静岡県の課題 知事選候補者に聞く
静岡県を取り巻く課題に、知事選立候補2氏はどう挑むのか。候補者に同じ設問でアンケートを行いました。今晩はその結果をまとめてお知らせします。ぜひ、皆さんの投票の参考になさってください。
おすすめ記事まとめ「知っとこ」は毎日最低4回更新。次回はあす午前9時半ごろの予定です。朝のウェブデスク(編集長)がおすすめ記事4本をクリップしてご紹介します。
〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・松本直之〉
最大の課題は/新型コロナ対策は
静岡新聞社は静岡県知事選(6月20日投開票)に立候補している現職川勝平太氏(72)と前参院議員の新人岩井茂樹氏(53)=自民推薦=に、県政課題を巡るアンケートを行った。

■県政の一番の課題は何と考えますか
川勝平太(かわかつ・へいた)氏 一番の課題は常に危機管理です。目下の課題は新型コロナウイルス感染症を抑え込むためのワクチン接種の迅速・円滑な実施▽リニア工事から“命の水”と“南アルプスの自然環境”を守ること▽危機突破戦略として、利他・自利の経済政策「フジノミクス」によって広域経済圏を実現し、SDGsのモデル地域になること。
岩井茂樹(いわい・しげき)氏 静岡県のワクチン接種の遅れに象徴されるように、最も大事な危機管理の面での不安▽経済全体の停滞(伸び率全国42位)。製造業のマイナス。農業、特に茶生産額は2位転落▽児童生徒の不登校数全国ワースト4▽医療の県内格差の拡大▽人口減少が止まらず合計特殊出生率も悪化傾向。
■どのように新型コロナウイルス感染防止対策を講じますか
川勝氏 希望するすべての県民へのワクチンの接種。クラスター対策機動班による積極的疫学調査、医療機関クラスターへの支援チーム派遣、感染拡大の防止の指揮を執ります。
引き続き、マスク着用、手指消毒、“密”回避などの新しい生活様式の徹底。
岩井氏 短期的には迅速かつ広範な検査体制を整え、ワクチン接種完了まで感染拡大のピークを抑えるため、知事のイニシアチブで円滑な接種体制を構築する。
長期的には医療従事者数を増やして医療体制を守り、平時は医師や医療スタッフの人材育成機能、有事には感染症や自然災害時にも機能する国県連携による専門病院をつくる。
■ワクチン接種の課題と解消に向けた方策をお答えください
川勝氏 市町の首長と意見交換を行い、接種現場を担当する市町を強力に支援。広域的な接種会場の設置・運営、医療従事者からなるワクチンチームの派遣、接種を行う医療従事者の確保と協力金の支給に全力。
岩井氏 まずはワクチン接種を希望する高齢者の7月末までの接種完了を目指し、市町の接種プランをバックアップする形での医療従事者や会場の確保。
さらに一般接種に向けて、予約システムの見直し、優先順位の柔軟な対応、接種会場の拡充など円滑かつ迅速な接種実施体制を作る。
■新型コロナウイルス感染拡大で疲弊した経済の立て直し策をお答えください
川勝氏 新経済政策「フジノミクス」を展開。山梨県と相互の物産販売や観光交流を進める「バイふじのくに」を長野・新潟県に広げ、新たな経済圏を構築する。医療健康、IT関連、次世代自動車産業などを育成する。事業拡大や業種転換に挑戦する中小企業を伴走型で支える。農林水産業のルネサンスを図り、供給面からも支援する。
岩井氏 今こそ、静岡県に若い世代を呼び込み、活力を取り戻す時。働く世代に対し、ワーケーションやサテライトオフィスの誘致による新しいライフスタイルを提供する。また、AIやIoTなどを活用したDXにより、静岡が築き上げてきたモノづくり産業を深化させ、新たなイノベーションの創出による成長産業への転換を図る。
〈2021.6.9 あなたの静岡新聞〉⇒元記事
オリンピック開催は/人口減にどう挑む
■新型コロナウイルス感染の収束は見通せない状況です。東京五輪・パラリンピックの開催についての考えをお選びください(1・開催 2・1年延期 3・中止)

岩井茂樹(いわい・しげき)氏 (選択なし)=まずは首都圏の感染状況を抑えることが必須条件。国も東京都も尽力しているので、状況を見守りたい。開催するかどうかはIOCや都の判断によると思うが、自転車競技が実施される静岡県としても開催に向けて徹底した感染予防対策を施し、安心・安全の大会を目指して最大限の準備を行うべきだ。
■静岡県の推計人口が360万人割れ目前になっています。人口減少対策をどう講じるか、お答えください
川勝氏 高校生―卒業時に全員に「ふじのくにパスポート」(QRコードから静岡県ホームページにアクセス)▽大学生―静岡出身者の多い32大学と就職支援協定で情報提供▽「30歳になったら静岡県」の展開▽「バーチャルメディカルカレッジ」(本庶佑学長)の展開▽出生率―「ふじのくに少子化突破の羅針盤」改訂版の配布。
岩井氏 人口減少基調は続くが、社会減、特に若者の流出は食い止める必要がある。そのためには防災・防疫への備えを充実し「安心・安全の確保」を図る。地元愛にあふれる風土づくりで「静岡愛の醸成」を行う。製造業・農林水産業・観光業など、潜在力ある産業を伸ばして「稼ぐ力の復活」を実現し、豊かさと雇用を生み出したい。
〈2021.6.10 あなたの静岡新聞〉⇒元記事
政令市との関係/教育/防災への取り組みは
■静岡県と県内政令指定都市の現状の関係についてどう考えますか。また、どのような関係が理想と考えますか
岩井茂樹(いわい・しげき)氏 県は政令指定都市によっては、トップ同士の関わりに課題があるように思えるが、行政同士の連携に大きな問題はないと考える。それぞれの権限を尊重すればよい。しかし、同じ県内の地方自治体として連携して行動することも多々あり、十分な対話は確保されなければならない。それを円滑に進めるためのトップの責任は大きい。
■静岡県の学校教育の課題をどのように捉えていますか。知事としてどのような教育に力を入れたいですか
川勝氏 社会全体の意見を総合教育会議に反映するため、有識者からなる「地域自立のための『人づくり・学校づくり』実践委員会」を設置し、偏差値学力重視だけでなく実学(農工商スポーツ芸術芸能)を重視し「才徳兼備」の人づくりを進める。また普通科高校の魅力づくり、夜間中学、特別支援学校の整備。
岩井氏 次世代を担う人材育成のため、ICTを活用した教育を進める必要がある。その一方で、子供たちがリアルに体験すること、人と触れ合うこと、議論することで学び、成長することの重要性はさらに増しているものと感じている。静岡県の豊かな自然や人間性、盛んなスポーツを存分に生かした教育環境をつくっていきたい。
■東日本大震災から10年が経過しました。この間、全国でさまざまな自然災害が発生する中で、防災対策をどのように進めていきますか
川勝氏 南海トラフ地震では「地震・津波アクションプログラム2013」を推進。想定犠牲者約10万5千人を2019年度末までに約7割減少させた。来年度までには8割減少させ、最終的にゼロを目指す。風水害・土砂災害は、住民が「いつ」「何をするのか」をあらかじめ時系列で整理した「マイ・タイムライン」の作成を支援。
岩井氏 防災は私の専門分野。南海トラフ巨大地震を想定した津波対策では、堤防を造るだけでなく、まちづくりの観点からも防災・減災に取り組む。耐震化が遅れている民間建築物の耐震化を進め、豪雨災害が激甚化する中で私が法案を主導した「流域治水」の考え方も取り入れ、ソフトとハードのバランスのとれた整備を進める。
〈2021.6.10 あなたの静岡新聞〉⇒元記事
川勝氏・岩井氏の政策対談/略歴
静岡県知事選(6月3日告示、20日投開票)に立候補を表明している現職の川勝平太氏(72)と新人の元参院議員岩井茂樹氏(52)=自民推薦=が5月26日夜、静岡市駿河区の静岡新聞放送会館で政策対談を行った。リニア中央新幹線工事に伴う大井川流量減少問題や新型コロナウイルス対策、県の将来展望など県政の主要課題について熱のこもった議論を繰り広げた。

一方の岩井氏は将来の県に最も必要なこととして人口減少の克服を上げ、「稼ぐ力がなくてはならない。トップセールスで魅力ある企業にきてもらうことに全力を傾けたい」と自ら企業誘致の先頭に立つ考えを明らかにした。また、女性活躍の必要性も強調し、「女性の能力を生かしたい。女性が当たり前に活躍できるまちになれば少子化克服や若者の人口流出減にもつながる」と訴えた。
リニア問題では、両氏ともJR東海に対する厳しい姿勢を強調。川勝氏は問題の根源は、JR東海の不十分な調査だと指摘。流量減少以外にも水質や生態系など問題は山積しているとして「リニア自体に反対ではないが、突然、静岡がルートになった。一回立ち止まった方がいい」と訴えた。岩井氏も「JRは説明不足」と現状のままリニア工事を推進することに否定的な見解を示した。決定権は事業者にあるとしながらルート変更や事業中止が選択肢に入るのは当然だとし「(推薦を受けた)自民党がどう考えるかではなく、知事は県民のために何をするかが問われる」と語った。コロナ対策では岩井氏がワクチン接種会場にもなり得る医療従事者の育成センターの創設を提案したのに対し、川勝氏は検査体制を充実させるため、県内に感染症病院を新たに建設する構想を示した。
■2氏の略歴
川勝平太氏(かわかつ・へいた) 京都府出身。静岡市葵区在住。早大政経学部卒、英オックスフォード大大学院博士号取得。早大教授や国際日本文化研究センター教授、静岡文化芸術大学長などを歴任した。2009年知事選で初当選。13年に再選、17年に3選を果たした。県観光協会と県スポーツ協会の会長を務める。72歳。
岩井茂樹氏(いわい・しげき) 名古屋市出身。三島市在住。名古屋大大学院修了。前田建設工業に8年間勤務した後、参院議員だった父国臣氏の秘書に。富士常葉大非常勤講師を経て2010年7月に参院議員(静岡選挙区)初当選。経済産業政務官、国土交通副大臣を歴任。今月、2期目途中で参院議員を辞職した。52歳。