⚽清水エスパルス 2度目のJ2降格 今季の歩みまとめ
サッカーJリーグ1部(J1)は5日、各地で最終節を行いました。自動降格圏の17位清水エスパルスは敵地でコンサドーレ札幌に3-4で敗れ、2015年以来2度目の2部(J2)降格が決まりました。最終節と今季の歩みを改めて振り返ります。
エスパルス「落日」 最悪の結末 魔の時間帯にまた失点
敗戦を告げる笛とともに、FWチアゴサンタナが膝から崩れ落ち、MFベンジャミン・コロリは天を仰ぐ。守備陣は数分前に喫した4失点目のショックから抜け出せないように、ぼうぜんと立ち尽くした。清水は勝ってJ1残留に望みをつなぐことすら、できなかった。

終了間際には今季9度目の後半追加時間の失点で勝ち越され、万事休す。勝ち点を落とし続けた魔の時間帯に足をすくわれ、もうイレブンに前を向く力はなかった。MF白崎は「小さな部分が結果として大きく出た」と反省の言葉を繰り返し、DF立田は目を潤ませながら「責任を感じている」と語った。
2015年に初めてのJ2降格を経験。1年でJ1に返り咲いたが、その後も降格におびえながらのシーズンが続いた。20年にはクラブ、チーム編成、現場の三役のトップを一新。強化費は過去最高を続け、札幌戦の先発は加入3年目以内の選手が10人を占めた。
しかし、最悪の結末を迎えた。成績不振のてこ入れにと、現場のトップは4季連続でシーズン途中に入れ替えた。低迷の原因は一体どこにあるのか。真摯(しんし)に向き合わなければ、再生への道は開けない。(運動部・市川淳一朗)
最終節 試合結果

②札幌ドーム(札幌1勝1分け)▽観衆23330人
札幌 11勝12分け11敗(45) 4(1―0 3―3)3 清水 7勝12分け15敗(33)
▽得点者【札】ガブリエルシャビエル(3)青木2(8)金健熙(2)【清】チアゴサンタナ(14)白崎(4)ホナウド(1)
【評】清水は札幌との打ち合いに屈した。
序盤から山原や白崎らが決定機を迎えるなど攻勢に出た。ただ得点を奪えずにいると、41分に鮮やかなシュートを札幌に放り込まれて先制を許した。
後半4分、相手のクリアボールをチアゴサンタナが流し込み、2分後には白崎が詰めて一気に逆転に成功。15分に守備網を打開されて追い付かれたが、33分にFKの流れからホナウドが決めた。ところが終盤に連続失点してひっくり返された。
今季の動向をグラフで振り返ります
清水エスパルスの沿革
1991年2月、日本リーグ時代の母体を持たない唯一のクラブとしてJリーグから加盟を承認された。96年ナビスコカップ(現YBCルヴァンカップ)で初タイトル獲得。99年はJ1リーグ第2ステージを制覇した。2000年にアジアカップウィナーズカップ優勝。01年度は天皇杯全日本選手権を制した。「S-PULSE」のSは静岡、清水、サッカーの頭文字をとった。PULSEは英語で「心臓の鼓動」。サッカーを愛する県民、市民の胸の高鳴りとチームスピリットを表す。ホームタウンは静岡市。
リカルド監督 続投基本戦も一転交代の可能性も
J1清水のリカルド監督の去就は流動的だ。契約は来季も残っていて、クラブ幹部は「ころころ替えるべきではない」と続投を基本線としているが、一転交代の可能性もある。

サッカー王国どこへ J1静岡県勢消滅 復権願うサポーター
サッカーJリーグ1部(J1)から静岡県内クラブがついに消滅する。清水エスパルスの2度目の2部(J2)降格が5日、決まった。前節で降格が決定したジュビロ磐田とつなぎ留めていた県勢のJ1の灯。かつて「サッカー王国」の象徴だった二つのクラブは強さを取り戻せないまま、ついに同時に落日を迎えた。

富士市出身で、都内在住の会社員南尚寿さん(28)は「得点は取れるはず。最後まで粘り強く守って勝利をつかんでほしい」と願いスタジアムに入った。しかし、試合は終盤に守備が耐えきれず、無情のホイッスルが鳴った。
近年、最終盤まで残留争いに巻き込まれる成績低迷が毎年のように続いていた清水。今季も序盤から振るわず、リーグ戦の折り返しが近づく5月には4季連続となるシーズン途中の監督交代を決断した。夏場には一時浮上したが、最終盤で7試合勝ちなしと急失速した。
編成トップの大熊清ゼネラルマネジャー(GM)は「90分間のマネジメントができなかった」と勝ち点を取りこぼした内容を要因に挙げ、「足りなかった部分を謙虚に見つめないと」と言葉を絞り出した。

すでに降格と今季の最下位が確定していた磐田は、磐田市の本拠地ヤマハスタジアムで最終戦を戦った。試合後、小野勝社長(64)はサポーターの前に立ち、シーズン途中での監督、強化責任者の解任などさまざまな混乱を挙げ「心配をかけて申し訳ない」と深々と頭を下げた。サポーターは「一貫性のないフロントの姿勢に不信感しかない」と記された横断幕を掲げ、猛抗議した。
磐田サポーターの鈴木博也さん(38)=浜松市浜北区=は「県内からJ1クラブがなくなるのはさみしい。2チームが早くJ1で優勝争いするようなチームになって戻ってきてほしい」と願った。(運動部・市川淳一朗、名倉正和)
静岡から祈り届かず パブリックビューイングに2000人

清水エスパルスが敵地でコンサドーレ札幌との最終節に臨んだ5日、静岡市葵区のJR東静岡駅北口広場ではパブリックビューイングが行われた。J1残留には勝利が絶対条件の大一番。約2000人のサポーターが詰めかけたが、清水は3-4で敗れ願いはかなわなかった。
J1残留には札幌に勝った上で、他会場の結果次第となる厳しい状況。それでも、夫婦で訪れたパートの勝美江理佳さん(28)=静岡市葵区=は「どんな結末になったとしても、この試合には勝ってほしい。オレンジ魂を札幌に届ける」と試合中継を見つめた。
清水にとっては2度目のJ2降格で、来季は史上初めて静岡からJ1クラブがなくなることになる。藤枝市の会社員杉山公彦さん(37)は「降格は残念だし(サッカー)王国としてJ1にクラブがないのはさみしい。静岡はサッカーで染まっている地域。来季はその意地を見せてほしい」と復権を願った。