新東名 2027年度に全線開通へ これまでの歩み
トンネル工事の難航などにより2度延期されていた、新東名高速道の全線開通が2027年度に決まりました。現在、未開通の残り区間、新秦野IC―新御殿場IC間の約25キロの工事が進められています。2012年の開通式から10年余。これまでの主な動きをまとめました。
2度の延期経てようやく 静岡県内経済効果に期待
首都圏と中京圏をつなぐ新東名高速道の全線開通が2027年度に決まった。トンネル工事が難航するなど2度にわたる延期の末、並行する東名高速道とのダブルネットワークがようやく実現するめどが立った。静岡県内の自治体や物流業界からはアクセス向上による経済効果に期待が高まる一方、「開通時期の遅れは痛手」と困惑の声も上がる。

新東名は現在、全体の9割が開通している。残る区間は新秦野インターチェンジ(IC、神奈川県)―新御殿場IC(御殿場市)間の約25キロ。山間地を貫く高松トンネルで脆弱(ぜいじゃく)な地盤が出現し、掘削工事が難航している。中日本高速道路は当初、20年度の開通を目指したが、23年度に延期。その後、開通予定を白紙にし、22年12月に「27年度に見直す」と発表した。
「開通時期がはっきりと示され、企業にアピールしやすくなった」。御殿場市商工振興課の担当者は大動脈の完成を待ち望む。市内には民間企業が開発する工業団地もあり、首都圏に近い立地の優位性がさらに高まると指摘。アクセスが向上する北関東方面の企業を中心に誘致活動を強化する方針だ。
物流業界の期待も大きい。県トラック協会は「運転手の労働時間改善が求められる中、定時性が高まり、決まった時間に荷物を届けやすくなる」と利点を強調する。
一方、開通がずれ込んだことに困惑の声も上がる。小山町フロンティア推進課の担当者は「4年の遅れは痛手。企業進出の熱が冷めてしまわないか心配だ」と漏らす。中日本が22年12月に沿線自治体を交えて開いた会議でも、「開通が27年度になるのは残念」「一日も早い開通に向けて事業推進を図ることを強く要請する」などの意見が出たという。
静岡経済研究所の玉置実主席研究員は「東名周辺は20~30年かけて現在の産業集積が構築されたことを踏まえると、新東名周辺の活性化はこれからが本番」と指摘する。「県東部地域の立地優勢はさらに高まる。円安進行による企業の国内回帰や新たな産業創出などの環境変化を見据え、企業誘致の戦略を立てていくことが重要だ」と話す。(政治部・森田憲吾)
〈2023.1.22 あなたの静岡新聞〉
「開通時期がはっきりと示され、企業にアピールしやすくなった」。御殿場市商工振興課の担当者は大動脈の完成を待ち望む。市内には民間企業が開発する工業団地もあり、首都圏に近い立地の優位性がさらに高まると指摘。アクセスが向上する北関東方面の企業を中心に誘致活動を強化する方針だ。
物流業界の期待も大きい。県トラック協会は「運転手の労働時間改善が求められる中、定時性が高まり、決まった時間に荷物を届けやすくなる」と利点を強調する。
一方、開通がずれ込んだことに困惑の声も上がる。小山町フロンティア推進課の担当者は「4年の遅れは痛手。企業進出の熱が冷めてしまわないか心配だ」と漏らす。中日本が22年12月に沿線自治体を交えて開いた会議でも、「開通が27年度になるのは残念」「一日も早い開通に向けて事業推進を図ることを強く要請する」などの意見が出たという。
静岡経済研究所の玉置実主席研究員は「東名周辺は20~30年かけて現在の産業集積が構築されたことを踏まえると、新東名周辺の活性化はこれからが本番」と指摘する。「県東部地域の立地優勢はさらに高まる。円安進行による企業の国内回帰や新たな産業創出などの環境変化を見据え、企業誘致の戦略を立てていくことが重要だ」と話す。(政治部・森田憲吾)
〈2023.1.22 あなたの静岡新聞〉
新東名高速道の開通計画と歩み

新東名高速道の開通計画と主な歩み〈2023.1.22 あなたの静岡新聞〉
2012年 御殿場ー三ケ日JCT間162キロ開通

※2012年4月15日 静岡新聞朝刊から
新東名高速道は(2012年4月)14日、御殿場市の御殿場ジャンクション(JCT)―浜松市北区の三ケ日JCT間の162キロが開通した。一度に開通する距離としては国内の高速道路史上最長。新たに内陸部を結ぶ大動脈が誕生し、東名高速道と合わせて東西軸の高速道が複線化したことで、渋滞解消、防災力向上、観光振興などが期待される。
開通時間の午後3時、静岡県内12カ所のインターチェンジ(IC)、スマートIC(ETC専用の簡易インター)と4カ所のJCTが一斉に開くと、乗用車やトラックが真新しい道路に次々となだれ込んだ。一般道からも利用できるサービスエリア(SA)とパーキングエリア(PA)もにぎわった。
開通に先立ち、富士市の新富士ICでは開通式典が開かれた。前田武志国土交通相や川勝平太知事らが出席し、日本の新たな大動脈の完成を祝った。
県内区間は総工費約2兆6千億円を投じ、20年以上の歳月をかけて建設された。東名と比べてカーブや坂が緩やかにできている。主に山間地を走り、橋が51・7キロ(32%)、トンネルが41・6キロ(26%)を占めている。大規模地震に備えて最新の耐震設計で施工され、浜松SA(下り線)を除くSA、PAにヘリポートも整備された。
13カ所のSA、PAには地域特性に合わせた商業施設がオープンした。地場産品を扱う店舗に加えて、衣料品店、バイク用品専門店など従来の高速道にない業種も入った。計121店舗のうち、半数以上の67店舗が高速道初出店となった。
新東名の全長は神奈川県の海老名南JCT―愛知県の豊田東JCT間の254キロ。2014年度に浜松市北区の浜松いなさJCT―豊田東JCTの約53キロがつながり、20年度に全線開通する見通し。(社会部・塩見和也)
※内容は当時のまま
新東名高速道は(2012年4月)14日、御殿場市の御殿場ジャンクション(JCT)―浜松市北区の三ケ日JCT間の162キロが開通した。一度に開通する距離としては国内の高速道路史上最長。新たに内陸部を結ぶ大動脈が誕生し、東名高速道と合わせて東西軸の高速道が複線化したことで、渋滞解消、防災力向上、観光振興などが期待される。
開通時間の午後3時、静岡県内12カ所のインターチェンジ(IC)、スマートIC(ETC専用の簡易インター)と4カ所のJCTが一斉に開くと、乗用車やトラックが真新しい道路に次々となだれ込んだ。一般道からも利用できるサービスエリア(SA)とパーキングエリア(PA)もにぎわった。
開通に先立ち、富士市の新富士ICでは開通式典が開かれた。前田武志国土交通相や川勝平太知事らが出席し、日本の新たな大動脈の完成を祝った。
県内区間は総工費約2兆6千億円を投じ、20年以上の歳月をかけて建設された。東名と比べてカーブや坂が緩やかにできている。主に山間地を走り、橋が51・7キロ(32%)、トンネルが41・6キロ(26%)を占めている。大規模地震に備えて最新の耐震設計で施工され、浜松SA(下り線)を除くSA、PAにヘリポートも整備された。
13カ所のSA、PAには地域特性に合わせた商業施設がオープンした。地場産品を扱う店舗に加えて、衣料品店、バイク用品専門店など従来の高速道にない業種も入った。計121店舗のうち、半数以上の67店舗が高速道初出店となった。
新東名の全長は神奈川県の海老名南JCT―愛知県の豊田東JCT間の254キロ。2014年度に浜松市北区の浜松いなさJCT―豊田東JCTの約53キロがつながり、20年度に全線開通する見通し。(社会部・塩見和也)
※内容は当時のまま
2023年度 自動運転見据えた実証実験 カメラで瞬時に異常把握

※2022年4月13日 あなたの静岡新聞から
中日本高速道路は2023年度、新東名高速道の未供用区間、新御殿場インターチェンジ(IC)-新秦野IC(25キロ)で、車の自動運転の実用化を見据えた実証実験に乗り出す。全線監視カメラを初めて整備し、落下物や交通事故など路上の異常をリアルタイムで把握する仕組みの構築を目指す。14日に県内区間が開通10年を迎える中、次代に適応する新たな道路保全システムの確立を加速させる。12日までに関係者への取材で分かった。
同社によると、高速道路上で発生する異常は、利用者からの通報やパトロール車での巡回で把握するケースが多く、発生から周知に時間を要しているのが実情。沿線には監視カメラを設置しているが、2キロ間隔のため全線を常時監視する体制はできていない。
車の自動運転社会が到来すれば、異常の検知や後続車への伝達を即座に行う必要が出てくる。同区間では、カメラの設置間隔を短くして全線が監視できるようにする。道路管制センターを通じて後続車両に直接、情報伝達する仕組みの構築を検討する。
沿線に一定間隔で設置する路側機で、通過車両の速度を測定し、最適な速度情報を後続車に通知する検証も行う。同区間はトンネル工事が難航し、23年度に予定した全線開通が延期されている。
開通10年の報告のため、今月上旬に川勝平太知事を訪ねた同社の松井保幸東京支社長は「車の進化を支えるチャレンジを新東名でやっていかなければいけない」と述べた。実証実験について同社の広報担当者は「中長期的なロードマップはまだ描けていないが、異常を検知する監視カメラや通信技術の精度などを検証していきたい」とした。
※内容は当時のまま
中日本高速道路は2023年度、新東名高速道の未供用区間、新御殿場インターチェンジ(IC)-新秦野IC(25キロ)で、車の自動運転の実用化を見据えた実証実験に乗り出す。全線監視カメラを初めて整備し、落下物や交通事故など路上の異常をリアルタイムで把握する仕組みの構築を目指す。14日に県内区間が開通10年を迎える中、次代に適応する新たな道路保全システムの確立を加速させる。12日までに関係者への取材で分かった。
同社によると、高速道路上で発生する異常は、利用者からの通報やパトロール車での巡回で把握するケースが多く、発生から周知に時間を要しているのが実情。沿線には監視カメラを設置しているが、2キロ間隔のため全線を常時監視する体制はできていない。
車の自動運転社会が到来すれば、異常の検知や後続車への伝達を即座に行う必要が出てくる。同区間では、カメラの設置間隔を短くして全線が監視できるようにする。道路管制センターを通じて後続車両に直接、情報伝達する仕組みの構築を検討する。
沿線に一定間隔で設置する路側機で、通過車両の速度を測定し、最適な速度情報を後続車に通知する検証も行う。同区間はトンネル工事が難航し、23年度に予定した全線開通が延期されている。
開通10年の報告のため、今月上旬に川勝平太知事を訪ねた同社の松井保幸東京支社長は「車の進化を支えるチャレンジを新東名でやっていかなければいけない」と述べた。実証実験について同社の広報担当者は「中長期的なロードマップはまだ描けていないが、異常を検知する監視カメラや通信技術の精度などを検証していきたい」とした。
※内容は当時のまま