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Jリーガーから腸活ビジネス社長へ 異色の経歴鈴木啓太さん

 数年前から話題の「腸活」。腸内環境を良くしておなかから健康になろうという取り組みです。静岡市出身で元Jリーガー、日本代表の経験もある鈴木啓太さんが、腸活ブランドの社長に転身し、活躍していることをご存知でしょうか。現役時代の人脈を生かし、アスリートの腸内環境を研究して事業に役立てています。鈴木さんの異色の経歴や仕事観を深掘りします。

子どもの腸内環境改善へ新ブランド 鈴木さん経営「AuB」

 サッカー元日本代表の鈴木啓太さん=静岡市出身=が社長を務め、腸内細菌を研究するベンチャー企業「AuB(オーブ)」はこのほど、新ブランド「aub for kids」を立ち上げると発表した。約30種類の腸内細菌が入った子ども向けの粉末食品を、1日から自社サイトなどで販売している。

約30種類の腸内細菌が入った子ども向けの新商品
約30種類の腸内細菌が入った子ども向けの新商品
 粉末食品は溶けやすいパウダー状で、食物繊維も配合。飲み物や食事に混ぜて摂取できる。今春に第2弾としてスープを発売する予定。
 同社によると、健康な人ほど腸内環境の多様性が高く、腸内環境の基礎ができる2~6歳に多様な菌に触れたり、食材を取ったりすることが重要だという。鈴木さんは記者会見で「おなかから子どもの健やかな生活を支えるのが役割。全ての子どもたちに届けたい」と語った。
〈2023.2.2 あなたの静岡新聞〉

鈴木啓太さん どんな人?

アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を制し、優勝杯を掲げる現役時代の鈴木啓太さん(中央)。浦和レッズの一員として数々の実績を残した=2007年11月、埼玉スタジアム
アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)を制し、優勝杯を掲げる現役時代の鈴木啓太さん(中央)。浦和レッズの一員として数々の実績を残した=2007年11月、埼玉スタジアム
 1981年旧清水市生まれ。小学生時代に清水FCで93年第17回全日本少年サッカー大会準優勝。東海大一中で全国中学校サッカー大会優勝。東海大第一高(現東海大翔洋高)を経て、2000年から浦和レッドダイヤモンズで16年間プロ選手として活躍。Jリーグ優勝、アジアチャンピオンズリーグ制覇に貢献したほか日本代表としてもプレーした。15年、アスリートの腸内環境の解析などを手がけるAuB(オーブ)株式会社を設立し代表取締役に就任。
〈2022.11.19 あなたの静岡新聞〉

新挑戦の「腸活」 サッカーへの情熱が原動力

 浦和レッズ一筋16年。東海大翔洋高卒業後に加入したサッカーJリーグ1部(J1)の強豪でJリーグ王者に輝き、アジアの頂点にも立った。日の丸を背負い、ピッチを駆けたこともある。そんな華々しい経歴を持つ元日本代表の鈴木啓太さん(36)が引退後、「うんこの研究」を始めた。実業家として歩み始めた第二の人生。そこには現役時代と変わらぬ情熱がある。

鈴木啓太さん
鈴木啓太さん

現役時代の体調不良からヘルスケアに興味
 僕は今、「AuB(オーブ)」の社長としてヒトの腸内に重さ約1~2キロあると言われる腸内細菌の解析を進めています。研究を通じて、スポーツ選手の競技力向上や一般の人の健康維持に貢献したいと考えています。
  現役時代の2014年に不整脈を患いました。15年もプレーしましたが、なかなかコンディショニングが整いませんでした。その年の春です。知り合いのトレーナーから「便を調べている人がいるよ」と、快便記録アプリ「ウンログ」を開発した田口敬さんを紹介されました。ヘルスケアにもともと興味があり、これから自分で新しい事を始めたいと思っていたところだったので、すぐに連絡を取り、3日後には会いに行きました。「腸内細菌を調べると、意外といろいろなことが分かって面白いですよ」と言われ、「アスリートで調べたらもっと面白いのでは」と意気投合しました。
  東海大一中時代の頃から母親に「人間の体で大切なのは腸だから」と言われていたので、「便」「腸」「コンディショニング」のキーワードが、頭の中でバチバチとつながった瞬間でした。構想なんて必要ありませんでした。実体験があったし、誰もやっていなくて面白い。その時に会社をつくろうと決め、年内には立ち上げました。
  現役時代は体調不良による問題をいろいろと抱えました。もしコンディショニングが整っていれば、もっと長くプレーできたのではないかとも思います。他にもそういう選手がいるはずです。何か力になれるのではないかとも考えました。
  アレルギー体質の僕は、体に合わない食べ物があります。25歳くらいの時です。健康に気を使おうと豆乳を毎朝飲み始めましたが、練習に車で向かう途中、必ず気持ち悪くなりました。過去をさかのぼると、筋力強化のためにタンパク質を補うプロテインも駄目でした。体に良いはずなのに、体がおかしくなるのです。栄養士がつくるバランスを考えたメニューだとしても、本人に合うとは限りません。そういう部分にも研究を広げていきたいです。
  会社の目標の一つが、一般の人の健康寿命を延ばすことです。一般男性の場合、寿命から健康寿命を引いた年数が8~9年くらいあると言われます。健康でいる時間が、人生を楽しむ上で重要です。ある時にサポーターから「年齢を重ねてスタジアムに足を運ぶのがおっくうになった」と聞きました。Jリーグ開幕から25年がたち、当時40歳の人が65歳になったのだから当然です。僕はサッカーに育てられました。サポーターには、いつまでも元気でスタジアムに通ってほしいと思っています。アスリートの知見から、一般の人をどれだけ健康に導けるかどうかなのです。

スポーツ選手の評価 広い視野で考えるべき
  今の事業はいつの日か、自分自身がサッカー界に戻るための勉強だとも思っています。指導者ではなく、クラブの経営者としてです。世の中はサッカーだけではありませんし、スポーツだけでもありません。もっと広い視野を持って動かないといけません。日本はまだスポーツ選手の価値がそこまで高くはありません。瞬間的に高くなっても、すぐに熱が冷めてしまうのです。だからこそ、日本のスポーツ界の本質的な価値を高めたい。
  今の日本サッカー界を変えていくためには、クラブ自体が企業として影響力を持つことが大事です。プロスポーツは何のためにあるのかを考えてみてください。(スポンサー)企業のものではありません。地域に根差しているとか、ブランドがあるとか、憧れの存在とか―。自分たちが何か影響力を持って進めていかないといけないのです。
  自分の事業を通し、アスリートのデータが非常に価値を持っていることを知ってもらいたい。そして、自分の経験をサッカー界の発展のために生かしたいです。サッカー界の中には『何でそんなことをしているのか』『何でうんちなんかを集めているのか』と言う人もいます。だからこそ、チャレンジしていく価値があると思っています。
〈2018.5.25 静岡新聞朝刊〉

アスリート500人の検体を研究 サプリ開発

 「腸活」ビジネスが一段と広がっている。

腸に良いとされる雑穀を研究するため、浜松市天竜区水窪町の料理店を訪れる鈴木さん=2018年4月
腸に良いとされる雑穀を研究するため、浜松市天竜区水窪町の料理店を訪れる鈴木さん=2018年4月
  「日ごろから食事や体調管理に気を使うアスリートと一般人を比べ、腸内環境がどう違うかに着目しました」。こう話すベンチャー企業「AuB(オーブ)」(東京)の鈴木啓太社長=東海大翔洋高出=は元サッカー日本代表だ。スポーツ界の人脈を生かし、選手約500人から千以上の便の検体を集めて調べたところ、特定の種類の菌が多いことが分かった。
  この研究成果を生かしたサプリ「AuB BASE(オーブ ベース)」を12月に自社ECサイトで発売。90粒入り(1カ月分)が4838円(初回のみ2678円)。鈴木社長は「ハードな生活をしているビジネスマンのコンディションづくりに役立ててほしい」と話している。
〈2018.4.10 静岡新聞朝刊より抜粋〉