藤枝順心⚽2年ぶり優勝に挑む 準決勝までを振り返り
全日本高校女子サッカー選手権は8日、藤枝順心が2年ぶりの優勝をかけて決勝に挑みます。常葉大橘との静岡県勢対決を制した2回戦、2年生コンビが活躍した準々決勝など、これまでの経過を振り返ります。
2回戦 静岡県勢対決 常葉大橘を振り切る
第31回全日本高校女子サッカー選手権は31日、兵庫県で2回戦8試合を行った。2年ぶりの優勝を目指す藤枝順心は、主将の三宅怜が決勝ゴールを奪い、1-0で常葉大橘との県勢対決を制し8強入り。直接対決での今季初勝利を目指した常葉大橘は堅い守りで前半を無失点でしのいだものの、後半に一瞬の隙を突かれた。攻撃も決定機をつくったが、得点につながらなかった。

▽2回戦
藤枝順心 1(0―0 1―0)0 常葉大橘
▽得点者【藤】三宅(加島)
藤枝順心 頼れる主将三宅 値千金の決勝弾
藤枝順心の頼れる主将三宅が先発起用に応え、価値ある1点をたたき出した。「ゴール前は自分の存在意義を見せられる場所」。好機を確実にものにする名門らしさを体現した。
0-0で迎えた後半13分、DF加島からのアーリークロスに反応し、こぼれ球を右足で押し込んだ。常葉大橘の堅守の前に得点がない中、後半から最前線にポジションを移し、作戦通りの働きをした。
多彩なポジションをこなせる器用さと攻守における献身、キャプテンシー。最近はスーパーサブやクローザーの役回りが多かったが、中村監督は三宅に絶大な信頼を置いている。互いに手の内を知り、厳しい戦いが予想されたこの試合こそ「三宅しかいない。彼女の得点がほしい」と期待を抱いていた。
全国から精鋭が集まるチームの中で、三宅は地元島田市出身。常葉大橘には小学校時代からしのぎを削った選手も多い。「(この舞台で)勝敗をつけるのは心苦しくもあった。でも日本一を取る理由が一つ増えた。橘の分も気持ちを込めて戦いたい」。ライバルの思いも背負い、頂点へ駆け上がる覚悟だ。
〈2023.1.1 あなたの静岡新聞〉
準々決勝 2年コンビ躍動 互いにアシスト「心強いチームメート」
第31回全日本高校女子サッカー選手権は3日、兵庫県の三木総合防災公園で準々決勝を行った。藤枝順心は初出場の高川学園(山口)を6-1で下し、4年連続の4強入りを果たした。

全国高校総体準優勝の十文字(東京)は過去5度優勝の常盤木学園(宮城)に2-1で逆転勝ち。作陽(岡山)は2-2からのPK戦を制しAICJ(広島)を退けた。前回準優勝の日ノ本学園(兵庫)も準決勝に進んだ。
5日の準決勝(ノエビアスタジアム神戸)は作陽と藤枝順心、十文字と日ノ本学園が対戦する。
▽準々決勝
藤枝順心 6(4―0 2―1)1 高川学園(山口)
▽得点者【藤】久保田2(安藤、高岡)高岡2(久保田、下吉)鈴木(加島)三宅(なし)【高】桝谷(三戸)
作陽(岡山) 2(1―1 1―1)2 AICJ(広島)
(PK4―2)
十文字(東京) 2(0―1 2―0)1 常盤木学園(宮城)
日ノ本学園(兵庫) 3(3―1 0―0)1 追手門学院(大阪)
MF久保田、FW高岡 ともに2得点


先制したのは久保田。前半21分に左サイドの難しい角度から今大会自身初ゴールを奪うと、同34分には高岡から受けたパスをドリブルで運び、最後は右足のシュートでネットを揺らした。
高岡も負けじと続く。同38分、久保田からのスルーパスを右足で押し込みまず1点。直後にMF下吉からのクロスを頭で合わせて加点した。
スピードや足元の技術を武器に相手DFの背後に抜ける久保田と、長身を生かし攻撃の起点となる高岡。異なるスタイルを存分に生かした2人に中村監督は「次につながるし(チーム内に)刺激も生まれる。試合によって活躍する選手が出てくるのはいいことで、それを達成してくれた」と満足げ。
攻撃的プレーヤーとして存在感を放つ2人。次戦に向けて「たくさんチャレンジしたい」と久保田が言えば、高岡も「結果を残して貢献したい」と意気込む。前回大会涙をのんだ4強の壁を、自身の得点で越える決意だ。
FW鈴木、3年の意地見せる 選手権で自身初ゴール

「出られたので数少ないチャンスを決めたかった」と積極的にゴールを狙った。後半32分、サイドを駆け上がりボールを受け、勢いよく右足を振り抜いた。きれいな軌道を描いたシュートがゴールネットを揺らすと、鈴木は控えめにガッツポーズ。チームメートから祝福を受け、顔がほころんだ。
中村監督は「素晴らしいコースに蹴り込んでくれた」とシュートを絶賛。鈴木は「次もチームのために積極的にプレーしたい」と活躍を誓った。
〈2023.1.4 あなたの静岡新聞〉
準決勝 粘った前半 MF下吉、均衡破るミドルシュート
第31回全日本高校女子サッカー選手権は5日、兵庫県のノエビアスタジアム神戸で準決勝を行った。静岡県の藤枝順心は作陽(岡山)に1-0で競り勝ち、優勝した第29回大会以来2年ぶりの決勝進出を果たした。

全国高校総体準優勝の十文字(東京)は昨年の選手権準優勝の日ノ本学園(兵庫)をPK戦で破り、決勝に進んだ。
▽準決勝
藤枝順心 1(0―0 1―0)0 作陽(岡山)
▽得点者【藤】下吉(久保田)
【評】藤枝順心が後半に奪った1点を守り、作陽との接戦を制した。
ボールを保持して優位に立った藤枝順心は前半、何度か好機をつくったが相手の粘り強い守備に阻まれ無得点で折り返した。後半も、中盤でボールを奪い一気に展開するプラン通りの攻撃を継続して重圧を与え、同11分にMF下吉のミドルシュートで先制した。
守備はカウンターを警戒しつつ、素早いプレスで相手のスピードを封じた。
迷わず左足振り抜き 値千金弾「めちゃうれしい」
藤枝順心のMF下吉のミドルシュートが均衡を破った。「監督からいつもシュートの意識を持てと言われていたので思い切り蹴った」。自身の今大会初ゴールは、チームを決勝へと導く価値ある得点となった。
舞い込んだチャンスに目の色が変わった。ボールを受け、前を見て即座に狙えると判断。中央やや左寄りのペナルティーエリア外から迷わず左足を振り抜いた。相手選手に当たりコースが変わった幸運も味方に「振ってみたら入った。めちゃうれしい」とはにかんだ。
日替わりで活躍する選手が登場する今大会の順心。また生まれた新たなヒロインに中村監督は「テクニックに優れる選手でドリブルやミドルレンジパスなどが得意。普段言っていることを意識し思い切ってプレーしてくれた」と活躍に目を細めた。
4強で阻まれた前回の壁は越えたが、満足はしていない。「決勝でも得点に絡み、守備も粘って貢献したい」と下吉。大会最多6度目の優勝を達成し、新たな歴史を刻むつもりだ。
相手速攻封じ浅田が存在感
藤枝順心は、前線にスピードのある選手をそろえた作陽の攻撃を警戒した。ボールを保持しながら、取られても早めに奪い返すリスク管理を徹底し、相手のシュートを1本に押さえ込んだ。

ダイレクトプレーをさせずに、中盤の選手がボールを引き込み、スピードに乗せる前に奪うことで、相手が得意とする速攻の芽を摘んだ。6得点で快勝した準々決勝から一転して攻撃は苦戦したが、ボールを奪ってからのゴールへの展開でじわじわとプレッシャーも与え続けた。
ゲームキャプテンのMF浅田は狙い通りに攻守で貢献。「中盤で相手に(思い通りの)プレーをさせないようなプレスができた」と振り返った。
〈2023.1.6 あなたの静岡新聞〉
決勝の相手は十文字(東京) 準決勝PKの末制す
昨年夏の全国高校総体準優勝の十文字はGK長谷川がPKを阻止する活躍でチームを決勝に導いた。「自分がやってやるぞ、という気持ちだった」と喜びに浸った。

〈2023.1.6 あなたの静岡新聞〉