川勝知事 今年の漢字に「水」 静岡県の1年を振り返ります
静岡県の川勝平太知事は2022年を表す漢字として「水」を選びました。「水」と聞いて、静岡県に大きな被害をもたらした9月の台風15号を思い浮かべた方も多いのではないでしょうか?
今年、静岡県内で起きた「水」に関する出来事をまとめました。
知事「水害に苦しめられた」
川勝知事は定例記者会見で今年1年を表す漢字一文字を問われ、「水」と色紙に書いて「水害で水に苦しめられた」などと総括した。

水に関連する事象が多かったと振り返り、9月に牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」で園児が通園バスに置き去りにされて死亡した事件を「いたいけな子どもが熱気の中で、水分を奪われ亡くなった」と悼んだ。
〈2022.12.28 あなたの静岡新聞〉
台風15号 記録的な大雨 浸水に冠水、断水、土砂崩れ…
9月23日夜から猛威を振るった台風15号により、県内では死者3人、住宅の床上浸水は5782棟(12日現在)に上った。静岡市清水区では巴川の氾濫による浸水被害に加え、完全復旧まで12日間を要した断水で最大約7万4000世帯が影響を受けた。

※2022年9月25日あなたの静岡新聞より
台風15号の影響で記録的な大雨に見舞われた静岡県内では各地で大きな被害が発生した。土砂崩れが相次ぎ、道路は冠水、多くの住宅・施設で浸水被害が出た。静岡市では一時、大規模停電が発生し、生活に影響も。同市清水区では断水が続く。浜松市天竜区の土砂崩れ現場では人為的な盛り土が被害が拡大させた可能性が浮上した。
■爪痕あらわ「悪夢だ」 自然の猛威に言葉失う
七夕豪雨の再来か-。県内に猛烈な大雨被害をもたらした台風15号。一夜明けた24日、土砂崩れや建物への浸水が相次ぐなど各地で爪痕があらわになった。「想定外」「悪夢だ」。住民は自然の猛威に言葉を失った。

袋井市大谷では、冠水した道路に軽トラックが水没。近くで所有者の男性(74)が倒れているのを警察官が発見し、死亡が確認された。川根本町下泉でも陥没した道路から軽トラックが約10メートル崖下に転落した。救助活動は二次災害の恐れがあるとして中断され、運転手の70代男性の安否は不明という。
市街地でも被害が拡大した。静岡市清水区を流れる2級河川「巴川」が氾濫し、多くの民家や商店が床上浸水した。迫る濁流に、県内で死者・行方不明者44人が発生した1974年7月の七夕豪雨の恐怖を重ねた住民らは不安な夜を過ごした。浜松市では馬込川や芳川など複数の河川が増水し、市は一時約19万1千世帯、45万9506人を対象に5段階の警戒レベルで最も高い避難情報「緊急安全確保」を発表した。同市天竜区二俣町では二俣川にかかる嘯月(しょうげつ)橋が崩落するなど、各地でインフラに大きな被害を及ぼした。
袋井市のエコパアリーナではコンサート来場者約800人が帰宅困難となり、隣接施設で一夜を明かした。
■浜松・天竜区で3棟全半壊 崩れた土砂「運ばれてきたもの」
24日未明に浜松市天竜区緑恵台で起きた土砂崩れでは、3棟が全半壊し、うち1棟に住む家族3人がけがを負った。周辺住民からは、災害の原因は被災家屋そばの斜面に積まれた盛り土にあるという証言が相次いだ。「熱海の事故があったのに、なぜまたこんなことが」-。災害から一夜明けた現場周辺には、住民の落胆と行政への不信感が交錯した。
同日午前0時すぎ、無職佐藤誠一さん(69)は寝室で部屋がつぶれる音に気付き、とっさに家を出た。家屋には土砂と家具が散乱していた。全壊だった。九死に一生を得た佐藤さんだが、「一夜明けても行政から避難の指示や説明がない。今後どうしていけばいいのか全く分からない」と困惑した表情でうつむいた。

緑恵台自治会では、盛り土による土砂災害を懸念し、数年前に市に行政指導を要求したが、状況は改善されなかった。元自主防災委員の塩田勝実さん(72)は少なくとも10年ほど前から土を運ぶダンプカーを度々目にしてきたという。「昔から心配されてきた盛り土だったが、何も事態は変わらなかった。今回の災害を行政に整理してもらいたい」と語気を強めた。
浜松市は同日午後に災害対策本部会議を開き、今後の対応方針などを確認した。小松靖弘危機管理監は、崩落の起点となった部分が盛り土だったかなどについては「今後の原因調査の中で確認していく」と述べるにとどめた。
リニアトンネル工事 知事、田代ダム案「JRは実現に尽力を」
2037年をめどに東京・品川—大阪間の全線開通を目指しているリニア中央新幹線。静岡県内では静岡市の北端部にある南アルプスを横切る計画だが、南アルプスには大井川の起点があり、南アルプストンネル工事による大井川の流量減少が問題になっている。

※2022年8月10日あなたの静岡新聞より
リニアトンネル工事に伴う湧水の県外流出対策としてJR東海が活用を提案した東京電力田代ダム(静岡市葵区)について、川勝平太知事は8日の大井川上流域視察の一環として現地を訪れた。
知事は「水が戻ってくれればありがたい。JR東海は言い出した以上、責任を持って(実現に)尽力してほしい」と述べた一方で、県が求めている「トンネル湧水の全量戻し」に田代ダム案は当たらないとの認識をあらためて示した。
視察には田代ダムの発電施設がある山梨県早川町の辻一幸町長が同行した。辻町長は「大井川の水が減ったら静岡県民にとってゆゆしきこと」と述べて、JR東海や東京電力に同案を提案したと明かした。発電量が減ることで同町が受ける予定の「電源立地地域対策交付金」が減額されることについては、JR東海に補塡(ほてん)を求めるとした。
田代ダム案は、工事中に県外に流出するトンネル湧水と同じ量のダム取水を抑制し、大井川の減水を防ぐ案で、県有識者会議の地質構造・水資源専門部会で議論している。視察に同行した部会委員からは、渇水時にも対応できるのか疑問視する意見が上がった。
牧之原では園児がバス置き去りで死亡 車内に5時間
9月5日に発生した事件では園児の河本千奈ちゃん=当時(3)=がバス内に約5時間にわたり置き去りにされ死亡した。県警は今月5日、同園の前理事長兼園長ら4人を業務上過失致死の疑いで静岡地検に書類送致した。

※2022年9月11日あなたの静岡新聞より
牧之原市静波の認定こども園「川崎幼稚園」で女児(3)が送迎バス内に取り残されて死亡した事件は、12日で発生から1週間を迎える。「暑かっただろうに。がんばったね」-。今なお献花に訪れる人の姿は絶えず、深い悲しみが広がる。休園が続く中、県や市は事態の把握や園児の受け入れ対応に追われ、県警は業務上過失致死の疑いで慎重に捜査を進めている。
■車内に5時間
事件は5日午後2時10分ごろ、バス内で意識を失っている女児を職員が見つけ発覚した。午前8時50分ごろ園に到着した際に降車することができず、約5時間にわたり施錠されたバスに置き去りにされた可能性が高い。死因は熱射病。車内からは必死に暑さをしのごうとした女児が脱いだ上衣や、飲み干したとみられる空の水筒が見つかった。県警は発生翌日に同園と理事長兼園長(73)=7日付で辞任届提出=の自宅の家宅捜索を実施。関係資料を押収して理事長ら園関係者を聴取し、女児が取り残された経緯の実態把握を進めている。
■複数の人為的ミス
7日の記者会見で同園は▽急きょ運転を務めた理事長や女性乗務員が降車時の確認を怠った▽女児の不在を把握していながら、保護者への連絡をしなかった-など、複数の人為的ミスが重大な結果を招いたと説明。加えて当日の乗車名簿には女児のみチェックが入っていなかったことも明らかにした。会見で理事長が謝罪し、辞任する意向を示した。
■対応追われる行政
事件発生の翌日から休園を続ける同園には168人が在籍している。牧之原市は相談窓口を設置し、9日までに同園を除く市内10園で園児全員の受け皿を確保したが保護者の意向は多様で、影響はしばらく続くとみられる。県は9日に市と合同で園に対する特別監査を開始し、改善勧告を視野に調査を進めていく方針を示した。