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〈 わたしの街から 掛川市・東山地区 〉

 山肌に造られた巨大な「茶」文字で知られる粟ケ岳(標高532メートル)の麓に広がる静岡県掛川市・東山地区。新茶期にもえぎ色の茶園が一面に広がる景色は圧巻です。5月1日、今年の八十八夜も新茶を摘み取る機械の音が東山の各地で聞こえました。
〈静岡新聞社掛川支局 伊藤さくら〉

銘茶づくりへ農家一丸 団結力今も

 全国茶品評会で常に高い評価を受ける東山茶。その特徴は2013年に世界農業遺産に認定された「静岡の茶草場農法」。ススキなどの茶草を冬に刈って畝間にまくことで、柔らかい土ができ、良質なお茶を生産できる。

茶文字を背に八十八夜のお茶を収穫する農家
茶文字を背に八十八夜のお茶を収穫する農家
 茶農家が一丸となって地域を盛り上げようとする熱意も銘茶を生み出す。粟ケ岳の茶文字は地元の茶農家が1932年、お茶の宣伝と観光効果を目的に造った。一辺130メートル。遠方からも眺めやすいよう構想を練ったという。当時は松を植えていたが、現在は約千本のヒノキを急斜面に植えている。
 昭和初期に茶業振興のために大がかりな作業をやり遂げた農家の団結力は今にも受け継がれている。昨年の新茶期から富士東製茶農業協同組合、東山茶業組合、山東茶業組合の3共同工場が新茶初取引用の荒茶を合同で生産。今年は田中農園も加わり、掛川の茶業をけん引してきた東山の生産者同士が手を取り合って、手摘み茶を仕上げた。
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掛川市・東山地区
 

お茶愛♥表現 山肌にハートマーク

 昨年は茶文字の右横に大きなハートができあがった。山頂の粟ケ岳世界農業遺産茶草場テラスや、麓の東山いっぷく処を管理する茶文字の里東山の杉山敏志さん(69)が「お茶LOVE」を表現しようと茶草を縦60メートル、横40メートルのハート形に刈った。現在は医療従事者への感謝とコロナ終息への願いを込めて毎晩、ハートを青くライトアップしている。

 茶草場テラスから望む大茶園は昨年、第13回県景観賞(美しいしずおか景観推進協議会主催)で最優秀賞を受賞。貴重な農法を未来に受け継ぎ、味わい深い東山茶を後世に残そうとする茶業者の思いが美しい景観をつくり出している。
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東山いっぷく処で新茶を味わうハイキング客

粟ケ岳には自然がいっぱい

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茶園のハイキングコース


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山道に咲くシャガ


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たびたび遭遇する野生のカモシカ


茶園と山道、二つの顔 愛され続ける景色広がる

  登頂まで約1時間と、登山初心者でも挑戦しやすい粟ケ岳。東山茶をふるまって登山者を癒やす東山いっぷく処には無料駐車場とサイクルラックが完備され、週末にはハイキングやサイクリング客でにぎわう。

  いっぷく処からスタートするハイキングコースは前半は茶園、後半は山道と二つの顔を持つ。山道に入り、しばらく歩くと突然、足元の平たい岩の上に小枝で作られた日付が目に入る。ほぼ毎日変わる小枝の日付は登山者の間でも話題に。 日付を変えているのは近所に住む松浦勇さん(93)。
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松浦さんが毎朝変更している小枝の日付

「毎朝の習慣になっている。登れる限りこれからも登り続けたい」と意気込む。
  いっぷく処には登山回数を記録するノートが置いてある。松浦さんは1700回以上、中には2800回近く登頂した高齢女性の名前も。東山にはほかでは見ることが難しい貴重な植物を季節ごとに楽しむことができ、登山者を飽きさせない。カモシカに遭遇することもしばしば。美しい草花と伊豆半島まで一望できる山頂からの景色が登山者を魅了し続けている。