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五輪開会式 静岡県勢に注目

 東京五輪が開幕しました。開会式で、ドラゴンクエストの「序曲」の音楽とともにギリシャの選手が入場してきたとき、何とも言えない高揚感を得ました。17日間の大会期間中、どんなドラマを見せてくれるのでしょうか。この時間の〈知っとこ〉は、開会式から、静岡県に関する話題を紹介したいと思います。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・尾原崇也〉

静岡県勢 躍動誓う 開会式参加のスケボー・青木(静岡市清水区) 「わくわくしている」

 新型コロナウイルスの影響による1年の延期を経て23日に開幕した東京五輪。静岡県勢をはじめ、日本代表選手は複雑な感情を抱きながら開催を信じ続けてきた。コロナ禍が収まらず、国立競技場での開会式は無観客という異例の形で開かれ、各国選手団は全員マスク姿。「世界中に笑顔と元気を届けたい」「自国開催で最高のプレーを」。入場行進に参加しなかった県勢選手も、ようやくたどり着いた世界最高峰の舞台での躍動を誓った。

手を振って入場行進する日本選手団=23日午後10時半ごろ、国立競技場
手を振って入場行進する日本選手団=23日午後10時半ごろ、国立競技場
 3大会連続出場となった陸上男子200メートル代表の飯塚翔太(30)=ミズノ、藤枝明誠高出=は、五輪延期を機に競技を引退した同世代の選手の思いを背負ってきた。「来年、再来年と続けていれば試合に出場できる。もっと悔しい思いをした人がいると思ったら、下を向いてはだめだと思った」。先行きが不透明な状況でも、常に己を奮い立たせてきた。
 「開催されるかどうか…」。競泳男子800メートルリレー代表の高橋航太郎(27)=自衛隊、静岡東高出=は、練習に集中しながらも、不安な思いがあった。「(開催の可否が)気になるところではあった。何とか開催してもらえてありがたい」と安堵(あんど)した。
 自転車BMX女子フリースタイル・パーク代表の大池水杜(24)=ビザビ、島田工高出=は延期が決まった当初、「楽しみにしていた大会やイベントが中止になって寂しい」と気持ちが沈んだ時期があった。それでも「支えてくれている人々への感謝を示す場所」と考え、金メダルへのこだわりは一層強くなった。
 卓球女子エースの伊藤美誠(20)=スターツ、磐田市出身=は「試合が待ち遠しくてわくわくしている。世界中に笑顔と元気を届けたい」と出場する3種目で金メダルを見据える。
 競技人生の集大成と位置付ける卓球男子の水谷隼(32)=木下グループ、磐田市出身=も「自国開催という二度とない舞台で最高のプレーを披露する」と言い切った。

 ■スケートボード青木 誇り胸に行進
 東京五輪の開会式に、スケートボード・男子ストリート代表の青木勇貴斗(17)=ボードライダーズジャパン、静岡市清水区=が出席した。世界各国のさまざまな競技のトップ選手と同じ地に足を踏み入れ、日本代表の誇りを胸に堂々と行進した。
 スケートボードは東京五輪から採用された競技。昨年は五輪延期や大会の中止が相次いだが、「ライバルとの差を詰める」と自分を高める期間として前向きに練習に取り組んできた。「わくわくしている。男子ストリートチーム最年少を感じさせない滑りでメダルを取りたい」と力強く語り、25日の本番は自分らしい滑りで世界を驚かせるつもりだ。
 テレビで息子の勇姿を見守った父信博さん(49)は「出場できることに喜ぶだけでなく、結果を出すことも大切になるが、普段通り楽しんでもらえば」とエールを送った。

 バレーボール・李博(東レ) 結果を残すため、責任と覚悟を持って戦う。途中出場の場合はチームの流れを変えられるプレーを期待されていると思うので、頭において表現したい。

 野球・岩崎優(清水東高出) 身が引き締まる思い。選んでもらったからには自分の役割を果たし金メダルをとれるよう全力で腕を振る。子どもたちに勇気や元気を届けられるように頑張る。

 バレーボール・藤井直伸(東レ) 後悔がないように全力で戦う。これまで一緒に戦ってきた仲間、この1年の重みを痛感し、夢半ばに五輪という目標を絶たれた人たちの思いも感じて、精いっぱい頑張る。

 セーリング・富沢慎(トヨタ自動車東日本) 本番に向けて計画通りに準備が進んでいる。自分のベストパフォーマンスを出せていると感じている。最後までベストを尽くしたい。

 卓球・平野美宇(沼津市出身) 一日一日を大切に過ごして、自分が今持っている力を全て出し切ることが目標。いい色のメダルを取ることができるように全力で頑張る。
 

写真で振り返る開会式

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聖火をともした最終ランナーの大坂なおみ選手=23日午後11時50分ごろ、国立競技場

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開会式で入場行進する日本選手団=23日午後10時半ごろ、国立競技場

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開会式で入場行進する日本選手団=23日午後10時半ごろ、国立競技場

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聖火がともされ開幕した東京オリンピック=23日午後11時50分ごろ、国立競技場

上原さん(浜松市出身)ピアノで魅了 海老蔵さんとコラボ

 23日夜、東京の国立競技場で開かれた開会式では、浜松市出身のジャズピアニスト上原ひろみさんが演奏を披露した。斬新な映像演出の後、登場したのは同日午後11時半すぎ。歌舞伎俳優の市川海老蔵さんとのコラボで、軽快で迫力ある音色を響かせた。

アトラクションでピアノを演奏する上原ひろみさん
アトラクションでピアノを演奏する上原ひろみさん
 国際的に活躍し、コロナ禍の中、疲弊するライブハウス救済のための公演も続けた上原さん。開会式の大舞台でもメッセージ性ある演奏で魅了した。

藤枝市の宮崎さん プラカード手に選手団先導 大会ボランティア

 藤枝市の会社員宮崎訓年(くにとし)さん(49)が、プラカードを手に選手団を先導した。大会ボランティアとしても準備に携わってきた。「『開催して良かった』の一言が大会後に聞きたい」。開幕を待ちわびた仲間の思いも背負い、祭典の幕開けに一役買った。

宮崎訓年さん
宮崎訓年さん
 「勝っても負けても感動がある」。理屈抜きに心を揺さぶられる五輪のファン。都内での単身赴任中にボランティア募集が重なった。「あの場を体験したい。関わるしかない」と応募した。
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赤道ギニア選手団を先導する宮崎訓年さん=23日午後9時35分ごろ、国立競技場

 新型コロナウイルスで先が見えない中、五輪の存在が励みになった。中止論もささやかれたが「ボランティアの力で開催できるようにしたかった」。活動を通じてつながった100人超のボランティアに呼び掛け、新型コロナで苦しむ選手や医療従事者を応援する動画を手づくりした。
 無観客開催で活躍の場を失った仲間の無念を晴らしたい思いも強い。「観客がいない分、ボランティアが盛り上げた大会と言われたい」。五輪を彩る一員として熱戦の舞台を支える。
地域再生大賞