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〈 コロナワクチン 体の中で何が? 〉

 各地で医療従事者、高齢者を中心にコロナワクチンの接種が加速しています。職場や大学などでの集団接種(職域接種)も準備が進められていますね。コロナワクチンを接種すると体の中では何が起きるのでしょう。改めて「そもそも」を学んでみたいと思います。
 ワクチンは1回打ったからといってすぐに免疫が獲得されるわけではありません。「マスクなし」はもう少し先。「マスク生活」のポイントも復習してみます。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・松本直之〉

mRNAワクチン 体内に入ると、起きることは…

 ワクチンを打つと、体は「ウイルスに感染した」と勘違いして、体内で抗体を作ります。抗体とは、特定のウイルスを狙い撃つミサイルのようなもの。本物のウイルスが入ってきた時にすぐに攻撃、排除できるので、発症や重症化を防げます。抗体を持つ人が増えれば、ウイルスは増殖できずに行き場を失い、自然に死滅します。つまり、ワクチンの目的は二つ。個人を守ることと、社会のみんなを守ることです。

ワクチンを接種した場合としなかった場合の体内の状況
ワクチンを接種した場合としなかった場合の体内の状況
 国内でも接種が始まった新型コロナウイルスのワクチンは、米国の臨床試験で、発症を95%減少させています。これまでの他の感染症のワクチンと比べても、予防効果は非常に高いです。発症や重症化だけでなく、感染そのものを防ぐ効果もありそうだと期待されています。
 世界で初めて「m(メッセンジャー)RNA」を利用したワクチンです。mRNAは、タンパク質を作るための情報、いわばレシピのこと。全ての生物が、mRNAを使ってタンパク質を作っています。今回のワクチンには、新型コロナの表面にあって人の細胞への侵入を助ける「スパイクたんぱく」を作るレシピが入っています。
 mRNAワクチンの強みは、開発スピードにあります。ウイルスの遺伝子配列が分かれば製造できるため、流行から1年足らずで完成しました。ですが非常にもろいので、マイナス70度での保管が必要です。
 筋肉に注射した後、mRNAが向かう先は、筋肉細胞のタンパク質合成工場「リボソーム」。そこでスパイクたんぱくが作られます。すると体の免疫システムが発動し、免疫細胞がスパイクたんぱくを撃つ抗体を作り出す仕組みです。
 mRNAは人間の遺伝情報データベースであるDNAへは入れませんし、血流に乗ってもすぐに白血球に攻撃されてなくなります。たとえ妊産婦が打っても、胚細胞や胎児には届きようがありません。血液からできた母乳に紛れ込むこともありませんし、もし乳児の口に入ったとしても、唾液で簡単に壊れます。
 科学的には、mRNAそのものが人体に与える危険性は考えられません。しかし日本は世界の中でも医薬品の副作用に敏感な国なので、政府はワクチンの信頼性を保つことを最も重視しています。接種率が下がると、流行を止められないからです。
 現在、16歳未満の子どもと妊娠12週までの妊婦は接種対象になっていません。安全性を確認する臨床試験の結果が出そろっていないからです。試験は始まっていて、そのうち結果が出てきます。感染対策を続けながら、もうしばらく待ちましょう。
 どんな薬にも副作用があり、ワクチンも例外ではありません。全身の急激なアレルギー反応である「アナフィラキシー」が起きる頻度は、ファイザー社製で100万人に5人です。接種後は15分以上その場にとどまって経過観察し、症状が出たときに速やかに処置することで回復します。食物アレルギーなどがあり、接種を迷っている人がいるかもしれませんが、頻度は低いのでメリットの方がはるかに大きく、接種すべきです。注射した部位の痛みは出ますが、1日で良くなります。
 ワクチンはみんなで打ってこそ意味があります。接種対象外の人を含め、社会のみんなを守れるのです。ワクチンによって抗体を持つ人が増えれば、新型コロナは自然に終息に向かいます。みんなで打って、明るいニュースを期待しましょう。
(解説=県立こども病院感染対策室長 荘司貴代さん)

 しょうじ・たかよ 感染症専門医。小児科専門医。県新型コロナウイルス感染症対策専門家会議委員。東京都出身、東京女子医大卒。2014年から静岡県立こども病院勤務、18年から同院感染対策室長。44歳。

 〈2021.3.5 あなたの静岡新聞〉⇒元記事/ワクチン接種で自分も社会も守る【続・専門医に聞く 今こそ知りたい感染症㊦】

生活制限の解除、ワクチン接種率の高さが鍵【続・専門医に聞く 今こそ知りたい感染症 番外編】

 静岡県内で新型コロナウイルスの感染が広がり始めて1年。世界中の研究者が瞬時に情報を共有しているおかげで、感染症の実態は既に明らかになっている。それでもなお、多くの人が不安を抱え、過剰ともいえる感染対策を受け入れながら生活しているのが現状だ。今回は、県立こども病院の荘司貴代感染対策室長による新型コロナインタビュー連載の番外編。読者の質問に荘司室長が答えるQ&Aとともに、静岡新聞の「こち女」と「NEXT特捜隊」が行った新型コロナに関するアンケート結果を紹介しながら、社会のストレスを軽減する手だてを探りたい。


 【Q】コロナの終息はいつ頃でしょう。インフルエンザのように、これからもずっと、なくなることはないのでしょうか。(御殿場市、52歳女性)
 【A】感染症の流行は、原因となる病原体に対して免疫がある人(抗体を持つ人)が増えない限り、終息しません。免疫をつける方法は、自然に罹患[りかん]するかワクチンを打つかの、どちらかです。
 例えばはしかは、95%の人に免疫がなければ流行します。免疫のない5%には、ワクチン接種前の乳児や、白血病で免疫が極端に弱い人が含まれますが、流行しないことで、彼らも感染から守られます。日本ではしかが流行しないのは、高齢者は昔自然に罹患しており、若い人はワクチンで免疫をつけているおかげです。
 新型コロナの場合、具体的に何%の人に免疫があれば流行しないのか、分かっていません。インフルのように、ウイルスの変異を予測しながら製造されるワクチンを、毎年打つことになるかもしれません。

 【Q】ワクチン接種が進んでいる諸外国では、感染状況がどう変わっていますか?(函南町、59歳女性)
 【A】日本でも導入されたファイザー社製のmRNAワクチンは、臨床試験の段階で、発症を95%減らす効果が確認されていました。
 イスラエルでは、2月上旬までに、重症化しやすい70歳以上の84%が、2回の接種を終えました。感染、発症、入院、重症化、死亡の全ての数が減少しています。50歳未満は10%。人工呼吸器を必要とした症例は、50歳未満を1とした時、70歳以上は5.8から1.9に、67%減りました。
 ワクチンによる免疫の持続期間や、変異株への有効性などはまだ確認されていないため、接種したからといって一気に流行前の生活に戻せるわけではありません。接種率と流行状況をみながら、徐々に制限を解除していくことになるでしょう。

 【Q】子どもは感染しても無症状が多く、無症状なら他人にうつすリスクが少ないといいます。子どもの窮屈な生活制限を緩めてもらえないでしょうか。(伊豆の国市、38歳女性)
 【A】ご指摘の通り、子どもが感染しても、無症状か風邪以下で、元気いっぱいです。国内の累計感染者数のうち、10歳以下は3%未満。ほとんどが大人から感染しています。子どもにとってのコロナ被害は、子どもらしい生活を奪われていること。文部科学省の調査によると、昨年の児童生徒の自殺者数は前年比1.4倍です。
 学校や幼稚園、保育園の先生は、文科省の衛生管理マニュアルに従って感染対策をしています。流行レベルに応じて、活動を制限したり緩和したりします。「距離が保てない時の会話ではマスクを」などとあり、内容は妥当だと思います。もし、流行状況に合わない過剰な対応だと思うときは、学校や学校医と相談しましょう。
 私は静岡市教委の相談に応じていますが、現場で過剰な対応が行われる背景に、保護者からの過剰な要求もあると感じます。対策と人権侵害は紙一重。根拠のない対策や制限は、感染者への差別にもつながります。

 【Q】後遺症と、その治療について教えてください。(藤枝市、42歳女性)
 【A】回復後もさまざまな症状が現れることは、他の病気でもあります。新型コロナに感染して回復した人の調査は各国で行われていますが、現れる頻度や症状にはばらつきがあります。だるさや息苦しさ、せき、嗅覚障害、脱毛のほか、関節痛や頭痛、めまいなど、さまざまです。
 発症から10日たてば人にうつさないので職場復帰はできますが、後遺症で復帰が遅れる方もいます。狭心症や肺がんなど、急いで治療が必要な病気が隠れていないか確認したうえで、後遺症と考えられる時には、対症療法や精神的なサポートを行います。

 【Q】基礎疾患があると重症化しやすいといわれますが、その可能性は明らかになっていますか。(三島市、46歳男性)
 【A】重症化のリスクとなる基礎疾患には、慢性閉塞性肺疾患、慢性腎臓病、糖尿病、高血圧、心血管疾患、肥満があります。日本糖尿病学会、日本透析医学会など、各学会のウェブサイトで、感染した場合のリスクや注意点を詳しく説明しています。ワクチンの順番がきたら、機会を逃さず接種してください。新型コロナを含め、他の病気の既往歴がある方も、接種することに問題はありません。

 ■アンケート「あなたの今、教えて」
 身近に感染者「怖い」9割 1年経てもストレス
 299人が回答したアンケート「県内流行1年『あなたの今』を教えてください」では、ウイルスの侵入経路遮断を意識しながら感染対策をしている人が83%だった。一方で、身近な他人の感染が分かったら「怖い」もしくは「不安だ」と感じる人は90%、外出時に感染しないかいつも気になる人は半数近くに上った。
 感染を防ぐための知識は持っているのに、流行から1年たった今も、家の外で他人と過ごすときにはストレスを感じ続けている人が多いことがうかがえる。新型コロナに対する日常のストレスを減らすために必要なことは何か。2人の専門家に尋ねた。

 >過剰な対策はやめて
 堀成美さん(東京都看護協会危機管理室アドバイザー、感染対策コンサルタント)
 感染症の歴史を振り返ると、流行時には必ず社会に不安が生じ、偏見や差別が起きている。拡大初期に、一部の重症化事例や死亡事例を見聞きすることで、いったん不安が植え付けられると、そう簡単には消えない。
 必要なのは、知識だけではない。不安に思っている人をサポートする受け皿。不安を口にしてもばかにされず、疑問に答えてくれる窓口。感染者への誹謗[ひぼう]中傷が問題になっているが、中傷する側の根底にあるのは不安だ。
 今、最も優先すべき目標は、マスクを着ければできる催しまで中止にするなどの過剰な制限をなくし、社会の混乱を小さくしていくこと。混乱がある限り、経済は停滞し、子どもたちの学びの場は失われる。各団体や組織が、身内で行われている対策を列挙して、本当に必要かどうか皆で確認しながら、負荷を軽減していく時期に来ている。

 >実態を正しく知って
 岩井一也さん(静岡市立静岡病院感染管理室長、日本感染症学会評議員)
 アンケート結果から、新型コロナを、実態以上に怖い病気だと捉えている人が多いと感じた。「自分が重症化するのでは」と心配している人が回答者の半数以上もいる。まず、病気の実態を正しく知ることが不可欠だ。
 重症化するのは60代の入院が必要な感染者のうち1.4%、70代でも2.1%(3月3日時点)にすぎない。がんや脳梗塞で亡くなる人の方がはるかに多い。自分の日常にある他のリスクと比較してみることをおすすめする。
 この1年、院内で感染が広がらないために、対策をどう徹底してきたかと問われることがあるが、実は逆。やり過ぎの対策を、いかにそぎ落とすかが大切だ。社会でも、入店前の体温測定やレジカウンターのビニールカーテンなど、感染ではなく風評被害を防ぐための対策が続けられているが、「ゼロリスク」を目指していては、皆、持たない。社会全体で、必要最小限の対策を続けていこう。

 ※アンケートは2月26日~3月1日に実施。回答者の75%が40~60代、68%が女性で、全世代の男女の考えを反映した結果ではない。

 〈2021.3.14 あなたの静岡新聞〉⇒■元記事 生活制限の解除、ワクチン接種率の高さが鍵【続・専門医に聞く 今こそ知りたい感染症 番外編】

マスク生活はもうしばらく続きます 素材、扱い…ポイントを復習

 「マウスシールドは感染症予防にどれだけの効果があるのでしょうか? マスクも含めて効果や欠点を教えてもらえたら…」。静岡新聞「NEXT特捜隊」に静岡市葵区の30代女性から声が寄せられた。マウスシールドを付けてテレビに出演するタレントを見ていて違和感を抱いたという。新型コロナウイルスの収束はまだ見通せず「正確な情報が知りたい」と訴えた。 

マスクやフェイスシールドの効果
マスクやフェイスシールドの効果

 シールドだけは×
 マウスシールドは透明のプラスチックフィルムで、口元だけを覆う防護具。主に飲食店や接客業の従業員が活用している。同じくプラスチックフィルムで顔全体を覆う防護具としてフェイスシールドがある。
 スーパーコンピューター「富岳」を使った飛沫[ひまつ]予防効果のシミュレーション実験に取り組んだ豊橋技術科学大の飯田明由教授に聞いてみた。
 実験したところ、フェイスシールドやマウスシールドは、吐き出した飛沫の1割から2割ほどしか捕まえられず、効果はほとんどない―との結果が出た。
 飯田教授は「マウスシールドは感染対策に効果はありません。公の場面で使用していると、誤解されるので控えるべきでしょう」と主張する。フェイスシールドについては「単体で使用するものではありません」。マスクとの併用を勧める。
 県立静岡がんセンターの倉井華子感染症内科部長も効果について同じ見解を示し、「飛沫防止にはマスクの着用が最適です」と話す。日常生活での感染対策には、やはりマスクが不可欠だ。

 場面ごと 考える
 一口にマスクと言っても不織布、布、ウレタンと素材はさまざまだ。感染を防ぐ効果に違いはあるのだろうか。
 豊橋技術科学大が参加した実験では、マスクの種類ごとに効果を検証した。吐き出した飛沫の捕集率は、不織布や布が8割、ウレタンは5割。不織布を着用した場合、外の飛沫を吸い込む量も3分の1に減らすことが可能だという。
 飛沫防止の効果が比較的高いとされる不織布マスク。ただ、鼻や口を覆う密着度から暑さや息苦しさを訴える人もいる。苦しさから口だけ覆って着用する「鼻出しマスク」も問題視されている。
 飯田教授は「『不織布は万能』『ウレタンは悪い』という切り分けは本意ではありません」とし、換気状態や室内屋外といった場面ごとに適した素材を選ぶことを提案する。
 たとえば、会話が多い場面では不織布が適しているが、換気のよい場所での買い物ならば「ウレタンでも問題はない」。外でジョギングする時に着用するのであれば「息苦しい不織布より、ウレタンでも大丈夫です」と助言する。
 倉井部長は「顔にフィットするマスクなら布でも不織布でも違いはないとみて良いでしょう」との見解。より重要視するのはマスクの取り扱い。「表面は汚染されていると考えて取り扱ってほしいと思います」。着脱時などマスクの表面に触れた場合、「手指を消毒するようにしましょう」と呼び掛ける。

 マスク 依然高い需要
 新型コロナウイルス感染拡大を受け、日常に欠かせなくなったマスク。国内感染者が初確認されてから1年が過ぎ、販売傾向はどう変わったのか。県内で86店舗を展開するドラッグストアの杏林堂薬局(浜松市中区)に聞いてみた。
 同社販売促進企画室の担当者によると、昨年2月から1年間のマスクの販売量は前年比で約4倍に増えたという。「不織布、布、ウレタンと種類に限らず需要の高い状態は続いています」と話す。中でも不織布マスクは、変異型ウイルスの感染者が県内で確認された1月中旬以降、販売量が一気に増加。1月下旬は上旬に比べて、約1.5倍売り上げた。「要因の一つとして、県の専門家会議で推奨する意見が出たことも考えられます」
 同社全店舗のなかでマスク販売の上位を占める静岡小鹿店(静岡市駿河区)を訪ねてみると、専用コーナーに限らず、あちこちにマスクやマウスシールドが陳列されていた。同社でマウスシールドの販売を始めたのは昨年8月。ちょうど感染者数も落ち着いた頃で引き合いもあったが、感染者が増加傾向に転じると「マスクへと戻っていった」(販売企画促進室)という。(TEAM NEXT編集委員 福田雄一)

 〈2021.2.27 あなたの静岡新聞〉⇒■元記事 シールド VS マスク 徹底検証しました【NEXT特捜隊】 

「マスク社会」のコミュニケーション 円滑にするには…

 マスクを着ける時間が長くなると、顔の表情も乏しくなりがち。印象良く自然な笑顔を目指したレッスンを行う「スマイルトレーナーⓇ」の中村宏美さん(55)=静岡市清水区=に、表情豊かに生活を送るためのこつを聞いた。

「マスクを着用する時は、このくらい口角を上げないと笑顔に見えない」と話す中村宏美さん=2月上旬、静岡市
「マスクを着用する時は、このくらい口角を上げないと笑顔に見えない」と話す中村宏美さん=2月上旬、静岡市
     ◇
 マスクで口元が隠れると、自分は笑顔のつもりでも、人からはそう見えていないケースが多い。普段よりややオーバー気味に笑顔を作ってほしい。
 笑顔は口、頬、目で作る。頬が上がると目が笑ったように見えるが、意外と難しい。頬を上げるには、まずは口角を上げ、口元の筋肉をほぐすことから始めて。私は朝、鏡の前で10回ほどやっている。マスクをしている今は、気づいた時にいつでもできる。
 スマートフォンなどの使用で目が疲れている人も多い。目を思いっきり閉じ、ぱっと開いたり、こめかみを親指で下から押し上げたりする運動も取り入れて。ホットタオルで温めるのもいい。
 笑顔には、免疫機能に重要な働きをする「ナチュラルキラー細胞」を活性化させ、自律神経のバランスを整えたり、気持ちを前向きにしたりする効果がある。マスクの下でも笑顔を意識し、心身ともに健やかでいてほしい。
 〈2021.3.5 あなたの静岡新聞〉⇒■元記事/表情見えず難しい! 「マスク社会」のコミュニケーション