知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

浜松市で感染急増、独自の警戒宣言

 浜松市は26日、市独自の新型コロナ「感染拡大警戒宣言」を発令しました。しかし飲食店への時短要請など具体策は示されず、市民からは疑問の声も聞かれます。西部地域の感染状況や発令の経緯をまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・石岡美来〉

若者や外国人の感染急増 連休後553人 浜松市が警戒宣言

 浜松市の鈴木康友市長は26日、大型連休後の市内の新型コロナウイルス感染者数が553人に上るなど感染者が急増している状況を受け、市独自の「感染拡大警戒宣言」を市民に向けて発令した。飲食店への時短要請などは行わず、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置発令地域への不要不急の往来自粛を呼び掛ける内容。大型連休後の感染者のうち、10~20代の若い世代と、在住外国人の割合が急大したデータも公表し、注意を促した。

感染拡大警戒宣言の発令を記者会見で発表する鈴木康友浜松市長(右)=26日午後、同市役所
感染拡大警戒宣言の発令を記者会見で発表する鈴木康友浜松市長(右)=26日午後、同市役所
 鈴木市長は、直近1週間の人口10万人当たりの新規感染者数など複数の指標で、国が定める「ステージ4(感染爆発段階)」の基準を超えている現状を挙げ、ステージ4の基準を下回った時が警戒宣言解除の目安になるとの見方を示した。家庭内感染が増加していることを説明し、家庭内でもできるだけマスクの着用や手指消毒を行うよう求めた。
 市によると、連休後の7~26日に発表した感染者計553人のうち、10代と20代の割合が計39・6%を占め、昨年12月末の20%程度から大幅に伸びた。鈴木達夫医療担当部長は「(感染力が強い)変異株の感染拡大も一因と考えられる」と述べた。市は学生団体に協力を呼び掛け、会員制交流サイト(SNS)を活用して注意喚起に取り組む。
 一方、外国人が占める割合は4月時点で10%程度だったが、大型連休後は24・8%に急拡大した。市は多言語で感染防止の徹底を呼び掛けるため、就労先の企業などと連携する連絡者会議を設け、防止対策を進める。
 鈴木市長は「(言葉の壁から)情報弱者となり得る外国人市民も含め、市民と危機意識を共有することが重要だ」と強調した。

国指標で「爆発段階」 抑え込みへ GW明け20日連続2桁

 新型コロナウイルスの感染拡大警戒宣言を26日発令した浜松市。市内では大型連休後の7日から新規感染者数が急増し、1日当たりの新規感染者が26日まで20日連続で2桁台となっている。市は感染状況を見極める国の複数の指標で「ステージ4(感染爆発段階)」の基準に達していると判断。特に感染が急拡大している若者と在住外国人への対策を強化し、抑え込みを図る。

浜松市の新型コロナ新規感染者数の推移
浜松市の新型コロナ新規感染者数の推移
 市内では、同指標の「直近1週間の人口10万人当たり新規感染者数」が16~21日にステージ4の基準の25人を上回った。22~25日は下回ったが、過去最多の41人の感染を確認した26日に再び超えた。
 市は医療の逼迫(ひっぱく)具合を示す指標の病床占有率についても、現在はステージ4の基準の50%を上回る60%以上だと明らかにした。「10万人当たり療養者数」も基準の30人を超えているという。一方、感染経路不明者の割合は基準の50%を下回っている。
 市は、感染が急拡大したのは大型連休に伴う人の移動や、会食をきっかけにして感染が広がり、家庭内や身近な人の間で2次、3次感染が進んだのが主な要因とみている。
 若年層や外国人は、マスクなしでの長時間の会話や、バーベキュー、ホームパーティーに参加するなどリスクの高い行動後に感染が判明するケースが多くみられ、その後に家族や周囲に広がっているという。


 ■今後も増加の恐れ/屋外も油断禁物 矢野 邦夫氏 浜松市感染症対策調整監

 浜松市が発表した1日当たりの新規感染者が過去最多となった26日、市感染症対策調整監で浜松医療センター感染症管理特別顧問の矢野邦夫氏は取材に、「今後も感染者の増加の可能性はある」との見方を示した。感染防止に向けてはリスクが低いとみられがちな屋外でも決して油断をせず、対策を徹底する必要性を強調した。
 市が外国人や若年層の感染拡大の要因として挙げた屋外バーベキューなどについて、矢野氏は「マスクなしの近距離での会話や大声を出す」ことで感染する上、多人数が集まればクラスター(感染者集団)発生につながると指摘。着用したマスクを下げて会話するなど、対策が不十分な事例もあるとした。
 医療現場では変異株の影響で「比較的若い患者でも重症化している」事例が見られるとし、病床使用率の上昇が続けば「重症者を受け入れられなくなる」と強い懸念を示した。市民が実践すべき対策としては会食も同居家族に限り、友人や同僚らは避けるよう呼び掛けた。

市民任せ、具体策示して...対応の遅さ批判

 浜松市が26日発令した新型コロナウイルスの感染拡大警戒宣言は、市民への注意喚起にとどまる内容で、新たな具体策はほとんど示されなかった。市民からは実効性を疑問視する声が相次いだ。

マスク姿の通勤者が行き交うJR浜松駅周辺。新型コロナウイルス感染拡大に市民は危機感を強める=26日午後、浜松市中区
マスク姿の通勤者が行き交うJR浜松駅周辺。新型コロナウイルス感染拡大に市民は危機感を強める=26日午後、浜松市中区
 「営業に何の制限も無く判断は店任せ」。西区の和食店「旬彩 一徳」の店主徳増昇さん(57)は頭を抱える。店は感染が急拡大した湖西市や愛知県に比較的近く、厳しい経営環境に直面している。感染対策を徹底して引き続き営業する考えだが、「休業要請など浜松市はより具体的な方策を示すべきではないか」と提案する。
 中区の自営業男性(72)は「大型連休は明らかに緩みがあった。宣言は中途半端な感が否めない」と対応の遅さを批判した。
 市は今後、外国人や若者への注意喚起に力を入れる方針を強調している。市内在住で、外国人労働者を支援する30代の団体職員男性は、勤務先や所属するコミュニティーによる予防意識の格差の問題を指摘しつつ、「マスク着用や消毒といった一般的な対策はできている印象。感染防止への理解が特別に足りないとは思わない」と持論を語った。
 静岡文化芸術大3年の鈴木義人さん(20)は「また宣言かという感じ。正直に言って、慣れはある」と話す。大学ではサークルなどの団体活動が制限され、オンライン授業も続く。「若者はいつワクチンを接種できるのか。我慢を強いるだけで無く、そういう情報も早く提供してほしい」と訴える。

県が危機感 西部地域外へ搬送も

 新型コロナウイルスの感染拡大警戒宣言を26日発令した浜松市について、静岡県は医療提供体制への影響を危惧。「状況が改善されなければ他地域に患者搬送を検討する可能性も出てくる」と危機感を募らせる。

静岡県庁
静岡県庁
 県によると、同市を中心とする西部地区の病床使用率は今月中旬以降、5割超えが常態化している。重症者は比較的少ないものの、このまま感染者が増え続ければ中部や東部の病院に患者を送る措置も視野に入るという。
 県全体の直近1週間の人口10万人当たり新規感染者数は21日の時点で国の指標「ステージ3」(感染急増)の基準を下回っている。県健康福祉部の後藤幹生参事は西部地区のこうした状況を念頭に「(ステージの)引き下げを議論する段階にない」と指摘した。