知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

サクラエビ春漁を振り返る

 近年不漁に見舞われている駿河湾産サクラエビ。ことしの春漁が終了しました。初競りや操業の様子、水揚げ量の推移など“駿河湾の宝石”を巡る動きを追いました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

水揚げ量は約140トン 上向き傾向も回復途上

 駿河湾産サクラエビの春漁期が4日、終了した。水揚げ量は昨年秋漁に比べ1・4倍の約140トン(出漁計19日)。極度の不漁に見舞われている近年の中では漁が上向いたかに見えるが、十数年前までは春漁だけで千トン以上を水揚げしており、宮原淳一由比港漁協組合長(80)は「いまだ回復の途上だ」と述べた。

駿河湾産サクラエビ漁の水揚げ量推移(最近5年間)
駿河湾産サクラエビ漁の水揚げ量推移(最近5年間)
 静岡県桜えび漁業組合は主産卵場を保護するため事実上の禁漁区としていた富士川沖について、ことしの春漁では新たに操業可能な「保護区」に設定して臨んだ。1日夜の資源調査で群れが見られ、数回の産卵調査でも卵が確認されたが、依然として全漁期を通じて群れは薄く不安定だった。
 漁期終盤の5月20日以降に700~千杯程度(1杯=15キロ)の漁獲が集中した。全漁期通じての累計平均価格は昨年春漁に比べ15%以上安い7万2700円程度だった。
 宮原組合長ら複数の漁業関係者によると、5月下旬には富士川沖でも群れが確認され、最終的に保護区内で85杯の水揚げがあった。しかし、同月中旬までは群れがほぼ見られない状況。主漁場は同漁協と三保の中間地点の沖合3~5キロだった。
 富士川下流部では、採石業者による長年の不法投棄が原因とみられる粘着性の高分子凝集剤入りポリマー汚泥が蓄積し、生態系への影響が甚大だ。県はサクラエビを含め多様な生物に影響している可能性があるとして、山梨県と協力した汚泥の拡散状況の科学的な調査に乗り出す方針。
 ■元記事=サクラエビ春漁終了、140トン「回復途上」 富士川沖 依然群れ薄く(「あなたの静岡新聞」2021年6月5日)

初競りは1ケース8万円台の「ご祝儀相場」【動画あり】

 駿河湾サクラエビ春漁の初競りが31日(※3月31日)早朝、由比漁港(静岡市清水区)と大井川港(焼津市)で開かれた。初漁の30日夜は約2・2トンの水揚げで、1ケース(15キロ)当たりの両市場の平均取引値は約8万1500円だった。コロナ禍に伴う需要低迷の中でも昨年春と比べて約1万5千円高く、漁業関係者は「ご祝儀相場もあったのでは」とみる。

駿河湾サクラエビ春漁の初競りが行われ次々に入札する仲買人=31日午前5時35分ごろ、静岡市清水区の由比漁港
駿河湾サクラエビ春漁の初競りが行われ次々に入札する仲買人=31日午前5時35分ごろ、静岡市清水区の由比漁港
 初漁は120隻が全海域で資源調査を行うとともに三保沖を中心に操業。漁獲は昨年春漁初日の約2・3トンをやや下回った。県桜えび漁業組合が「保護区」とした湾奥での操業はなかった。由比港漁協幹部は「由比漁港から東の海域は反応が薄かった」としている。
 由比漁港の初競りには、地元の由比と蒲原両地区の加工業者が集まった。水揚げのうち約1・7トンを扱った由比の最高取引値は約8万6千円(昨年春は約8万1千円)。蒲原地区の仲買人は「初競りの価格は損得を度外視。ビジネスではなくエビを欲しがるなじみのお客のために競る」と話した。
 現在の需要について、同地区の加工業者は「コロナ禍と不漁の影響が続いている。コロナで旅館や外食店の客が減っている上に未曽有の不漁で水揚げ量が読めないため、問い合わせがあっても具体的な商談までいかない」と苦しい表情を見せた。
 由比港漁協の宮原淳一組合長は「今日はあくまでご祝儀。多くの人に食べてもらいたい。これから値は下がると思う」とした。
 ■元記事=サクラエビ春漁初競り 「ご祝儀」1ケース8万円台(「あなたの静岡新聞」2021年4月1日)

実石正則・静岡県桜えび漁業組合長「自主規制、検証が必要」

 日本では駿河湾でしか専門の漁が行われていないサクラエビ。ことしの春漁は三保沖を中心に漁獲が続き、本来の漁場で主産卵場の富士川沖などでは魚影が薄い状況で〝異変〟は続く。一方、静岡県桜えび漁業組合は、新たに「保護区」に設定した富士川沖などで資源回復があった場合、操業・水揚げすることにした。回復の現状や漁のあるべき姿を漁師、県、研究者に聞いた。

実石正則組合長
実石正則組合長
 
 ―春漁を迎え資源状況をどう見るか。
 「ここまでは休漁期間もあり大きな漁獲にはつながっていないが、海の表情は日々刻々と変化し、何が正常な状態かというのも分からない部分がある。漁業者はそれを自分の記憶と照らし合わせて判断し漁をする。その点が科学とは相いれない部分があるかもしれないが、長年蓄積してきた経験という情報にも価値があるはずだ。とは言っても今まで感覚に頼りすぎていた部分がある。総資源量の科学的な把握はこれから末永く漁をしていきたいわれわれ漁師にとっても歓迎すべきことだ」
 ―組合の自主規制の妥当性は。
 「サクラエビ漁を120年やってきて初めての試みで、手探りの中で決定した。あくまで地場産業をしっかり守るための規制であって、本当にここまで厳しい内容が正しいのか検証が必要だと思う。しかし、組合内に現在の規制内容に反対する声は無く、規制の最大値まで漁獲したこともない。今春から『禁漁区』としていた富士川沖など湾奥の一部を『保護区』としたが、試験網では無い網を使ってサンプルを採取するためで、資源量の把握は必要と考えている。われわれが行っていることが正しかったかどうか、次の世代にも検証してもらいたい」
 ―県など行政に求めることは。
 「今この段階では自分たちの手で解決したいという強い思いを共通して持っている。歯を食いしばって、できるだけのことをしているつもりだ。資源量の把握や生態の研究については県水産・海洋技術研究所と密接に協力していくが、行政が主導した規制をしてほしいとか、補償をしてほしいとかそういうことは最初から特に求めていない」
 ―富士川の汚濁について考えは。
 「富士川については組合ではなく、由比港漁協が担当することになっている。もちろん、環境に良いわけはないという気持ちはある。最も危惧するのは風評被害が発生することだ。サクラエビ、シラス、それを食べる魚と、駿河湾全体の汚染という話になる。そうなれば漁業に大きな損害が発生してしまう。ただ、船主や乗り子で富士川の影響を危惧している人は多い。今後も注視していきたい」

 じついし・まさのり 静岡市清水区蒲原の船主として40年以上駿河湾産サクラエビ漁に携わり、副組合長時代には資源保護を目的とした自主規制案もまとめた。2019年から現職。65歳。
 ■元記事=自主規制、検証が必要 実石正則・静岡県桜えび漁業組合長【サクラエビ異変】 インタビュー 春漁―私の視点㊤(「あなたの静岡新聞」2021年4月26日)

サクラエビ丼提供スタート 焼津・大井川港食堂「さくら」

 駿河湾産サクラエビを看板メニューに掲げる大井川港漁業協同組合の直営食堂「さくら」(焼津市飯淵)は1日(※4月1日)、サクラエビの春漁に合わせ営業を開始した。新型コロナウイルス感染防止のため、席を3割ほど減らした店内で、開店を待ちわびた多くの市民が新鮮な海の幸に舌鼓を打った。

大井川港で水揚げされたサクラエビなどを使用した丼=焼津市のさくら
大井川港で水揚げされたサクラエビなどを使用した丼=焼津市のさくら
 大井川港で水揚げされたサクラエビのかき揚げや釜揚げシラスを乗せた丼のメニューを用意した。来店客の要望に応え、お土産用にサクラエビのかき揚げも販売している。
 昨年は新型コロナウイルス感染防止のため、営業開始が当初の4月初旬から6月25日までずれ込んだ。今年は、席数を66から48に減らし、席と席の間を空けて密にならないよう対策を施した。
 11月ごろまでの在庫は確保できる見込みだという。12月まで営業する予定。営業日時は木曜-日曜の午前10時半から午後2時まで。
 ■元記事=待ちわびたサクラエビ丼 焼津・大井川港食堂「さくら」営業開始(「あなたの静岡新聞」2021年4月2日)