知っとこあなたにおすすめ

〈 スズキ 脱炭素へ本腰 〉

 スズキが、国内自動車メーカーが連携する商用車研究事業に参加し、軽自動車のEV化、脱炭素化に向けて本格的に動き出しました。温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルは、世界的な課題です。スズキのこれまでの取り組み、先日会長職を引退した鈴木修さんの軽に込める思いなど浜松総局・高松勝記者の記事をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・石岡美来〉

軽EV化、脱炭素化へ トヨタなど5社と連携

 スズキとダイハツ工業は21日、トヨタ自動車といすゞ自動車、日野自動車が連携する商用車研究事業に参加し、商用車を軸にした軽自動車のEV(電気自動車)化、物流業界全体の効率化と脱炭素化に取り組むと発表した。国内軽メーカー上位2社が連携を強化し、次世代技術の活用で温室効果ガス排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルの実現に注力する。

スズキ、ダイハツなど5社連携のポイント
スズキ、ダイハツなど5社連携のポイント
 両社はトヨタなど3社が4月に事業を始めた新会社「コマーシャルジャパンパートナーシップテクノロジーズ」(東京都)に10%ずつ出資する。これまで大型トラック中心だった脱炭素化の枠組みを軽トラックなど軽商用車に一気に広げ、コネクテッドカー(つながる車)など次世代技術による物流効率化を業界全体で加速させる。商用EV開発に向けた技術協力も推進し、将来的には軽乗用車への技術転用も視野に入れる。
 スズキの鈴木俊宏社長、ダイハツの奥平総一郎社長、トヨタの豊田章男社長が同日、オンラインで記者会見した。鈴木社長は「環境に貢献する軽を市場に送り出す使命を果たすためには、単独では難しい」と連携の意義を強調した。具体的なEVの開発、市場投入の目標時期は示さなかった。
 〈2021.7.22 あなたの静岡新聞〉⇒元記事  

「地方の足」協業でさらなる進化決意

 スズキは21日、ダイハツ工業、トヨタ自動車などと軽商用車を軸にした電動化対応で連携する方針を打ち出した。世界的な電動化と脱炭素の波の中で、軽自動車シェアで計約6割を占めるトップ2社が協業を深める態勢が固まった。スズキの鈴木俊宏社長は「軽自動車をさらに磨き上げる」、トヨタの豊田章男社長は「軽をなくしてはいけない」と声をそろえ、「地方の足」とされる軽を次世代技術の活用でさらに進化させる決意を示した。

オンラインでの記者会見後、撮影のために並んだ(左から)トヨタ自動車の豊田章男社長、ダイハツ工業の奥平総一郎社長、スズキの鈴木俊宏社長=21日午後
オンラインでの記者会見後、撮影のために並んだ(左から)トヨタ自動車の豊田章男社長、ダイハツ工業の奥平総一郎社長、スズキの鈴木俊宏社長=21日午後

 同日のオンライン記者会見で鈴木社長は、今後のEV開発でバッテリー開発や充電ステーションなどのインフラ整備を課題に挙げ、「軽自動車という芸術品を極め、未来につなぐことが使命。『下駄の代わりに乗る』という軽の開発を極めたい」と語った。
 商用車全体の約6割を軽トラックなど軽自動車が占める現状も示し、「大型トラックの物流とラストワンマイルを担う小口配送の情報連携が課題。コネクテッド技術で一体化すれば大きな効率化につながる」と脱炭素に向けた軽の役割を強調。ダイハツの奥平総一郎社長も「これまでもスズキと一緒にできることはないか議論していた。大きなシナジー(連携)ができると考えている」と応じた。
 豊田章男トヨタ社長は、6月末に会長を退任したスズキの鈴木修相談役について「軽を日本の国民車に育て上げた『おやじ』」と愛着を込めて評した。その上で、「残された現役がしっかりと仕事をして、(修氏に)『自動車業界、軽のためにいいことをしてくれたね、ありがとう』と言わせたい」と述べた。
 〈2021.7.22 あなたの静岡新聞〉⇒元記事  

新体制は電動技術開発を優先 社長奮起「高品質つくる」

 40年以上にわたりスズキを率いた鈴木修会長(91)の退任が決まった25日(※6月25日)の同社株主総会で、鈴木俊宏社長は「電動化、カーボンニュートラル化に優先的に対応する」と述べ、電気自動車(EV)、ハイブリッド車(HV)の開発に注力する姿勢を鮮明にした。コロナ禍と半導体不足の影響で足元の市場動向は厳しく、環境対応も待ったなしの状況。「今まで以上に高品質の製品をつくる」と株主の質問に答え、“ポスト修”の新体制の奮起を誓った。

株主総会で電動化対応を強く掲げた鈴木俊宏社長=25日、浜松市中区
株主総会で電動化対応を強く掲げた鈴木俊宏社長=25日、浜松市中区
 鈴木社長は、走行時と製造時の二酸化炭素(CO2)排出削減が急務とし、2025年までに電動化技術開発を急ぐ新中期経営計画の方針を強調。資本提携しているトヨタとの今後の電動化に向けた協業については「スズキも全てをオープンにして信頼関係を築き、提携関係を深化させている」と述べた。
 浜松工場(浜松市北区)をモデル工場と位置付け、「カーボンニュートラルを世界中の工場に展開する」と意欲を示した。
 同日付で取締役に就いた山下幸宏専務役員(デンソー出身)も株主への質問に対し、インドで25年までにEV導入を目指す方針を明らかにした。
 コロナ対策として鈴木社長は、政府に職場接種の申し込みをしたと表明した。インド子会社マルチ・スズキの鮎川堅一社長はオンラインで出席し、6月中に現地の全従業員がワクチンの1回目の接種を終えるとの見通しを説明した。
 鈴木社長の発言に注目していたという浜松市内の男性株主(77)は「バランス感覚がしっかりしている印象が強いが、難局に立ち向かう強さをもっと打ち出すべき」と受け止めた。同市の元社員の男性(76)は「社員や取引先、地域を大事にする会社として成長してほしい」と期待した。
 〈2021.6.26 あなたの静岡新聞〉⇒元記事  

修会長、軽に懸けた思い「技術者の英知と努力 芸術品」

 25日(※6月25日)の株主総会後に退任予定のスズキの鈴木修会長(91)は8日(※6月8日)、浜松市内でインタビューに応じ、「2030年以降は、ガソリンとエンジンから、電池とモーターへと自動車の本質が根本的に変わる」として電動化への対応が急務との認識を改めて示した。自社の軽自動車開発の歴史にも言及し「高齢化と核家族化が進む中、軽自動車は公共交通機関が行き届かない農村や過疎地域も含めて必要な商品だ」と軽の存在意義を強調した。

ヒット車「アルト」のミニチュアを手に笑顔を見せる鈴木修スズキ会長=8日午前、浜松市南区のスズキ本社
ヒット車「アルト」のミニチュアを手に笑顔を見せる鈴木修スズキ会長=8日午前、浜松市南区のスズキ本社
 鈴木会長は「将来も自動車というカテゴリーは残ると思うが、既存の観念、知識とは異質のものになる」と予測。本年度から5カ年の新中期経営計画で電動化技術の強化を柱に据えた自社の現状を踏まえ「なせば成る。挑戦していくことが重要だ」と後進の活躍に期待した。
 日本の軽自動車を「規格の枠内で快適性や居住性を最大限追求した芸術作品」と表現し、最も記憶に残る自社の車種として、1979年に大ヒットした「アルト」を挙げた。
 81年に資本提携し、2008年に提携を解消した米ゼネラル・モーターズ(GM)との関係を「家庭教師として、車づくりの基本を教わった」と振り返った。会長退任に当たり、GMのメアリー・バーラ会長から長年の協力に感謝する内容のメッセージが届いたことも明かした。

 インタビューの内容は次の通り。

 ―5月の決算発表会見で「軽自動車は芸術品」と発言した。軽自動車に懸けてきた思いとは。
 「排気量660CCで寸法も比較的小さく決められた中で、技術者が快適性や居住性を高めるために、最高の英知と努力を積み重ねてきた。価格も安くなければ駄目で、そういう意味で芸術作品だ」
 「日本は今、老夫婦2人の世帯が増えている。公共交通機関が行き渡らない農村や過疎地も含め、買い物や通院などの移動に軽自動車は格好の商品だ」

 ―国内外で急速に脱炭素、電動化の動きが加速している。スズキとしての対応は。
 「自動車はガソリンとエンジンの時代から、モーターと電池に移行して全く新しいものに生まれ変わろうとしている。2030年以降は電動化を中心に、自動車の本質が根本的に変わる。かごかきや人力車がオートバイ、ガソリンエンジンの自動車と変遷したように。自動車というカテゴリーは将来も残ると思うが、既存の観念や知識とは異なるものとなる」
 「私が引退を決意したのは、モーターと電池のことが分からなくなってしまったから。30代ならチャレンジしたがね。(スズキとしては)なせば成る。あくまで挑戦が重要だ」

 ―トヨタ自動車との資本提携に至る前に、一時提携関係にあった米ゼネラル・モーターズ(GM)など海外メーカーとの協議で得たことは。
 「1981年、世界のGMがスズキを(提携先として)指名してくれた。GMさんは家庭教師だった。大学生が子どもに教えるように車作りの基本や技術を教えてくれて、大変感謝している。われわれも豊臣秀吉が織田信長の草履を温めた故事にならい、何でも隠さずに公開した」
 「今年2月に会長退任を公表した直後、GMのメアリー・バーラ現会長から、長年にわたり協力いただいたとメッセージが届いた。(提携当時のGMの)スミス会長、ワゴナー会長からもお礼状をいただき、感激した」
 「一方で、(提携解消まで法廷闘争となった)独フォルクスワーゲンは正反対で、占領軍と敗戦国のように扱われた。両社からは世界に伍(ご)していくために必要なことを学んだ」

 ―印象に残る車種を一つ挙げるとしたら。
 「ずばり、(79年発売の)アルト。開発前に地方の工場に市場調査に行った。通勤と週末の農作業のために軽トラックを使っているという話がヒントになり、通勤にも荷物を載せるのにも併せて使える車を考えた。アルトは質素倹約で作った車で、(47万円の)全国統一価格で販売した」

 ―経営者として貫いた信念とは。
 「『やる気』だ。現状に満足することなく、一歩一歩チャレンジしてきた。社長就任時に3千億円だった売上高が3兆円になり、スズキ車の国内保有台数は1千万台に達した。株主、販売店、お客さん、仕入れ先、従業員など全ての皆さんに感謝したい」
 「90歳の卒寿を祝ってもらった会であいさつをした時、感謝という言葉を三回、自然に発した。自分でも驚くほど、感謝の思いが自然に出てきた」

 ―今後の抱負は。
「相談役就任後は、自然体で行くよりしょうがない。社長就任の頃から長いお付き合いの店を中心に販売店を回りたい」

 ―地域の自動車関連の中小企業にエールを。
「これから自動車産業は大きく変わる。自覚を持って経営に当たるとともに、後継者育成に努めてほしい」
 〈2021.6.9 あなたの静岡新聞〉⇒元記事