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〈 静岡東部にクラフトビール組合設立 〉

 静岡県東部は小規模醸造所がひしめく全国有数のクラフトビールの生産地です。新型コロナウイルス感染拡大に伴う外食や旅行の自粛ムードで売り上げ減少に苦しむ中、危機を乗り越えようとクラフトビール専門の協同組合が立ち上がりました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

6社が参加 材料の共同購入や知名度向上目指す

 静岡県東部のクラフトビール製造業者ら6社が28日、静岡クラフトビール協同組合の創立総会を沼津市で開いた。地域事業者が連携して組織化することで、経営安定化を図るとともに、知名度向上や消費者に求められる製品づくりにつなげていく。

自社製品を手に組合創立総会で意気込む関係者ら=沼津市
自社製品を手に組合創立総会で意気込む関係者ら=沼津市
 加盟するのは、柿田川ブリューイング▽リパブリュー▽蔵屋鳴沢▽ベアードブルーイング▽加和太建設▽ZOO―の6社。クラフトビールの協同組合は県内初で全国的にも珍しい。大手業者の参入などでクラフトビールを巡る経営環境の厳しさが増す中、連携して事業に取り組むことで業界と地域の活性化を図っていく。
 具体的には、原材料となる麦芽などの共同購入や、製品の共同保管、宣伝などに取り組み、コスト削減につなげる。製造過程で発生するモルトかすの活用や、各社の製品を販売するホームページの作成なども進める予定。設立準備から携わる県中小企業団体中央会が、他業種との連携も提案していくという。
 総会には関係者ら約10人が出席し、定款や事業計画などを協議した。発起人代表で代表理事に選出された片岡哲也柿田川ブリューイング社長(36)は「地域に根ざした活動を進める。将来的には県内全域に活動を広げていきたい」と述べた。
 
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 ■元記事=沼津にクラフトビール協同組合 6社で設立、業界と地域の活性化に(「あなたの静岡新聞」2021年5月29日)
 

コロナ禍 外食や旅行の自粛で売り上げ減少

 小規模醸造所が集中して全国有数のクラフトビール生産地になっている静岡県東部の製造業者など6社が28日、県内初で全国でも珍しいクラフトビール専門の協同組合を設立する。新型コロナウイルス感染拡大に伴う外食や旅行の自粛ムードで、売り上げ減少に苦しむ中、共同して販売や仕入れなどに取り組む体制づくりに乗り出す。

「静岡クラフトビール協同組合」の設立に向け、打ち合わせする関係者=17日、沼津市内
「静岡クラフトビール協同組合」の設立に向け、打ち合わせする関係者=17日、沼津市内
 クラフトビール製造に参入した大手メーカーとの競合に加え、コロナ禍で主に飲食店への卸売りが不振に陥るなど、各社は厳しい経営環境に追い込まれている。以前からイベント参加などで交流があった各社は、団結して危機を乗り越え、地元業界と地域を盛り上げようと「静岡クラフトビール協同組合」の設立を決めた。
 初代理事長に就任予定の片岡哲也柿田川ブリューイング社長(36)は「県東部は富士山の湧水に恵まれた地域。クラフトビールの聖地を目指す。将来的には全県で仲間を増やしたい」と意気込む。
 新組合は新たな販売チャンネルとして各社のビールや関連雑貨を扱うホームページを作成する予定。製造の際に出るモルトかすを組合が買い取り、飼料として販売することで新たな収益も確保する。
 モルトやホップなどの原材料や資材をまとめて購入することで、仕入れコストの削減につなげる。イベント開催などを通じて、情報発信や業界の交流促進も図る。リパブリューの畑翔麻代表社員(30)は「国内ビール消費量のうちクラフトビールはわずか3%。消費が拡大する余地は十分にある。ローカルながらも多彩なクラフトビールを発信し、市場を開拓したい」と説明する。
 設立に向けた手続きは県中小企業団体中央会が支援した。押尾昌俊東部事務所長(48)は「組合になれば仕入れ先との交渉力や行政への発言力も強まる。このビジネスモデルがうまくいけば、全国的にも注目される」と期待している。
 
 ■元記事=クラフトビール6社、組合旗揚げ 「聖地」目指し共同で仕入れ、市場開拓(「あなたの静岡新聞」2021年5月26日)

 

静岡東部は全国有数の密集地区 もともと地域の連携も強かった

 沼津市に今春(※2018年春)、新たなビール醸造所「柿田川ブリューイング」が誕生した。静岡県東部は12の小規模醸造所がひしめく全国有数のクラフトビール生産地。各醸造家は自店で他社のビールを紹介したり、定期的に情報交換会を開いたりと、地域の“ビール熱”を高めようと連携も強めている。

自身の醸造所でビールの仕込み作業を行う片岡哲也さん=沼津市
自身の醸造所でビールの仕込み作業を行う片岡哲也さん=沼津市
  「沼津クラフト」のブランド名で醸造を始めた柿田川ブリューイングの設立者、片岡哲也さん(33)。2016年まで8年間、ベアードブルーイング(伊豆市)に在籍した経験を持ち、「柿田川由来の水を使った、ホップとモルトのバランスの取れたビールを造りたい」と独立した。
  仲間3人と起業し、IPA(インディア・ペールエール)やラガーなど5種を造る。三島市内で直営パブを3月に開業させた。7日には工場内での販売も始める。
  沼津市内には17年4月、醸造所併設型パブ「リパブリュー」がオープン。店内で醸造した10種のほか、沼津クラフトの3種もメニューに加えた。伊豆の国市の「反射炉ビヤ」、ベアードブルーイングなど競合他社のビールも複数販売する。醸造責任者の畑翔麻さん(26)は「クラフトビールは地域特性や醸造家の個性が出やすい。愛好家を増やしビールで地域を盛り上げたい」と意気込む。
  県東部のビール醸造家らは16年2月から、クラフトビールの会と銘打った情報交換会を3~4カ月に1度のペースで開催する。沼津工業技術支援センターの職員も加わり、醸造技術や品質向上、需要拡大に向けた方策を練る。
  御殿場高原ビールなどを手掛ける時之栖(御殿場市)の門倉栄ビール事業部長は「醸造所が一堂に集まるビアフェスを開催したい」と話す。15年には伊豆の国市で県東部7銘柄を集めた実績がある。18年度は再現を目指して会員に働き掛ける。

 ■メモ
 クラフトビールは、小規模醸造所でつくるビールの総称。国税庁によると、ビールの製造免許場数(大手5社を含む)は2014年以降増加傾向で、16年度は265場。果汁などの副原料を使う発泡酒を主な製品にしている製造免許場数も10年度以降は右肩上がりで16年度は113場に達した。ビールと発泡酒の両方を持つ醸造所もあるため単純合算はできないが、国内には200~300カ所のクラフトビール醸造所があるとみられる。
 ■元記事=クラフトビール 県東部で活況 沼津に「柿田川ブリューイング」誕生 全国有数の密集地区 醸造家連携深める(「静岡新聞」2018年4月4日朝刊、肩書や表記はすべて当時)

英国パブ文化を日本に 定番はクリームラガー 代表の片岡さん醸造

 17年前に英国で出合ったパブ文化、ビール文化の美点を日本にも広めたい-。柿田川ブリューイング(沼津市)のエンブレムに刻まれた「SLOW BEER SLOW LIFE」のスローガンには、社長片岡哲也さん(36)=秋田市出身=の願いが込められている。「ビールはコミュニケーションを豊かにするツール。英国のパブに通って、それを学んだ。おいしいビールを通じて、飲み手の人生を豊かに彩りたい」

EXTRA SHIZUOKA 美茶(左)とクリームラガー(右)
EXTRA SHIZUOKA 美茶(左)とクリームラガー(右)
  語学留学で住んだブライトンは、ロンドンの南に位置する港町。現地に着いてすぐ、ホームステイ先の近所のパブに一人で行った。住宅街の真ん中にある約20席の小さな店は、近隣住民と常連ばかり。だが片言の英語でラガービールを注文し、モニターに映るサッカー・イングランド代表の試合を応援しているうちに、すっかり打ち解けた。「ビールを飲んでいる者同士の、特有の連帯感を知った」
  欧州、南米など世界各国から集まったクラスメートと、市内各地のパブに通った。その数百カ所以上に及んだ。日本では珍しかったベルギーのホワイトエールがお気に入り。パブでは、初対面の人でもすぐに親しくなれた。「みんな、それぞれの出身地のビールを誇らしげに勧めてくる。自分も帰国後にビール造りに携わりたいと強く思った」
  2008年、当時沼津港エリアにあったベアードブルーイング(現伊豆市)に入社。アメリカンエールの“名手”、ブライアン・ベアードさんから醸造のイロハを学んだ。ベアードさんの口癖は「4K」。ビール造りは危険、汚い、きついの3K職場。でも「かっこいい」-。「その通りだ」。片岡さんは強く感じていた。
  独立したのは「自分が信じたビール、魂を込めたビールを世に問いたい」との思いが募ったから。「沼津クラフト」をブランド名に掲げ、定番5種を基幹に、地元のかんきつ類などを活用した季節限定ビールを20種以上仕込む。
  反骨心が仕事の原動力。「はやりのスタイルは追い掛けない。おかわりしてもらえる、飲む人にとっての定番を造り続ける」と強調する。「これ、もう1杯」が最高の賛辞だ。
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瓶詰めしたビールのラベル貼りにいそしむ片岡哲也さん=沼津市の柿田川ブリューイング
   
■クリームラガーとEXTRA SHIZUOKA 美茶
  創業当時からの定番「クリームラガー」は、切れとのど越しを重視した大手ビール会社のラガービールとは異なる、まろやかな口当たりが特徴。大麦と小麦のバランスに気を配り、一般的なピルスナーにない味わいを追求した。飲み込んだ後に、モルト、ホップの心地よい余韻が続く。
  20年秋新発売の「EXTRA SHIZUOKA 美茶」は、ほうじ茶の個性をはっきり感じるESB(エクストラ・スペシャル・ビター)スタイルの新様式。発酵前の煮沸工程で煮出したほうじ茶を投入する。モルトとほうじ茶の味と香りが無理なく溶け合い、お互いを引き立て合っている。
 ■元記事=英国パブ文化に憧れ 飲み手の人生を彩る 柿田川ブリューイング(沼津市)片岡哲也さん【しずおかクラフトビール新世代(8)】(「静岡新聞」2020年12月24日朝刊、肩書や表記はすべて当時)