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静岡県知事選情勢 鈴木氏、大村氏激しく競る 有権者や有識者の視点をピックアップ

 26日に投開票を迎える静岡県知事選は終盤に入りました。立候補したのは諸派の政治団体「個人の尊厳党」代表横山正文氏(56)、共産党県委員長森大介氏(55)=同党公認=、いずれも無所属の元浜松市長鈴木康友氏(66)=立憲民主党、国民民主党推薦=、元副知事大村慎一氏(60)=自民党推薦=、アパート経営村上猛氏(73)、コンサルティング会社社長浜中都己氏(62)の6人で、鈴木氏を大村氏が激しく追い上げる展開となっています。情勢調査の結果や有識者の見方をまとめます。

鈴木氏、大村氏激しく競る 地域で優劣に差、投票先未定2割 静岡新聞社電話調査

 静岡新聞社は18、19の両日、川勝平太前知事の辞職に伴う知事選(26日投開票)の電話世論調査を実施し、総支局の取材を加味して情勢を探った。県政史上最多の新人6氏が立候補した短期決戦は、元浜松市長の鈴木康友氏を、元副知事の大村慎一氏が激しく追い上げ、無所属新人の両者が競う形で終盤戦に入った。共産党県委員長の森大介氏は2氏に差を開けられている。そのほかの3氏の支持は広がっていない。

政党の公認、推薦を受けた(左から)森大介氏、鈴木康友氏、大村慎一氏
政党の公認、推薦を受けた(左から)森大介氏、鈴木康友氏、大村慎一氏
 地域によって優劣が大きく異なる状況で、県西部では回答者の6割程度が鈴木氏、中部では5割程度が大村氏を投票先に選んだ。東部では両者が拮抗(きっこう)している。約15年の川勝県政への評価などで投票先が分かれる傾向にあった。投票先を決めていないとした人が2割近くいて、今後の動向が情勢に影響する可能性がある。 

鈴木氏
 鈴木氏は、推薦を受ける立憲民主党支持層の7割、国民民主党支持層の6割を固めた。日本維新の会支持層の6割も取り込む。自民党支持層の2割、自主投票の公明党支持層の3割にも食い込む。無党派層は4割に浸透する。
 投票で重視する項目を「人柄や評判」と答えた人の5割強の支持を得る。リニア中央新幹線建設の是非では「進めるべきでない」と答えた人の支持が大村氏より厚い。川勝県政を「大いに評価する」「ある程度評価する」と答えた人の5割が支持。優先してほしい政策を「医療や福祉」「教育や子育て」とした人の支持は大村氏をしのぐ。
大村氏
 大村氏は、推薦を受ける自民支持層の7割を固め、公明支持層の5割を取り込む。国民支持層の3割、維新支持層の3割など、一部の野党系に食い込んでいるが、無党派層の獲得は3割程度と鈴木氏に後れを取っている。
 投票で重視する項目を「政策や公約」とした人の支持で鈴木氏と競る。リニア建設を「進めるべき」と答えた人の5割近くの支持を獲得。川勝県政を「あまり評価しない」「まったく評価しない」と答えた人の6割弱が支持する。年代別で50代の支持が鈴木氏より厚く、新知事に優先してほしい政策を「防災対策」とした人の支持が鈴木氏を上回る。
森氏
 共産党が11年ぶりに擁立した公認候補の森氏は、共産支持層の6割強しか獲得できず、支持基盤固めに遅れが見える。無党派層の支持も得られていない。リニア建設を「進めるべきでない」と答えた人の2割、川勝県政を「大いに評価する」「ある程度評価する」と答えた人の2割の支持を得る。

立候補者 上から届け出順
 横山正文 56 諸新
 森大介 55 共新
 鈴木康友 66 無新(立民、国民推薦)
 大村慎一 60 無新(自民推薦)
 村上猛 73 無新
 浜中都己 62 無新
 ※諸は諸派、共は共産、無は無所属。敬称略。


 調査方法 18、19日の2日間、コンピューターで無作為に発生させた電話番号を使った電話世論調査法「RDD(ランダム・デジット・ダイヤリング)」で実施した。自動音声応答通話(オートコール)方式を採用し、静岡県内の有権者と答えた人を対象にし、固定電話で732人、携帯電話で309人の計1041人から回答を得た。
 〈2024.05.20 あなたの静岡新聞〉

有権者の意識は? 医療・福祉、景気・雇用に関心

 静岡新聞社が18、19の両日に実施した知事選(26日投開票)の電話世論調査は、優先して進めてほしい政策やリニア中央新幹線建設の是非、4期15年にわたった川勝県政の評価などを尋ね、有権者の意識を探った。知事選に「関心がある」との回答は95・3%に達し、2021年の前回知事選調査の81・1%を上回った。新たな県政のかじ取り役が15年ぶりに代わることで注目が集まっているとみられ、投票率にも影響を与えそうだ。


優先してほしい政策
 

 優先して進めてほしい政策は「医療や福祉」が29・4%でトップだった。「景気や雇用」が28・2%で続き、生活に密着した問題への関心の高さが浮かび上がった。
 3位以下は「人口減少対策」15・9%、「防災対策」13・6%、「教育や子育て」12・8%となった。
 政策ごとに回答者の投票傾向を分析すると、「医療や福祉」と答えた人の中では、投票先に鈴木康友氏を挙げた人が最も多かった。鈴木氏は「教育や子育て」を選択した人からも支持を集めた。一方、「防災対策」と答えた人の中では大村慎一氏の支持が最も高くなった。
 年代別では、60代以上はいずれも「医療や福祉」がトップとなり、80歳以上は全体の4割強を占めた。20代は「景気や雇用」と「教育や子育て」がともに37・5%。30代と40代は「景気や雇用」が最も多かった。「景気や雇用」は男性、「医療や福祉」は女性で高くなる傾向が見られた。
 投票する際に重視する点は「政策や公約」が63・5%でトップ。「人柄や評判」が17・7%で続いた。事実上の与野党対決との見方もある中、「支持する政党や団体の推薦」は13・0%だった。「年齢や出身地」は4・6%にとどまった。

リニア建設 「推進」 半数迫る
 

 県が大井川水資源や南アルプス生態系への影響の懸念から着工を認めず、全国的な関心も集めているリニア中央新幹線トンネル工事への対応について「建設を進めるべきだ」との回答は47・9%で、「建設を進めるべきでない」の29・4%を上回った。「分からない」は22・7%だった。
 投票先に鈴木氏を選んだ人のうち、45・7%が「進めるべき」、29・3%が「進めるべきでない」と答えた。投票先を大村氏とした人では「進めるべき」が61・1%、「進めるべきでない」が17・6%で、推進を求める人の割合が多かった。投票先を森大介氏とした人は「進めるべきでない」が90・1%と大半を占めた。
 川勝平太前知事の県政を「大いに評価する」と答えた人のうち、リニア建設を「進めるべき」は26・8%だったのに対し、「進めるべきでない」は52・5%に上った。川勝県政を「まったく評価しない」と答えた人では86・5%がリニア建設を「進めるべき」とし、「進めるべきでない」は7・4%だった。
 世代別では、「進めるべき」が20代で75・0%、30代でも64・1%で、若年層に推進を求める人が多かった。

川勝県政 66%が肯定的評価
 

 川勝県政の評価を聞いたところ、「大いに評価する」が19・0%、「ある程度評価する」が47・6%となり、計66・6%が肯定的に捉えた。「あまり評価しない」は19・1%、「まったく評価しない」は14・2%だった。評価する層のうち約5割が鈴木氏、評価しない層の約6割が大村氏を支持し、判断がくっきりと分かれた。
 「評価する」は年代が上がるほど多くなる傾向にあり、70代と80歳以上は7割を超えた。30代は「評価する」と「評価しない」が拮抗(きっこう)し、20代は「評価する」が約4割にとどまった。男女別では女性の方が肯定的に捉えている割合が高かった。
 政党別にみると、自民党支持層のうち「評価する」と答えたのは53・8%だった。県議会で自民会派は川勝前知事と対立関係にあったが、自民支持層が県政運営に一定の評価をしていることがうかがえる。
 これまで知事を支えてきた立憲民主党や国民民主党の支持層は「評価する」が7~8割台に上り、共産党は9割を超えて突出した。

裏金問題 6割「考慮」 一定の影響
 

 投票先を決める時に、自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題を考慮するかどうか尋ねたところ、「考慮する」が60・6%となり、「考慮しない」の39・4%を上回った。裏金問題に注がれる厳しい視線が、地方の首長選挙にも一定の影響を及ぼしている実態が浮かんだ。
 「考慮する」と答えた人を支持政党別にみると、自民党が41・9%、公明党が41・2%と半数を下回ったのに対し、立憲民主党は80・1%、日本維新の会は74・6%、共産党は78・4%、国民民主党が71・0%と野党が軒並み高くなった。無党派層は60・7%だった。
 年代別では、40代以上はいずれも「考慮する」が半数を超え、最も高い70代では65・8%に上った。20代は43・8%、30代は33・3%だった。男女別は男性が60・3%、女性が61・0%と大きな違いは見られなかった。

知事選電話世論調査 主な質問と回答 (数字は%)  ◆知事選に関心がありますか
 大いに関心がある 61.4
 ある程度関心がある 33.9
 あまり関心がない 3.5
 まったく関心がない 1.2
 ◆知事選で投票する人を決めましたか
 期日前投票を済ませた 11.7
 決めている 56.8
 だいたい決めている 14.0
 まだ決めていない 17.5
 ◆投票する際に何を重視しますか
 政策や公約 63.5
 人柄や評判 17.7
 年齢や出身地 4.6
 家族や知人からの依頼 1.2
 支持する政党や団体の推薦 13.0
 ◆優先して進めてほしい政策は何ですか
 景気や雇用 28.2
 人口減少対策 15.9
 教育や子育て 12.8
 医療や福祉 29.4
 防災対策 13.6
 ◆リニア中央新幹線の建設を進めるべきだと思いますか
 建設を進めるべきだ 47.9
 建設を進めるべきでない 29.4
 分からない 22.7
 ◆投票先を決める時に、自民党派閥の政治資金パーティー裏金問題を考慮しますか
 考慮する 60.6
 考慮しない 39.4
 ◆川勝平太前知事の15年の静岡県政を評価しますか
 大いに評価する 19.0
 ある程度評価する 47.6
 あまり評価しない 19.1
 まったく評価しない 14.2
 ◆普段どの政党を支持していますか
 自民党 28.9
 立憲民主党 18.3
 日本維新の会 6.1
 公明党 3.3
 共産党 3.6
 国民民主党 3.0
 教育無償化を実現する会 -
 れいわ新選組 2.1
 社民党 0.8
 参政党 1.1
 みんなでつくる党 0.1
 その他の政党・政治団体2.3
 支持する政党はない 30.5

 〈2024.05.20 あなたの静岡新聞〉

有識者の考える“争点” 井柳美紀教授/前山亮吉教授

 26日に投開票を迎える知事選は、リニア中央新幹線工事や浜松市新野球場整備が争点とされ、地域間対決などと指摘される中、静岡県政を研究する静岡県内有識者は「リーダー像」や「川勝県政との類似性、違い」など、独自の基準で候補者の違いを示す。政党の公認、推薦を受ける候補者に対する見方を聞いた。


「対照的なリーダー像」 井柳美紀教授 静岡大(政治学)
 静岡大人文社会科学部の井柳美紀教授(政治学)は「リーダーとしては非常に対照的」と指摘する。政治家出身の鈴木康友氏は「民間の経営感覚や発想を行政に取り入れ、前例踏襲などの行政の壁を突破していこうとする」トップダウン型のリーダーだと指摘。一方、総務官僚出身の大村慎一氏は「地方行政に精通し、行政だからできる仕事を国や市町、県民と連携して実行しようとする」連携・対話型のリーダーとみる。
 両者が経済界の手厚い支援を受ける中、大企業中心の政治を否定し、反自民を掲げる森大介氏は、鈴木氏とも、大村氏とも対極的存在と位置づける。

「脱ポピュリズムが鍵」 前山亮吉教授 静岡県立大(政治学)
 地域主権で行政経営を進める鈴木氏と、中央省庁などとの関係性を生かした行政運営を目指す大村氏との行政手法の違いも挙げ、「どのようなリーダーが良いかは時代のニーズによって異なる」と述べた。
 県立大国際関係学部の前山亮吉教授(政治学)は、今回の知事選に関し「ポピュリズムからの脱却を問う選挙」との見方を示す。国や大企業などの権力構造を批判し、大衆に訴えた川勝平太前知事を「強烈な個性を持つポピュリスト。辞め方も身勝手だった」とし、「有権者がポピュリズム的政治からどこまで脱却することを求めるか」に注目する。
 大村氏について、同じ総務省出身の石川嘉延元知事との類似点が多いと指摘。一方、鈴木氏は保守的だが、旧民主党系や県西部の支持を受ける点で川勝前知事と似ているとし、石川氏と川勝氏の中間的な存在と位置づける。森氏は川勝県政の支持者の受け皿になる可能性があるとした。「ポピュリズムから大きく脱却して以前の保守政治に戻る『原点回帰』なら大村氏、中間的な脱却を望むなら鈴木氏」とも語った。
 〈2024.05.23 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞