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杉田妃和⚽女子五輪代表に

 東京五輪に出場するサッカー女子日本代表にMF杉田妃和選手(24)=INAC神戸、藤枝順心高出=が選ばれました。ボランチから攻撃的ポジションまで幅広くこなす杉田選手。これまでの活躍を振り返ります。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

「一度きりの経験 次につなげる」 会見で選出の喜び語る

 東京五輪に出場するサッカー女子日本代表に選ばれた杉田妃和(24)=INAC神戸、藤枝順心高出=は18日夜、大阪市内で開いた会見で「東京五輪は現役で一度しか経験できない。うれしいし、これからにつなげる大会にしたい」と喜びを語った。会見に出席した神戸の同僚と大舞台のピッチに立つのを心待ちにしている。

東京五輪のサッカー日本女子代表に選出された杉田妃和=10日、広島市のエディオンスタジアム広島
東京五輪のサッカー日本女子代表に選出された杉田妃和=10日、広島市のエディオンスタジアム広島

 高校を卒業して入団した2015年、神戸には日本代表をけん引した澤穂希さんら多くのスター選手がいた。エースナンバーの10番のユニホームを用意し誘ってくれたクラブもあったが、あえていばらの道を選んだ。高校時代の恩師、多々良和之さんは「出場できるチームに行った方がいいとも思ったが、サッカーに専念できるクラブは神戸しかなかった」と当時を回想する。
 藤枝順心高や世代別代表で活躍してきた杉田でも、神戸ではすぐに試合には出られなかった。先発に定着したのは15年限りで澤さんが引退した後だった。なでしこジャパンに初招集されたのは18年7月。代表入りに高校卒業から約3年を要したが、19年の女子ワールドカップ(W杯)フランス大会に出場した。
 昨年からのコロナ禍で杉田は「いつもの感じのモチベーションが保てない」とサッカーへの熱量が下がった時期があったと明かす。オフシーズンを長めに取って自分自身と向き合い「あまり気を張りすぎないように、自分からリラックスできるようになった」と出口を見つけた。
 4月のパナマ戦で左足を振り抜き、20試合目で待望の代表初得点。続く6月のウクライナ戦でも連続ゴールを挙げ「得点を狙う意識がついてきた」と自信を深めた。高倉麻子代表監督は「まだ粗いところが多いが、さらに大きく成長してほしい」と期待は大きい。
 守備的なボランチから攻撃的なトップ下まで幅広い起用が見込まれる。「どのポジションで出ても自分の良さを出していきたい。いい結果を出していい報告をしたい」。青春時代を藤枝で過ごしたレフティーが、苦楽の経験を積み、五輪で輝こうとしている。

 すぎた・ひな 1997年1月31日生まれ。北九州市出身。藤枝順心高2年時に全日本高校女子サッカー選手権準優勝。2014年U-17(17歳以下)女子ワールドカップ(W杯)で優勝に貢献。チーム最多の5得点を挙げて大会最優秀選手になった。19年女子W杯に出場。日本代表通算22試合2得点。162センチ。
〈2021.6.19 あなたの静岡新聞〉⇒元記事

パナマ戦で代表初ゴール 4月の国際親善試合

 サッカー女子の国際親善試合は11日(※4月11日)、東京・国立競技場で行われ、国際サッカー連盟(FIFA)ランキング10位の日本代表「なでしこジャパン」が同59位のパナマ代表に7-0で大勝した。

日本―パナマ 後半16分、7点目のゴールを決める杉田=国立競技場
日本―パナマ 後半16分、7点目のゴールを決める杉田=国立競技場

  ■途中出場、貪欲に得点狙う
 試合の大勢が決まっても、貪欲にゴールに向かう姿勢を崩さなかった。後半14分から出場したMF杉田(INAC神戸)はその2分後、敵陣ペナルティーエリア手前から左足を振り抜き代表初ゴール。「遠目からのシュートを狙っていきたい」。試合前の予告通り、有言実行で7点目を奪った。
  新たな国立競技場で日本代表戦が行われるのは男女通じて初めて。高倉監督は「ぜひこのスタジアムで五輪決勝をしたい」と選手の盛り上がりを感じていた。五輪本番を想定し仙台でのパラグアイ戦から中2日。移動後の疲労具合も確かめた。初戦で後半40分まで出場した杉田はベンチスタート。「途中でどんな変化がつくのか見てみたかった」と、起用の意図を語った指揮官の期待に応えた。
  左サイドに陣取った杉田はその後も攻め、鋭いクロスをゴール前に上げ続けた。監督は「活動量は多いが、まだ粗いところが多い」と注文を付けたが、「初ゴールでさらに大きく成長してほしい」という裏返しだ。
  U―17(17歳以下)ワールドカップを制しMVPだった杉田をはじめ、MF長谷川(ACミラン)ら育成年代で成績を残した選手が20代中盤に差し掛かり代表の中核を担う。後半途中出場したDF三宅(INAC神戸、JFAアカデミー福島出)も五輪出場18人へ生き残りを懸ける。
〈2021.4.12 静岡新聞夕刊〉

藤枝順心高時代は全国準Vに貢献 悔しい思いが成長の糧に

 第22回全日本高校女子サッカー選手権最終日は16日(※2014年1月16日)、ヤマハスタジアムで決勝を行った。藤枝順心(東海1)は、8月の全国高校総体を連覇した日ノ本学園(関西1、兵庫)に1―4で敗れ、7大会ぶりの優勝を逃した。日ノ本学園は3大会ぶり2度目の栄冠。藤枝順心は前半終了間際にU―16(16歳以下)女子日本代表MF杉田妃和が先取点を挙げたが、後半4失点で逆転負けした。

藤枝順心―日ノ本学園 前半45分、藤枝順心の杉田(右)が先制ゴールを決める=ヤマハスタジアム
藤枝順心―日ノ本学園 前半45分、藤枝順心の杉田(右)が先制ゴールを決める=ヤマハスタジアム

 ■杉田、先制弾も実らず 
  狙い澄ました一撃が、日ノ本学園の分厚い壁を切り裂いた。前半終了間際、藤枝順心の杉田の左足シュートが、相手GKの頭上を越え、ゴールネットを揺らした。
  ゴールライン際でボールを奪った杉田からの好機だった。後方にパスを送り、細かくパスをつないだ。最初のシュートチャンスが杉田に訪れた。だが、「確実に枠を捉えられない」と判断。再び展開に切り替えた。もう一度、河野のパスを受け、相手2人を交わしてシュートコースをこじ開けた。「狙える」と確信した。
  「決勝だし、冷静にならないと点は生まれないと思った。(シュートコースは)あそこしかなかった」。11日の山陽女学園(中国3、広島)との1回戦以来の得点に、笑顔がはじけた。昨夏の全国高校総体から今大会準決勝まで全国大会8試合連続無失点だった日ノ本学園の鉄壁の守備陣を、順心の背番号10が打ち抜いた。
  2年でエースナンバーを背負う杉田は、試合後に涙を流すことはなかった。「きょうは自分ができることはやった。3年生とは最後の試合で寂しい結果になったけど、もっと頑張らないといけないという気持ちの方が強くなった」。U―16女子日本代表の主力として将来のなでしこジャパン入りが期待される逸材。悔しい全国準Vを成長の糧とする。
〈2014.1.17 静岡新聞朝刊〉

高校時代の目標はなでしこジャパン U-17W杯は主将務め優勝

 コスタリカで開かれたサッカーのU―17(17歳以下)女子ワールドカップで日本代表の主将を務めチームを優勝へと導いた。5得点を挙げて最優秀選手にも輝いた。「みんなの前に立つ主将として普段経験できないような貴重な体験ができた」と振り返る大会で、大きな成長を遂げた。アジア・サッカー連盟の年間最優秀ユース選手(女子)にも選ばれ、飛躍の年だった。

アジア・サッカー連盟の年間最優秀ユース選手に選ばれた杉田妃和選手
アジア・サッカー連盟の年間最優秀ユース選手に選ばれた杉田妃和選手
  日本代表では守備的MFを務めたが、藤枝順心高ではトップ下を担った。「ポジションはどこでも構わない。攻撃に参加し点に絡むプレーをしたい」。最大の持ち味はスルーパス。「自分で局面を打開するのが一番楽しい」と自信をのぞかせる。
  福岡県出身。高校から親元を離れて寮生活を始めた。私生活でも自立して一回り成長し将来のなでしこジャパン入りを目指す。
  藤枝市緑町。17歳。
〈2015.1.18 静岡新聞朝刊「第63回静岡新聞社・静岡放送スポーツ賞 受賞者の横顔」から〉
地域再生大賞