知っとこ 旬な話題を深堀り、分かりやすく。静岡の今がよく見えてきます

仕事始めの前にチェック 静岡経済振り返り/全国・世界の行方

 歴史的な円安ドル高やウクライナ危機を背景にした物価高に企業も家庭も打撃を受けた2022年。一方で新型コロナウイルス禍の行動制限が解かれ、経済活動には復活の兆しも見えてきた1年でもありました。2023年はどんな1年になるでしょうか。まずは静岡新聞社編集局経済部による2022年の総括、続いて6人の専門家による2023年予想を見てみましょう。

■株価 コスト高騰、自動車苦戦

県内主要企業の株価推移
県内主要企業の株価推移
 22年の日経平均株価はウクライナ情勢や米国の急速な利上げなど、急転する世界情勢のはざまで揺れ動いた。
 ロシアがウクライナに侵攻した2月24日以降、株価は下落し、3月9日には終値2万4717円と22年の最安値を付けた。その後は2万8千~2万6千円台で推移。米利上げに伴う急激な円安の進展で8月には2万9千円間近まで上昇したものの、12月に入ると日銀の金融政策修正を受けて急落、28日の終値は2万6340円だった。
 県内関連は、一部輸出型企業が円安効果を追い風としたが、輸入仕入れも含めた原材料価格高騰のコスト高が幅広い業種に響いた。
 自動車関連は部品不足の長期化などで、エフ・シー・シーは11・1%下落、ユタカ技研は6・4%下落と苦戦した。スズキは11月に年初来高値を付けたが、その後の円高進行も響いて年初を3・1%下回った。
 10月に静岡銀行などを傘下に持ち株会社として発足したしずおかフィナンシャルグループは29・3%上昇。二輪車、船外機が好調のヤマハ発動機は年初を11・1%上回った。
 静岡東海証券の内山景太社長は「ウクライナ情勢、中国のコロナ感染者増、米国の利上げ、国内の原材料高騰といった不安定要素は23年も残る。これらが好転に向かえば、早ければ夏ぐらいには景気は上向くのではないか。日銀の利上げの動向も大きな注目点になる」と指摘した。

■消費 百貨店 行動制限解除で追い風

静岡県内百貨店・スーパー販売額の推移
静岡県内百貨店・スーパー販売額の推移
 個人消費は、百貨店とスーパーいずれも前年同期を上回る販売実績だったが、コロナ禍や物価高が響き、業種間で明暗が分かれた。
 関東経済産業局がまとめた県内百貨店・スーパーの販売額(1~10月)によると、百貨店は前年同期比5・3%増の535億2900万円。行動制限の解除に伴う家族連れ客の増加や、富裕層の旺盛な消費が追い風となり、3~9月は前年同月を上回った。
 スーパーは0・4%増の3050億5700万円。冷凍食品やインスタント食品など巣ごもり需要の一服に加え、歴史的な円安や原材料高が重なり、4~9月は前年実績を下回る苦境が続いた。
 自動車販売は、日本自動車販売協会連合会県支部集計の新車販売台数(登録ベース、軽自動車を除く)が1~11月累計で前年同期比10・9%減の7万330台。軽自動車(県軽自動車協会集計)は同期間累計が1・4%減の6万8190台だった。半導体不足による減産や、物価高騰に伴う購買意欲の低下が作用した。

■雇用 人手不足を背景に安定

静岡県内の雇用情勢
静岡県内の雇用情勢
 雇用情勢は慢性的な人手不足や、業績向上を図る企業の採用枠拡大を背景に求人が安定して推移した。11月の県内有効求人倍率(季節調整値)は1・31倍と1月の1・18倍から0・13ポイント上昇した。
 国の需要喚起策などで客足が伸びた宿泊・飲食サービス業、二輪・四輪関係を中心とした製造業などは採用意欲が堅調だった。静岡労働局の石丸哲治局長は「社会経済活動が再開する中、就職や転職による労働者の移動がみられた」と語る。
 原材料・資源価格の高止まりが懸念材料で、足元では製造原価に占める材料費の割合が高い一部業種で求人数が伸び悩んでいる。
 新卒採用の動きも活発だった。11月末時点の就職内定率は大学生が前年同期比4・8ポイント上昇の79・9%、高校生が0・4ポイント上昇の88・8%。公務員を目指す大学生や進学希望の高校生が増え、就職希望者が減少した。

予想 成長は緩慢ペースか 賃上げ、景気拡大の鍵

 インフレが多くの国・地域を襲い、世界経済の減速懸念が広がる中で、日本経済は成長を維持できるのか。エネルギーや食料品を軸に国内でもじわりと広がる物価高や、円安は今後も続くのか。ベテランの経済専門家6人が大胆に予想した。



 日本の経済成長は今年、緩慢なペースにとどまりそうだ。米欧ほどではないが国内も物価高に直面し、景気の柱である消費が勢いを欠いているためだ。景気を力強い拡大軌道に乗せるには、物価高に負けない賃上げを実現し、消費や投資を増やす必要がある。例年以上に春闘への関心が高まるのは必至だ。
 経済専門家の間では、今年の実質成長率を前年の実績予想とほぼ同じ1%台と見込む向きが多い。
 最大の焦点は物価の動向だ。昨年10月の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の上昇率は前年同月比で3・6%と、政府・日銀が目標とする2%を大きく上回り、40年8カ月ぶりの高い伸びを記録した。昨年起きたロシアのウクライナ侵攻や大幅な円安が、燃料や食料品を中心とした商品の価格高に拍車をかけた。
 上昇率は1月以降、徐々に鈍るとの見方が現時点では有力だ。ただ物価高の勢いは強く、日銀は物価見通しの上方修正を繰り返しており、予断を許さない。
 一方で、物価の変動を加味した実質賃金は昨年10月時点で7カ月連続のマイナスに沈んだ。これは賃金の伸びが物価上昇分を補えない実情を表す。事態を打開しなければ消費の低迷は続き、景気が失速しかねない。春闘に注目が集まる背景にはこうした懸念がある。
 労働組合の全国組織、連合は昨年10月、春闘で5%程度の賃上げを求める方針を打ち出した。28年ぶりの高い要求水準となったが、経営側の代表格、経団連の十倉雅和会長は「驚きはない」と呼応する姿勢を示した。
 とはいえ、大幅な賃金アップが可能かどうかは企業の収益力で決まる。野村証券は「高い賃上げを実現できる企業と、できない企業に大きく分かれる」とみており、賃金の伸びが物価高にどれだけ追い付けるかが、ポイントとなりそうだ。
 日銀は昨年12月、大規模な金融緩和策を修正し、長期金利の上限を0・5%程度に引き上げた。日銀の金融政策も引き続き、大きな関心事だ。春闘の結果次第では物価が一定の上昇力を保ち、政府・日銀の目標付近で推移し続ける可能性もある。その場合、マイナス金利の解除を軸とした本格的な引き締め観測が浮上し、市場が波乱含みの展開になる事態も否定できない。
深谷氏4年ぶり首位 昨年の予想・結果
 昨年の経済予想とその結果を集計したところ、オフィスFUKAYAコンサルティングの深谷幸司代表が4年ぶりに首位に返り咲いた。2021年は三井住友銀行の西岡純子チーフエコノミストと同着で3位だったが、今回は順位の決定に用いた円相場や日経平均株価など4項目全てで1位となり「完全勝利」をものにした。
 昨年秋に約32年ぶりの安値1ドル=152円に迫った円相場を振り返って、深谷氏は「ここまで円安が進むとは思わなかった。想定外のリスクを常に念頭に置いておく必要性を改めて感じた」とのコメントを寄せた。
 2位は西岡氏で、大きく予想を外す項目が少なく、順位を一つ上げた。3位は、みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミスト(21年は5位)とピクテ・ジャパンの大槻奈那シニア・フェロー(同1位)が分け合った。
 21年に大槻氏と同着で1位だった第一生命経済研究所の新家義貴シニアエグゼクティブエコノミストは5位。ただ2位から5位までの差はわずかで、混戦模様となった。
 独協大の森永卓郎教授は2年続けて6位(最下位)にとどまった。
地域再生大賞