体操女子芦川 五輪舞台へ
体操女子平均台のスペシャリスト芦川うらら選手(静岡新聞SBS、常葉大常葉高出)が25日、東京五輪の種目別予選に臨みます。自分の演技で家族やコーチを喜ばせるー。これまで支えてくれた人たちへの感謝の思いを胸に、小さいころから思い描いた夢の舞台に立ちます。
〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・尾原崇也〉
「お姉ちゃんの分まで頑張りたい」 けがで競技断念の姉へ 演技で恩返し誓う
体操女子平均台の個人枠代表で東京五輪の大舞台に挑む芦川うらら(静岡新聞SBS、常葉大常葉高出)。脊椎側彎(そくわん)症の影響で競技を断念した姉の七瀬さん(24)も、同じ五輪の舞台を夢見ていた。「体操を続けたくても続けられなかったお姉ちゃんの分まで頑張りたい」。姉の思いを背負い、25日に有明体操競技場で行われる予選に臨む。
痛みを抱えながらも五輪への思いが強かった七瀬さんは、中学2年時から水鳥体操館(静岡市葵区)に通い始めた。3年時はアジアジュニア選手権個人総合で優勝。五輪出場も期待された。
ただ、症状は悪化するばかり。高校に進学後、医者からは手術を勧められた。「体操よりも普段の生活に支障が出て、学校に行けないこともあった」と母孝子さん(53)。高校3年まで競技は続けたが、五輪の夢を断念せざるを得なかった。
七瀬さんが競技を引退した時、芦川は小学6年生だった。「お姉ちゃんがいなかったら体操をやっていたかも分からないし、五輪を目指していたかも分からない。本当に大切な存在」。七瀬さんの日頃からの支えに感謝し、演技で恩返ししたいと誓う。
いつも身近で見守ってきた七瀬さんは「日本中の誰もが知る大舞台に自分の家族が立てることは誇らしい」と感慨深げ。「自分でつかみ取った権利。出せる力を100%出して楽しんでもらいたい」。無観客試合で会場に駆けつけることはできないが、妹が輝く姿を楽しみにしている。
〈2021.7.24 あなたの静岡新聞〉 ⇒元記事
「静岡から五輪へ」 強い決意 大学進学見送り 水鳥体操館で練習続ける
1年先の大学進学を見送り、自分の原点を見詰め直した。新型コロナウイルスの影響で東京五輪の延期が決まった3月末(※2020年3月)。体操女子の種目別平均台で日本代表入りに迫る芦川うらら(17)は、高校卒業後も所属する水鳥体操館(静岡市葵区)で練習を続け、五輪を目指す決断をした。
1歳から始めた体操。技の難度が上がるにつれて恐怖心が生まれ、ジュニア代表を辞退するなど悔しさも経験した。「体操をやめたいな」。気持ちが沈んだ時、いつも心の支えになったのが母孝子さん(53)と守屋舞夏コーチ(35)だった。
「お母さんは毎日家事と仕事で疲れているのに、富士市の自宅から静岡市まで迎えに来てくれる。舞夏コーチもつらい時に相談に乗ってもらって、自分を理解してくれた」。2人への感謝の思いがあるから、苦しくても競技に向き合える。
成長の証しを示したのが今月の全日本種目別選手権。コロナ禍で大会が相次いで中止になった今年の最大目標だった。「今まで日本の一番になったことがなかった。仮に五輪代表になったとしても、日本一でないと認めてもらえない」
緊張した面持ちで平均台の前に立った。重圧の中、華麗に舞い、着地もぴたりと決めた。14点台の高得点は近年の国際大会で上位入賞に相当する。初めて全日本のタイトルを獲得し、「日本代表として五輪に出場するのに恥じない結果をやっと出せた」と表情を緩ませた。
東京五輪の開催にさまざまな意見が広がっているが、今は自分の演技で家族やコーチらを喜ばせたいと思うだけだ。「ずっと五輪に向けて頑張ってきた。簡単に諦めたくない」。17歳の意志は揺るがない。
〈2020年12月28日付静岡新聞朝刊 〉
中学1年で目標 「東京五輪出場」明言
第37回静岡県ジュニア体操選手権(県体操協会、静岡新聞社・静岡放送主催)は6日(※2015年6月6日)、草薙このはなアリーナで体操男女と新体操男子の団体、個人を行った。体操1部(中学生)の女子は水鳥体操館が9連覇を達成。女子個人総合は、芦川うらら(水鳥体操館)が頂点に立った。
2部(小学生年代)時代からこの大会は3連覇。1部男子の三輪とともに県の東京五輪強化選手に認定され、昨年は全日本ジュニアの平均台で2位に入った実力者だ。
目標を問われると、「東京五輪に出場すること」と即答。あどけなさの残る顔が引き締まった。
〈2015年6月7日付静岡新聞朝刊〉
「今までやってきたこと 正しかったと思える大会に」
待ちわびた東京五輪の切符獲得に一層気が引き締まった。28日(※6月28日)、体操女子の種目別平均台で五輪出場権を獲得した芦川うらら(静岡新聞SBS、常葉大常葉高出)。「今までやってきたことが正しかった思える大会にしたい」と改めて活躍を誓った。
当時は高校2年。練習環境を変えずに五輪を目指そうと、大学進学を見送ることを決めた。小学2年から所属する水鳥体操館(静岡市葵区)で競技を続け「成長できるチャンス」と前向きに励んできた。
ただ、思い通りに練習をこなせない時期もあった。「足を振り上げると痛い」。昨年6月、左足の付け根に痛みが生じた。日常生活でも長時間座っていると痛みは増すばかり。持ち味でもあるジャンプして足を大きく開く技の練習を控える期間が続き、歯がゆさを感じた。「痛くない時に時間が戻ったら良いのにな」。普段は目標に向かって黙々と演技を繰り返すが、珍しく弱音を吐いた。
長引く痛みに悩まされても、水鳥体操館には毎日通った。体の治療に時間を割き、コーチと相談しながらできることに取り組んだ。痛みは徐々に癒え、体操と向き合う時間が増えたことに充実感を覚えた。「五輪という目標があったから1年間頑張ってこられた。進学せず体操に専念することを決断して良かった」。不安もあったが、今では胸を張る。
生まれ育った地元で積み重ねてきた努力が結実し、夢舞台のスタートラインに立つ。支えてもらったコーチや家族ら全ての人に恩返しする心意気で挑む。「自分の一番良い演技をしたい」。勝負はここから始まる。
〈2021.6.29 あなたの静岡新聞〉 ⇒元記事