静岡東急スクエア営業危機 中心街の商業施設 生き残り戦略は
静岡市葵区伝馬町の大型商業施設「静岡東急スクエア」が営業存続の危機に陥っていることが分かりました。近隣では2021年3月に静岡マルイが閉店。競争激化やコロナ禍、インターネット通販が普及し、消費行動が様変わりする中、中心街の各商業施設は戦略を練り直しています。静岡の"おまち"の現状や客足回復に向けた戦略をまとめます。
今夏撤退の可能性 テナント複数退去
静岡市葵区伝馬町の大型商業施設「静岡東急スクエア」が営業存続の危機に陥っていることが、24日までの関係者への取材で明らかになった。既に複数のテナントが退去していて、今年夏の撤退も取りざたされている。

同施設は2007年開業の「SHIZUOKA 109」の後継施設。現在、地上3階を除く地下1~地上5階に約20店舗が入居する。一部テナントには撤退の情報が伝えられたという。一方で、施設を運営する後継事業者の選定作業は進展していないとみられる。
近隣では21年3月、約半世紀にわたってにぎわい創出の一翼を担っていた静岡マルイが閉店した。新静岡セノバが近接する伝馬町周辺は呉服町、御幸町と並ぶ静岡市中心街の一角を形成し、今回の経営危機が中心街の集客減につながると危惧されている。
静岡東急スクエアは17年11月、109時代に10~20代女性が主だった客層拡大を狙い、雑貨や飲食などをそろえ再出発した。近年は新型コロナウイルス禍に加え、周辺商業施設との競争も激化し、客足が減少している。
静岡東急スクエアの幹部は「現状が厳しいことは見てもらえれば分かる。あらゆる改善策を検討しているが、何も決定しておらず、お話しできない」としている。
〈2023.2.25 あなたの静岡新聞〉
近隣では21年3月、約半世紀にわたってにぎわい創出の一翼を担っていた静岡マルイが閉店した。新静岡セノバが近接する伝馬町周辺は呉服町、御幸町と並ぶ静岡市中心街の一角を形成し、今回の経営危機が中心街の集客減につながると危惧されている。
静岡東急スクエアは17年11月、109時代に10~20代女性が主だった客層拡大を狙い、雑貨や飲食などをそろえ再出発した。近年は新型コロナウイルス禍に加え、周辺商業施設との競争も激化し、客足が減少している。
静岡東急スクエアの幹部は「現状が厳しいことは見てもらえれば分かる。あらゆる改善策を検討しているが、何も決定しておらず、お話しできない」としている。
〈2023.2.25 あなたの静岡新聞〉
にぎわい創出担った静岡マルイ 競争激化、コロナで低迷

※2020年10月2日 静岡新聞朝刊から
JR静岡駅北口近くの大型商業施設「静岡マルイ」(静岡市葵区)が来年(2021年)3月下旬に閉店することが(20年10月)1日までの取材で分かった。駅前商業エリアの競争激化に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響で売り上げが低迷していたとみられる。隣接する丸井グループの商業施設「静岡モディ」は営業を続ける。
旧丸井静岡店B館をリニューアルした静岡モディの1館体制に集約して経営の効率化を図る。
静岡マルイは1969年、「丸井静岡店」としてオープン。売り場を増設して95年にA、Bの2館体制にした。2016年に幅広い年代を呼び込むため、A館を静岡マルイ、B館を静岡モディとして全館リニューアルし、若者を中心に街中のにぎわい創出の一端を担っていた。
一方、ことしに入って新型コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言を受けて、営業時間の縮小などを余儀なくされていた。同市中心市街地を巡っては7月、別の駅前再開発ビル内にあった大型書店が撤退するなど、中心街の地盤沈下が懸念されている。
丸井は県内に沼津、清水、浜松店を展開していたが、04年までに撤退した。丸井グループは静岡新聞社の取材に「静岡マルイの跡地に関しては未定。静岡モディの1館体制で顧客ニーズに対応した店づくりを続ける」(広報室)と語った。
JR静岡駅北口近くの大型商業施設「静岡マルイ」(静岡市葵区)が来年(2021年)3月下旬に閉店することが(20年10月)1日までの取材で分かった。駅前商業エリアの競争激化に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響で売り上げが低迷していたとみられる。隣接する丸井グループの商業施設「静岡モディ」は営業を続ける。
旧丸井静岡店B館をリニューアルした静岡モディの1館体制に集約して経営の効率化を図る。
静岡マルイは1969年、「丸井静岡店」としてオープン。売り場を増設して95年にA、Bの2館体制にした。2016年に幅広い年代を呼び込むため、A館を静岡マルイ、B館を静岡モディとして全館リニューアルし、若者を中心に街中のにぎわい創出の一端を担っていた。
一方、ことしに入って新型コロナ感染拡大に伴う緊急事態宣言を受けて、営業時間の縮小などを余儀なくされていた。同市中心市街地を巡っては7月、別の駅前再開発ビル内にあった大型書店が撤退するなど、中心街の地盤沈下が懸念されている。
丸井は県内に沼津、清水、浜松店を展開していたが、04年までに撤退した。丸井グループは静岡新聞社の取材に「静岡マルイの跡地に関しては未定。静岡モディの1館体制で顧客ニーズに対応した店づくりを続ける」(広報室)と語った。
松坂屋は滞在・体験型に力 各施設が戦略練り直す

※2022年4月28日 あなたの静岡新聞から
25年ぶりの大型改修を経て(2022年4月)27日に新装開店した松坂屋静岡店(静岡市葵区)は、都市型水族館を構えるなど滞在型・体験型の店舗運営に大きくかじを切り、新型コロナウイルス禍で集客が鈍る市中心市街地に一定の衝撃を与えた。ウェブなどを通じた非接触の買い物が普及して消費行動が様変わりする中、中心街の各商業施設は客足を戻すためのリアル重視の戦略を練り、反転攻勢を図る。
「百貨店が顧客の『目的地』になっていない。ビジネスモデルを変え、風穴をあけたかった」。松坂屋静岡店の落合功男店長は、今回の大胆な戦略の背景に強い危機感があったと明かした。
狙ったのは、モノを売るだけでなく体験とともに消費する「コト消費」の創出。落合店長は「何かを買うか食べるかだけに偏らず、滞在して楽しい空間を提供したい」と強調する。
静岡伊勢丹は百貨店らしさを堅持しつつ、提案力に磨きを掛ける。今月(22年4月)、旗艦店新宿本店での勤務経験が豊富な秋野孝三氏が社長に就任した。衣料品売り場での3D身体計測の導入や、ウェブ限定の衣料品・雑貨ブランドの実店舗誘致を目指す。秋野社長は「豊かな生活を求める顧客は存在し続ける。上質な商品をそろえ、百貨店としての存在価値を高める」と説く。
新静岡セノバを運営する静鉄プロパティマネジメントは来店客の行動分析などデータ解析に意欲を見せる。今後、フロアごとの人の流れや密集度の把握を進め「より効率的な店舗配置や密の解消につなげ、来店客の回遊性を向上させたい」(佐藤寿康常務)。
静岡商工会議所が2021年11月に行った中心市街地の通行量調査によると、総通行量は前年比33・1%増の38万7千人と3年ぶりに増加したが、コロナ前の19年には及ばなかった。
中心市街地活性化を目指す「I Love しずおか協議会」の沼田千晴会長は「大型店の新たな取り組みは中心街に多くの人流を生む効果がある。周辺の個店にも足を運んでもらい、静岡の“おまち”のにぎわいにつながれば」と期待する。
■百貨店、滞在楽しめる空間に
松坂屋静岡店の落合功男店長の主な一問一答は次の通り。
-館内に滞在型エリアを新設した理由は。
「百貨店の従来業態では消費者のニーズを捉えきれなくなり、既存の店で広いフロアを満たすのが難しくなった。多様な商材、コンテンツが集まる大都市と異なり、地方百貨店は生き残りに向けてビジネスモデルを変えなければと考えた」
-顧客にどんな価値を提供するか。
「家族や友人と共に滞在すること自体を楽しむ時間を提供したい。JR静岡駅周辺には大型商業施設が多く集まるが、全てが小売り中心で、買う、食べる以外の選択肢が少ないことが弱点」
-松坂屋が中心市街地で果たす役割は。
「課題はあるが、駅前という場所は地方都市ではまだ存在感がある。県内でさまざまな取り組みに挑戦する企業や人をつなぎ、静岡の価値を高められる拠点へと発展していきたい」(聞き手=経済部・駒木千尋)
25年ぶりの大型改修を経て(2022年4月)27日に新装開店した松坂屋静岡店(静岡市葵区)は、都市型水族館を構えるなど滞在型・体験型の店舗運営に大きくかじを切り、新型コロナウイルス禍で集客が鈍る市中心市街地に一定の衝撃を与えた。ウェブなどを通じた非接触の買い物が普及して消費行動が様変わりする中、中心街の各商業施設は客足を戻すためのリアル重視の戦略を練り、反転攻勢を図る。
「百貨店が顧客の『目的地』になっていない。ビジネスモデルを変え、風穴をあけたかった」。松坂屋静岡店の落合功男店長は、今回の大胆な戦略の背景に強い危機感があったと明かした。
狙ったのは、モノを売るだけでなく体験とともに消費する「コト消費」の創出。落合店長は「何かを買うか食べるかだけに偏らず、滞在して楽しい空間を提供したい」と強調する。
静岡伊勢丹は百貨店らしさを堅持しつつ、提案力に磨きを掛ける。今月(22年4月)、旗艦店新宿本店での勤務経験が豊富な秋野孝三氏が社長に就任した。衣料品売り場での3D身体計測の導入や、ウェブ限定の衣料品・雑貨ブランドの実店舗誘致を目指す。秋野社長は「豊かな生活を求める顧客は存在し続ける。上質な商品をそろえ、百貨店としての存在価値を高める」と説く。
新静岡セノバを運営する静鉄プロパティマネジメントは来店客の行動分析などデータ解析に意欲を見せる。今後、フロアごとの人の流れや密集度の把握を進め「より効率的な店舗配置や密の解消につなげ、来店客の回遊性を向上させたい」(佐藤寿康常務)。
静岡商工会議所が2021年11月に行った中心市街地の通行量調査によると、総通行量は前年比33・1%増の38万7千人と3年ぶりに増加したが、コロナ前の19年には及ばなかった。
中心市街地活性化を目指す「I Love しずおか協議会」の沼田千晴会長は「大型店の新たな取り組みは中心街に多くの人流を生む効果がある。周辺の個店にも足を運んでもらい、静岡の“おまち”のにぎわいにつながれば」と期待する。
■百貨店、滞在楽しめる空間に
松坂屋静岡店の落合功男店長の主な一問一答は次の通り。
-館内に滞在型エリアを新設した理由は。
「百貨店の従来業態では消費者のニーズを捉えきれなくなり、既存の店で広いフロアを満たすのが難しくなった。多様な商材、コンテンツが集まる大都市と異なり、地方百貨店は生き残りに向けてビジネスモデルを変えなければと考えた」
-顧客にどんな価値を提供するか。
「家族や友人と共に滞在すること自体を楽しむ時間を提供したい。JR静岡駅周辺には大型商業施設が多く集まるが、全てが小売り中心で、買う、食べる以外の選択肢が少ないことが弱点」
-松坂屋が中心市街地で果たす役割は。
「課題はあるが、駅前という場所は地方都市ではまだ存在感がある。県内でさまざまな取り組みに挑戦する企業や人をつなぎ、静岡の価値を高められる拠点へと発展していきたい」(聞き手=経済部・駒木千尋)
中心市街地の通行量 2年連続増加もコロナ禍前に及ばず
静岡商工会議所がまとめた2022年度静岡市中心市街地の通行量調査によると、総通行量は前年度比0・7%増の38万9800人と2年連続で前年度を上回った。社会経済活動の正常化に伴う人出の大幅回復が期待されたが、44万人超を記録したコロナ禍前(19年度)に及ばなかった。

調査は22年11月27日、同市葵区の中心市街地の計78地点で実施した。2年連続の通行量トップは「パルシェ前中央地下道」の2万7841人(前年比14・8%増)。次点は「新静岡セノバ前南口モール」の2万2710人(1・8%減)、「スターバックスコーヒー呉服町通り店前・サンカメラ前」の1万8854人(4・8%増)が続いた。
同商議所は「2年連続で前年を上回っているが、コロナ禍が継続する中、先行きは楽観できない」(商工観光課)と分析。行政やまちづくり組織と連携して大河ドラマを活用した回遊促進策を講じ、中心市街地の活性化につなげるとしている。(経済部・駒木千尋)
〈2023.1.28 あなたの静岡新聞〉
同商議所は「2年連続で前年を上回っているが、コロナ禍が継続する中、先行きは楽観できない」(商工観光課)と分析。行政やまちづくり組織と連携して大河ドラマを活用した回遊促進策を講じ、中心市街地の活性化につなげるとしている。(経済部・駒木千尋)
〈2023.1.28 あなたの静岡新聞〉