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〈 子どもと電子メディア 接し方は? 〉

 児童生徒に1人1台のタブレット端末などを配備する文部科学省の「GIGA(ギガ)スクール構想」の進展とともに、子どもが電子機器に触れる機会が増えています。新型コロナウイルス感染拡大で在宅時間が長くなり、スマートフォンの使い過ぎによる日常生活への影響も懸念されます。電子メディアとどう付き合うか。対策に取り組む学校現場を取材しました。

ルール作り 子ども自身で

ストレートネックに注意を促す掲示物=6月下旬、長泉町立北中
ストレートネックに注意を促す掲示物=6月下旬、長泉町立北中
 「ストレートネックって首がどうなっているの?」。長泉町立北中の渡り廊下には、うつむいた姿勢でスマホを長時間眺めることで起こりやすい体の異常に注意を促す掲示物が張られている。
 同校は視力低下などの改善を目的に、5年前から電子メディアとの接し方を生徒自身が考える取り組みを続ける。帰宅後は使用しない▽1日30分-など、生徒自身が決めた目標を実践する「ノーメディアデー」を毎月設定して意識啓発につなげている。
 取り組みを主導するのは保健委員会の生徒ら。中込美恵子養護教諭は「大人がやらせるのではなく、子どもが自主的に取り組む環境が大事」と強調する。生徒のスマホ所持率は2年前には約6割に上った。全国的に会員制交流サイト(SNS)を巡るトラブルが増加していて、本年度からは「人が嫌がる投稿はしない」などSNSの約束事も考えている。
 同委員会の昨年度のまとめでは、スマホの使用時間は平均で2時間を超えた。ただ、全校生徒の71%はノーメディアデーの取り組みが使用時間削減につながったという。野口基校長は「長年継続してきたことが実を結び、風土醸成につながっている」と実感する。
 一方で、3割の生徒は実行に移せていないのも事実。中込養護教諭は「取り組みの効果を生徒が実感できるよう具体的な結果を示していくことが必要」と課題を挙げた。
 コロナ禍でGIGAスクール構想は急速に進み、授業での使用が本格的に始まった学校も出ている。静岡市立城北小は、授業だけでなく委員会活動などでもクロームブックを利用する。使い方を制限するのではなく、活用を通じてルールを作る過程を重視し、メディアの可能性を広げている。
 子どもたちが休み時間にタイピング練習に打ち込み、授業の準備が遅れるなどの問題も出てきた。これらに対して同校は子ども自身が対策を判断できるよう指導する。実際に端末を用いてアンケートを作成し、実施したという。中村直哲教諭は「今は何が課題かを把握するのも難しい。当初に比べてルールは増えたが、子どもが納得した上での決まりなので守りやすい」と効果を語る。
〈2021.7.14 あなたの静岡新聞〉

課題は2つ 使い過ぎと中傷

 小中学校での1人1台の端末整備が進み、子どもが電子機器に触れる機会が増えている。指導をする上での課題や今後必要になる対策について、情報教育に詳しい静岡大教育学部の塩田真吾准教授に聞いた。

教育現場で今後必要になる情報モラル教育について語る塩田真吾准教授=6月上旬、静岡市駿河区
教育現場で今後必要になる情報モラル教育について語る塩田真吾准教授=6月上旬、静岡市駿河区

 -子どものスマートフォン、タブレットなどの使用の現状は。
 「二つの課題がある。まずは使い過ぎ。全国の小中高生6千人を対象にした調査で、中学生の33・8%、高校生の35・8%が『勉強や生活に大きな影響が出てもやめられないことがある』と回答した。もう一つは誹謗(ひぼう)中傷などの問題。会員制交流サイト(SNS)などで相手を傷つける言葉を使ったことがある子どもが一定数いた。最近は、校内で撮影した子どもの画像が流出した例も聞く。教育現場にタブレットが登場し、トラブルが顕在化してきたと感じる」
 -教育現場の取り組みの課題は。
 「今までの情報モラル教育は、トラブル事例を見せて怖がらせるトラブルベースの指導が主流だった。この教育方法は、時間がたつと忘れる▽自分にも起こりうると想像できない-という課題がある。例えば、深刻な依存状態の子どもの話を聞いても『大変そうな人がいる』と自分ごととして捉えられず、記憶から薄れていく」
 -これからはどんな対策が必要か。
 「時間を確保してじっくりと指導することに加え、タブレットやパソコンの使用場面に応じて学んでいくことも必要になる。インターネットで検索する時に情報の信頼度を学習し、写真や動画を撮るときに肖像権を考えるなど、それぞれの場で少しずつ正しい使い方を教えることができる。トラブルが起きてからではなく、先手先手で動きたい」
 -一人一人の指導はどうあるべきか。
 「『夜遅くに使わない』『悪口を言わない』などの、0か1のスローガン的ルールを見直すことが重要。子どもは何が危険かは知っているが、どのくらい危険かの見積もりにずれがあることが多い。どのような特徴があったら危険と判断できるかというリスクのグラデーション的発想を身に付けさせたい。今はスマートフォンやタブレットを使うのは当たり前の時代。活用を前提に、どこからが危険でどこまでは大丈夫なのかを自ら考え、自律的に工夫しながら利用する力を育んでいきたい」
 〈2021.7.14 あなたの静岡新聞〉

「スマホアドバイザー」制度に注目

 静岡県教委は「ケータイ・スマホルールアドバイザー」制度を設け、情報機器の安全な利用を図るため、家庭でのルール作りの大切さを周知する。アドバイザー登録者数は2018年度まで120人前後だったが、19年度142人、20年度137人と増加傾向にあり、注目が高まっている。

 アドバイザーになるには、年度ごとに養成講座を受講して認定を受ける。アドバイザーのリストは市町教委と共有し、各学校の依頼に応じて保護者会などでの講演や、教職員、児童生徒を対象にした講座などを実施しているという。
 県教委の担当者は「家庭で話し合ってルールを決める重要さを正確に伝える役割」と存在意義を挙げる。このほか、ネット依存度を判定するウェブシステムを構築するなど支援を強化する。
 〈2021.7.14 あなたの静岡新聞〉

急速に進むGIGAスクール構想

 静岡県教委は、新型コロナウイルスの影響で進んだ国の「ギガスクール構想」に基づく1人1台端末整備について、政令市を含む県内公立小中の整備総数が28万台に上り、2022年度に全市町で完了する見込みだと明らかにした。県庁で開かれた県の「地域自立のための『人づくり・学校づくり』実践委員会」で報告した。

静岡県内の市町立小中学校における1人1台端末整備の状況
静岡県内の市町立小中学校における1人1台端末整備の状況
  報告によると、20年度末までに32市町が整備を終え、磐田市が21年8月までに完了する予定。整備台数の多い浜松市と静岡市が22年度に完了予定という。端末は、低学年と高学年など発達段階に応じて使い分ける市町を含め、20市町がクロームブック、15市町がアイパッド、7市町がウィンドウズタブレットを選択した。
  会合では教育現場でのICT活用が議題となり、委員からはe―ラーニング動画の配信や学習管理システムの導入に期待する声が上がった。病気療養中の子どもが遠隔で授業に参加できる取り組みを求める意見もあった。
 〈2021 5.12 あなたの静岡新聞〉