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⚽清水エスパルス新体制始動 J1復帰へ立て直しなるか

 今シーズンをJ2で戦う清水エスパルスが新体制を発表しました。1年でのJ1復帰を目標に掲げ、「強いエスパルスを取り戻す」との決意を胸にキャンプに臨みます。昨季途中に就任したリカルド監督は続投が決まった一方、ワールドカップカタール大会で活躍したGK権田選手、昨シーズンJ1得点王のチアゴサンタナ選手らの去就はまだ決まっていません。復権へ向けた課題や注目選手についてお伝えします。

目標は1年でのJ1復帰 権田やチアゴサンタナの去就に注目

 今季をJ2で戦う清水は6日、アイスタ日本平で新体制発表会見を開いた。山室晋也社長は1年でのJ1復帰を目標に掲げ、「いずれはJ1優勝を狙えるようなクラブの力を身に付けるきっかけを今年つかみたい」と復権を見据えた。

清水で活躍を誓う前列左から落合、吉田、斉藤、北爪と後列左から森重、監物、阿部、高橋=アイスタ日本平(写真部・杉山英一)
清水で活躍を誓う前列左から落合、吉田、斉藤、北爪と後列左から森重、監物、阿部、高橋=アイスタ日本平(写真部・杉山英一)
 今季のスローガンは、力強いクラブの実現への思いを込めた「STRONG WILL(強い意志)」。編成トップの大熊清ゼネラルマネジャー(GM)は「アカデミー(下部組織)も含めて強いエスパルスを取り戻したい」と立て直しへの決意を示した。
 昨季途中に就任したブラジル人のリカルド監督が今季も指揮を執る。昇格を最大の目標に据え、「積極性と競争力の高いチームをつくり、試合の主役になる戦いをする」と述べた。試合終了間際の失点が目立った昨季の課題については「戦いのバランスの修正を図る」と改善を誓った。
 J2降格によって選手の去就が注目された中、昨季の主力だったDF立田やDF片山、MF原が移籍を決断。手薄になった最終ラインにはJ1柏でセンターバックの主軸を担ったDF高橋を獲得し、J1名古屋からは9季ぶりの古巣復帰となるサイドバックのDF吉田を加えた。
 ただ、GK権田、MF松岡、MF鈴木唯、FWチアゴサンタナの4人はまだ契約を更新していない。大熊GMはいずれも海外クラブなどへの移籍を模索中と明かし、今月中には去就が決まるとの見通しを語った。9日から始まるチーム練習には参加予定という。
 26日からは鹿児島市内で10日間のキャンプを行い、ホームで水戸を迎え撃つ開幕戦に備える。(運動部・市川淳一朗)
〈2023.01.07 あなたの静岡新聞〉

​育成転換もまだ助っ人頼み 問われる指針の実行力

 2度目のJ2降格の屈辱を味わってから2カ月。低迷した原因の一つにクラブの指針の不明確さを挙げた山室晋也社長と大熊清ゼネラルマネジャー(GM)は、2027年までの5カ年のビジョンを会見で示した。

 チームづくりの面では、加入した選手が成長する「強い育成型クラブの再建」を方針に据えた。24年のパリ五輪、26年のワールドカップ(W杯)に代表選手を輩出し、育った選手たちが27年にJ1リーグ制覇を成し遂げる未来予想図を描いた。
 しかし、再建への初年度となる今季の顔触れに、育成型への転換を感じ取ることは難しい。J2では試合に出場できる外国籍選手は4人までだが、6人が在籍。助っ人に頼るチームの骨格は変わらない。
 まだ契約を更新していない昨季の主力4人全員がチームに残ると、所属選手数は35人の大所帯となる。全体の競争力を高めながら若手の成長を促す循環をつくり出せなければ、青写真はかすむ。
 「ボールを動かし続けて優位性を保つ」「攻撃的な守備」など、クラブが志向していく戦い方も設定した。現時点でのチーム戦力はJ1級。問われるのは結果に加え、長期的視点を踏まえた指針の実行力だ。(運動部・市川淳一朗)
〈2023.01.07 あなたの静岡新聞〉

9季ぶり復帰の吉田 注目の新加入選手をピックアップ

 来季J2の清水は29日(※12月)、J1名古屋のDF吉田豊(32)=静岡学園高出=が完全移籍で加入すると発表した。9季ぶりの清水復帰となる。

吉田豊選手
吉田豊選手
 富士宮市出身の吉田は静岡学園高から2008年にJ2甲府入り。12年に清水に移籍し、3年間主力としてプレーした。その後はJ1の鳥栖、名古屋で活躍。J1通算338試合、J2通算60試合に出場。クラブを通じて「チームを引っ張っていく存在になれるよう努力する」とコメントした。
〈2022.12.29 あなたの静岡新聞〉

フル稼働誓う
 9季ぶりに清水に復帰した吉田は「エスパルスはJ2にいるクラブではない。必ずJ1に復帰する」と強い決意を口にした。
 2012年から3シーズンにわたり在籍。小野伸二(現J1札幌)ら偉大な先輩たちに囲まれながら成長し、主力としてプレーした。「今度は自分が若手に背中で示せたら」とベテランとしての自覚をにじませる。
 選んだ背番号は以前の所属時に着けた28。愛着ある数字が刻まれた古巣のユニホームに袖を通し「帰ってきたんだな、と感じた」と笑みを浮かべる。故障にも泣かされた昨季はJ1名古屋でリーグ戦15試合の出場にとどまった。「けがをせずに全試合に出場したい」とフル稼働を誓った。(運動部・市川淳一朗)
〈2023.01.07 あなたの静岡新聞〉

長期的ビジョンが欠如 元五輪日本代表・松原良香氏

 J1清水エスパルスとジュビロ磐田のJ2降格が決まり、静岡から来季J1クラブがなくなる事態について、両チームでプレーしたアトランタ五輪日本代表の松原良香氏(48)=浜松市出身=に低迷の原因や復権へのポイントを聞いた。

松原良香氏
松原良香氏
 両チームに共通するのは長期的ビジョンがないこと。編成が悪く若い選手が育たない。清水と磐田が強かった頃は育成とトップがリンクしていた。当時は地元の高校から輩出された県選抜が清水、磐田の主力になった。そこにドゥンガやスキラッチら有名な外国人を連れてきて、プロとしてのあり方を見ながら育った。育成強化の主流がクラブになり、その“根っこ”が取れてしまった。目の前の勝負にとらわれすぎ、育成の田植えの部分ができなかった。
 世界のサッカーはずっと進んでいるが、清水と磐田は、その場しのぎで学ばなかった。育成の指導者が世界を見ることが大切だ。誰が教えるかも重要で、Jリーグの監督経験者が教えてもいい。
 今年の磐田は思いきって若手を使えず、ベテランに偏った。降格は起こるべくして起こった。清水は躍動感あるサッカーをした時期もあったが、直近は緊張が先に出て足が前に進まなかった。
 海外はサッカー文化があり週末の娯楽の一部になっている。(県民が)清水と磐田に、もっと自分のチームという認識を持ってもらえるとうれしい。そのためには人気があり、憧れのクラブにならないといけない。(運動部・名倉正和)
〈2022.11.06 あなたの静岡新聞〉
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