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〈 継続か刷新か 静岡県知事選スタート 〉

 6月20日投開票の静岡県知事選は3日告示され、届け出順に無所属現職の川勝平太氏(72)と、前参院議員で無所属新人の岩井茂樹氏(53)=自民推薦=による一騎打ちの選挙戦がスタートしました。17日間にわたる両陣営の戦い、初日をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・村松響子〉

川勝氏と岩井氏 告示日ドキュメント

 川勝氏はJR東海道線に乗って県西の鷲津駅から東の熱海駅まで移動し、計11の駅前で街頭演説を展開。対する岩井氏は東中西の3カ所で聴衆千人規模の出陣式を開き、支持基盤の強固さを見せつけた。選挙戦初日の両氏の動きを追った。 

支援者と肘タッチを交わす川勝平太氏=3日午後、JR島田駅前/集まった聴衆と肘タッチをする岩井茂樹氏=3日午前、静岡市葵区
支援者と肘タッチを交わす川勝平太氏=3日午後、JR島田駅前/集まった聴衆と肘タッチをする岩井茂樹氏=3日午前、静岡市葵区
 ▶▶午前9時半 
 静岡市葵区で川勝、岩井両氏の出陣式が同時に始まった。350人(主催者発表)集まった川勝陣営に対し、岩井陣営には1200人(同)の聴衆。川勝陣営には鈴木敏夫川根本町長、同氏を推薦する連合静岡の中西清文会長、はごろもフーズの後藤康雄会長らが出席。岩井陣営には中野弘道焼津市長、杉本基久雄牧之原市長のほか、自民党本部から山口泰明選対委員長が激励に訪れた。 
 ▶▶午前11時10分
 川勝氏が鷲津駅で各駅停車の遊説を開始。「湖西は世界のトヨタ、豊田佐吉を生んだまち。愛知県との結節点で未来性がある」。電車移動について「長くなりがちな遊説を管理しやすい」と陣営幹部。 
 ▶▶正午 
 岩井氏がJR沼津駅前で東部出陣式。「理想は石川嘉延前知事。石川さんは53歳で知事になった。私も昨日53歳になった。天命を感じる」。式には10市町の首長が登壇。群衆の中で見守る首長の姿も。 
 ▶▶午後0時半 
 川勝氏は静岡文化芸術大学長時代に通ったという浜松駅構内の立ち食いそばで昼食。一方、岩井氏は新幹線で移動中、夫人と一緒に駅弁でランチを済ませた。 
 ▶▶午後2時 
 岩井氏が最初の街頭演説先に選んだのは長泉町。池田修町長の激励を受けた岩井氏は全国的に県内のワクチン接種が遅れていると指摘。「民放の対談で川勝知事に県が進める大規模接種会場の件を聞いたが、誰が接種するのかまだ考えていないと。地域との連携が取れておらず、地域の人のことを考えていない」 
 ▶▶午後2時20分
 大井川流域に入った川勝氏は島田駅前で演説。「リニアという国策のために自然を破壊しかねない。相手は政権与党の組織力を持った猛獣。静岡空港を降り立ったときに水が枯れていたら悲しい」。次に降車した藤枝駅前では「(志太榛原には)うまい酒がある。水質が悪くなると名酒が名酒でなくなる」 
 ▶▶午後6時 
 浜松駅近くで西部出陣式を行った岩井氏は電動化など県西部で盛んな自動車産業を取り巻く環境の変化について「浜松にも多くの部品会社がある。どうやって守っていくかという話は県だけではできない。中小企業の声を聞き、オール静岡でぶつかっていく」と訴えた。
 ▶▶午後7時40分
 川勝氏はこの日最後となる遊説を熱海駅前で実施。斉藤栄熱海市長も応援に駆け付ける中、「熱海は何と言っても観光。(観光産業を支援する)国のお金が県に降ってきた。旅館・ホテルの感染症対策に使える。苦難を乗り越え、伊豆半島をよくしよう」
 〈2021.6.4 あなたの静岡新聞〉

川勝平太氏の第一声は?

 任期満了に伴う静岡県知事選は3日告示され、4選を目指して立候補を届け出た無所属の現職川勝平太氏(72)はJR静岡駅北口で第一声を上げた。発言の要約は次の通り。

第一声を上げる川勝平太氏=3日午前、JR静岡駅北口
第一声を上げる川勝平太氏=3日午前、JR静岡駅北口

  ■川勝氏第一声
 新型コロナウイルスは命の問題、命の問題は水の問題だ。大井川だけが命の水ではない。伊豆半島では市民がメガソーラーの建設反対に立ち上がった。メガソーラーが森を破壊すると川が汚れ、漁場がやられるからだ。富士川の汚染はサクラエビ減少の原因になった。大井川の水源である南アルプスは62万人の命を育んでいる。この希少な水の減少は許せない。
 自民推薦の対立候補がリニアのルート変更や工事中止の言及を始めた。この人を国土交通副大臣に任命し、知事選に推薦した自民党総裁の菅義偉首相は、この発言に責任を取る立場にある。
 新型コロナのワクチン接種を進めるため、私が先頭に立ち市町を助ける。全国の中で接種が遅れているのは人口に対する医師数が少ないから。このため私は医学生の奨学金で、570人以上の医師を増やしてきた。教育では35人以下学級を小1から中3まで全国に先駆け実現した。医療産業の発展や第1次産業のルネサンスにも取り組む。
 東京一極集中の流れが変わった。人々は自然への回帰を求めている。危機を共に乗り越え、誰ひとり取り残さない地球社会の理想郷にわれわれの地域はなれる。
〈2021.6.3 あなたの静岡新聞〉⇒ 川勝氏 第一声書き起こし

岩井茂樹氏の第一声は?

 任期満了に伴う静岡県知事選が3日告示され、前参院議員の岩井茂樹氏(53)=自民推薦=は静岡市葵区の常磐公園で第一声を上げた。発言の詳細(書き起こし、一部省略・要約・補足)は次の通り。

第一声を放つ岩井茂樹氏=3日午前、静岡市葵区
第一声を放つ岩井茂樹氏=3日午前、静岡市葵区

 ■岩井氏第一声
 これまでの静岡を国政の立場からも見てきた。「ものづくり静岡」と言われたこの県の工業製品出荷額は減っていて、農業も生産額が横ばいに、お茶の産出額も鹿児島県に抜かれた。医者の数も少ない。まさに蓄積してきた閉塞(へいそく)感の結果ではないか。風穴をあけて、新しい風を今入れないと間に合わなくなる。
 新型コロナウイルスのワクチン接種を最優先でやる。静岡は接種率が高くない。従事者が少ないのも原因と思うが、県が中心となり国、市町と連携していくことも重要。現場の声をしっかり聞いて進めたい。
 人口減少も県の力を奪っている。税収が減り、耕作放棄地や空き家が増え、中山間地では交通がなくなってくる。南海トラフ地震も想定され、台風や豪雨災害も激甚化、頻発化している中で、皆さんの命を、財産をしっかり守ることで県の魅力を向上させる。
 この県は自動車産業が命。産業構造が変わっていく中で、国と連携して守っていきたい。体力には自信がある。トップセールスでこの県の産品を世界に広げていきたい。東京、大阪から企業誘致もし、この静岡に活力を呼び込んでいく。
〈2021.6.3 あなたの静岡新聞〉⇒ 岩井氏 第一声書き起こし

「第一声」分析 法政大院・白鳥研究室

 法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)の研究室が3日、同日告示された知事選に立候補した両氏の第一声の演説内容を分析した。現職の川勝平太氏(72)がリニア中央新幹線工事に関する持論やこれまでの実績を強調したのに対して、前参院議員の新人岩井茂樹氏(53)=自民推薦=は決意表明や経済振興対策に多くの時間を割き、両氏が選挙戦で訴える重点分野の違いが表れた。

候補者の第一声を分析したグラフ
候補者の第一声を分析したグラフ
 川勝氏は約20分間の演説の中で、リニア工事に伴う水問題や伊豆半島のメガソーラー建設問題など、環境政策に関する発言が約25%を占めた。リニア工事を巡っては、岩井氏の姿勢や、同氏を推薦する自民党、企業などへの批判も合わせると41%に及び、演説時間は計約8分45秒分に上った。医療政策は約12%使い、新型コロナウイルスのワクチン接種や医師不足解消などを訴えた。持続可能な開発目標(SDGs)や教育の充実、スポーツ振興にも触れた。
 一方、岩井氏は、出陣式に参加した来賓の紹介や登壇に相応の時間を使い、本人の演説は7分程度だった。演説の31%は決意表明に充て、知事選に初めて挑む思いや将来の展望を語った。政策面では1次産業や自動車産業などの経済振興に16%、新型コロナの感染拡大対策に14%を使った。現県政への批判には15%を割き、ワクチン接種の遅れや産業振興の停滞を指摘。国や市町との連携の重要性を主張した。このほか女性活躍や若者の県外流出対策を訴えた。
〈2021.6.4 あなたの静岡新聞〉
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法政大大学院の白鳥浩教授(現代政治分析)

 ■【識者に聞く】現県政と国政…二つの審判
 今回の静岡県知事選における有権者の投票の判断基準は、この知事選をどのような性格の選挙であるとみるかによる。選挙の争点としては「大井川の水」や「コロナ対策」などが挙げられるが、これらの争点に関して2人の候補は政策的にかみ合っていないと言える。むしろ注目すべきはこの知事選の二つの側面、性格ではないだろうか。
 それは第一に県政担当者としての「川勝県政をどう見るか」という側面と、第二に、昨年から新たに国政のかじ取りとなった「菅政権の国政運営をどう見るか」という側面である。
 第一の県政の担当者を決めるという側面は、そもそものこの選挙の本来の性格を表していることは言うまでもない。川勝氏は知事として3期12年の間、県政を担当してきた。その間の業績に対する「川勝県政への信任投票」としての意味合いである。強く環境保護を打ち出し、県民のいのちの水を重視する政策を打ち出す川勝氏の今回の訴えとともに、これまでの政策の成果が問われていくという側面である。
 第二の国政の担当者を決めることへの影響という側面は、衆院議員の任期が今年の秋に切れるという中で行われる、この選挙の特異な性格を表している。自民党は、国土交通副大臣であった岩井氏を、同じく12年ぶりに自民党の本部推薦を得て擁立することとなった。擁立当時、選挙の指揮を執る党県連会長は、菅内閣の現職の法務大臣である。これにより、いきおい「衆院選の前哨戦」としての性格を強く帯びることとなり、代理的な「菅政権への信任投票」としての意味合いも持つこととなった。コロナ対策に対する政府の政策の評価、そして近い将来に行われる衆院選における政党選択の予備選といった側面が付されているのである。
 思えば12年前の知事選は民主党による政権交代への前哨戦でもあった。そうした県政、国政の多様な側面をはらみながら、県民の審判を投票日まで待つことになる。今後の両候補による真摯(しんし)な論戦を期待したい。
 (白鳥浩/法政大教授・現代政治分析)
〈2021.6.3 あなたの静岡新聞〉