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〈 苦境の天浜線 誘客策は 〉

 遠州地方を走る天竜浜名湖鉄道。どこか懐かしい気持ちにさせてくれるローカル線ですが、コロナ禍で利用客が減少し、厳しい経営環境に直面しています。一方、アニメ「ゆるキャン△」のラッピング列車運行、アニメ映画「エヴァ」のモデル地見学ツアーなど人気企画も続々と始まっています。利用促進に向けた課題と現状は…。まずは5月に引退する車両の取り組みから見ていきましょう。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・寺田将人〉

「マリメッコ」で人気 現役最古の車両引退へ 再利用案を公募

 天竜浜名湖鉄道は20日、現役車両で最も古い「TH3501」の運転終了を発表した。フィンランドの人気ブランド「マリメッコ」で装飾したスローライフトレインとして運行し、人気を集めていた。5月23日にラストランと引退セレモニーを開催する。ただ、廃車を惜しむ声が多く、同社は引退後の車両の再利用案を公募する。

5月23日に引退するTH3501「スローライフトレイン」=浜松市天竜区の天竜二俣駅
5月23日に引退するTH3501「スローライフトレイン」=浜松市天竜区の天竜二俣駅
 TH3501は、1996年に導入し、当時運行していたトロッコ列車のけん引車両として活躍。トロッコ列車の営業終了後は、沿線の都田建設ドロフィーズ(浜松市北区)の協力でスローライフトレインとして運転を続けたが、老朽化で一区切りを迎えた。
 レトロな車両とポップな内装の組み合わせが、女性などに人気を博してきた。担当者は「古き良き列車で運転士にも思い入れのある車両。第二の人生をいい場所で歩んでくれることを期待している」と語る。
 23日の引退セレモニーは、午前9時30分から天竜二俣駅で開催。ラストランは車両に乗車できないが、遠州森駅と三ケ日駅ホームで停車し、「勇退グッズ」の即売会を開く。
 再利用に関する公募は22日~5月末まで受け付ける。応募要項、問い合わせは同社営業課<電053(925)2276>へ。
(2021/04/21)

レトロ車両に花柄の北欧デザイン 2015年に企画を開始した

浜松市天竜区の天竜浜名湖鉄道は、フィンランドのファッションブランド「マリメッコ」のカーテンなどに模様替えした「スローライフトレイン」をお披露目した。

花柄が特徴的なマリメッコのカーテンなどに模様替えした車内
花柄が特徴的なマリメッコのカーテンなどに模様替えした車内
  ブランドを扱う都田建設ドロフィーズ(北区都田町)の協力で実現した。車内カーテンとヘッドレストカバーを、色鮮やかな花柄の生地に変えた。列車はツートンカラーが特徴で、1両のみ現存するTH3000形を使用した。
  お披露目列車は関係者を乗せ、天竜二俣―三ケ日駅間を往復した。同社が改修を手掛け、本年度グッドデザイン賞に選ばれた都田駅で式典が開かれた。植田基靖天竜浜名湖鉄道社長は「今後定期運行するので、景色とともに楽しんでほしい」とあいさつした。
  蓬台浩明都田建設社長は「レトロな列車を活用し、洗練されたデザインと組み合わせることで可能性が広がるはず」と話した。
(2015/10/19)

コロナ禍で観光客減 ラッピング列車に力 ゆるキャン△ともコラボ【動画あり】

 第三セクター天竜浜名湖鉄道(浜松市天竜区、天浜線)が新型コロナ禍で厳しい経営を強いられている。2021年度末の決算予想は、前年度比で7割にとどまる見込み。営業収入の大半を旅客収入に頼る経営体制に、コロナによる観光客減が重くのしかかる。回復には、新たな誘客策や沿線住民の利用促進に向けた具体策が不可欠となる。

2月から運行を開始した人気テレビアニメ「ゆるキャン△ SEASON2」のラッピング列車。広告収入増と幅広い層の誘客の柱としてラッピング列車の導入を進めている=2月中旬、浜松市天竜区の天竜二俣駅
2月から運行を開始した人気テレビアニメ「ゆるキャン△ SEASON2」のラッピング列車。広告収入増と幅広い層の誘客の柱としてラッピング列車の導入を進めている=2月中旬、浜松市天竜区の天竜二俣駅
 コロナ第1波の昨春以降、最も旅客数が少なかった4月は前年度比43・3%で、以降も平均で同70%台で推移している。「Go Toトラベル」実施期間の10月には同91・9%にまで回復したが、第3波の影響を受け、今年1月は同7割に満たないと予測。経営が感染状況や政府の対策に左右される実態を露呈した。
 天浜線の収入の9割以上は旅客収入が占める。本年度12月までの乗客数は、通勤・通学の定期客が55万人で定期外が31万7千人。一方、収入別では定期が1億円、定期外が1億1千万円。定期収入は人口減やリモートワークの推進によって増加が今後も望めない中、収益率の高い定期外の乗客を増やすことが経営を左右する。
 コロナ禍での苦境は天浜線だけの事情ではない。三セク鉄道全40社が加盟する第三セクター鉄道等協議会によると、加盟全社が前年度比で減収となる見通し。同会事務局は「全社が旅客収入を柱にしている。定期収入が下支えしているが、外の客が来ない状況は経営難に直結する」と状況を分析する。
 そうした中、雑収入増の対策として天浜線が進めるのがラッピング列車の導入だ。2月に人気テレビアニメ「ゆるキャン△ SEASON2」のラッピング列車の運行を開始。同月末にも新たな車両が導入され、全15車両のうち8車両がラッピング列車となる。公式グッズ通販サイト「てんはまや」の開設や鉄道部品の販売会など、鉄道ファンへのPRにも力を入れている。
 しかし、経営改善の道は険しい。長谷川寛彦前社長の退任を受け、昨年12月に後任に就いた松井宜正社長は「今後も厳しい状況は続く。知恵を絞って改善の道を探り、コロナ後に備えるしかない」と、困難を極める今後のかじ取りを見通す。
 「地域の足」として不可欠な存在である天浜線。コロナ禍の苦境の中、これまで以上に沿線自治体の関わり方も問われている。地域による下支えがなくては、存続への危機感は一層高まる。
(2021/02/28)

アニメ映画「エヴァ」モデル地 天竜二俣駅に「巡礼」続々、転車台見学も人気

 3月に公開されたアニメ映画「シン・エヴァンゲリオン劇場版」(庵野秀明総監督)のモデル地として描かれる、天竜浜名湖鉄道・天竜二俣駅(浜松市天竜区)に、“聖地巡礼”で静岡県内外から連日多くのファンが詰め掛けている。始発駅の掛川、新所原駅から同鉄道に乗って訪れるファンも多く、同社は「コロナ禍で落ち込む収入回復の起爆剤になる」と期待する。

「シン・エヴァンゲリオン劇場版」のモデル地となった転車台見学に訪れ、写真を撮るツアー参加者=9日午後、浜松市天竜区の天竜二俣駅
「シン・エヴァンゲリオン劇場版」のモデル地となった転車台見学に訪れ、写真を撮るツアー参加者=9日午後、浜松市天竜区の天竜二俣駅
 劇中に描かれる転車台や扇形車庫の見学ツアーには多い日で170人を超える参加者が集う。放射状の転車台に向かって列車が動きだすと、参加者が一斉に写真を撮り始める。大学生の太田惣貴さん(18)=同市中区=は「映画を見て初めて訪れた。こんな近くにあの舞台があるなんて誇らしい気持ち」と興奮気味に話す。
 映画効果で、ツアーの参加者は急増。公開週の日曜日には前週の約12倍にあたる161人が参加し、その後も増加傾向が続く。
 天竜二俣駅の転車台や扇形車庫などの施設は、築80年を越え、国登録有形文化財に指定されている。それらの一部が同作の主な舞台となる「第3村」のモデルとして登場。傷ついた主人公が再起する重要な場として描かれる。
 庵野総監督本人も2017年6月にロケハンで現地を訪れた。案内した職員によると、転車台や車両区事務所でスタッフに動き方を指示しながら、自ら写真を撮っていたという。同職員は「監督は具体的な場面のイメージがあった上で指示されているようでした」と回想する。
 同社の松井宜正社長は「古い施設が残る天浜線の風情が、国民的なアニメ作品に取り上げられ光栄。今後もコロナで苦しい経営の追い風となることを期待している」と語る。
 10日から、映画との共同企画として、天竜二俣駅売店と同社公式通販サイトでオリジナルグッズを発売する。
(2021/04/10)