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ゆるキャン△の魅力、声優に聞く

 キャンプ好きの女子高校生5人の日常を描いたアニメ作品「ゆるキャン△ SEASON2」が、静岡県内ではSBSテレビで放送されています。浜松市など県内各地の豊かな自然や食も描かれ、身近に感じる作品です。キャラクターの声を演じる声優3人が静岡新聞社の取材に語った、作品の見どころや静岡の魅力について紹介します。3月26日の静岡新聞朝刊紙面には、犬山あおい役の声優豊崎愛生さんへのインタビューが掲載されますよ。お楽しみに。
〈静岡新聞社編集局TEAM NEXT・鈴木健二郎〉

”ソロ”好む志摩リン役・東山奈央さん 「ならではの温度感」人間らしく

 “ソロキャンプ”を好む高校生志摩リンの声を担当する声優東山奈央さんに、山梨、静岡両県の豊かな自然を背景にゆったりしたテンポで進む作品の魅力を語ってもらった。

東山奈央さん
東山奈央さん

 ―出演が決まった直後は、作品のテーマを意外だと思った。
 「キャンプと女子高生が一緒に描かれると聞いて、どういった作品になるのだろうと思いました。キャンプといえば、夏場にみんなでワイワイする印象。でもこの作品は秋冬がメインで、しかもリンは一人でキャンプをしています。それまでの自分の中にはなかった世界でした」
 ―最初の声の録音時も、どんな完成形になるのか未知数だった。
 「たき火のパチパチという音、木がざわざわ鳴る音をしっかり聞かせるためにせりふの数がとても少なくて、こんなに静かなアフレコでいいんだろうかと。でも仕上がりを見たら、写真かと思うほど(風景を描いた)絵がきれいで。音も臨場感があって、今まさに自分がキャンプ場にいるような気持ちになって驚きました」
 ―デビュー以後、幾多の作品に出演したが、本作はその中でも異色なトーンという。
 「誰かが死ぬわけでもなく、(主人公が)世界の平和を守るわけでもない。女子高校生たちがお小遣いやバイト代など手の届く範囲内でゆったりキャンプをする。ただそれだけなのに、とても豊かな時間を感じさせてくれる。居心地の良さが最大の魅力だと思います」
 

「ゆるキャン△」の一場面。富士山麓のキャンプ場で語り合う志摩リン(左)と各務原なでしこ ©あfろ・芳文社/野外活動サークル

「ゆるキャン△」の一場面。富士山麓のキャンプ場で語り合う志摩リン(左)と各務原なでしこ ©あfろ・芳文社/野外活動サークル

 
 ―演じている志摩リンも、女子高校生のキャラクターとしてはこれまでになかったタイプ。
 「感情が表に出にくいから、寡黙でクールな印象を持たれがちなんですよね。でもこの作品は『孤独だった少女が仲間との絆を得て成長していく』といった物語ではないんです。(リンにとって)一人の時間も好きだし、みんなといる時間も悪くない、というところに着地します。そこがいいんですよね。リンならではの温度感が、とても人間らしいなと思いました」
 ―声の演技では精緻な技巧を要した。
 「ぼそぼそしゃべる子なので、ちょっとした抑揚、息や音の違いでセリフの印象がかなり変わるんです。『ちょっと冷たく聞こえたかな』『意図せず温かくなりすぎたかな』など、微妙なさじかげんで聞こえ方が変わってしまいます。すごく集中して演じました」
 ―こうした緻密さは制作に関わる全員に共通するという。
 「『ゆるキャン△』というタイトルなのに、作品づくりは全然ゆるくないんですよね。スタッフの方々が(モデル地となった)それぞれのキャンプ場へロケハンに行って、肌で感じたことを丁寧に絵や音に落とし込んでいるんです。例えば日が昇って落ちるまでの影の描き方も計算し尽くしているし、音楽もキャンプ場ごとに替えています。こうした作業があるから、見る側はリアルな体験として受け入れられるのだと思います」
 ―「SEASON2」は、第1作目以上に県内の場面が増えることが期待される。
 「自然の美しさと食べ物のおいしさを描く点は、もちろん前作と変わっていません。温かい食べ物で食欲が刺激されたり。自宅に居ながらにして野山の空気やキャンプの楽しさを感じられます。登場人物5人の関係もゆるゆると変化していきます。ナチュラルな描写を大切にしているので、突然何かが変わるわけではないのですが、『リンがこんなことを言うようになったんだ』と、変化を感じるようなせりふもあるので、楽しみにしていてください」
 
 とうやま・なお 東京都出身。2010年にアニメ「神のみぞ知るセカイ」中川かのん役でテレビアニメデビュー。「きんいろモザイク」「マクロスΔ」など出演作多数。17年に歌手デビューし、18年2月3日には日本武道館で初のワンマンライブを開催した。

「浜松出身」各務原なでしこ役・花守ゆみりさん 「手の届く非日常」楽しんで

 作中で浜松市出身として描かれる女子高校生各務原なでしこを演じる声優花守ゆみりさんに、作品への思いを聞いた。

花守ゆみり
花守ゆみり

 ―なでしこのキャラクターをどう捉えていますか?
 「『こういう子、クラスにいたな』と思えるような親近感を意識しています。実は私のお母さんが子どものころ、なでしこのような人だったようです。おばあちゃんから聞きました。元気な女の子だけど、周りを見て、みんなが喜ぶことを一緒にするのが大好きだったと。どこかが飛び抜けているわけではないけれど、元気があって気遣いができて。そうした人格を持たせることで、等身大のかわいさが表現できたらいいと思っています」
 ―前作「ゆるキャン△」から今回の「SEASON2」にかけて、作品への印象は変わりましたか?
 「前作は収録の途中でアニメの放送が始まって、『すごく好評ですよ』と聞いてみんなで喜んだことを思い出します。今の世の中には癒やしが必要だったのかなって。SEASON2の収録は前作の最後の収録から2年以上たっています。台本を手にした時は、キャラクターたちを懐かしむ感情がありました。『ああ、そうだ。みんなここまで仲良くなっていたんだ』という」
 ―制作過程はいかがでしょう。
 「空気感の使い方、間の取り方は変わっていません。台本のト書きがとても丁寧なんですよ。『一口食べて、ちょっと止まって』といったように、すごく細かく書かれています。私たち(声優)も、行動を受け取って声に落として、というのを心掛けているんです。現場では『こういうテンポでやりましょう』と音響監督さんや監督さんとお話しながら毎回つくっています」
 

アニメ第3話から。浜松市北区の奥浜名湖展望台(現在は立ち入り禁止)から 夜景を見つめる(右から)志摩リン、各務原なでしこ、土岐綾乃 ©あfろ・芳文社/野外活動委員会

 
 ―なでしこの成長も感じ取れるのでは?
 「第1作目からSEASON2にかけて、登場人物5人の中で一番変化しているキャラクターですね。第1作目は山梨に引っ越しして、ゼロの状態から友達をつくって、というお話でした。SEASON2では旧友の綾乃ちゃんも含めて、友達との関わり合いがより親密になっています。キャンプに対しての考え方も変わって行きますね。回を追うごとに、『じゃあ、私はこれをやってみようかな』といった一歩踏み出していくさまが細かく描かれます」
 ―演じる側としてはどんな気持ちですか?
 「お姉ちゃん目線というか、保護者の目線というか。成長が喜ばしい一方、ちょっと心配になることも。周囲から『大きくなったね』なんて言われながら、声を当てています。彼女は山梨に引っ越して、リンちゃんや野外活動サークルのメンバーと出会って、キャンプを知って。幸せな時間を自分の力で手に入れたんですよね。だからこそ、こうやってすてきな大人になっていくんだろうなと。少しほろりとする面もあります」
 ―女子高校生とキャンプの組み合わせは画期的でした。この作品をキャンプブームの火付け役と評価する声もありますね。
 「アウトドアと言えば、男性やファミリー層がたしなむイメージが強かったと思います。でも、本当は手の届く所にある趣味、やろうと思えば誰でもやれる趣味なんですよね。『ゆるキャン△』に関わって、演じている私たちもそれを知りました」
 ―ノウハウがちりばめられていて、実用性も高いですね。
 「ファンの方から『初めてキャンプに行く』というお手紙もいただきます。この作品が後押しになっていたとしたら、うれしいですね。楽しさや豆知識ばかりではなくて、冬や秋のキャンプで注意しなければいけないことも教えてくれるところが特色です」
 ―SEASON2は第1作目以上に静岡県の場面が頻出します。好きな場所はありますか?
 「ロケで訪れたんですが、浜名湖周辺がとてもきれいですね。特に(第3話に出てくる)展望台。なでしこが、綾乃ちゃん、リンちゃんと並んで話をしている場面です。澄んだ空気の中で、上空の星とちょっと離れた市街地の明かりがとてもきれいで。宝石箱のような風景ですよね。また訪問したいです」
 ―ご自身のキャンプ経験は?
 「この作品に関わってから行くようになりました。ソロではないですけどね。去年買った中型たき火台で、火を起こせるようになりました。お肉やサンマも焼いたんですよ。松ぼっくりを着火剤にしようと試みましたが、これまで行ったキャンプ場では、湿気ていてダメでした」
 ―改めて、SEASON2の見どころは?
 「キャンプという『手の届く非日常』を楽しんでいただけます。SEASON2から見ても、すんなり入れるはず。日々の疲れを癒やす30分になっています。静岡の方は、なでしこたちが歩いていた場所が身近にあるでしょうから、『ここ、知っている』といった楽しみ方もできると思います」
 
 はなもり・ゆみり 神奈川県出身。2013年に声優デビュー。15年のアニメ映画「ガラスの花と壊す世界」のリモ役が初主演。「かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~」「トロピカル~ジュ!プリキュア」など、テレビアニメ、映画、ゲームなどの出演作多数。

「野クル」部長の大垣千明役・原紗友里さん 人を気遣う「盛り上げ役」

 作品では、キャンプを楽しむ女子高校生同士のゆるやかな関係性も魅力の一つ。「野外活動サークル(野クル)」部長の大垣千明を演じる声優・原紗友里に話を聞いた。

原紗友里さん
原紗友里さん

 ―主要登場人物5人のムードメーカーの千明だが、長く演じる中で多面性が見えてきた。
 「実はバランスがあって気を遣える子。(各務原)なでしこと話すときは本能が呼応して感情がそのまま出るけど、(犬山)あおいちゃんと話すときは冷静で、対複数になると盛り上げ役になります。意外と振り切れていない『普通の子』なのが面白いですよね」

 ―各キャラクターが「一見わかりにくい女の子像」であることに新鮮さを感じている。
 「わざとらしくキャラが作られておらず、口癖やキャッチフレーズもほぼありません。監督からも口調が『だぜ』などが多いけど、声は男の子にしないでほしいと言われていました。私自身も、普通に友達と話しているときに使うこともあるので、違和感なく役に入れました。お洋服もかわいすぎず、毎回替わっているのがリアルですよね」
 

野外活動サークルの部室で語り合う(左から)大垣千明、各務原なでしこ、犬山あおい ©あfろ・芳文社/野外活動委員会

 
 ―第1作目では少し距離があった主人公・志摩リンとSEASON2では下の名前で呼び合うことが話題になった。
 「放っておいたらしゃべらなかったのが、共通の趣味があって話したら意外といいやつじゃん、という距離の詰め方だったのかな。事件を乗り越えて仲良くなったのではなく、気づいたら名前で呼び合っていた感じが、私自身の高校時代を思い出してもすごくリアルだと思います」

 ―SEASON2では千明の新たな一面も垣間見た。
 「あおいちゃんの妹・あかりちゃんが新たに登場して、彼女のお姉さんの一面が見えました。『あきちゃん、お団子買って』に『自分で買え~』と冗談ぽく返すあたりに、千明もちゃんとお姉さんするんだなと。こういう時にもバランスをとるんだと感じました」

 ―アニメファンのみならず、老若男女に支持される作品と感じている。
 「人間関係とかごはんがおいしいとか、一見『何気ない日常』の中にある小さな感動を丁寧に描いていますよね。空気の温度や旅の終わりのさみしさが、女子高校生同士の楽しさの中にひそんでいるから、癒やされるのかなと思います」

 ―5人について「寒い時期にアニメで見たい人間関係」とみる。
 「全体でも仲がいいけど、みんないい意味で好き勝手やっています。互いに縛らない距離感がいいのかな。キャンプをやる人にはそういう人が多いのかもしれません。みんな『ありがとう』や『ごめん』をちゃんと言えるのが、平和のベースになっているのではないでしょうか」

 ―自身は「根っからのインドア派」だという。
 「作中の料理をまねしたくなりますね。スキレットを買って家でアヒージョを作ったり、ホットサンドメーカーを買って肉まんをつぶしたり。この間はトマトすき焼きを作りました。アウトドアには、コロナ禍になってしまってまだ行けていないんです。監督からは『厳しいと次にいけなくなるから、初心者は楽しい体験をしないとだめだ。一番いい気候の時期に、楽な状態で経験者と行きなさい』とアドバイスを受けました」

 ―SEASON2では静岡の食や観光地が数多く登場する。
 「昔家族で伊豆に行った時に、海鮮などおいしいものがある土地という印象を受けました。前作では近場でキャンプしていた野クルもSEASON2では伊豆を訪れます。背景、小道具、食べ物がしっかり描かれていて静岡観光アニメとしても見られるので、隅々まで楽しんでいただけたらうれしいです」
 
 はら・さゆり 東京都出身。2009年に声優デビュー。「キャプテン翼」「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない」「この素晴らしい世界に祝福を!」「アイドルマスター シンデレラガールズ」など、テレビアニメ、映画、ゲームなどの出演作多数。

アニメ「ゆるキャン△」 

 2015年に連載開始し、単行本の売り上げ累計が500万部に達するあfろの漫画「ゆるキャン△」が原作。18年1月放送開始の第1作目は、女子高校生の各務原なでしこが静岡県から山梨県に引っ越し、同級生の志摩リンと出会う場面から始まる。転入した高校の野外活動サークルに所属する大垣千明と犬山あおい、リンの親友・斉藤恵那らとの交流を通じてキャンプの魅力に目覚めていくなでしこの姿を描く。アイリッシュ・トラッドを基調にした耳心地の柔らかい音楽に乗せ、静岡、山梨、長野各県のキャンプ場を舞台に物語が展開される。