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球児躍動 静岡の夏⚾始まる

 第103回全国高校野球選手権静岡大会が始まりました。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、昨年は全国選手権が中止となり、甲子園を目指す夏の戦いは2年ぶり。109校108チームが出場します。この時間は初日1回戦のダイジェストをお届けします。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・松本直之〉

 ⇒大会第2日(11日)の試合結果は速報ページでご確認いただけます

聖地への道再び 初日は1回戦22試合

 第103回全国高校野球選手権静岡大会は10日、開幕し、草薙など10球場で1回戦22試合を行った。静岡東が望月良章のスクイズで勝ち越しに成功し、富士宮西に競り勝った。日大三島はオイスカをコールドで破り、永田裕治監督就任後初の夏1勝を挙げた。藤枝西は延長13回、タイブレークで小山との激戦を制した。

9年ぶりに初戦を突破し喜ぶ静岡北ナイン=草薙球場
9年ぶりに初戦を突破し喜ぶ静岡北ナイン=草薙球場

■10日の結果(1回戦)
▽あしたか球場
掛川工8―7沼津市立
日大三島16―6オイスカ(6回コールド)
▽富士球場
知徳8―3吉原工
袋井9―3下田
▽清水庵原球場
常葉大橘5―0浜松湖南
静岡東4―2富士宮西
浜松市立9―0沼津高専(7回コールド)
▽草薙球場
科学技術8―1相良(7回コールド)
静岡商9―2天竜(8回コールド)
静岡北6―3伊東
▽焼津球場
富士市立7―0焼津水産(8回コールド)
藤枝西6―5小山(延長13回タイブレーク)
▽島田球場
湖西7―0星陵(7回コールド)
浜北西11―0御殿場(7回コールド)
▽掛川球場
浜松南6―4誠恵
浜松西5―1川根
▽浜岡球場
池新田12―5沼津工(8回コールド)
横須賀10―0富士宮東(7回コールド)
▽磐田球場
島田11―3磐田北(7回コールド)
伊豆中央5―3磐田農
▽浜松球場
浜松学院11―3浜松大平台
浜名7―0藤枝北(7回コールド)

静岡東、投打団結 亡くなった友にささぐ1勝

静岡東―富士宮西 6回表静岡東無死満塁、宮原の犠飛で三走望月良が同点の本塁を踏む=清水庵原球場
静岡東―富士宮西 6回表静岡東無死満塁、宮原の犠飛で三走望月良が同点の本塁を踏む=清水庵原球場
▽1回戦(清水庵原第2試合)
静岡東
100001200―4
001100000―2
富士宮西
▽二塁打 佐野元(富)▽野選 四條斗(富)
▽試合時間 2時間5分

 【評】静岡東は投打がかみ合い、富士宮西に競り勝った。
 静岡東は1点を追う六回、四球と小林、山崎の連打で無死満塁とし宮原の犠飛で同点。七回は山田、望月慧の連打と犠打で1死二、三塁とし望月良のスクイズで勝ち越した。右横手の先発望月慧が走者を背負いながらも粘投した。
 富士宮西は八回の1死二、三塁の逸機が響いた。


 ■昨秋他界 1年生の遺影とともに 投打で団結
 静岡東が富士宮西との投手戦を制した。打線は六、七回に小技を絡めて好機をものにし、主戦望月慧がリードを守った。戸塚監督は「相手は力のあるチーム。勝つならこういう試合になると思っていた。展開は理想通り」とうなずいた。
 勝ち越しのスクイズを決めた主将の望月良は「サインが出たらしっかり決めようと思っていた。粘り強く戦えた」と納得顔。望月慧は5月に頭に打球を受けて救急搬送された。練習ができない日々が続いたが、調子を戻してきた。「ピンチが続いてもしっかり抑えられた」と望月慧。
 チームは昨年9月に大事な仲間を失った。当時1年だった部員の萩田大貴さんが闘病の末に死去。ベンチに遺影を置き、「一緒に戦っている」と望月良主将。スタンドでは萩田さんの父高秀さん(52)と母光美さん(48)が見守った。高秀さんは「葬儀の日もこんな青空だった。息子がみんなと一緒にいる気がした」と声を震わせ、「選手には自分たちのために戦ってほしいが、息子が力になるならそれでもいい。僕らも選手からエネルギーをもらっている」と笑顔を見せた。

日大三島 六回大量得点16点コールド

オイスカ―日大三島 コールド勝ちを決め、喜び合う日大三島の選手たち=あしたか球場
オイスカ―日大三島 コールド勝ちを決め、喜び合う日大三島の選手たち=あしたか球場
▽1回戦(あしたか第2試合)
オイスカ
002004―6
1210210×―16(6回コールド)
日大三島
▽三塁打 神田(オ)野口(日)▽二塁打 朝波勇、朝波克(オ)加藤大(日)▽暴投 熊谷直5(オ)▽捕逸 坂口(オ)▽野選 熊谷直(オ)
▽試合時間 2時間9分

 【評】日大三島が六回の大量得点でオイスカにコールド勝ちした。
 日大三島は毎回安打で序盤から得点を重ねた。六回には長短打に相手投手の乱調も加わり、10得点を挙げて試合を決めた。
 オイスカは代打神田の適時三塁打など集中打で一時4点差を追い付いたが、2投手が踏ん張りきれなかった。


 ■永田監督に夏初白星
 日大三島は打線が爆発し、3年ぶりに初戦を突破した。報徳学園(兵庫)を春夏通算18度の甲子園に導き、昨年4月から日大三島を率いる永田監督にとっては同校での夏初勝利。「練習試合でずっと負けっ放しだったから」と安堵(あんど)感をにじませた。
 4点差を追い付かれて迎えた六回。4番加藤大の二塁打を皮切りに、四球を挟み3連打と一気に畳み掛けた。続いたのはベンチを温めていた選手たち。代打に送り出された島田、池口が適時打でつなぎ、控えに回っていた主将の斎藤も死球で走者をかえした。指揮官が信条とする「全員野球」を体現するかのように、10得点のビッグイニングをつくり出して勝負を決めた。
 試合前日の練習。雨の中、登録外の選手も混ざり白球を追った。「団結できたし気持ちも高まった」と斎藤は振り返る。この日の先発で唯一の1年生の野田も「3年生の夏を続けたい」と4打点の活躍を見せた。「全員野球の基礎ができつつある」と口にする指揮官の下、東部の雄が新たな一歩を踏み出した。

被災の古里へ全力プレー届ける 静岡商高・小松陸遊撃手(熱海・伊豆山出身)

 初戦突破した静岡商業高の遊撃手小松陸選手(3年)は、土石流で被災した熱海市伊豆山地区の出身。「自分には今何ができるかを考えた」。被害に遭った知り合いもいるが、この日は試合だけに集中していたという。

追加点を奪うスクイズを決め一塁に走り出す静岡商の小松陸選手(手前右)=10日午後、静岡市駿河区の草薙球場
追加点を奪うスクイズを決め一塁に走り出す静岡商の小松陸選手(手前右)=10日午後、静岡市駿河区の草薙球場
 3日の練習後、仲間に「大丈夫か」と心配されて土石流の発生を知った。すぐに伊豆山地区の家族に連絡して無事を確認した。両親は「自分のやるべきことをやりなさい」と言ってくれた。
 2年前、甲子園に行くために親元を離れ、静岡商業の門をたたいた。最後の夏に懸けてきた。
 地元が被災した後、小松選手の野球ノートには「野球ができることに感謝したい」という言葉が記されていた。曲田雄三監督は「思うところがあったのだろう。好機が巡れば何かやってくれると思っていた」という。
 小松選手は監督の期待通りにきれいなヒットを放ち、三回にはスクイズも決めて勝利に貢献した。「今日はエラーをして迷惑を掛けた。しっかりチームに貢献できるようにしていきたい」。静かに次の戦いを見据えた。
地域再生大賞