裾野の園児虐待 保育士3人逮捕 園長の隠蔽行為解明へ
裾野市の私立さくら保育園で、元保育士が園児を宙づりにするなどの虐待行為を行ったとされる事件で、当時勤務していた保育士3人が暴行の疑いで逮捕されました。保育士による暴行が始まったのは6月ごろとされていて、逮捕まで約半年の時間を要する結果に。園長は他の職員に口外を禁じる誓約書を書かせたとして犯人隠避の疑いが持たれています。これまでの経緯をまとめました。
宙づり、カッターナイフで脅す 逮捕の保育士「しつけの一環」
裾野市の私立さくら保育園で保育士が園児を宙づりにするなど虐待をしていたとされる事件で、裾野署は4日、暴行の疑いで当時園に勤務していた保育士の女3人を逮捕した。同署などは同日、園と3人の自宅を家宅捜索した。複数の園児に対する虐待行為が常態化していた可能性があるとみて、押収した資料や本人の携帯電話などを解析し、実態解明を進める。

沼津市の女の逮捕容疑は6月1日、女児の顔を押した疑い。裾野市の女は同27日、男児の足をつかんで宙づりにした疑い。長泉町の女は同10日、別の男児の頭を殴打した疑い。いずれの暴行も園内で保育中に行われた。
被害者は全員、当時3人が受け持っていた1歳児のクラスに在籍していた。同署は家宅捜索に合わせ、園内で現場検証を実施した。
市によると、ほかにも「カッターナイフで脅す」「倉庫に閉じ込める」「感染症の疑いがある園児の体を無理やり触らせる」といった虐待行為が確認されている。園の内部調査には3人とも関与したことをおおむね認め、「しつけの一環だった」などと釈明していたという。被害は1歳児が中心で、4歳児に対する行為もあったとみられる。3人は11月末までに退職した。
市によると、運営法人の理事長を兼ねる桜井利彦園長が全職員に一連の行為を口外しないよう求める誓約書を書かせたり、同僚の保育士に土下座をして通報しないよう頼んだりした疑いがあるという。
〈2022.12.5 あなたの静岡新聞〉
暴行覚知から通報まで2カ月 園長は土下座で告発止める
裾野市の私立さくら保育園で1歳児に対する保育士の暴力や暴言が繰り返されていた問題で、運営する社会福祉法人桜愛会(同市)は1日、保護者向けの説明会を同園で開いた。出席者によると、一連の行為を告発しようとした同僚の保育士に桜井利彦園長が土下座をして告発しないように頼んでいたことを園側が認めたという。

同僚の保育士は園長の頼みを断り、8月中旬に市に通報したとみられる。園は市の行政指導を受け、3人を1歳児の担当から外し、処分するなどの是正にようやく乗り出した。
説明会の出席者によると、一部の保育士が4歳児にもカッターナイフをちらつかせていたことも園は認めた。3人とも説明会には出席しなかったが、園は3人の実名を明らかにしたという。1人は「謝りたいとの意志を示している」とし、別の1人とは「連絡が取れない状況になっている」と説明した。
3人のうち、正規職員と派遣職員の2人は11月末で退職した。残り1人の臨時職員は9月末に退職したため、一連の行為に関与したとされる全員が辞めたことになる。
〈2022.12.2 あなたの静岡新聞〉
職員に口外禁じる誓約書 園側、隠蔽の意図を否定
裾野市の村田悠市長は1日、さくら保育園が全職員に提出させたとされる誓約書について、園児に対する暴力や暴言を「組織的に隠蔽(いんぺい)しようとする体質そのもの」と非難した。「当園の機密事項などを第三者に漏えいしたりしないことを誓約する」との内容だった。11月30日に開かれた保護者説明会の出席者によると、園は「隠蔽しようとして書かせた訳ではない」と市の見解を否定したという。

誓約書は桜井利彦園長宛てで、10月下旬ごろに提出させていたという。
さくら保育園の不適切な保育問題を受け、市は1日、臨時園長会を市役所で開いた。市内の保育施設17カ所の代表が、再発防止策などを確認した。さくら保育園とグループ施設の関係者は欠席した。
〈2022.12.2 あなたの静岡新聞〉
裾野市、犯人隠避容疑で園長告発
裾野市は5日、私立さくら保育園の虐待事件で、園長に対する犯人隠避容疑の告発状を裾野署に提出した。保育士の女3人による虐待行為を知りながら、「組織的に隠蔽(いんぺい)しようとしていた疑いがある」としている。

保護者説明会で園長は「隠蔽(いんぺい)の意図はなかった」などと釈明。一方で、市に告発しようとした同僚の保育士に土下座をして、口外しないよう求めたことは認めたという。
同署は内容を検討した上で告発状を受理するか判断する。
〈2022.12.5 あなたの静岡新聞〉