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卓球全日本選手権 最強ペア「みま・ひな」 2人のV5への歩み

 卓球の全日本選手権は28日、東京体育館で女子ダブルス決勝を行い、伊藤美誠(22)=スターツ、磐田市出身=・早田ひな(22)=日本生命=組(みま・ひな)が史上最多の5連覇を達成しました。一緒に初Vの2018年にさかのぼり、2人の戦績と育まれてきた強い絆を振り返りましょう。

史上最多5連覇 25連勝、未踏の金字塔

 卓球の全日本選手権第6日は28日、東京体育館で男女のシングルス準々決勝、ダブルスの準決勝、決勝を行い、女子ダブルス決勝で伊藤美誠(スターツ、磐田市出身)・早田ひな(日本生命)組が3-0で成本綾海・井絢乃(中国電力)組を下し、史上最多の5連覇を達成した。

女子ダブルスで史上最多の5連覇を達成して笑顔を見せる伊藤(右)、早田組=28日午後、東京体育館(写真部・小糸恵介)
女子ダブルスで史上最多の5連覇を達成して笑顔を見せる伊藤(右)、早田組=28日午後、東京体育館(写真部・小糸恵介)

同級生支えで輝き再び
 未踏の金字塔を打ち立て、名実ともに「日本最強ペア」の称号を手にした。伊藤・早田組が女子ダブルスで単独最多の5連覇。2018年の初出場から負けなしの25連勝に、伊藤は「とっさに組んでも、いつも練習しているよう。ミックス(混合)で男子選手と組んだ時を含めても一番強い」と断言した。
 最高の相棒に支えられ、伊藤が輝きを取り戻した。王手をかけて迎えた第3ゲーム。3-6から巧みなサーブレシーブや台上プレーを連発した。「(早田が)自分の良さを引き出してくれる」。9-8と逆転し、最後は絶好調時のような逆チキータのリターンエースと高速スマッシュ。今大会、どうにも決まらなかった強打をたたき込み「あれが入るんだ」と目を丸くした。
 互いに崩しもフィニッシュも変幻自在。「昨年は強気に攻められると戦術が限られ、苦しんで乗り切っていた。でも、今は攻められることも前提にプレーできる幅がある」(早田)と、組むたびに進化を感じている。
 いつも笑顔が絶えない22歳の同級生。伊藤が「(不調の)シングルスも一緒にプレーしているようにできればいいのに」と冗談めかせば、早田は「美誠に卓球を続けさせるために引っ張り出すかも。10連覇くらいしたい」と笑わせるなど絶大な信頼関係で結ばれる。ペアの最終目標は世界選手権の金メダル。ここは通過点に過ぎない。(運動部・山本一真)
 〈2023.1.29 あなたの静岡新聞から〉

V4~V2まで 決勝戦総ざらい

V4(2022年1月29日)
伊藤 早田 3(12―10 7―11 14―12 11―5)1 宋 成本

女子ダブルス決勝でプレーする伊藤(右)、早田組=東京体育館

女子複V4 21歳ペア 変幻自在、女王の風格
 打倒中国に最も近い日本最強ペアには勝負どころでもう1段上のギアがある。女子ダブルス決勝で伊藤、早田組は第1ゲームを5―10からの7連続得点で逆転し、第3ゲームも相手のゲームカウントを2度しのいで奪った。「苦しい場面でどう1点取るかを考えてきた」と伊藤。女王の風格を漂わせる試合運びで、歴代最多の4連覇に並んだ。
 東京五輪を終え、再びペアを組んで実感したのは個々の成長。昨年の世界選手権は決勝で中国ペアに敗れたが、全日本に向け2人の連係やサーブの工夫、さまざまな回転の打球への対応などをあらためて突き詰めた。
 伊藤がポイントに挙げたのは第1ゲーム終盤。9―10から、ここまで手を焼いていた宋のフリックを伊藤が拾って早田が仕留めた。「やられていた攻撃に対し、いい判断ができた」(伊藤)。最後は自らのサービスエースで流れを引き寄せた。
 早田は苦しい体勢からでも強烈なフォアドライブをたたき込み、伊藤は鋭い回転が掛かった相手のしゃがみ込みサーブに、攻撃的レシーブ「チキータ」を合わせリターンエースを奪う場面も。硬軟自在の戦術、技術を見せつけた。
 多様なスタイルと戦うダブルスはシングルス強化にもつながっている。「ダブルスで中国選手に勝てるようになって、シングルスも戦えるようになった」と伊藤。早田は今回の全日本を「2人の新たなスタート」と話す。ともにまだ21歳。進化は止まらない。

V3(2020年1月18日)
伊藤 早田 3(11―3 11―9 7―11 11―8)1 芝田 大藤

女子ダブルスで3連覇を果たし笑顔でタッチを交わす伊藤美誠(左)、早田ひな組=18日午後、大阪市の丸善インテックアリーナ大阪

女子複 3連覇“ みまひな”連係追求
 高速卓球で相手を寄せ付けなかった。女子ダブルスを3連覇した伊藤は左拳を握り締め、ペアの早田とハイタッチを交わした。「昨年より良かったと思える試合ができ、本当に楽しめた」。普段は淡々と振り返る女王の顔に笑顔が見えた。
 昨年と同じ芝田(ミキハウス)、大藤(ミキハウスJSC)組との決勝。伊藤は序盤から前で攻めた。回転をかけたレシーブで相手のタイミングを外し、ラリー戦でもミスを恐れず強烈なドライブを仕掛けた。時には後陣に下がって早田をサポートする場面も。「自分たちらしいプレーだった」と自らたたえた。
 早田とのペアは昨年4月の世界選手権以来だが、ダブルスで出場しなかったワールドツアー中も中国選手の試合を参考に、2人でより良い連係を追求してきた。今大会前の練習時間は少なかったが、「不安はなかった」と伊藤。日頃から高め合ってきた同学年ペアには、厚い信頼関係がある。
 2人は19日のシングルス準決勝で対戦する。前回大会の準決勝と同一カード。昨年はストレート勝ちしたが、伊藤は「ダブルスを組んで、お互いに実力が上がっていると感じた」と早田の成長を警戒する。「互いに120%の力を出せるよう頑張りたい」と“みまひな”の再戦を楽しみにする。

V2(2019年1月19日)
早田 伊藤 3(11―3 11―9 12―14 11―6)1 芝田 大藤

女子ダブルスで連覇した伊藤(手前)、早田組=丸善インテックアリーナ大阪

早田とともに成長圧倒 付け入る隙与えず
 盤石の戦いで重圧をはねのけた。女子ダブルスの伊藤、早田組が、相手に付け入る隙を与えずV2を達成。「個々の実力が上がったからこその連覇。素直にうれしい」と伊藤。昨年の初優勝から一段とレベルアップし、圧倒的な力を見せつけた。
  危なげない戦いぶりだった。決勝までの5試合で奪われたゲーム数はわずか2と堅い守りが光った。決勝は1ゲーム目にいきなり8連続得点で流れを呼び込み、手を緩めることなく攻め込んだ。伊藤の多彩なサーブとレシーブ、早田の強力なドライブ。2人の武器を最大限に発揮した。

ダブルス初Vの2018年 17歳で最年少3冠も達成

 卓球の全日本選手権第6日は(2018年1月)20日、東京体育館で行われ、男子ダブルスは水谷隼(木下グループ、磐田市出身)、大島祐哉(木下グループ)組が上田仁、吉田雅己組(協和発酵キリン)を3-1で下して初制覇を果たした。女子は世界選手権銅メダルの伊藤美誠(スターツ、磐田市出身)、早田ひな(日本生命)組が梅村優香、塩見真希組(大阪・四天王寺高)を3-1で破って初優勝した。

女子ダブルスを制した伊藤美誠選手(左)と早田ひな選手=2018年1月20日午後、東京都渋谷区の東京体育館
女子ダブルスを制した伊藤美誠選手(左)と早田ひな選手=2018年1月20日午後、東京都渋谷区の東京体育館

「美誠が崩す」「ひなが決める」 信頼関係で頂点
 女子ダブルス決勝の10代対決は、世界を知る2人に軍配が上がった。「うれしいというよりほっとした」と伊藤。重圧から解放され、早田と笑顔で抱き合った。
 世界選手権銅メダルの肩書にたがわず、準々決勝以降の3試合は3―0、3―1、3―1と危なげなかった。決勝は第1ゲームを奪われても動じなかった。「相手は(強打を)ブロックしてからの展開がうまかった。逆を突くこと、緩急をつけて反撃されないようにすることを意識した」と早田。主導権を奪い返し、両ハンドから狙い澄ましたショットで得点を重ねた。
 ペア結成から約1年。「自分がコースを突けば、(早田)ひなが必ず決めてくれる」(伊藤)、「美誠の崩しがなければ自分の攻撃を出すのは難しい」(早田)と互いの信頼感も抜群だ。
 伊藤は混合に続くダブルス制覇。21日のシングルスを制すれば、女子で史上3人目の3冠だ。石川(全農)との準決勝に向けて「思い切ってやるだけ」と語った。
 〈2018.1.21 静岡新聞朝刊から〉
 ※補足 伊藤選手はこの翌日、シングルスで平野美宇選手(エリートアカデミー、沼津市出身)を破って初優勝。混合ダブルス、女子ダブルスに続く3冠を史上最年少で達成した。

女子ダブルスで優勝した伊藤(右)、早田組

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