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〈 古民家再生 チャレンジ続く 〉

 浜松市西区の村松製油所が築100年超の母屋の大規模改修を完成させたという話題が届きました。古い民家や建造物に新たな命を吹き込むチャレンジが静岡県内各地で続いています。一方、古き良きかおりをそのまま未来に残そうという取り組みも盛んです。近年の事例をまとめてみました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・松本直之〉

古民家キッチン開店へ 築100年超の母屋改修 村松製油所

 食用油を製造販売する1872年創業の村松製油所(浜松市西区湖東町)はこのほど、異業種連携で取り組んだ築100年超の母屋の大規模改修を完成させた。テナントとして古民家キッチンが開店するのを前に6日、内覧会を開き、関係者に地元食材を使った本格料理が振る舞われた。

大規模改修を完了し、古民家キッチンが開店する新母屋。自慢のごま油などは店頭販売する=浜松市西区の村松製油所
大規模改修を完了し、古民家キッチンが開店する新母屋。自慢のごま油などは店頭販売する=浜松市西区の村松製油所
 古民家キッチンは10日にオープンする「ゑふすたいる」。中区のワイン&ジャパニーズグリル「フジタ」のオーナーシェフ藤田隼介さん(40)が運営し、三ケ日牛と浜名湖竜神豚の丼、自家製のフライドポテトやスイーツ類を提供する。営業は午前11時~午後5時(月、火曜定休)で、持ち帰りもできる。
 新母屋ではゴマを中心に多様な種から搾った油を店頭販売する。さらに、圧搾体験などを楽しめる工房を夏までに整えるという。
 改修と飲食参入は、製油所工場長の木下伸弥さん(41)の思いに賛同した藤田さんをはじめ、北区の住宅建設・リフォーム「Wish」や、中区の汁なし担々麺専門「ラボラトリー」の経営者が計画してきた。コロナ禍の挑戦を地域振興に結びつけようと、レトロ感満載のねじ式圧搾機を観光資源として生かした仕掛けも展開する。
 〈2021.6.8 あなたの静岡新聞〉⇒元記事

古民家などの意匠生かす 熱海にキュレーションホテル

 昭和初期に建てられた別荘などが残る熱海市東山地区に日本の伝統建築や工芸の美しさを堪能しながら滞在できる宿泊施設「キュレーションホテル」3棟がオープンした。古民家などの意匠を生かしながらリノベーションした建物で、運営会社のザ・キュレーションズ(同市)は、コロナ後の富裕層や訪日客の需要を見込む。

日本の伝統建築と華やかなデザインを融合させた須藤水園の内装(ザ・キュレーションズ提供)
日本の伝統建築と華やかなデザインを融合させた須藤水園の内装(ザ・キュレーションズ提供)
 3施設は、築88年で解体寸前だった元旅館を改修した「桃乃八庵(とうのやあん)」、築87年の古民家「須藤水園(すとうすいえん)」、築45年の元保養所の「桃山雅苑(ももやまがえん)」。
 いずれも伝統的な建築様式や職人の技を残しつつ、革新的なデザインを施した。幕末から明治期に欧州に流出した日本の美術品を買い戻して展示している施設もある。定員は6~8人で原則1棟貸し。桃乃八庵と須藤水園は1泊20万円~。桃山雅苑は32万円~(部屋貸しもあり)。
 プロデュースした同社の沢山乃莉子取締役は、同ホテルを「伝統の美の素晴らしさを未来につなげるためのビジネスモデル」と位置づけ、全国各地に展開したいとしている。
 詳細はホームページ<https://curationhotel.com>へ。
 〈2021.3.5 あなたの静岡新聞〉⇒元記事

川根笹間 米国人女性の挑戦 茶屋「蛍」オープン

 島田市川根町笹間地区で古民家の再生に取り組みながら暮らす米国人シェリー・クラークさん(55)が今秋、自宅の一部を改装して週末限定の茶屋「蛍」をオープンした。広大な敷地と趣ある建物を生かした民泊も開始し、静かな山村に観光客を呼び込もうと奮闘している。

週末限定の茶屋を開業した離れ(手前)。奥はクラークさんが暮らす母屋=2020年11月、島田市川根町笹間上
週末限定の茶屋を開業した離れ(手前)。奥はクラークさんが暮らす母屋=2020年11月、島田市川根町笹間上
 クラークさんが暮らすのは名主として集落を治めた岡村家の屋敷で、1602年の古文書も残されている。1950年代築とみられる母屋や納屋、蔵など10棟があり、茶屋に変身したのは8畳2間の離れ。鉄の装飾など当時の建具を残しつつ、押し入れ部分をカウンターにするなど大胆に改装した。
 「テーマは昭和の懐かしさ」(クラークさん)といい、蔵に眠っていた調度品や家具、クラークさんが購入したレトロな家電製品などが並ぶ。運営に地元住民も加わり、ゆったりした空間で地元産の煎茶やコーヒー、マフィンなどを提供する。
 水産資源管理の研究者であるクラークさんは15年前、笹間地区の雰囲気を気に入り移住した。家主が他界し損傷も激しかった屋敷を4年前に購入し、改修を少しずつ進めてきた。民泊は新型コロナウイルスの影響を受けたものの、口コミで県内外から来客があるという。茶屋の運営を手伝う沢本ひろ子さん(73)は「クラークさんの人柄のおかげ。いろんな人が来てくれて刺激になる」と話す。 屋敷の復元の様子や笹間地区の歴史、魅力についてホームページで発信するクラークさんは「この場所を地域の宝として多くの人に知ってほしい」と話している。茶屋「蛍」は毎週土曜日午前10時から午後4時まで。
 〈2020.12.1 あなたの静岡新聞〉⇒元記事

古い建造物 もちろん洋館もありますね

 薄緑に塗られた外壁が美しい木造2階建ての洋館が、和風家屋が並ぶ街道筋の中央に堂々と建っている。国登録有形文化財「旧五十嵐邸」。1914年に町屋を改築し建てられた邸宅は、地元住民28人によって往時の姿を保っている。

住民が主体となり保全されている旧五十嵐邸=静岡市清水区蒲原
住民が主体となり保全されている旧五十嵐邸=静岡市清水区蒲原
  「つぶして駐車場にするなんて話もあった」。そう語るNPO法人旧五十嵐邸を考える会の片瀬信江会長(67)によると、旧五十嵐邸は歯科医院兼住宅として長く使われていた。その後、空き家になり、取り壊しの話が浮上すると、街並みを愛する住民が声を上げ、行政も動いた。90年代後半、旧蒲原町が邸を取得した。行政・住民協働の方針の下で設立した同会が旧町の委託を受けて管理運営を開始した。
  邸宅の修繕には同会と地域の子どもらが参画した。時期によって異なる邸宅の塗装を調べ上げ、住民投票で薄緑に決めた。「こことここは子どもたちと一緒に塗ったのよ」と会員は外壁を指さし笑う。土壁の一部も小学生が塗り固めた。住民主体の維持管理の始まりだった。
  展示会やコンサート、地元小学生のための歴史講座などさまざまな催しが開かれる。地域住民が交流するサロンとして存分に機能している。かつて、予算の無駄だ、と批判を受けた保全事業は、「残しておいてくれて本当に良かった」と言われるまで浸透し、支持されるようになった。昔のままのまちの姿を子どもらにつなげるために、奮闘は続く。
 〈2021.2.18 静岡新聞朝刊から〉