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〈 コロナ禍 浜松まつり開幕 〉

 浜松まつりが2年ぶりに始まりましたね。新型コロナウイルスの収束が見通せない中、市民は参加、不参加の難しい判断を迫られました。悩み抜いて参加を決めた市民や、苦境に立たされる祭り関連業者の思いに迫りました。コロナ禍でもまつりの魅力を共有しようとする参加者の工夫にもスポットを当てました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

スマホでオンライン中継や動画投稿 コロナ禍でも魅力共有【動画あり】

 凧(たこ)揚げだけに縮小し、3日開幕した浜松まつり。感染症対策の面で、浜松市南区の凧揚げ会場に来られない初子の家庭や「まつり帰省」を見送った人も多い。会場では、動画を撮影したり、オンラインで中継配信したりして、市内外の大勢とまつりの魅力を共有しようと工夫する参加者が見られた。

スマートフォンを使い凧揚げの様子を中継する元魚町の町衆=3日午後、浜松市南区の凧揚げ会場
スマートフォンを使い凧揚げの様子を中継する元魚町の町衆=3日午後、浜松市南区の凧揚げ会場
 「凧、見えますか」「今日は風が(強くて)大変です。コロナ対策をしっかりして、楽しんでおります」。
 中区元魚町の参加団体「も組」は凧揚げ会場と数キロ離れた地元公民館をウェブ会議システムでつなぎ、実況中継した。今村哲郎組長(36)らがスマートフォンを青空に掲げたり、強風の中で糸を操る凧揚会メンバーの表情を追ったりしながら、待機する凧揚会や自治会関係者に雰囲気を伝えた。
 町内には、勤務先から禁止されたなどの理由で参加できない人もいる。「雰囲気を少しでも味わってもらい、気持ちを一つにして揚げたい」との強い思いから初の試みとして挑戦した。
 この日揚げたのは新たに注文した3帖(じょう)凧。厳しい経営環境に置かれている祭り関連事業者への応援を込めて制作を依頼した。今村組長は「参加をやめるのは簡単だけど、コロナ禍に対応した形を何とか考えたかった」と強調する。
 中区鹿谷町の「亀山組」は凧揚会会長の後藤敏行さん(61)の孫寺田匠ちゃん(2)の初凧を揚げたが、主役の匠ちゃんはまん延防止等重点措置が取られている愛知県在住のため来場できなかった。
 匠ちゃんの凧を任された副組長の中村悠真さん(18)は、頭に取り付けた小型カメラで撮影しながら、凧糸を手繰った。映像は編集して動画投稿サイト「YouTube」にアップし、初子の家族をはじめ、多くの人に見てもらうという。
 中村さんは「臨場感ある映像が撮れているはず。お祝いなので、揚げて良かったなと思ってもらえたらうれしい」と声を弾ませた。
 (2021/05/04)

「凧職人、助けたい」 一部の参加町は大凧を特別注文 支援の動き広がる

 コロナ禍に伴う昨年の浜松まつり中止や今年の規模縮小で、売り上げが激減している凧(たこ)製造業者を支援しようと、一部の参加町が大凧を特別注文した。

凧製造業者の支援のために作った野口町の町内凧
凧製造業者の支援のために作った野口町の町内凧
 中区野口町は、町の凧印「の」の字が入った3帖(じょう)の町内凧を新たに作った。これまでは初子祝いで揚げた初凧を祭り後に初子家族から同町に寄付してもらい、町内凧として祭り期間中に揚げていた。だが、今年は、地元凧揚会の運営母体「松風会」の会員で資金を出し合い特別に町内凧を作った。
 注文先は毎年のように初凧の製作を頼んでいる「上西すみたや」(東区)。凧揚会の組長杉保勝彦さん(44)は「すみたやさんは数十年の付き合い。何とか力になりたかった」と説明する。
 中区布橋南は凧製造の老舗「一瀬堂」(中区)に依頼し、新たに作った町内凧を初日に揚げた。凧揚会の組長楠野唐也さん(39)は「凧職人のおかげで凧揚げができる。少しでも支援になれば」と言葉に力を込めた。
 (2021/05/04)

関連業者は売り上げ激減 “新しい生活様式”に困惑 新規事業模索の動きも

 明治14(1881)年から続く浜松市中区池町の凧(たこ)製造「一瀬堂」。例年だと、浜松まつり参加174町のうちの約60町の大凧を手掛ける老舗で、3~4月は作業がピークを迎える。だが、コロナ禍で参加町が6割弱にとどまる今年、200枚ほど入るはずだった凧の注文は十数枚に落ち込んだ。

作業場には使用されずに残った大量の凧の骨組みが立て掛けられたまま=4月下旬、浜松市中区
作業場には使用されずに残った大量の凧の骨組みが立て掛けられたまま=4月下旬、浜松市中区
 作業場には、使用されずに残った大量の竹骨が立て掛けられたまま。同店の古橋通悦さん(44)は「売り上げはいつもの1割。正直言って、やっていけない」と肩を落とす。
 今年の祭りは1月下旬に、昼の凧揚げのみの規模縮小開催が決まった。2年連続全面中止だけは回避され、祭り関連業者は少し安堵(あんど)した。一方、中心街を舞台に大勢の若者でにぎわう御殿屋台の引き回しなど夜の行事は取りやめに。激練りで使う提灯(ちょうちん)や飲食の業者からは「売り上げから見れば、今年も全面中止と同じ状況」とため息が漏れる。
 コロナ禍で浸透しつつある“新しい生活様式”。浜松まつりについても当てはまるのか。「以前の姿を取り戻すのは難しいのでは」と不安の声が上がる。
 初子の家では初凧揚げの後、祝いに駆けつけた人々を料理でもてなすのが恒例。この売り上げを頼りにする酒店や料理店も多い。2年連続で書き入れ時を失った仕出し料理・出前弁当「味の江戸松」(同区蜆塚)の鈴木英司社長(64)は「大勢で大皿の料理を囲み、初子を祝うのも祭りの醍醐味(だいごみ)。本来の形に戻れるとは思えない」と頭を抱える。
 苦境を乗り越えようと新たな事業に乗り出す業者も出てきた。明治創業で、法被や地下足袋などの祭り用品を扱う加茂江屋(同区和地山)は、天竜杉や阿多古和紙など浜松産の素材を使ったあんどんの発売を2月から始めた。昨年の祭り中止が決まった後から、売り上げ確保の代替事業として商品開発を進めてきたという。
 今年は法被などの注文がほぼゼロだったという同店の佐藤和宏代表(46)は、経営が厳しいほかの関連業者にも仕事が回るように、あんどん以外の新規事業も模索中だ。「助け合って、何とか一緒に乗り越えるしかない」と声を振り絞った。
 (静岡新聞連載「逆風の中で 浜松まつり」2021年5月2日朝刊)

4、5日の午後の部は中止 夜の御殿屋台引き回しは取りやめ

 浜松市などでつくる浜松まつり組織委員会は23日、緊急役員会を市役所で開き、開催期間(5月3~5日)のうち、4、5両日の午後の部(1~3時)を中止することを決めた。開催可否の判断基準に挙げていた「全国的な感染状況」が拡大傾向にあることを踏まえ、参加者の新型コロナウイルス感染リスク低減を最優先させる。

浜松まつり2021年度 開催時間
浜松まつり2021年度 開催時間
 政府が緊急事態宣言発令を決めた東京、大阪など4都府県や、今後発令された地域からの参加は禁じる。無観客で行うため南区の凧(たこ)揚げ会場は出入り口を封鎖し、祭り関係者以外の立ち入りを規制。最低限の水分補給を除き、会場での飲食は禁止する。
 組織委によると、参加町は前回役員会の5日時点から2町減って97町となり、例年の174町の55%にとどまる。子どもの誕生を祝う「初凧」は、8町12枚増えて29町47枚になる見通し。
 役員会後、取材に対し広野篤男代表委員長は「かなりの町が準備を終え、初凧を揚げる町も増えている。皆さんが楽しみにしているので時間を割愛してもやりたい」と開催を目指す考えを強調した。役員や参加町から中止を求める意見は出ていないという。
 委員長を務める鈴木康友市長は「感染対策を完全に施し、ルールを守ってもらえれば、安全に開催できる」との見方を強調した。
 今年は夜の御殿屋台引き回しなどを取りやめ、昼の凧揚げだけを無観客で実施することが決まっている。
 (2021/04/24)