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祭り不正出店の実態 逮捕の暴力団総長、組合を長年支配

 静岡県東部各地の祭り会場での露店の出店権を暴力団組員らが不正に得ていたとされる詐欺事件で、静岡県警に逮捕された富士市の暴力団総長の男が、長年にわたって「県東部イベント商業協同組合」の実権を握っていたとみられることが明らかになりました。狩野川花火大会や三嶋大祭りといった県内有数の祭りを巡って犯行が行われていました。不正出店の実態をまとめました。

暴力団総長、露店ごと場所代徴収 1千万円以上得ていたか

 静岡県東部各地の祭り会場での露店の出店権を暴力団組員らが不正に得ていたとされる詐欺事件で、静岡県警に詐欺の疑いで新たに逮捕された富士市今泉、暴力団桜井総家総長、無職の男(59)が、長年にわたって「県東部イベント商業協同組合」の実権を握っていたとみられることが6日、関係者への取材で分かった。

暴力団員による露店出店権の不正取得詐欺事件の構図
暴力団員による露店出店権の不正取得詐欺事件の構図
 各祭りの主催者側との窓口役を担う同組合を介し、露店の「売り子」らに1店舗当たり数万円の「ショバ代(場所代)」も納めさせていたという。裾野、御殿場、沼津、三島、富士宮各署と県警捜査4課は容疑者が出店場所などの決定権を持っていたとみて捜査している。
 桜井総家は、2005年に消滅した沼津市を本拠とする指定暴力団の一部組員で構成。露店経営を資金源としてきた指定暴力団の流れを継ぎ、「庭主」と称して同組合を実質支配してきたとされる。
 県警によると、容疑者は10代目トップで、詐欺罪で起訴されている、共に指定暴力団山口組藤友会組員で無職の男(66)=裾野市深良=、男(77)=富士市中里=両被告の露店分を含めた出店場所の割り振りなどを決めていたという。
 「沼津夏まつり・狩野川花火大会」と「三嶋大祭り」では申請手続きに乗じ、露天商に1店舗当たり3万~5万円の場所代を同組合に対して払わせたとみる。関係者によると、場所代は同組合が経費などとして計上していたが、ほとんどが容疑者の手に渡る仕組みだった。両祭りとも期間中に約200店が出る規模で、県警は容疑者が少なくとも1千万円以上を得ていたとみて裏付け捜査を進める。
 容疑者の逮捕容疑は22年7月30、31両日に開かれた沼津夏まつりと、8月15~17日の三嶋大祭りで、指定暴力団山口組藤友会組員の無職の男(66)、男(77)の両被告や同組合の元理事長らと共謀し、暴力団員が実質経営する露店であることを隠し、各主催者側に「出店申込書」や「誓約書」などを提出し、不正に出店権利をだまし取った疑い。
 〈2023.03.07 あなたの静岡新聞〉

出店数十年か 売上金、暴力団に上納 組合加入者の名義を悪用

 暴力団員の露店経営への関与を隠した虚偽文書を露天商らと共謀して「沼津夏まつり・狩野川花火大会」の主催者側に提出し、出店権利を不正に得ていたとして、裾野、御殿場、沼津、三島各署と静岡県警捜査4課に詐欺の疑いで逮捕された指定暴力団山口組藤友会組員の2人が、同大会が開催された数十年間にわたり露店を出し続けていたとみられることが7日、関係者への取材で分かった。

静岡県警
静岡県警
 県警は露店の実質的経営者だった2人が、妻の名義や露天商でつくる「県東部イベント商業協同組合」加入者の立場などを悪用し、多額の売り上げを得ていたとみる。同大会では1日当たり100万円以上売り上げる人気露店もある。県警は売上金が暴力団組織に長年流れていたとみて実態解明を進めるとともに、同組合のチェック態勢の在り方や事件への関与の有無についても慎重に調べる。
 県警によると、藤友会組員の無職の男(66)=裾野市深良=は妻の清掃員の女(52)=同市公文名=を、藤友会組員の無職の男(76)=富士市中里=は、同協同組合員であり同居する露天商の女(55)=同=の名前をそれぞれ悪用し、「出店申込書」を同協同組合を通じて主催者の実行委に提出。露店主である2人を隠れみのに手続きを進め、7月30、31両日の売り場には加入者やアルバイトら複数人を立たせていたとみられる。暴力団とは関係ないことを約束する「誓約書」には組員以外の5容疑者の名前が書かれていた。
 逮捕容疑は、無職の男(66)は清掃員の女(52)ら3容疑者と、無職の男(76)は露天商の女(55)ら2容疑者とそれぞれ共謀し、暴力団であることを秘した虚偽文書を実行委に対して提出するなどし、出店の権利をだまし取った疑い。無職の男(66)らのグループは綿菓子や金魚すくいなど3店舗を、無職の男(76)らはブドウあめやかき氷、焼きそばなど7店舗を出していた。
 〈2022.11.08 あなたの静岡新聞〉

暴力団総長と藤友会組員 長年親交、場所代流れたか

 静岡県東部各地の祭り会場での露店出店権を暴力団組員らが不正に得ていたとされる詐欺事件で、県警に詐欺の疑いで6日に逮捕された富士市今泉、暴力団桜井総家総長、無職の男(59)が、ともに同罪で起訴されている指定暴力団山口組藤友会組員で無職の男(66)、別の男(77)の両被告と20年以上にわたって親交があるとみられることが8日、県警などへの取材で分かった。

家宅捜索に入る捜査員=午前10時ごろ、富士市の藤友会本部事務所
家宅捜索に入る捜査員=午前10時ごろ、富士市の藤友会本部事務所
 関係者によると、桜井総家は、2005年に消滅した沼津市を本拠とする指定暴力団の一部組員で構成し、露店経営を資金源にしたこの指定暴力団の流れを継承した。総長の男は10代目トップで、「庭主」と称し、東部の各祭りの主催者側との窓口役として出店管理を担う「県東部イベント商業協同組合」を、長年にわたり実質支配していたとされる。
 沼津夏まつり・狩野川花火大会(22年7月30、31両日開催)と三嶋大祭り(同8月15~17日開催)では、同組合の元理事長らを介し、露店の「売り子」に1店舗当たり3万~5万円の「ショバ代(場所代)」を収めさせていた。両祭りだけで総長の男は少なくとも1千万円以上を得ていたとみられる。
 裾野、御殿場、沼津、三島、富士宮各署と県警捜査4課は8日、場所代の流れを解明するため、富士市水戸島元町の藤友会本部事務所を家宅捜索した。午前10時ごろ、機動隊員が厳重警戒する中、捜査員約20人が事務所に入り、建物内を捜索した。この事件を巡って同事務所を家宅捜索するのは2回目。
 県警は総長の男が、藤友会組員の両被告の露店分を含む出店場所の決定権を持つ首謀者だったとみて捜査し、藤友会との関係性も追及していく。
 県警は同日までに、総長の男を静岡地検沼津支部に送致した。
 〈2023.03.08 あなたの静岡新聞〉

露天商組合理事長も逮捕 暴力団員経営隠匿か

 暴力団員が「沼津夏まつり・狩野川花火大会」の露店の出店権を不正に取得した詐欺事件を捜査している裾野、御殿場、沼津、三島、富士宮各署と静岡県警捜査4課は17日、暴力団員の露店経営を隠した虚偽文書を主催者側に提出したとして、詐欺の疑いで、露天商でつくる「県東部イベント商業協同組合」理事長の露天商の男(67)=三島市西本町=を逮捕した。

静岡県警
静岡県警
 静岡県内を代表する夏祭りを舞台にした事件は、露店の取りまとめなどを主催者の実行委員会から長年受託してきた組合のトップが逮捕される事態に発展した。静岡県警は暴力団員による露店経営を組織ぐるみで把握、黙認していた可能性があるとみて実態解明を進める。
 逮捕容疑は、指定暴力団山口組藤友会組員で、詐欺容疑で逮捕された男(66)=裾野市深良=らと共謀し、暴力団員が実質経営する露店であることを秘し、実行委に「出店申込書」や「誓約書」などを提出して不正に出店の権利をだまし取った疑い。
 県警によると、指定暴力団山口組藤友会組員で、詐欺容疑で逮捕された男(66)と、同容疑で逮捕された藤友会組員の男(76)=富士市中里=の2人は露店の実質経営者だったが、同じく逮捕された妻の名義や同協同組合加入者の立場などを悪用して出店手続きを進め、祭り当日の7月30、31両日は計10店舗を出していた。
 同協同組合は県中部、西部の2団体とともに2012年秋、県暴力団排除条例に沿った「暴排」を県警に宣言。「関わりを一切持たない」「法令を順守し、健全な露店営業に努める」などの誓いを立てたほか、組合約款なども改正していた。
 同祭りでは1日当たり100万円以上売り上げる人気露店もある。県警は売上金が暴力団組織に長年流れていたとみて捜査を進めるとともに、「県東部イベント商業協同組合」理事長の露天商の男(67)=三島市西本町=が事件に関与した経緯や暴力団員との詳しい関係性を追及する。
 〈2022.11.17 あなたの静岡新聞〉
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