熱海土石流「第二の盛り土」ようやく撤去 経緯をおさらい
熱海市伊豆山で2021年7月に発生した大規模土石流を巡り、「第二の盛り土」と呼ばれる不安定土砂が、ようやく撤去されました。第二の盛り土を巡っては、土石流の発生後に存在が明るみに出たことや、付近で複数の開発が行われていたことなど、次々と問題が分かりました。改めて「第二の盛り土」についてまとめました。
現所有者、4月中旬に撤去 静岡県が森林法違反として指導
2021年7月に発生した熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、「第二の盛り土」と呼ばれる土石流起点南側の尾根から投棄された不安定土砂の撤去作業が終了したことが24日、県への取材で分かった。県が現土地所有者に対して森林法違反として行政指導し、現所有者が是正に応じた。

県担当者は「不安定土砂が流出する危険性はなくなった。今後は約5年かけて森林になるよう指導していく」と話す。
「第二の盛り土」は土石流直前の21年6月、市によって確認された。県は22年11月に現所有者の恒久復旧計画書を承認し、現所有者の委託業者が23年2月に工事に着手した。
県は、同じ尾根にある伐採地や太陽光発電施設を含めると開発面積が1ヘクタールを超えるため、林地開発許可違反に当たるとする。太陽光発電施設は排水設備に問題があるとして、市が宅地造成規制法に基づき現所有者を指導している。
〈2023.4.25 あなたの静岡新聞〉
1日20台、ダンプが土砂搬入 土石流から1カ月後に存在判明
熱海市伊豆山の逢初(あいぞめ)川源頭部で崩落した盛り土から南に300メートルほど離れたエリアにある太陽光発電施設と森を切り開いた平地。どちらも土地の所有権が事業家の男性(85)に移ってから開発された。行政の対応はここでも後手に回っていた。

隣接する平地も同じ頃に無届けで造成された。現所有者側が目的などを記載した「緊急伐採届」を提出したのは約1年後。豪雨で土砂崩れが発生し、急きょ現地の小山を崩し、土砂を利用して沢を安定勾配で埋め立て、安全確保を図った旨が記されていた。「事後報告だが、目的はあくまで二次災害防止」。市はそう受け止めたが、現所有者の元部下の男性は「太陽光発電施設のための整地だろう。緊急伐採届はつじつま合わせではないか」と懐疑的にみる。
現所有者が周囲に伝えていたグラウンド整備構想の予定地がこの平地だった。現所有者代理人の河合弘之弁護士は「(21年7月の)土石流発生直前までグラウンドの整地はやっていた」と説明する。
その頃、住民から市にこんな通報があった。「1日20台程度、10トンダンプが土砂を搬入している」。これが端緒となり、市は21年6月、平地に隣接する斜面に土砂が投棄されているのを把握した。いわゆる「第二の盛り土」だ。盛りこぼされた土砂にはコンクリート殻などの廃棄物が混入していた。この事実が明るみに出たのは土石流発生から1カ月以上たってからだった。
斜面は今、市の指導で雨水対策のシートがかぶされているが、現地を知る住民は「風でめくれ、ほとんど意味がない」と嘆く。難波喬司副知事は「広範囲から雨水や地下水が集まる場所でなく大きな被害を及ぼす可能性は低い」としつつも、土砂の撤去と早急な対策の必要性を強調する。
〈2022.5.2 あなたの静岡新聞 連載「残土の闇 第3章」より〉
第二の盛り土エリア付近 複数の開発も
静岡県議会2月定例会は3日(※2022年3月)、自民改革会議の藤曲敬宏氏(熱海市)、佐地茂人氏(静岡市駿河区)、鳥沢由克氏(裾野市)、ふじのくに県民クラブの林芳久仁氏(静岡市清水区)が一般質問を行った。熱海市伊豆山の大規模土石流を巡り、難波喬司副知事は「第二の盛り土」と呼ばれるエリア付近で複数の開発行為の関連性を指摘した上で、「森林法に照らして問題がある」とする見解を示した。藤曲氏への答弁。

難波副知事は、太陽光発電施設と森林伐採、土砂投棄の三つの開発行為に関し「行為者からヒアリングを行った結果、関連した開発行為と判断した」と説明し、森林法の許可要件に該当するか行為者と見解が異なり、協議しているとした。
このエリアでの土砂の崩落可能性に関しては「土石流となって下流に流れ込む現象は発生しにくい」としながらも「異常降雨の発生の可能性もあり、土砂撤去など早急な対応が必要」と述べた。
この付近の開発行為で面積が1ヘクタールを超えれば県の許可が必要になるが、別法令の申請書類などによれば、それぞれ1ヘクタール以下とされている。ただ、三つの開発行為の合計面積は1ヘクタールを上回るため、一体だとみなされれば、森林法に基づく是正措置が必要になる可能性がある。
〈2022.3.4 あなたの静岡新聞〉※肩書きは当時のまま