選挙イヤー 4月に統一地方選 静岡県内の情勢は
4年に1度行われる統一地方選が3カ月後に迫りました。投票日は4月9日と23日です。静岡県内は県議選と静岡・浜松両市長選など計21選挙が予定され、地域の未来を懸けた論戦が展開されます。日程や現時点で分かっている静岡県内の動き、注目点などを1ページにまとめます。
県内21選挙予定 静岡・浜松両政令市トップ同時期交代へ
静岡県内は県議選と静岡、浜松両政令市など6市町長選、浜松、沼津、富士など14の市町議選の計21選挙を予定している。前回からいずれの選挙も定数の変更はない。両政令市トップが同時期に交代する見通しで、ポストコロナ時代の地域の将来を決める論戦が展開される。現時点で2023年に予定される国政選挙はないが、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と政治の関わりや防衛費増税など、国政の議論が地方選挙にどう影響するかも注目が集まる。23年は統一選以外に焼津、南伊豆、伊東の各市町議選も行われる。

統一地方選挙とは
経費削減や投票率向上などを目的に、首長や地方議会の選挙を全国一斉に実施する制度。戦後の新憲法施行直前の1947年に各地で地方選が実施されたことが発端となった。今回で20回目。原則として2023年3月1日から5月31日までに任期満了を迎える選挙が対象で、都道府県と政令指定都市の首長、議員選挙を行う前半戦と、政令市以外の市と東京23区、町村の首長と議員選挙の後半戦に分かれる。全国9道府県知事選をはじめ全国で展開される選挙戦の結果は、国政運営に多大な影響を与える。
〈2023.1.1 あなたの静岡新聞〉
県議選 77人の出馬固まる 34選挙区計68議席争う
静岡県議選は、沼津市選挙区の定数を4から3に減らし、定数1の清水町・長泉町選挙区を清水町1、長泉町1とする選挙区の変更があり、34選挙区で計68議席を争う。昨年末時点で現職、元職、新人の計77人の出馬が固まった。県議会各会派は勢力拡大や維持を目標に掲げ、選挙戦に向けた態勢構築を急いでいる。新勢力の参戦の影響も注目される。

知事に近く、国民民主党と立憲民主党の県連所属議員らも所属する第2会派のふじのくに県民クラブは、現有議席からの上積みを狙う。現職17人のうち14人が出馬を決めた。新人は、静岡市清水区に国民公認の1人と、浜松市中区に連合静岡が推薦する2人。同会派の議員で発足させた地域政党「新政しずおか」が公募を始め、競合候補のいない「空白区」で調整を進める。立民はふじのくに所属の現職2人とは別に、浜松市東区で新人を立てる。
公明党県議団は引退する静岡市葵区のベテランの後継の新人1人と現職4人が出馬し、全員当選で議席数の維持を狙う。今回も西部地区で候補者はいない。
共産党は、現職1人と、浜松市中区に元職1人を立てて複数議席の獲得を目指す。このほか、会派に所属しない現職4人はいずれも出馬。静岡市葵区の元職と磐田市の新人が出馬を準備する。
都市部で候補擁立を模索してきた日本維新の会は、静岡市駿河区と沼津市で公認候補を決め、静岡市葵区でも調整が進む。初の議席獲得を目指し、国政選挙の足掛かりにする。
定数が1減った沼津市は、現職4人と維新の新人1人の計5人が3議席を争う激戦となる見込み。定数1の函南町は、ふじの現職と自民新人との一騎打ちが注目される。
〈2023.1.1 あなたの静岡新聞〉
静岡市長選/ポスト田辺氏に2新人 浜松市長選/中野氏の対抗馬模索も
静岡市長選は4選出馬に意欲を示していた現職田辺信宏氏(61)が一転、不出馬を表明したことで「ポスト田辺氏」を巡る関係者の動きが活発化した。立候補を表明しているのは、自民党県議山田誠氏(60)と元副知事難波喬司氏(66)。いずれの陣営も選挙戦に向けた態勢構築を急ぐ。

山田氏は2022年11月上旬、いち早く出馬を表明した。市政運営に「企業経営を取り入れ投資を呼び込む。選ばれるまちを目指す」と訴える。災害やデジタルトランスフォーメーション(DX)に「強い静岡」、子育てや障害者に「やさしい静岡」を都市の将来像に掲げる。
推薦を依頼した自民党静岡支部は「不支持」を決定したものの、「出馬の意思は変わらない」との姿勢を崩していない。静岡市議3期、県議5期の経験を生かし、企業・団体、自治会への訪問を重ねて支持拡大を目指している。
難波氏は副知事を22年5月まで2期8年務め、熱海市土石流やリニア中央新幹線を担当する県理事を担った。県を退職後の22年11月中旬、市長選への出馬を表明し、「開かれた市政」「信頼と共鳴の市政」などを目指す決意を新たにした。
国土交通省技術総括審議官の時代から港湾行政に精通。清水区の港湾企業などが擁立に動いた。田辺市政に近かった有力経済人が後援会長を務める。市議会では、最大会派自民市議団、第2会派創生静岡、連合系会派志政会が支援し、自民の市内4支部が難波氏推薦を決めた。
自民以外の主要政党に目立った動きは見られない。公明党は難波氏の支援要請を受け、対応を検討中。共産党は独自候補の擁立を否定していない。立憲民主、国民民主の両党は様子見の状態。
浜松市長 中野氏の対抗馬 模索も

浜松市長選は現職鈴木康友氏(65)が4期での退任を表明し、16年ぶりに市政の新たなかじ取り役を選ぶ選挙になる。2022年11月には自民党と市内経済界の後押しを受け、前総務省都道府県税課長の中野祐介氏(52)=同市出身=が無所属での出馬意向を表明した。共産党は無投票阻止に向け、市民団体と連携して対抗馬擁立を検討しているが、具体化はしていない。
鈴木市政では対立の立場を取ってきた自民党と市内経済界が市長と市議会の「ねじれ」解消をもくろみ、複数候補の中から、地方行政に精通し、国とのパイプ役として期待できる中野氏の擁立を決めた。両者の歩み寄りを象徴するように、経済界に影響力を持つ大須賀正孝ハマキョウレックス会長が後援会長、市議会自民系会派の重鎮・柳川樹一郎氏が選対本部長に就いた。
鈴木氏は中野氏について「政策の継続性という点で、最もふさわしい後継候補」と実質的に後継指名した。中野氏は自民党本部の推薦を受け、自民党議員の後援会や自治会の集まりに精力的に顔を出し、知名度向上に努めている。今後は公明党や連合など幅広く支援を求める方針だ。
〈2023.1.1 あなたの静岡新聞〉
国政の議論、投票にどう影響 全国世論調査、教団との関係「考慮」81%
静岡新聞社加盟の日本世論調査会は2日、4月の統一地方選に関する全国郵送世論調査の結果をまとめた。世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と候補者との関係を選挙で「大いに」「ある程度」考慮する人は計81%と、「あまり」「全く」考慮しない人の計17%を上回った。議員のなり手不足を背景に無投票当選を「どちらかといえば」を含め「問題がある」としたのは計80%。候補者などを一定比率、女性に割り当てる「クオータ制」導入に計70%が「賛成」「どちらかといえば賛成」と期待を示した。

教団との関係を考慮すると答えた人に理由を聞くと「政治に影響を与えるのを回避したい」が51%で最も多かった。考慮しない人は「公約や主張に賛同できれば問題がない」が37%で目立った。自身が住む自治体や議会が決めた条例などで教団の影響で決まったものがあるかどうかを尋ねたところ、62%が「分からない」と回答した。
岸田政権の地域活性化策「デジタル田園都市国家構想」を巡っては「どちらかといえば」を含め「期待する」が計36%で「どちらかといえば期待しない」「期待しない」の計62%を下回った。
今の政治に「どちらかといえば」を含め「満足していない」は計82%。統一選に対しては「大いに」「ある程度」関心がある人は計61%だった。
首長の任期は何期までが妥当か聞くと「2期8年」が42%で最多。「1期4年」20%「3期12年」19%と続いた。与野党相乗り候補に関しては「問題がある」が「問題はない」をやや上回った。
争点(二つまで回答)は「景気や物価、雇用」63%、「医療や介護など社会保障」33%。候補者で重視する点(同)は「政策や主義、主張」58%、「行動力」49%。投票先を決める情報(同)はテレビ57%、新聞46%、インターネットニュースサイト36%が多かった。
調査は昨年11~12月、全国の18歳以上の男女3千人を対象に実施した。
高年齢層ほど投票基準に

全国郵送世論調査で、統一地方選の投票の際に年齢層が高い人ほど、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と候補者の関係を考慮すると答えた人が多かった。高年層(60代以上)は「大いに」が50%、「ある程度」は35%で計85%に達した。1980年代以降、教団の霊感商法や合同結婚式などが社会問題化。当時の実態を知る年代ほど、教団との関係を選定基準とする傾向がみられる。
「大いに」考慮する人は中年層(40~50代)で37%、若年層(30代以下)は32%。「ある程度」を合わせ中年層計79%、若年層計77%だった。「あまり」「全く」考慮しない人は若年層計22%、中年層が計20%で高年層は計12%にとどまった。
主要6政党の支持層別では、多くの地方議員と教団側との接点が発覚した自民党は「大いに」関係を考慮する人が32%と最も低かった。「ある程度」を合わせて計74%、「あまり」「全く」考慮しないが計24%だった。
「大いに」関係を考慮すると答えた割合は高い政党から立憲民主党55%、共産党54%、日本維新の会50%、公明党46%、国民民主党39%の順。支持する政党がないとした無党派層も40%だった。
候補者との関係を考慮する理由では、「その他」の回答として「被害者を出す団体とつながりを持とうとする人に票を入れたくない」「選挙活動に宗教団体を利用するのはおかしい」などの記述があった。一方、「考慮しない」では「旧統一教会以外の宗教団体にも問題がある」と記した。
〈2023.1.3 あなたの静岡新聞〉