレー

島田商―掛川西 2回表、先制の三塁打を放ち、ガッツポーズする掛川西の中山(左)=清水庵原球場
島田商―掛川西 2回表、先制の三塁打を放ち、ガッツポーズする掛川西の中山(左)=清水庵原球場
▽準々決勝(清水庵原第1試合)
掛川西 0401200―7
島田商 0000000―0(7回コールド)
▽三塁打 中山(掛)▽二塁打 山口(掛)中村(島)
▽試合時間 1時間58分

 【評】掛川西が島田商を寄せ付けず、7―0でコールド勝ちした。
 二回無死一塁で中山が先制三塁打。相手の失策も絡んで4点を先取した。四回は狩俣、五回は中山の適時打などで突き放した。先発榊原は六回を散発3安打無失点に抑え、最終回に登板した沢山は2安打を打たれたが、3三振を奪った。
 島田商は二、五、六、七回と先頭が出塁したが、三塁に走者を進めることができず無得点に終わった。


 ■掛川西・中山 先制三塁打で口火 チームに勢い
 掛川西の7番中山が、湿っていた打線に火を付けた。二回無死一塁で中越えの先制打を放ち、三塁まで全力で走って頭から飛び込んだ。「4回戦(1―0の清流館戦)は投手に頼って勝ったので、早く点を取って楽にさせたかった。思い切り振っていくことを心掛けた」と中山。その後も敵失に乗じるなど一挙4点を奪った。
 12年ぶりに制した春季東海大会で1回戦、準決勝と2戦連発した中山。大石監督は「東海大会を思い出させる、勇気を与えた一打」。夏は2018年準決勝、19年2回戦で屈した島田商への先制パンチが、チームに勢いをもたらした。
 打線の援護を得た投手陣は榊原、沢山で今大会3度目の完封リレー。3試合ぶり登板の先発榊原は島田一中出身で、当時バッテリーを組んだ島田商の太田光らかつてのチームメートに「絶対甲子園に」と託され、「中学の仲間のためにも」と先を見据えた。

 ■島田商 主戦新木ら 最後まで諦めず奮戦
 掛川西の猛攻に敗戦を喫した島田商だが、8強の投手陣の中で唯一、今大会を1人で投げきった主戦新木らナインは最後まで諦めずに戦い続けた。横山監督は「全試合が決勝戦だった。本当によく頑張ってくれた」と選手の奮戦をたたえた。
 4点のリードを許した二回、ロースコアの接戦を得意としてきたチームに暗雲が垂れこめた。「開き直るしかないじゃないか」と呼びかけた横山監督に、プレーで応えたのは新木だった。
 守備陣の失策などで7失点し打線の援護もない中、投球制限ぎりぎりの133球を投げきった。一枚看板として「周囲の支えで、チームのみんなで勝ち上がってこられた」と話す新木。後に続く1、2年生には「自分たちを超えて、甲子園へ」とエールを送った。
地域再生大賞