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一番茶終了 正念場続く静岡茶

 静岡県産一番茶の生産がほぼ終了しました。当初は気象条件に恵まれ、「史上最速」のペースで生育が進みましたが、4月に気温の低い日が続いたことで、記録的な大減産となった昨年と同水準となる見通しです。コロナ禍による新茶商戦の不振、担い手の高齢化に伴う茶園面積の減少など静岡茶を取り巻く厳しい現状を追いました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

生産は最低水準、静岡県産一番茶 単価は上向き、二番茶に期待

 「たくさん売りに出せない以上、生産努力に見合った価格で買ってほしい」。5月上旬、静岡市葵区の静岡茶市場。売り手の生産者は利益を確保しようと、粘り腰で買い手の茶商と交渉を続けた。

静岡茶市場 県産一茶取扱量と平均単価
静岡茶市場 県産一茶取扱量と平均単価
 同市場によると、28日時点の静岡県内産一番茶取扱量は前年の最終実績比17%減の664トンと過去最低を記録した前年を下回った。ただ、価格面は堅調で1キロ当たりの平均単価は21%高の1911円と4年ぶりに上向いた。
 県内産一番茶の約4割を扱うJA静岡経済連も「生産量は昨年並みかやや少ない。価格は2割ほど高い」(茶業課)とみる。
 ことしは1月以降平均気温が高く、芽生えの時期が平年より4~10日程度早まり、静岡茶市場の新茶初取引は史上最も早い14日に行われた。ただ、その後の摘採期に最低気温が例年より低く推移した地域があり、山間地を中心に芽伸びが抑えられてしまった。
 県中部の茶農家は「良品を出荷しようと、摘み取り作業を急いだ。新茶商戦にたくさん出荷できると期待していたが、思うように量が増えなかった」(県中部の60代茶農家)と残念がる。
 一方で、ことしの県産新茶の出来栄えは良く、品質の評価は総じて高い。一番茶の量が少なかったこともあり、6月上旬に生産が本格化する二番茶への期待は高まっている。
 新型コロナの影響で消費地の専門店からの引き合いは弱いものの、巣ごもり需要の影響でスーパーやネット通販向けの手ごろな価格の茶には一定の需要がある。静岡市内の製茶問屋は「通販用のお茶の仕入れが足りていない。売り物がなければ商売にならない」と話す。
 静岡茶市場の内野泰秀社長は「ことしは仕入れが足りていない問屋が目立つ。二茶の取引は平年以上に活況になるのでは」と期待する。
 ■元記事=静岡県産一茶生産の取扱量、最低水準 コロナ禍、担い手高齢化… 単価は上向き(「あなたの静岡新聞」2021年5月31日)

今シーズンは温暖な気候 新茶初取引は史上最も早かった

 新茶シーズンの到来を告げる静岡茶市場(静岡市葵区)の新茶初取引が14日(※4月14日)朝、行われた。昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で式典が中止となり、2年ぶりの開催。温暖な気候の影響で新茶の生育が早く、史上最も早い初取引会となり、静岡県内産一番茶3294キロが上場した。活発な商談が繰り広げられ、本格的な新茶取引が幕を開けた。

商談が成立し威勢のいい手合わせの音が響く新茶取引=4月14日午前、静岡市葵区の静岡茶市場
商談が成立し威勢のいい手合わせの音が響く新茶取引=4月14日午前、静岡市葵区の静岡茶市場
 午前7時の取引開始と同時に、マスクと手袋を着用した売り手と買い手が商談を進めた。商談成立と同時に「パ、パ、パン」と3回手をたたく「手合わせ」の音が響いた。
 県内産の上場は69点で2年前の初取引日の1132キロを大きく上回った。1キロ当たりの平均単価は4207円。県外産は盛期を迎えている鹿児島県産を中心に1万5000キロが上場した。
 取引開始に先立って行われた式典で、同市場の内野泰秀社長は「生産者と販売者の懸け橋として流通を支え、全国においしいお茶を届けたい」とあいさつ。川勝平太知事は「巣ごもり需要でリーフ茶の魅力は見直されており、文化、産業として支えていきたい」と語った。
 ■元記事=新茶シーズン到来 静岡茶市場で初取引 史上最も早く(「あなたの静岡新聞」2021年4月14日)

茶産出額 初めて鹿児島に抜かれる

 農林水産省は12日(※3月12日)、2019年の農業産出額を発表し、生産量で日本一の静岡県の茶は前年比18・5%減の251億円と激減、生産量で猛追していた鹿児島県に初めて抜かれた。産出額は鹿児島も13・1%減だったが252億円と静岡県をやや上回った。産出額ベースで静岡県は記録が残る1970年から続いた首位の座から陥落した。

静岡県と鹿児島県の茶産出額と荒茶生産量の推移
静岡県と鹿児島県の茶産出額と荒茶生産量の推移
 茶の産出額は、生葉分と、製品の前段階に加工した「荒茶」分を合計する。静岡県は生葉147億円、荒茶104億円に対して、鹿児島は生葉163億円、荒茶89億円と、生葉の部分で初めて逆転された。静岡県は生葉の生産量が減り、取引価格が安かったことなどが原因とみられる。
 茶の生葉産出額は全国合計でも15・1%減の522億円と落ち込んだ。19年は、春先の冷え込みで新芽の生育が伸び悩み、生産量が落ち込んだ。急須で入れるリーフ茶の需要が低迷し、厳しい相場だった。
 静岡県の茶産出額は1992年の862億円をピークにほぼ右肩下がりの状況。荒茶生産量も減少傾向で、19年は静岡県2万9500トン、鹿児島2万8千トンと1500トン差となっていた。

 ■リーフ消費の拡大急務
 産出額ベースでは2019年に首位から陥落していた―。農林水産省が12日発表した19年茶産出額で、静岡県は長年守っていた日本一の座を鹿児島県に明け渡した。静岡県関係者は「荒茶生産量ではなく金額ベースで先に追い越されてしまった。特徴ある茶づくりで、静岡茶ブランドを高めていくしかない」とショックを受けた様子だった。
 「この年は減産と価格低迷が顕著だった。生産者所得向上のためには、(リーフ茶の)消費拡大がまったなしの状況だ」。県お茶振興課の小林栄人課長は危機感を強める。
 19年は、荒茶ベースでは静岡県の生産がトップを維持したものの、気象要因などもあって生葉ベースでは静岡県12万9300トン、鹿児島は13万7300トンと逆転されていた。
 静岡県産は、乗用の大型摘採機の導入などが難しい山の斜面や肥沃(ひよく)な台地での茶づくりが特徴。手間のかかる分、取引価格の高い一番茶の生産比率が高いが、リーフ茶需要の低迷で、供給量が減少しているにもかかわらず、相場も下降基調が続く。
 JA静岡経済連の真田泰伸茶業部長は「効率化できるほ場は基盤整備を進めて生産性を高めなければならないが、静岡は品質をより重視した茶づくりが生命線だ」と言葉に力を込める。
 大規模化した茶園で生産量でも静岡県を猛追する鹿児島に対し、県茶業会議所の伊藤智尚専務理事は「山間部などで生産される静岡茶の価値向上が課題だ」と指摘。「消費者に伝わる付加価値を発信しなければならない。静岡茶の再生に向けて業界を挙げて、消費拡大に取り組んでいきたい」と語った。

 【解説】価格低迷、垣根超え改革を
 静岡県主力の茶の産出額が激減した背景には、担い手の高齢化による茶園面積の減少と、急須で入れるお茶の取引価格のここ数年での急激な低迷がある。
 栽培面積はこの5年で4100ヘクタールも減少した。後継者が育ってないことなどが要因に挙げられるが、ペットボトル飲料などの躍進によるリーフ茶需要の低迷で、品質を売り物にしている静岡の茶業はニーズに合致せず稼げなくなっている。
 荒茶平均単価は1999年の1キロ当たり2400円をピークに下降し、19年は984円。一方、鹿児島県茶市場の平均単価は1048円と静岡茶を上回っている。
 県は本年度、業界内外の知見を取り入れるオープンイノベーションの手法で、静岡茶の新たな価値創造をうたった活性化策「ChaOI(チャオイ)プロジェクト」に着手したが成果はこれから。業界と産地の垣根を超えて一丸となって静岡茶ブランドの再興に向け改革を進めることが急務だ。
 ■元記事=本県茶産出額1位陥落 19年 史上初 鹿児島に譲る(静岡新聞2021年3月13日朝刊)

逆境の中、産地の垣根越えた商品開発も

 豊かな香り、透き通るような水色が特徴の中山間地域で生産する浅蒸し煎茶の魅力発信に向け、川根本町や島田、清水、浜松の30~60代と幅広い世代の7人の茶農家がタッグを組んだ。「静岡山のお茶連合」。茶価の低迷が進む逆境の中、産地を越えて、高品質な茶づくりを追求し、消費者に直接届ける商品開発に取り組んでいる。

商品第1弾となるワイルド7=川根本町
商品第1弾となるワイルド7=川根本町
 山のお茶連合は、浅蒸しの煎茶生産を盛り上げるために農家同士の生産ノウハウ共有などの連携を進めてきた、川根本町で茶園を営む高木郷美さん(64)が発起人となり、昨年、立ち上げた。
 メンバーの橋本立生さん(37)=同町=は「川根の伝統的な浅蒸し茶を残していきたい」と思い、7年前に茶業を始めて手もみの技術を習得した。浅蒸し煎茶づくりに情熱を燃やす農家同士の協力を通じ、浅蒸し煎茶のPR、販路拡大を目指す。
 昨年は消費者の目線に合わせた商品づくりに向けて、日本茶インストラクター協会などを交えた評価会を開催した。試行錯誤の末、団体としての事業第1弾として発売したのが生産者の顔の見える商品「ワイルド7」だ。
 生産者それぞれが作った10グラムの包装七つ入りで1100円。産地の持つ特色を楽しんでもらうことを目指し、急須の中で蒸らしたり、冷茶にしたりするなどの飲み方を解説したメッセージや生産者の名前、顔のイラストを盛り込んだ。県内商業施設などでの出張販売は好調で、ことしは増産する予定。県外での販売も検討している。
 高木さんは「山間部で作る希少価値のある浅蒸し煎茶は他県では少ない。需要掘り起こしに向け、広くPRしたい」と意欲を示す。
 ■元記事=浅蒸し煎茶に情熱深く 農家7人「山のお茶連合」【新茶特集】(「あなたの静岡新聞」2021年4月14日)