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〈 コロナ禍 女性の貧困問題 〉

 コロナ禍で困窮する女性に対し、静岡県内の一部の自治体が生理用品を無償提供する取り組みを始めました。ドメスティックバイオレンス(DV)の増加、母子家庭の孤立化など、コロナ禍の生活が長引く中、女性を取り巻く環境が変化しています。県内の状況や支援の動きをまとめました。
 〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・尾原崇也〉

富士市、焼津市 「生理の貧困」支援へ用品無償配布

 ■富士市、カード提示して受け取る仕組み

生理用品を求める意思表示ができる「さくらカード」=富士市役所
生理用品を求める意思表示ができる「さくらカード」=富士市役所
 新型コロナウイルス感染拡大の影響などで困窮し、生理用品を利用しにくい環境にいる「生理の貧困」が社会問題化する中、富士市はこのほど、生理用品を無償配布する取り組みを始めた。
 経済困窮に加え、DVなどの事情で生理用品の購入や利用ができない人も支援する。配布窓口に常備し、1人1回当たり2パックを、中が見えない袋に入れて提供する。
 必要とする人が声に出さずに意思表示ができる「さくらカード」を作成し、窓口で提示すると女性職員が対応するように工夫する。
 さくらカードは名刺大で、市役所4階東側エレベーター前と市フィランセ(同市本市場)東館1階出入り口付近に置いてある。
 配布窓口は女性職員が多い市役所4階のこども家庭課、こども未来課。12日からは市フィランセの社会福祉協議会事務局、ユニバーサル就労支援センターでも対応する。
 同市は生理用品の配布をきっかけに、困窮などの支援にもつなげたい考え。市生活支援課の白川安俊課長は「無言でも利用でき、必要とする人が訪れやすい雰囲気をつくりたい」と話した。
(2021/04/11)

 ■焼津市は19日から
 焼津市は19日から生理用品を無償配布する。新型コロナウイルス感染拡大の影響で生活が困窮し、生理用品が利用しにくい女性を支援するのが目的。支援窓口の電話番号を記したチラシも同封し、さらなる支援へとつなげたい考え。
 市役所本館やアトレ庁舎、大井川庁舎、子育て支援センター、公民館など指定した配布窓口で、一人につき2パックを提供する。
 窓口付近に掲示したA4サイズの案内ポスターに挟みこんだ名刺大のカードを窓口に提示すると、声を発さなくても提供するよう応対する。
 応対するのは女性職員で、提供時刻も女性が勤務している平日の午前8時半~午後5時15分(一部施設は除く)に設定している。
 当面は200パックを準備していて、ニーズが高まれば、追加する方針。石原隆弘健康福祉部長は「応対した女性職員が必要ならば声掛けしていく。窓口を訪ねた人が、相談できる何かのきっかけになれば」と話す。
(2021/04/17)

DV摘発、静岡県内515件で最多 2020年

 静岡県警が2020年に摘発したドメスティックバイオレンス(DV)は前年比48件増の515件で、過去最多を更新した。県警に寄せられたDVの相談は7件増の542件と横ばいだった。

 摘発の内訳は傷害や暴行などの刑法・特別法が513件、被害者に電話をかけたり、自宅に押し掛けたりするなどの保護命令違反が2件。
 一方、ストーカーの相談は3件減の400件と、ここ数年は減少傾向が続いている。摘発は9件減の59件で、このうち、刑法・特別法が24件、ストーカー規制法は35件だった。
 ストーカー規制法に基づく書面警告は7件増の62件。警告によって、摘発に至る前にストーカー行為が止まったケースもあった。
 県内では20年6月、沼津市内で女子大学生が刺されて死亡する事件が発生。殺人などの罪で起訴された同級生の男は被害者にストーカー行為をしていたとして、21年2月にストーカー規制法違反の罪で追起訴された。
(2021/03/16)

静岡県内自殺者、女性47人増 男性は39人減 2020年

 若年層の自殺対策で静岡県が実施している若者の悩み相談「うちあけダイヤル」で、LINE(ライン)を通じた相談の対応件数が、昨年6月に相談時間をそれまでの休日のみから平日に拡大した結果、昨年4月からことし1月末までに2703件に上った。相談者の年代別では、18歳以下からの相談が2049件と75・8%を占めた。県がこのほど県庁で開いた自殺対策連絡協議会で報告した。

静岡県が実施したLINE相談の月別対応件数
静岡県が実施したLINE相談の月別対応件数
 月別では6月の503件が最多で、9月が398件で続いた。県は臨時休校や夏休みの終了に合わせ、中高生にチラシを配布した効果が出たとみている。協議会で県はLINEの個人情報管理問題について、同社が対策を示したことや、依然として利用者が多いことから、21年度も相談業務を毎日継続する方針を示した。
 一方、県の電話相談窓口「こころの電話相談」には昨年4~12月に2857件の相談があり、年代が分かった中では40~50代が多い傾向がみられた。県は「電話とLINEの特性を踏まえ、複数の方法で対応する」と説明した。
 発見地に基づく警察庁のまとめ(確定値)で、20年の県内の自殺者数は647人と前年から8人増加したことも報告された。このうち男性は前年から39人減ったが、女性が47人増加した。厚生労働省がまとめる人口動態統計の自殺者数は6月に公表予定だが、県の担当者は「こちらも数が増える可能性がある」と危機感を示した。
 委員からは、コロナ禍の閉塞(へいそく)感とともに、著名人の自殺報道の影響を指摘する意見が上がった。警察庁のまとめで過去最多の件数となった小中高生の自殺への対策を求める声もあった。
(2021/04/02)

「つながっている実感」持ってもらうこと重要 貧困世帯支援団体 指摘

 新型コロナウイルス感染症の流行は、経済基盤が弱い母子家庭などの暮らしに深刻な影響を与えている。静岡県内で子どもの貧困支援に取り組む団体は「3密回避」などで活動が制限される中、親子の孤立を防ぐための模索を続ける。

「てのひら」の居場所で、ボードゲームを楽しむ子どもと学生ボランティア=2020年8月下旬、静岡市駿河区
「てのひら」の居場所で、ボードゲームを楽しむ子どもと学生ボランティア=2020年8月下旬、静岡市駿河区

 ■休止中、各家庭へ出向き 見守り 静岡の居場所「てのひら」
  困窮世帯の子どもを対象に、夕食や入浴、遊びの場を静岡市内3カ所で運営する一般社団法人「てのひら」(川口正義代表)。市からの受託事業でもあるこうした居場所の提供は、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2月下旬から6月上旬まで休止を余儀なくされた。現在は活動時間を短縮して再開し、新型コロナによって経済的、心理的に影響を受ける子どもと親を支える。
  「コロナ前から厳しい生活環境にあった家庭が、よりしんどい状況に置かれている」。同市教委スクールソーシャルワーカーも務める川口さんは指摘する。関わる家庭では、親が職を失ったり、ライフラインが止まったりするなど生活の悪化が顕著だ。経済的に苦しく見通しの立たない生活は、親のストレスになり、その影響は子どもにも及ぶ。
  緊急事態宣言下で「ステイホーム」が叫ばれた期間、「家が安心安全な場所になっていない子どもたちもいた」(川口さん)。家庭が密室化される中で、夫婦、親子間の関係が崩れ、ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待が始まったり、深刻化したりするケースがあったという。
  てのひらは居場所を休止した期間、スタッフが各家庭に出向く「アウトリーチ」支援を続けた。親子に「つながっている実感」を持ち続けてもらうことが重要と考えたからだ。約30世帯を対象に、米や夕食のおかずなどに加え、居場所の学生ボランティアが書いた手紙も届けた。事情に応じて役所などへの同行支援も行った。
  再開した居場所では、入室時の手洗い、検温、マスク着用、換気がルールになっている。以前は一緒に取っていた夕食も、手作り弁当の持ち帰りに変更した。
  活動時間は2時間半から1時間に短縮。8月下旬、居場所の一つの駿河区のアパートを訪ねると、小中学生ら10人が、学生ボランティアたちとボードゲームに興じたり、宿題をしたり、思い思いに過ごしていた。眠たそうにずっとソファに寄りかかった子もいた。
  子どもたちが帰ると、学生ボランティアたちが反省会を開いた。子どもたちの気になる行動や変化について記録、共有し、今後の接し方や言葉掛けについて議論した。静岡大4年の稲谷翔一さん(23)は「短時間しか関われないからこそ、それぞれの子にとって意味のある、濃い時間にしたい」と語った。
  川口さんは「コロナ禍で社会全体、大人自身が余裕をなくしている。より弱い立場にある子どもの状況に想像力を働かせ、必要な支援を続けていきたい」と決意を述べた。

 ■居場所に通う高校生 安心できる場、大事な〝相談所〟
  小学生の頃から「てのひら」の居場所に通う通信制高1年のマコト君(16)=仮名=。新型コロナウイルス感染症の流行はマコト君の生活にも影を落とした。高校は入学直後から休校。生活が乱れ、「家に居続けるストレスで、いらいらが募った」と振り返った。
  4月からの約2カ月間、週3回の対面授業はオンラインに切り替わったが、自身のスマートフォンからは視聴ができなかったという。外出せず、オンラインゲームや動画で昼夜逆転の生活になった。対面授業が再開後、ストレスは軽減したが、「母親は介護施設で働き、家には祖母もいる。電車通学する自分がウイルスを持ち込めば、普通に暮らせなくなる」と感染への不安は消えない。
  一方、「てのひら」の居場所はマコト君にとって「落ち着く、安心できる場」という。「友達や親には否定されることも、ここでは理解してもらえる。子どもの頃はただの遊び場だったが、今は社会のことも学べて、自分にとって大事な“相談所”」と語る。

  ■食料配布やストレスケアも 三島「ひ・まわり」など
 子育て中の親を支援する一般社団法人「ひ・まわり」(三島市、石川玲子代表)とボランティア団体「ありままの会」(同市、高田康子代表)は新型コロナウイルスの感染拡大を受け3月から、ひとり親世帯への食料、弁当配布に取り組んできた。食料配布は「困っている家庭とつながる手段」(石川さん)と話し、継続的なサポートの方法を模索している。
  両団体は、SNSや公営住宅へのチラシ配布を通じて支援を必要とする家庭を募った。食料配布の申し込み時にネットアンケートに答えてもらい、生活・就労状況や困り事を把握した。「会社が倒産した」「医療関係で働くが、自分が感染したら子どもの世話はどうなるのか」「休校で食費、光熱費がかさむ」など、切実な声が寄せられた。
  地域の協力で集まった食材を携え自宅を訪ねると、自力で玄関を開けられない母親もいた。幼い子と暮らすが、部屋はひどく散らかっていた。石川さんは「コロナで次々と状況が変わるストレスで、身動きがとれなくなったようだ」と分析する。だが、何度か通ううちに、母親から「部屋を片付けたいから手伝ってほしい」と連絡が来るなど、前向きな変化も見られた。
  両団体は現在、食料の個別配達は減らし、三島、沼津両市内での居場所の提供に力を入れる。居場所では食料配布に加え、大人の茶話会、子ども向け料理教室、衣類や日用品の交換会を行う。石川さんは「外に出て他人と話すことで視野を広げ、母親自身のストレスケアにつながれば」と期待する。
  両団体は今後も地域からの食料や日用品の寄付集めを継続する。よりスムーズに物資の受け渡しができるよう、クラウドファンディングを活用して新たな保管場所の確保も目指す。

 ■子どもの貧困7人に1人
  厚生労働省の国民生活基礎調査によると、中間的な所得の半分に満たない家庭で暮らす18歳未満の割合「子どもの貧困率」は、2018年時点で13.5%。子どもの7人に1人が貧困状態にある。中でも、母子家庭など大人1人で子どもを育てる世帯の貧困率は48.1%に上る。
  認定NPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ(東京都)などが7月初旬にシングルマザー約1800人から回答を得たアンケートでは、新型コロナウイルス感染症の影響で雇用や収入に影響があったと答えた人は全体の約7割。内容は「収入の減少」「勤務日数・勤務時間の減少」が多かった。心理的ストレスの程度を測定したところ、気分障害・不安障害に相当する心理的苦痛を感じている人が全体の約6割に上ったという。
  また、中学生以上で学校に通う子どもがいる世帯の約4割は「自宅に使えるパソコン、タブレットがない」とし、オンライン授業が普及する一方で、学習環境を整えられない世帯がある実態が浮き彫りになった。
(2020/09/25)