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鍵は血圧管理? 脳血管疾患による死亡率が高い「健康県」静岡

 静岡県は健やかに日常生活を送れる「健康寿命」では全国上位に位置する「健康県」ですが、「脳血管疾患による死亡率」は全国平均を上回っています。県は脳血管疾患の主な危険因子とされる「高血圧」の予防、改善に力を注いでいます。最近の動きを1ページにまとめました。

血圧測定、朝晩の習慣に 県、5事業所で検証着手

 静岡県は脳血管疾患による死亡率が全国平均を上回っていることを踏まえ、家庭での血圧測定を習慣化させる実証事業に乗り出した。県内5事業所の従業員約130人に協力を得て、2カ月間にわたり毎日2回の計測を促す。健康リスクを把握しやすくなる利点があり、生活習慣の改善効果を検証する。

血圧計の使い方を確認する従業員。2カ月間にわたり血圧測定に協力する=12月上旬、藤枝市の藤和乾物
血圧計の使い方を確認する従業員。2カ月間にわたり血圧測定に協力する=12月上旬、藤枝市の藤和乾物
 モニターの従業員に血圧計を貸し出し、朝と晩の2回、各家庭で測定してもらう。結果はアプリに記録され、保健師が2週間に1回ほどのペースで生活指導を行う。モチベーションの維持につなげるため応援メッセージを送ったり、体調が大きく変化した場合に受診を勧めたりする。
 乾物の製造販売を手がける藤和乾物(藤枝市)は8日から開始し、全従業員43人が参加する。初日は保健師による健康講座を受講し、血圧を適正に保つ意義などについて説明を受けた。
 健康経営を実践する同社の佐藤文彦社長(43)は「会社にとっては従業員の健康が何より大切。日ごろの生活習慣などを変えるきっかけになれば」と期待する。
 特定健診を受けた県内約72万人を対象にした2019年度のデータでは、高血圧症有病者の割合は男性39・2%、女性28・7%。予備軍を含めると男性は51・2%、女性は38・8%に上った。地域別では県東部と中部で多く、食生活などが影響している可能性があるという。
 静岡県の健康寿命は全国上位だが、脳血管疾患による死亡率の高さが健康課題となっている。県健康増進課の担当者は「要因の一つである高血圧を防ぎ、健康寿命のさらなる延伸につなげていきたい」と話す。対象事業所の拡大や収集したデータの研究活用も検討していく。
1日の中で変動 「仮面高血圧」の人も
 血圧測定は健康管理の要とされる。保健指導に取り組み、実証事業に協力するレセ・スタッフ保健事業部(浜松市天竜区)の保健師東佳美さんによると、最高血圧を10または最低血圧を5下げれば、脳卒中のリスクを30~40%、心不全のリスクを40%減らすことができるという。
 血圧は1日の中でも変動する。健康診断や診療時に正常でも家庭や職場などで高くなる「仮面高血圧」と呼ばれる人もいる。朝の高血圧は脳卒中や心筋梗塞を引き起こしやすいとされる。
 東さんは「朝晩に血圧測定を習慣化することで自分のリスクを知ることができ、適切な受診など正しく対処できるメリットがある」と指摘する。(政治部・森田憲吾)
 〈2022.12.25 あなたの静岡新聞〉

健やか指標​​「健康寿命」は男女とも全国5位

 静岡県は21日、介護を受けたり寝たきりになったりせず日常生活を送れる期間を示す「健康寿命」について、2019年の本県の状況を発表した。男性が73・45歳、女性が76・58歳、男女計75・04歳で、前回調査の16年から男性0・82歳、女性1・21歳、男女では1・02歳延びた。全国の状況は厚生労働省が20日に公表し、本県は男女とも全国5位だった。

県の健康寿命の推移
県の健康寿命の推移
 健康寿命は10年から3年ごとに算出されている。本県は初回に比べ、平均寿命と健康寿命の差(不健康期間)が男性で0・39年、女性で0・24年縮まった。
 県健康政策課などによると、健康寿命は年代別の死亡率のほか、国民生活基礎調査で「健康上の問題により日常生活に影響がある」と答えた人の割合(不健康割合)などに基づき算出される。本県では、男女ともにくも膜下出血や脳内出血などの脳血管疾患で死亡する人が全国より多い傾向がみられるという。担当者は「県民に分かりやすい高血圧対策を地域で進めたい」としている。
 不健康割合が全体的に低下したことについては「通いの場や移動支援などで高齢者の社会参加の機会が増え、介護予防につながっている面があるのでは」と分析した。
 県は、今年4月に開学した静岡社会健康医学大学院大の研究や、まちづくりや金融など他分野の識者が集まる「ヘルスオープンイノベーション」を基に、新たな健康施策を展開する方針。
 〈2021.12.22 あなたの静岡新聞〉

一方 野菜摂取量は男性36位、女性が41位と低め

 静岡県は23日、県の健康施策を多様な分野の視点で検討する「ヘルスオープンイノベーション静岡」の意見交換会を静岡市葵区で開いた。県は、脳血管疾患で死亡する人が全国平均より多い本県の傾向を踏まえ、予防のために野菜摂取を促す取り組みとして、産学官連携の課題解決チーム「野菜マシマシタスクフォース」を新たに設置する方針を示した。

グラフ=野菜摂取量の状況(2016年国民健康・栄養調査より)
グラフ=野菜摂取量の状況(2016年国民健康・栄養調査より)
 県は2015年度から、脳血管疾患の主な危険因子とされる高血圧対策で、塩分摂取のチェック表を作成するなど減塩対策に取り組んできた。高血圧には減塩に加え、体内のナトリウムの排出を促すカリウム摂取量を増やすことも対策の一つ。しかし、カリウムを多く含む野菜の摂取量は、16年の全国調査で本県は男性が都道府県別36位、女性が41位と低く、目標摂取量の1日350グラムに届いていなかった。
 タスクフォースには食材宅配業者や料理のインスタグラマー、県立大の研究者などが参加する予定。来年1月に発足し、子育て世代を主なターゲットに野菜の目標摂取量を満たす料理キットを販売するなど、22年度に実証実験の実施を目指す。県の担当者は「健康づくりのため、自宅での日常的な食生活から変えていきたい」と趣旨を説明した。
 同日の意見交換会では、委員から「働く人にも野菜を買うハードルが低くなるといい」といった期待や、「主な対象者の立場の意見を取り入れてほしい」といった指摘が挙がった。(政治部・杉崎素子)
 〈2021.12.24 あなたの静岡新聞〉

野菜「マシマシ」施策で健康増進狙う県

 静岡県は本年度、静岡県民に野菜摂取を促す「野菜マシマシプロジェクト」を本格始動した。高血圧が要因となる病気を予防するため、産学官連携でメニュー開発や販売モデルの確立を進め、健康寿命の延伸につなげる。

野菜摂取を促すメニューを試作するプロジェクトメンバー=11日、三島市
野菜摂取を促すメニューを試作するプロジェクトメンバー=11日、三島市
 本県は脳卒中などの脳血管疾患による死者数が全国に比べて高く、健康課題の一つになっている。要因の高血圧予防にはナトリウム(食塩)の排出を促す野菜の摂取量を増やすことが有効とされ、健康に無関心な層も手に取りやすい販売手法を検討する。
 プロジェクトには県内飲食店や料理研究家、学識経験者が参加。野菜使用量が1食分の目安(120グラム程度)を上回るメニューを開発し、年明けに飲食店でテスト販売を行う。主なターゲットは20~50代の男性。アンケートを通じて消費者の反応を確認し、県内の飲食店などにプロジェクトを広げていくことを目指す。
 今月11日に三島市でプロジェクトの初会合を開き、干ししいたけ、キャベツ、タマネギなどを使った「野菜100%ギョーザ」「高野豆腐入りギョーザ」を試作した。参加者からは「ネーミングに『がっつり感』を出した方がいい」などの意見が出た。
 プロジェクトメンバーで、県東部を中心に飲食店を展開するにしはらグループの西原洋平社長は「おいしいだけでなく、体にも良いものを食べてもらい、県全体で野菜摂取量が増えれば」と意気込みを語った。
 2016年の国の調査によると、静岡県内の野菜摂取量は男性が都道府県別で36位、女性が41位。いずれも全国平均を下回り、目標摂取量の1日350グラムに届いていない。
 県健康政策課の赤堀摩弥管理栄養士は「健康にそれほど関心がない人にも手にとってもらえるようなメニューをつくりたい」と話した。(政治部・森田憲吾)
 〈2022.10.18 あなたの静岡新聞〉
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