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焼津こども館 7月4日開館

 焼津市の子育て支援施設「ターントクルこども館」が7月4日に開館します。2017年度に建設に向けた動きが本格化し、4年余りの時を経ていよいよお披露目となります。静岡新聞は焼津支局の記者を中心に当初からこの計画を追い掛けてきました。どんな施設になるのか、どんな思いを込めているのか、関連記事をまとめてみました。
〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・松本直之〉

焼津こども館が完成 にぎわい創出へ新拠点 7月4日開館

 焼津市がJR焼津駅前地区に整備していた子育て支援施設「ターントクルこども館」で6日、完成記念式典が開かれた。関係者ら約40人が出席し、新たなにぎわい創出拠点の誕生を祝した。

焼津おもちゃ美術館内のこどもが木製おもちゃで遊ぶフロア
焼津おもちゃ美術館内のこどもが木製おもちゃで遊ぶフロア
 こども館は地上3階建てで7月4日に開館する。絵本を取りそろえた「やいづえほんと」、木製のおもちゃで遊べる「焼津おもちゃ美術館」が入る。事業費は13億2673万円。
 おもちゃ美術館には、すし屋のカウンター、お茶やリンゴ畑に模した遊び場のコーナー、コマやけん玉といった懐かしいおもちゃの体験ゾーンを設けた。えほんとに入る絵本や図鑑は子どもが取り出しやすいように、表紙を正面に向けて陳列する工夫を施している。
 式典で中野弘道市長は「子どもだけではなく、多くの世代に焼津ならではの体験をしてほしい」と新施設に期待を寄せた。式典後に出席者による内覧会も行われ、真新しい施設を興味津々で見て回った。
 〈2021.6.7 あなたの静岡新聞〉⇒元記事ページ

3年後には市民主体の運営に移行する計画

 焼津市がJR焼津駅前地区に建設中の子育て支援施設「ターントクルこども館」が7月4日にオープンする。おもちゃで遊んだり、絵本や図鑑を読んだりと、多様な機能を備える。市直営でスタートし、3年後に市民主体の法人に運営を移管する計画だ。「独り立ち」するために、より多くの市民の参画が鍵となる。

7月4日のオープンを待つターントクルこども館=25日、焼津市栄町
7月4日のオープンを待つターントクルこども館=25日、焼津市栄町
 幅広い世代が集い、子どもを育てる場の創設は、子育て世代の定住拡大を狙う焼津市にとって長年の課題だった。市民への運営移管に当たり、市は運営を担う「市民人材」を募る講座を開いた。31人が参加し、うち修了した12人が3年間、受付業務や予算管理などを実践で学び、法人設立の屋台骨を担う。
 開設当初、おもちゃの遊び方や絵本の読み聞かせなど実務を担うボランティアは90人でスタートする。こちらの養成講座には応募が殺到し、6月以降2回分の定員枠は既にいっぱいという。
 3年後を見据えると、こうした市民人材やボランティアの育成に時間的余裕はない。市は万全の態勢で、人材育成を支援する必要がある。
 市内の児童向け施設は旧大井川町に「とまとぴあ」があるが、子育て世代を中心に焼津駅の周辺市街地での施設整備を求める声が根強かった。
 こども館は地上3階建てで、木製のおもちゃで遊べる「焼津おもちゃ美術館」、絵本などを取りそろえた「やいづえほんと」が入る。年間入館者数を両施設で7万人と見込む。当初の想定は14万人だが、新型コロナウイルスの影響で入場制限の措置を設けることから下方修正した。
 施設内容は既存の子育て施設と一線を画す。おもちゃ美術館は東京都新宿区の「東京おもちゃ美術館」の運営NPO法人と連携協定を結ぶ予定。同美術館から木製おもちゃやノウハウの提供を受ける。一般的な図書館と異なり、貸し出しはしない。絵本や図鑑など5千冊は三大テーマに絞って並べるなど、配置を工夫する。
 こども館開設で子育て世代の来館者が見込まれ、焼津駅前通り商店街の共同イベントも企画しているという。こうしたにぎわい創出につなげる政策の充実も期待したい。
 少子高齢化で、子どもは「まちの宝」といわれる。「子育てしやすいまち」に深めていくためにも、こども館を子育て世代だけではなく、老若男女が交流する場にしてほしい。
 〈2021.5.30 あなたの静岡新聞〉⇒元記事

東京おもちゃ美術館のコンセプトを反映

 ■東京おもちゃ美術館長・多田千尋氏に聞く

多田千尋氏
多田千尋氏
 焼津市が焼津駅前に整備予定の子育て支援施設「ターントクルこども館」には、東京都新宿区にある東京おもちゃ美術館のコンセプトが反映される。全国に広がる姉妹施設の中で最大面積のおもちゃ美術館になる計画。県内外からの利用が見込まれ、地域振興への期待も高まっている。
 -新施設の概要は。
 「3階建てで1階にこども図書館、2、3階におもちゃ美術館が入る。おもちゃ館だけで延べ床面積1500平方メートルを超え、新宿の施設よりも充実した内容になる。図書館は無料で、おもちゃ館は入館料を徴収する。東京おもちゃ美術館を含む共同事業体が内装設計の委託を受けた。来年度中の完成を目指す」
 -美術館の特徴は。
 「木のおもちゃとの触れ合いに特化する。『あかちゃん広場』では、柔らかく温かいスギを内装やおもちゃに多用し、赤ちゃんを優しく包み込む空間をつくる。『グッド・トイの部屋』では、全国のおもちゃコンサルタントが認定する良質なおもちゃで遊ぶことができる。『おもちゃ工房』には最新の糸のこを並べ、木工体験を提供する。国産材のおもちゃを多くそろえたい。子どもの遊びをおもちゃ学芸員がサポートする」
 -おもちゃ学芸員とは。
 「市民によるボランティアスタッフのこと。新宿の施設では350人いて、運営を支えている。焼津では市内外から募り、200人養成したい。来春には養成講座を始める計画。赤ちゃんからお年寄りまで誰もが楽しく過ごせる多世代交流施設を目指す」
 -集客の見込みは。
 「秋田県由利本荘市の施設では昨年、年間利用者10万人のうち8割が市外からだった。焼津も市外からの利用が半数以上になる想定だ。市外からの利用者には適切な料金を払ってもらい、市民は格安にしてバランスを取る。これからの時代の公共施設は、持続可能な“稼げる施設”でなければならない。観光資源にするつもりで最初から市に提案している。市民に負担が掛かる金食い虫の施設には決してしない」
 -今後の課題は。
 「市民が主体的に関わる『市民立』の運営体制を目指している。そのためには、市民にいかに当事者意識を持ってもらうかが重要になる。駅前通り商店街や地元の静岡福祉大とも連携し、駅前のにぎわい創出や学生の教育にも貢献したい」

  ただ・ちひろ 東京おもちゃ美術館を運営する認定NPO法人理事長。全国の地域団体と協力し沖縄、山口、秋田の各県に姉妹おもちゃ美術館を設立。東京都出身、58歳。
 〈2019.8.30 静岡新聞朝刊「本音インタビュー」から〉

2017年度に構想始動 「とまとぴあ」と2拠点に

 焼津市は2017年度、乳幼児から高校生まで遊べる「ターントクルこども館」の建設準備に乗り出す。幅広い世代の子供が集う屋内施設を新たに整備し、教育や交流、にぎわいの拠点づくりを目指す。

  17年度当初予算案に基本構想策定に向けた事業費348万円を盛り込み、建設場所や機能、スケジュールを検討する。近隣の藤枝、島田市にも同様の子育て支援施設があるが、焼津市は「子供から大人まで幅広い世代が活用できる拠点にしたい」として、機能面で周辺市との差別化を図る。建設費はふるさと納税の寄付金を充てる方針。
  焼津市は大井川地区にある児童センター「とまとぴあ」も17年度、改修工事を始める。出入り口や遊具をリニューアルしたり、照明器具を発光ダイオード(LED)化したりするほか、隣接する宗高さくら公園と一体的な整備などを進める。工事は17年度中に完了する予定。
  市は「ターントクルこども館」と「とまとぴあ」の2施設体制で、時代に即した子供の遊び場を確保し、子育て世帯の交流促進や負担軽減につなげる。
 〈2017.2.15 静岡新聞朝刊から〉
地域再生大賞