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21歳の進撃 大相撲、熱海富士 どんな人?

 大相撲初場所に西前頭筆頭で挑む熱海富士。2023年は2場所続けて敢闘賞を受賞するなど目覚ましい活躍を見せてくれました。21歳の伸び盛り、今年も期待です。静岡新聞社独占インタビューを含め、「地元のスター」をまとめました。
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静岡県勢2力士インタビュー 熱海富士「いつも通り」発揮へ/翠富士「無心」自然体を貫く

 昨年、大いに土俵を沸かせた大相撲西前頭筆頭の熱海富士(21)=熱海市出身=と、東前頭2枚目の翠富士(27)=焼津市出身=が11日までに、静岡新聞社のインタビューに応じた。新年の幕開けとなる初場所は14日が初日。熱海富士は「自分の相撲を磨き、番付をもっと上げていく。土俵に立てば、やはり優勝したい」と県勢史上初の賜杯獲得へ意気込む。翠富士も「三役が目標」と、こちらも静岡県出身力士では戦後、誰も成し遂げていない快挙へ意欲をみなぎらせた。

翠富士(右)が書いた漢字の間違えに気付き大笑いする熱海富士(写真部・小糸恵介)
翠富士(右)が書いた漢字の間違えに気付き大笑いする熱海富士(写真部・小糸恵介)
 翠富士が高校3年の時、小学6年の熱海富士が高校の稽古に来たのが2人の出会い。「当時はもう高3のお兄さんだった。今、同じ部屋で一緒にできているのがすごい」と熱海富士。翠富士から見ても「初めて会った時にはもう自分よりでかかった。『こいつやるなあ』って」と、一目置く存在だった。
 昨年、先に県勢初の賜杯に迫ったのは翠富士。3月春場所で初日から10連勝した。当時は「『勝ってるなあ』『今日の夕飯なにかな』くらいの気持ちでプレッシャーは感じていないつもりだったけど、周囲からは体が硬いよと言われた」。結果的にそこから5連敗。「勝ち越した気持ちはしなかった」と悔しさをにじませる。
 熱海富士は再入幕した9月秋場所で大関貴景勝との優勝決定戦を戦い、11月九州場所は14日目に11勝2敗の首位同士で大関霧島と結びの一番で激突。あと一歩及ばなかったが、「秋場所は気付いたら千秋楽だった。九州場所は一番一番、取っている感じがした」と手応えはあった。
 幕内最軽量の115キロながら、代名詞の「肩透かし」を始め、土俵際での巧みな切り返しや豪快な投げ技も光る翠富士。とっさの体さばきにもつながる心構えは「無心。何も考えないようにしている」という自然体だ。
 熱海富士は「いつも通りにしかできない。火事場のばか力という言葉もあるけど、稽古場でやっていることしかできない」と強調する。猛稽古によって立ち合いは低く鋭さを増しているが「もっとできる。相手のまわしを取る技術は、まだ全くできていない」と気の緩みはない。21歳は初場所で上位陣との総当たりを経験し、さらに大きく成長しそうだ。
(運動部・山本一真)
2024.1.12 あなたの静岡新聞

2024年は賜杯なるか 大相撲に静岡旋風

 大相撲に静岡旋風が巻き起こっている。主役は、2場所連続で頂点に迫った熱海富士(21)=熱海市出身=と、幕内最軽量115キロで豪快な取り口を見せる翠富士(27)=焼津市出身=だ。飛躍の1年を終え、幕を開けた2024年。いよいよ県勢初の賜杯を抱く年となるか。

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さらなる飛躍を誓う翠富士(右)と熱海富士=23年12月中旬、広島県東広島市(写真部・小糸恵介)

次こそ賜杯を 熱海富士
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大相撲巡業「東広島場所」の湘南乃海(左)との取組で立ち合う熱海富士=2023年12月中旬、東広島市(写真部・小糸恵介)

 186センチ、181キロの大きな体に無限の可能性を秘める。熱海富士は昨年、正攻法の四つ相撲はそのままに、低く鋭い立ち合い、細やかな技に磨きを掛けて大躍進した。秋場所は大関貴景勝と優勝決定戦を戦い、九州場所は14日目に11勝2敗の首位同士で大関霧島と結びの一番で激突。そこで味わった悔しさが、21歳の若武者をさらに成長させている。
 上位総当たりが確実な初場所は14日開幕。年6場所制となった1958年以降初土俵の力士(付け出しを除く)の最速優勝記録として、貴花田(後の貴乃花)と朝青龍の24場所を更新できるのは7月の名古屋場所までだ。「結び、決定戦と一通りのことはやらせてもらった。あとは一番一番、自分の相撲を取りきって結果が出ればいい」。見据えるのは頂点だけ。愛嬌(あいきょう)たっぷりの笑顔の裏に決意がにじむ。
充実の「業師」 翠富士
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大相撲巡業「東広島場所」の遠藤(左)との取組で立ち合う翠富士=2023年12月中旬、東広島市(写真部・小糸恵介)

 174センチの肉体を鍛え上げ、代名詞「肩透かし」の切れ味は鋭さを増す-。翠富士が充実の時を迎えている。昨年は初日から10連勝した春場所を皮切りに年間3度の勝ち越し。九州場所も終盤まで首位を1差で追った。
 今年で5人となる伊勢ケ浜部屋の飛龍高出身者では最年長の27歳。弟弟子の熱海富士は躍進し、九州場所は同郷の聖富士(19)が幕下優勝した。後輩の成長を喜びつつも、「抜かれたくはない。その気持ちがあるから頑張れている」と闘争心を隠さない。角界きっての「業師」は、今年も土俵を沸かせてくれそうだ。
 あたみふじ・さくたろう 本名・武井朔太郎。2002年9月3日生まれ。小学6年で相撲を始め、飛龍高から伊勢ケ浜部屋に入門し、22年九州場所で新入幕。23年は秋場所、九州場所とも11勝4敗で敢闘賞を受賞した。186センチ、181キロ。21歳。

 みどりふじ・かずなり 本名・庵原一成。1996年8月30日生まれ。飛龍高で活躍し、伊勢ケ浜部屋に入門。2020年九州場所で十両優勝すると、新入幕の21年初場所で技能賞を獲得した。得意技は肩透かし。174センチ、115キロ。27歳。
(運動部・山本一真)
2024.1.1 あなたの静岡新聞

 

初場所番付は西前頭筆頭

 日本相撲協会は25日、大相撲初場所(来年1月14日初日・両国国技館)の番付を発表し、先場所覇者で横綱昇進を目指す大関霧島は東の正位に座った。関学大出身で31歳の宇良が新小結に昇進。初土俵から所要52場所は学生相撲出身で史上2位のスロー記録となった。

大相撲巡業焼津場所で今後の抱負を語る熱海富士=焼津市総合体育館、10月12日
大相撲巡業焼津場所で今後の抱負を語る熱海富士=焼津市総合体育館、10月12日
 新入幕は2人。日体大出身で元アマチュア横綱の大の里は初土俵から昭和以降3位に並ぶ所要4場所でのスピード出世を決めた。27歳の島津海も昇進した。
 腰痛などで3場所連続休場中の横綱照ノ富士は東。豊昇龍と貴景勝の両大関は西。関脇は先場所11勝で大関昇進を狙う琴ノ若が3場所連続で東、5場所連続在位の大栄翔は東から西に回った。33歳の元大関高安が1年ぶりの三役復帰で東小結。
 2場所続けて優勝を争った21歳の熱海富士(熱海市出身)は西前頭筆頭に躍進。2場所連続勝ち越しの翠富士(焼津市出身)も東前頭2枚目に上がった。琴勝峰と碧山は2場所ぶり、武将山は3場所ぶりの再入幕を果たした。
 新十両は日大出身の尊富士(たけるふじ)、欧勝海の2人。尊富士は初土俵から所要8場所で、年6場所制となった1958年以降初土俵では小錦、把瑠都らに並ぶ7位の速さ(付け出しを除く)。再十両は2場所ぶりの白鷹山と5場所ぶりの栃武蔵。十両の高橋は白熊(しろくま)に改名した。

相撲は真っ向勝負 でも土俵を離れると?

 (※2022年1月)26日の大相撲番付編成会議で十両昇進が決まった熱海富士=本名武井朔太郎、飛龍高出、伊勢ケ浜部屋=は2020年11月の初土俵以来、猛スピードで番付を駆け上がってきた。明るい未来を想像させる大柄な体と正攻法の取り口、人懐っこい笑顔で人気も急上昇中。静岡でも「愛されキャラ」だった19歳のこれまでを追った。

飛龍高で猛稽古

高校2年時の遠征でおちゃめな表情を見せる熱海富士=三重県伊勢市
高校2年時の遠征でおちゃめな表情を見せる熱海富士=三重県伊勢市
 小学2年時、千葉県から熱海第二小に転校してきた。小学6年で三島相撲クラブに入り、熱海中時代は全国大会5位に。当時からプロ志望だった。
 飛龍高3年時はコロナ禍で次々と大会が中止になったが、猛稽古を続けた。「今日はここまでにしておけ」と止めるまで土俵を離れなかった姿を、栗原大介監督は忘れない。
 多くの相撲部屋から誘いを受けた。栗原監督が「プロに入って何を一番に求めるかで部屋を選ぶべきだ。おまえは何が一番か」と問うと、熱海富士は迷わず「関取になりたい」。稽古の厳しい伊勢ケ浜部屋を自ら選んだ。

大食漢 アルバイトで家計支える


 185センチ、165キロの体はどこまで成長するか。中学時代から毎食、1人で4合以上の米を平らげ、1リットルの牛乳パックを飲み干す大食漢だった。母武井奈緒さん(42)は「2台の炊飯器がフル回転。米を切らさないように必死でした。白飯の前に豆腐一丁を必ず出すようにしたけれど、無駄でした」と笑う。
 熱海富士はその分、週末の練習後に皿洗いのアルバイトに励み、一人で家計をやりくりする母を支えた。通学の定期代や遠征費も自分で用意した。
 高校入学時130キロだった体重は3年間で170キロになった。栗原監督は「増え方が半端じゃないですよ」と目を丸くする。

「かわいい」 豊かな表情人気に

 
杉山信二会長が営む食堂で大盛りの定食を食べる高校3年時の熱海富士=三島市竹倉

 相撲ファンの間では、顔をクシャクシャにして泣き笑いする熱海富士の表情が「かわいい」と話題だ。
 幼い頃から「サクちゃん」の愛称で親しまれた人気者だった。「よく言えばおおらか。悪く言えば大ざっぱ」「あのまんま」と周囲は回想する。高校入学時、自宅に半年間下宿させていた三島市相撲連盟の杉山信二会長は「日々注意することはあったが、あの笑顔にごまかされていた」と懐かしむ。
 心技体のいずれもスケールは大きく、土石流被害を受けた熱海市民の期待も背負う。奈緒さんは「明るいニュースと思っていただけているならうれしい。みんなに愛される力士になってほしい」と願う。(南部明宏)
※肩書は当時
〈2022.1.26 あなたの静岡新聞〉
地域再生大賞